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2020年8月28日金曜日
大前仁さん著『ボリショイ卒業 バレエダンサー岩田守弘 終わりなき夢の旅路』
長らくボリショイ劇場で活躍されてきた岩田守弘さんについて書かれた書籍
大前仁さん著『ボリショイ卒業 バレエダンサー岩田守弘 終わりなき夢の旅路』を読みました。
https://toyoshoten.com/books/564
先週末偶々図書館で見つけ借りて読みましたが、ボリショイ卒業と書名に含まれていながら
バレエを習い始めた経緯からボリショイ入団、そしてブリヤート国立バレエ監督就任以降まで
岩田さんの子供の頃からの人生を辿る内容となっています。
監督からの解雇通告や配役を巡る確執などボリショイ内部の生々しい様子も一部描かれていますが、
どんな困難に遭おうともめげずに突き進む姿はソ連の崩壊とロシア共和国の誕生の境目を身をもって経験され
舞踊人生を切り拓いてこられた岩田さんの揺るがぬ精神力、魂を感じさせます。
静かされど熱いドキュメンタリー映画を観ているようで次の展開が気になり、自然とページをめくる速度が上がっていきました。
また近年のボリショイの変化についても正直に触れていらっしゃり、
多彩な作品を取り入れつつも他のバレエ団と似たり寄ったりな状態になってきたと嘆く一節も。
「心に響く踊り」を掲げ、憧れ抱いた「ソ連のバレエ」に回帰しながらブリヤート国立バレエ団芸術監督としての奮闘も詳しく書かれています。
バレエで最も大切な要素は何であろうかと考えさせられる書籍です。
ボリショイの変容を憂える件においては昨年夏パリ・オペラ座バレエ団のメートル・ド・バレエに就任したイレク・ムハメドフも同様の考えをインタビューで熱弁。
ソ連時代のバレエ団に身を置き命を削りながら踊ってきた者からすると、かつての持ち味が失われつつある現況は受け止め難いのかもしれません。
今更ながら知ったのは、2012年7月にボリショイ退団公演が異例中の異例で実現し、仲間たちが集結。岩田さんの人柄を物語る実現ですが
加えてその公演の大トリを飾ったプログラムがご自身の振付作品『富士への登攀』であったこと。
同年夏に大阪のMRB主催スーパーガラin Osakaにて私は鑑賞しており、甚平を着用し、ユーモアで品の薫るソロに引き込まれましたが
直前の舞踊人生の大きな節目に踊られた作品であったとは、恥ずかしい話この書籍を読むまで知らずにおりました。
それから先の記事でも少し紹介いたしましたが、岩田さんがお若い頃から羨望の眼差しを向けていた同世代のダンサーの1人が
現在NBAバレエ団の芸術監督を務める久保紘一さん。1989年のモスクワ国際バレエコンクールで金賞無しの銀賞
つまりは実質1位を獲得され(バジルのヴァリエーションは完璧過ぎたとの評を読みました)
ソ連時代でしかも会場はボリショイ劇場、審査員は多国籍構成でありながらもグリゴローヴィヂ始めソ連国家の顔であろう錚々たる面々も並ぶコンクールで大快挙で
久保さんが登場したときの客席の反応や魂を込めて踊る大切さを賛辞と敬意を表して岩田さんは当時を振り返っていらっしゃいます。
他の出場者はウラジーミル・マラーホフ、エレーナ・フィリピエワ、ガリーナ・ステパネンコなどが揃いゴルバチョフ夫妻も臨席で
名前を目にしただけて気圧されてしまいそうな方々ばかり。岩田さんは惜しくも決選までは進めませんでしたが
『パリの炎』ヴァリエーション写真が当時のダンスマガジンに掲載されています。
『ボリショイ卒業…』の書籍で、ボリショイの変化については2008年発売のブックレットでも語っている旨が紹介されており、こちらでございます。
7年ほど前に神保町のロシア書籍専門店ナウカジャパンで見つけました。
話は別方向に移りますが、1989年のモスクワ国際バレエコンクール開会式の後にはボリショイによる『愛の伝説』が上演されたそうで、
主な出演者はブイローワ、ムハメドフ、ミハリチェンコ、タランダ。うう、鼻血が出そうな面々でございます。
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