2020年8月23日日曜日

山本康介さん著『英国バレエの世界』




遅ればせながら、山本康介さん著『英国バレエの世界』を読みました。

スパイスイープラスでの紹介
https://spice.eplus.jp/articles/268303


随分と前に購入しており読み始めてはいたものの鑑賞する公演関連本に走ってしまい、ようやく読み終えたところですが
英国バレエの歴史と変遷、代表するダンサー、振付家や作品の特徴を噛み砕くように分かりやすく例えを用いて書かれていて大変読みやすい書籍です。
本ではあってもあたかも教室で山本さんの講義を聞いているかのような気分になる歯切れの良い文体ですので、どうぞお手に取ってお読みください。
山本さんご自身英国のバレエ学校、バレエ団を経ていらっしゃるのは言うまでもありませんが、だからといって英国作品をひたすら礼賛なさっているのでは全くなく
むしろ踊っていて首を傾げていたことや手直ししたほうが良さそうな要素なども正直に言及。偏りのない内容で読んでいて気持ち良く感じました。
目から鱗が落ちた箇所も数知れず、『眠れる森の美女』3幕オーロラ姫のヴァリエーションにおける冒頭の振付(英国でよく踊られる方の版)の意味合いや
やり過ぎない、抑制と言っても英国とフランスでの捉え方の違い等、枚挙にいとまがないほど。
山本さんの現役時代のお姿は2008年の英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団来日公演『美女と野獣』でのカラス役で鑑賞し
以降は振付演出家、プロデューサーとしての印象が強くありますが、想像を超える広範囲に及ぶ知識量の豊富さにただただ驚くばかりです。

それからバレエ教師のための教授法におけるバレエ検定機関のRAD(ロイヤル・アカデミー・オヴ・ダンス)の魅力についても語られ、
子供に対し、幼いうちからコンクールのヴァリエーション練習や難しいテクニックを押し付けず
順序立てて焦らずにじっくり指導を行っていく重要性を説いていらっしゃいます。
実は私が子供の頃にお世話になっていた先生がRADを取得されていて、振り返ってみても発表会であっても派手な技術を一切振付に取り入れず
回転にしてもたくさん回れと言われた覚えもなく、基礎のステップを着実に繋ぎながらいかに美しく魅せるかに重点を置いた指導であったのは幸いでした。
また当時は開催数が少なかった時代且つ教室内にプロを目指す生徒がいなかった事情も影響するのかもしれませんが
先生の口から「コンクール」の文字が出ることは一度も無し。
ヴァリエーションも辞める最後に1回だけ経験はいたしましたが、簡単には踊らせてもらえぬ、選ばれし者が踊るべきものと
恐らくは先生も、そして私も考えておりましたためむしろ無理に何度も踊らずであったのは良かったと思っております。
(1回だけ踊ったのは眠れる森の美女パ・ド・シス元気の精でしたが、たった約30秒であっても
ヴァリエーションなんぞ私は踊ってはいかんと天を仰ぎ、プティパやチャイコフスキーに対し詫びたものです…)

話があちこちに逸れましたが、山本さんが子供に教えるときの注意点を読むと2018年に江戸川区で鑑賞した
新国立劇場の小野絢子さん福岡雄大さん福田圭吾さんも客演された佐藤朱実バレエスクールでの振付演出『くるみ割り人形』を思い出し
生徒さん達が誠に生き生き伸びやかに踊る姿に再度納得いたしました。
世界のバレエ史、その中での英国バレエの発展や位置づけ、エピソードやロシアやフランスとの違いやお勧めの演目に
ロシア、特にボリショイバレエを好む私も腑に落ちるロシア作品評も含めバレエの面白さや再発見が止まらぬ書籍です。



山本さんが「英国的おすすめ演目」として日本では上演機会が決して多くないながら取り上げていらしたうちの2本が『チェックメイト』と『二羽の鳩』。
いずれも日本では小林紀子バレエシアターが初演しています。初演の次の再演あたりのチラシが手元にありましたのでご参考までに。
この頃主要な役を多く踊っていらした志村昌宏さん(二羽の鳩にて画家の少年役で主演された際
鳩の扱いに大変苦労なさっていたご様子がプログラムで明かされていたと記憶)が
現在主宰されているスタジオに山本さんはいくつかの作品を提供なさっていて書籍でも写真で紹介されています。
『チェックメイト』には新国立劇場にてバレエミストレスを務めていらした板橋綾子さんの現役時代のお写真も。






※記事冒頭の写真にて本の隣りに置いているのは管理人が長年、ひょっとしたら昭和の頃から愛用しているピーターラビットのマグカップ。
アシュトン作品にもあり、Kバレエカンパニーでも何度か観ておりますため敬意を込めて。
ちなみにもう1個愛用しているのはチェブラーシカ柄。偶然ですが、ロシアと英国が誇るキャラクター達が揃っております。

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