2020年7月19日日曜日

【お茶の間観劇】シュツットガルト・バレエ団 マリシア・ハイデ版『眠れる森の美女』

シュツットガルト・バレエ団から配信されている2019年12月収録のマリシア・ハイデ版『眠れる森の美女』を鑑賞いたしました。
来日公演でも度々上演されていますが観るのは初。今春に続く再配信と思われ、現地時間の7月18日22時まで視聴できるようです。



タマシュ・デートリッヒとマリシア・ハイデからのメッセージ

https://www.nbs.or.jp/stages/0811_stuttgart/sleeping.html 2008年来日公演時の解説


オーロラ姫:エリザ・バデネス
デジレ王子:フリーデマン・フォーゲル
カラボス:ジェイソン・レイリー


バデネスのオーロラ姫は登場時から弾むような明るさを超えて快活溌剌。少し跳ぶ際も顔や上半身を思い切り捻ったり
屈託のない笑みを浮かべたり、天真爛漫なお転婆娘といった趣きある姫君でした。
2幕では一変して物憂げな表情でしっとりと、3幕の結婚式では赤い花模様の可愛らしい衣装も違和感なく、晴れやかさと可愛らしさを備えた姫として式に臨んでいた印象です。
バデネスと言えば2018年開催の世界バレエフェスティバルにおける『じゃじゃ馬ならし』にて
パワフルであってもダニエル・カマルゴ扮するペトルーチオへの体当たり突っ込みが絶妙な加減で嫌味がなく観ていて爽快だったカタリーナが強烈で
姫のイメージは沸きにくかったものの、徹頭徹尾華麗なる王朝絵巻を貫く例えばマリインスキー・バレエ団のセルゲイエフ版とは異なり
貴族たちや花のワルツの面々も襟を正してではなく場をわきまえるつつも寛ぎながら姫を見守る演出で
姫もローズ・アダージオ最中に恥じらいを募らせるとはしゃぐように友人のもとへ駆け寄るなど
人間味豊かな面を描写した親しみやすいハイデ版にはよく合っていると感じさせました。

もう1人の主役はレイリーのカラボス。紅白歌合戦の小林幸子さんを彷彿とさせる裾の長いドレスを巨大に見せる、回廊からの登場シーンに驚愕し
舞台上に現れてからも裾を器用に翻しながらの身のこなしの軽やかさにも目を見張り、対角線上に横切っては姫が眠る揺りかごへと近寄り脅かす表現も恐ろしや。
ストレートなロングヘアでてっぺんに髪飾りで纏め、腰のあたりが締まった黒いドレスで古代中国が舞台の映画に登場する悪女な雰囲気であった点も斬新に映りました。
プロローグと1幕の間には他の版では大概リラが王子を導く場面で流れるパノラマの音楽で、舞台のカーテンと化したドレスの長い裾を
舞台スタッフも仰天であろう手捌きで全身で引いては捲り、3段階ぐらいで成長過程を交互に見せていく(恐らくは子役を3人程度起用)オーロラの様子を眺め
遂には花束に毒針を仕込む作戦を実行していざ、16歳の誕生日祝いへと向かう流れを表現。執念を滲ませて行くカラボスの心情も伝わりあっと唸らせる仕掛けや演出でした。

4人の求婚者の国は設定せず、東西南北の王子として登場。(パゴダの王子に似ている笑)
東洋系の王子が2名いるのは珍しく、挨拶の仕方からしてトルコ周辺ともう1人は分からず。着物なデザインにも見えなくもなく、髪は髷に近い形で中国か?
ローズアダージオ後も4人で踊り、姫と国王夫妻の前に進み出てはアピールを行うまるでオーディション状態で
そういえば花のワルツの最中に気づけば回廊に登場していた記憶もあり、さほど格式ばった誕生日祝いではなく自然な行動をすっと溶け込ませた流れでした。
結婚式にも臨席し見せ場を盛り上げ、勝者つまりはデジレ王子を讃え祝福。求婚中断で100年が経過してしまい、4人の行く末が気にかかるところですが。

順番前後してプロローグ6人の妖精たちは明るめの色味を放つチュチュで全員同色のカバリエ付き。
リラの精のお付きコール・ドは無く、代わりにカバリエの見せ場は盛りだくさん用意されていました。
壮大な絵巻物とは一味違った、絵本やおもちゃ箱の中を覗いているかのような可愛らしさ、親しみやすさが詰まり
加えてカラボスの執念も事細かに描いた、なかなかユニークな演出の眠りです。再来年の来日公演にて、1度は生で鑑賞したいと思っております。


NBS第31回バレエの祭典ラインナップ
https://www.nbs.or.jp/saiten/lineup/

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