2020年7月12日日曜日

【お茶の間観劇】イングリッシュ・ナショナル・バレエ団 クリストファー・ウィールドン版『シンデレラ』

イングリッシュ・ナショナル・バレエ団で配信されていたクリストファー・ウィールドン版『シンデレラ』を鑑賞いたしました。
ロイヤルアルバートホールの大きな円形舞台で繰り広げられ、360°の角度から出演者を見渡せる大迫力の公演でした。
全編をざっと観てまたじっくり観ようと思っていたものの配信終了となってしまいうっかり。簡単な感想ではございますが
ダイジェスト映像やリハーサル、衣装製作現場映像、360°ではない正面側のみの客席劇場での公演映像など動画サイトに映像が充実しておりますので是非ご覧ください。



アルバートホールでのシンデレラ予告映像


シンデレラ:アリーナ・コジョカル
王子:イサック・エルナンデス
継母:タマラ・ロホ


コジョカルのシンデレラはその昔新国立劇場でのアシュトン版ゲスト出演時に観たときの元気溌剌な様子とは打って変わり
悲観的で内向きな少女。義姉たちと一緒に踊る箇所が多く一見仲が良さそうな家族にも見えなくはありませんでしたが
継母がとにかくおっかなく笑、義姉たちの陰湿な仕打ちが徐々に露わとなってシンデレラがより哀れに見て取れました。
舞踏会では黄色と金色のドレスで。目の前の別世界に徐々に目を覚まして行くかのように解放感いっぱいに踊り出す姿がいたく愛らしく映りました。
圧倒する存在感であったのはロホによる継母。目の前にした相手をじっと送る視線の使い方といい不変の達者な技術といい
決して大柄な身体ではなくてもダイナミックに示して且つ荒っぽさもなく、厚手の光沢ある素材の衣装も似合い
ちょっとした腰の捻り方や顔の付け方の魅せ方にも長けていて団長の貫禄十二分。
娘を嫁に出したい、玉の輿に乗せたい気持ちは誰にも負けず笑、巨大な金槌で叩きながら靴に足を入れさせようと奮闘する姿には思い切り笑わせられました。
エルナンデスの王子は親しみやすい印象で、宮殿でやんごとなき生活を送るより窮屈な空間を飛び出しての生活のほうが合っていそうな青年。
シンデレラを探し出す際は床に描かれた世界地図の照明を真剣に眺めたり、シンデレラの家到着時にはバネの強いジャンプで沸かせたりと
苦難続きの冒険でもむしろ楽しむ余裕を持っていそうな王子でした。

先にも述べた通り、ロイヤルアルバートホールでの360°から見渡せる大円形舞台での披露は圧巻。
舞踏会の人数も多めで舞台床には視力回復本に載っていそうな湾曲した模様が全体に照明で描かれ
翻る濃い青の衣装の魔力にも吸い寄せられ摩訶不思議な世界へと一気に迷い込まずにはいられません。
前後左右からの観客の視線を感じながら踊ることはどれだけ緊張を強いられるものかと気にもなりますし
他のバレエ団では同じプロダクションを正面側のみの客席劇場で上演しているはずですから、舞台転換や振付も変更して臨んだと思われます。
そして英国バレエのお決まりなのか、被り物たちのキャラクターも大活躍。藁を組み合わせたのか人の大きな顔の被り物や大掛かりな鳥もあり。
そういえば、アシュトン版『シンデレラ』には不在だが、珍しい例なのでしょう。



アルバートホールでの『白鳥の湖』予告映像。白鳥60羽が登場し、360°の客席に配慮して四羽の白鳥は2組が登場します。


アルバートホールでの『白鳥の湖』を目にして思い出したのは、小林紀子バレエシアターや新国立劇場バレエ団で活躍後
バレエスタジオAngel Rでの全幕舞台総合演出や、新国立劇場バレエ団の福田圭吾さんと組んで監修にあたっている公演DAIFUKU及びDAIこと大和雅美さんの鑑賞記。
記念すべき第1回公演360°Nutcrackerの告知にて、ロイヤルアルバートホール公演からヒントを得たと書かれていました。
http://トウキョウダンスマガジン.com/?p=1854

大和さんの鑑賞記。アルバートホール内部や前後の記事にはウエストミンスター寺院やバーミンガムの美術館など英国の古くも美しい建造物の写真も満載です。
http://blog.livedoor.jp/masamifc/archives/2018680.html

舞台を取り囲む形での鑑賞の経験は2012年の7月11日、12日に青山円形劇場にて開催された(まさにちょうど8年前)下村由理恵さんのリサイタルにてありましたが
コール・ド・バレエを360°の角度から鑑賞するのはこの第1回Daifukuが初。ぐるりと全方角を意識した片側に偏らぬ振付に驚かされ一層立体的に見えた記憶がございます。
また昨年2019年のDaifuku Home(バレエ版サザエさん)は横浜公演では360°客席でしたが矢上恵子先生追悼公演で上演された大阪では
正面側のみ客席のホールでしたから、違いを堪能できたのは幸運であったと思っております。

※3月公演が延期となったDAIFUKU vol.6 Strong.Bが2020年9月26日(土)27日(日)の上演が決定したそうです。時間は後日発表のこと、楽しみに待ちたいと思います。
https://www.angel-r.jp/event_ar/daifuku/daifuku-vol06/27087/

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