2023年5月3日水曜日

あとは3幕にかかっている  上野の森バレエホリデイ2023  東京バレエ団『かぐや姫』第2幕  『イン・ザ・ナイト』『スプリング・アンド・フォール』4月28日(金)





4月28日(金)、東京バレエ団『かぐや姫』第2幕  『イン・ザ・ナイト』『スプリング・アンド・フォール』を観て参りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2023/kaguyahime/


※キャスト等はNBSホームページより

「スプリング・アンド・フォール」
振付:ジョン・ノイマイヤー  音楽:アントニン・ドヴォルザーク

第1楽章 モデラート
秋元康臣
池本祥真、樋口祐輝

第2楽章 テンポ・ディ・ヴァルス
秋山 瑛
三雲友里加、工 桃子、二瓶加奈子、中川美雪 髙浦由美子、長岡佑奈 池本祥真、岡崎隼也、樋口祐輝、岡﨑 司

第3楽章 スケルツォ:ヴィヴァーチェ
秋元康臣
池本祥真、岡崎隼也、樋口祐輝、海田一成、岡﨑 司、後藤健太朗、加古貴也、山下湧吾、宮村啓斗

第4楽章 ラルゲット
秋山 瑛 - 秋元康臣

第5楽章 フィナーレ、アレグロ・ヴィヴァーチェ
全員


2018年の20世紀の傑作バレエⅡ以来の鑑賞。ドヴォルザークの曲が耳を優しく覆い、柔かな膜が広がるように展開する絶え間なく伝う清流を思わす音楽、振付構成です。
中でも第2楽章 テンポ・ディ・ヴァルスでの秋山さんが音楽に身を任せつつも軸を万全な状態で保ちながら自由に舞う無垢な魅力が満開でした。
秋元さんのメッシュは気になるも笑、音楽をさっと掬い上げるような身のこなしや
緩急の変化を緻密に体現していたアンサンブルの出来も宜しく、前回観た新国立劇場中劇場とは舞台面積も全く異なる東京文化会館においても
面積を持て余した感はなく、夕焼けに照らされたような光を浴びる場も癒しを与えてくれる箇所の1つでした。


「イン・ザ・ナイト」
振付:ジェローム・ロビンズ 音楽:フレデリック・ショパン

中島映理子 ― 宮川新大
金子仁美 ― 安村圭太
上野水香 ― 柄本 弾

ピアノ:松木慶子


こちらも2018年以来の鑑賞。星々が瞬く夜空が現れてピアノが奏でられ、ロマンを誘う幕開けです。
最たる驚きは金子さん安村さん組で、しばらくは歩いて登場する姿からしてはっと目を惹く大人な洗練度。
曲調がゆったりしているため下手すると場が持たない難しさがある中でも振る舞いに見入り
手の差し出し方や受け止めるやり取りからして余裕な所作で魅せ、優雅に描き出すポーズ1つ1つも隙が無し。成熟した魅力を静かに品良く表していてお見事でした。
これまで金子さんは古典のお姫様な役はあまり好みには合わず終いでおりましたが
しっとりと踊る大人の夜会な作品では別人かと感じるほど、落ち着いた美しさが引き立っていた印象です。
安村さんと共に、オレンジとチャイルドを帯びた渋めの衣装もお似合いでした。
中島さんが着用の、ブルーグレーな淡さが重なる衣装もお洒落な色味です。


「かぐや姫」第2幕 世界初演
演出振付:金森穣
音楽:クロード・ドビュッシー
衣裳デザイン:廣川玉枝(SOMA DESIGN) 
美術:近藤正樹
映像:遠藤龍
照明:伊藤雅一(RYU)、金森穣
演出助手:井関佐和子
衣裳製作:武田園子(Veronique)

かぐや姫:秋山 瑛
道児: 柄本 弾
翁:木村和夫
秋見:伝田陽美
影姫:沖香菜子
帝:大塚 卓
大臣たち:宮川新大、池本祥真、樋口祐輝、安村圭太
側室たち:二瓶加奈子、三雲友里加、政本絵美、中川美雪


2021年秋に第1幕の初演を鑑賞。かぐや姫のお転婆、無邪気に戯れる様子が描写され、
ただ大事にされた女の子ではないキャラクターとして確立していたのはなかなか面白いと思えておりました。
宮廷へと向かった先が描かれた2幕は予想よりモダン寄りで、群舞は男女それぞれ1幕より規模増強。
今回より復帰された沖さんによる影姫の存在が実質主役な印象をも持たせ、何人もの側室達を率いながら全体を絞り上げる冷ややかな支配感を漂わせて君臨していました。
まだあどけない秋山さんかぐや姫が戸惑う様子と、黒い光とちらつかせる影姫との並びが好対照。
ただ衣装が非常にモダンな風味が濃く、着物な羽織り物は良いとしてかぐや姫も影姫も側室達もボディタイツ仕様で
男性陣は風邪薬の宣伝に登場しそうなメタル戦士風のテカリ系。価値観にとらわれた我が感性に問題ありきであろうとは思うものの
宮廷らしい絵巻物なデザインがあっても良かったかと思えました。 影姫や側室達は深みのある赤を多用し、4年前に観た中国国立バレエ団『赤いランタン』を彷彿。

振付は群舞はまずまず迫力に満ちていて上階から観ても動きの変化が見渡せましたが
全体を通して起伏に欠け、1本調子のまま終了してしまった印象が拭えずでした。
突如文字幕と外国語によるナレーションが入った演出も果たして必要であったのか疑問が残りますが
3幕が待っていますのでこの時点でどうこう申すのは避け、全幕披露を待ちたいと思います。





衣装も数点展示、パキータ。




※上野の森バレエホリデイ2023のイベントも翌々日に楽しみました。
まず、 8バレエ団ダンサーズトーク。
https://balletholiday.com/2023/venue/tokyobunka/recital/event-ct-8.html
井上バレエ団の阿部碧さん、小林紀子バレエ・シアターの望月一真さん、貞松・浜田バレエ団の名村空さん、スターダンサーズ・バレエ団:西澤優希さん、
東京バレエ団の伝田陽美さん、東京シティ・バレエ団の植田穂乃香さん、法村友井バレエ団:法村圭緒さん、牧阿佐美バレヱ団の菊地研さんが登場され
最初は自己紹介も兼ねて所属バレエ団の特徴や魅力、入団のきっかけから開始。法村友井と貞松浜田以外の団は東京都内にあり、
都内にはバレエ団が多過ぎるとも言われがちなものの、これといった特徴をどの団も持っていて(勿論関西の法村友井も貞松浜田も個性はっきり)
都内の公演だけでも日程の被りを気にしなければならないほどにあちこちで公演が開催されているのは幸運なのかもしれません。

その後はこの文化うちの団だけでしょうかクイズもあって会場も益々盛り上がり時間を少しオーバーして終了。
司会進行の阿部さや子さんは大変申し訳なさそうな口調で最後締め括っていらっしゃいましたが
たくさんの楽しいお話が飛び出していたからこその超過ですからお気になさること、ございません。
終盤時間が押し迫ると、紹介しきれないダンサーからの質問事項の中でマルバツで回答できる質問を即座に絞って配布していた札を挙げてもらうなど
可能な限り参加者が楽しめるようぎりぎりまで工夫を重ねながら進行してくださいました。

登壇のダンサーの皆さんは誠に個性が様々で、中でも伝田さんは座長な取り仕切りぶりで姉御肌な一面をご披露。
憧れのダンサーと語る上野水香さんの話題になると、最近放送された『情熱大陸』にて上野さんと一緒にざっくばらんに話し込んでいる場面は
カットされるとばかり思っていらしたようで、ちょっぴり恥ずかしそうに裏側を語ってくださいました。
井上バレエの阿部さんはハードなブルノンヴィルスタイルがセンターレッスンで組み込まれるエピソードを
おっとりほわほわな雰囲気なままでお話しになり、その落差に観客驚いていたもよう。
望月さんはトーク終了後そのままゴールデンウィーク行楽地の混雑状況について報道なさっていても何ら違和感なさそうな
語り口がアナウンサーのような滑舌の良さで、されど内容が男性ダンサー同士で食べ物分けっこといったほのぼの系話であったり
西澤さんは鈴木稔さん作品では舞台上で着替える演出が時々あり、頭飾りが曲がったままになっていないか
気になってしまうこともあるようで、レポーターのようなハキハキとした口調でいらっしゃいました。

伝田さんは東バのコール・ド・バレエ反省会の厳しさを語られ、細かく名指し或いは立ち位置の番号での注意を受ける様子の厳格な空気感伝わる再現に
観客思わず拍手。『ラ・バヤデール』始め、緊迫感あるコール・ドの日々の積み重ねが今一度窺えた瞬間でした。
女性ダンサー同士でレオタード貸し借りの話や落ち込んだときだったか、ハグで愛情を交わすなどほんわか関西弁で披露なさる名村さんや
植田さんの、地方公演(学校公演)で一層高まるスタッフとの連携プレー演出話にも癒されました。
法村さんは、バレエ団の建物の構造上だったか、『白鳥の湖』や『ジゼル』の静かな場面の練習時であっても電話の音が大きくピンポーン!!と響き渡ってくることや
コロナ前は男性ダンサー全員で旅行へ出かけたり、キャリアの中で必ずと言って良いほどに出てくる
10代でいきなりプティさんの新作『デューク・エリントン・バレエ』に抜擢されるまでの経緯や精神が擦り減っていった様子が
これでもかと伝わってきた菊地さんのお話も、大変面白く拝聴いたしました。
そういえば、昔は四大バレエ競演なる公演もありましたが、8つもの異なるバレエ団のダンサーが並び
お話を聞ける機会は実に貴重で、来年も開催を心待ちにしております。



それから昨年も買い物した大阪府堺市のアンデオールさんのコンフィチュールも購入。バレエのキャラクター名が付いているものも多数あり、
今回はメドーラにいたしました。オリーブ味が効いている、お酒にも合いそうなお味です。クラッカーも購入。




お昼は会場そばの上野バンブーガーデンにある音音へ。竹に覆われた作りです。雨後の月で乾杯。雨も上がり、傘要らずでした。



サーモンイクラ丼。カウンターは広めな作りで落ち着いていました。



海賊衣装。全幕のときではなくバレエ祭りで着用されているものかと思われます。涼やか!




メドーラとビスケット。白ワインに合いそうです。



そして昨年もお世話になった武蔵野ルネさんの似顔絵イラストも描いていただきました。半分は別店舗のパンフレットで隠しております。
https://balletholiday.com/2023/venue/tokyobunka/main-foyer/event-lune.html

今回もバレエの舞台写真を見せて、もしありとあらゆるバレエ衣装の中で1着だけ着用できるならこれと決めております世界で一番好きな衣装を指定いたしましたところ
衣装は特徴捉えてほぼ忠実に、顔は管理人の実物の1兆倍綺麗に描いてくださいました。グラズノフ作曲の大作第2幕で、最近NBSとは対話路線に転換した某団の衣装でございます。
豪華で緻密な模様や青と金の色彩の組み合わせに、武蔵野さんも息を呑んでいらっしゃいました。
マントに剣携えて、ジャン助けに来てくれるかな。いいとも!そんな軽い人間の話ではない汗。
遺影にしたいくらいですが、実物からかけ離れ過ぎと家族から指摘を受けるのは目に見えております。
武蔵野さん、ありがとうございました。

2 件のコメント:

Aki Ogawa さんのコメント...

東バのGW公演、楽しかったですね。
良いトリプルビルだったなと思います。
かぐや姫は秋の3幕に期待しましょう。
ダンサーズトークも楽しかったですね。
伝田さんのトーク、最高でした。
私は翌日4/29のランチで、音音に行きました♪

管理人 さんのコメント...

Akiさま

おはようございます!
バランス良く構成された楽しいトリプル・ビルでしたよね。
はい、かぐや姫は全編通しての披露でまた1、2幕の面白さを知ることができるような気もいたします。
結末が描かれる3幕、楽しみです。

音音、席の作りもあるのかランチでもゆったりできる空間ですよね!
会場からも近くて便利です。

それぞれバレエホリデイに特徴のあり、皆さん誇らしげに語っていてまたまた様々な公演を観に行きたい欲が募ってしまいましたが
伝田座長は舞台でもトークでもビシッと引き締めしかも面白くて笑。惚れてしまいました!