2023年5月26日金曜日

予想よりもバレエシーン大充実   Jewels Story ラフマニノフの旋律 5月21日(日)









5月21日(日)、渋谷の大和田さくらホールでJewels Story ラフマニノフの旋律を観て参りました。
https://jewels1000toeshoes.com/performance/


ラフマニノフ:陳内将
ナターリヤ:伶美うらら
チャイコフスキー:佐賀龍彦(LE VELVETS)
ボルコフ:北村健人 

バレエシーン
木村優里(新国立劇場バレエ団 プリンシパル)
渡邊峻郁(新国立劇場バレエ団 プリンシパル)
池田理沙子(新国立劇場バレエ団 ファースト・ソリスト)
奥田花純(新国立劇場バレエ団 ソリスト)
広瀬 碧(新国立劇場バレエ団 ファースト・アーティスト)
益田裕子(新国立劇場バレエ団 ファースト・アーティスト)

語り
さひがしジュンペイ
吉田智美



詳しくは把握し切れてはおりませんが、牧阿佐美バレヱ団とKバレエカンパニーでも活躍された篠宮佑一さんが代表を務めていらっしゃる団体で
宝石の企画販売やコンクールにワークショップ、レッスン、そして多分野を融合させた舞台制作も行っているもようです。
Jewels Storyシリーズもテーマを変え、回数を重ねているとのこと。LE VELVETSは牧バレヱとの共演舞台もありましたから、繋がりが続いて今の形にもなっているのかもしれません。
今回はラフマニノフの生涯を描いた作品で、果たしてどんなものになるのか、
朗読や歌の入り方、お目当てのバレエシーンの割合まで全く見当つかぬまま鑑賞に臨んだわけですが
単刀直入に申すと予想よりも見応えある内容且つバレエシーンのボリュームの多さにも嬉しい悲鳴でございました。

まず語りも用いて時系列でラフマニノフの生涯を辿り、子供時代のラフマニノフの様子や語りのさひがしさんと吉田さんがラフマニノフの両親も兼任。
ノヴゴロドで過ごした子供時代に音楽に目覚めるまでの経緯やチャイコフスキーとの出会い、音楽院への入学、挫折、また成長したラフマニノフの陣内さんの
子供時代の回想シーンでも度々子供ラフマニノフも登場して語り合う場面も挿入され、子供時代に抱いた瑞々しい感情を再度抱いていきます。
変わりゆく国家に翻弄されながらも試練を乗り越えていきながらの名曲完成への道のりも分かりやすい構成でした。
1幕の中盤にラフマニノフとチャイコフスキーが星空を眺めながら語らう場面にて
歌い出したのが『見上げてごらん夜の星を』であったのは最大の衝撃でしたが汗(時代の先取り或いは時空の超越か)
ロシア史やソ連史も同時に学べ、その辺りの時代や内容に興味津々な私にとっては惹きつけるテーマと思えた次第です。

バレエシーンは全部で3箇所であったかと記憶しており、1幕にて、ラフマニノフがチャイコフスキーの音楽に耳を傾ける場にて
ジュエルズ主催のコンクールで入賞されたジュニア年代の方々が葦笛の踊りを披露。
クラシックにコンテンポラリーな振付も盛り込まれ、なかなかユニークな演出でした。
そして1幕の最後に大作『ピアノ協奏曲第2番』を書き上げましたとの紹介後に曲が流れる中で新国立劇場バレエ団の面々がやっとこさ登場。
木村さん、渡邊さんの2人を中心に置き、周囲を池田さん、奥田さん、益田さん、広瀬さんの4人がアンサンブルとして固めた構成で
パ・ド・ドゥではあっても木村さんに負担が極力かからないようとにかく渡邊さんが1人で踊りまくる振付でございます。
加えてバレエにおけるラフマニノフという役設定もあったのか、第一楽章を丸まる使って繊細で内向的なラフマニノフの心情をつむじ風か
場合によっては竜巻の如き回転も含むハイテクニックなダンスで披露されました。
衣装は木村さんが黒いノースリーブのワンピース、アンサンブルが紺色系だったか、
渡邊さんは光沢のあるコバルトブルーを濃いめにしたようなお色のシャツに黒いパンツスタイルで至ってシンプル。
しかし、一時は渡邊さんの座長公演と化したともいえる壮大な音楽に負けぬスケールのある踊りで魅せ、バレエ目当ては少数であった客席も沸き立ち喝采に包まれ幕間へ。

それから2幕では『パガニーニの主題による狂詩曲』が完成しましたとの紹介後に曲が流れる中にチーム新国が再登場。
ピアノ協奏曲のときと似た配置で、アンサンブルのキビキビした踊りが気持ち良く、髪型もハーフアップからまとめ髪に変わっていて雰囲気も一変。
そしてここでも木村さん渡邊さんのパ・ド・ドゥが主軸となるも、ダイナミックなリフトもこなしつつ再びとにかく渡邊さんが1人で踊りまくる振付。
何もかもを洗い流すような大河を思わす旋律にのせて溶け合う美しい渡邊さんを誠に観やすいど真ん中なお席から拝見でき、至福なひとときでございました。
お正月の『くるみ割り人形』以来久々に目にした木村さんの変わらぬ麗しさ、オーラも健在で
少し身体つきが変わった印象もあれど、オペラパレス公演での復帰も待ち侘びております。

最初はどんな舞台になるのか、ジュエルズさんのコンセプトも未だよくは把握できておらぬ状態ですが
バレエシーンの取り入れ方に不自然さがなかったのは好印象。
公演名が『ラフマニノフの旋律』ですから何処かしらに代表曲をたっぷり聴かせる場面挿入が必須であり
しかし音楽そのものをたっぷり聴かせるには朗読や歌は入れられず、されどただ音楽流すだけでは舞台としての成立は難しい。
そうなるとバレエが最適な表現手段であると気づかされた次第です。また両曲ともクラシック通ではなくてもよく知られた曲であり
特にピアノ協奏曲第2番はフィギュアスケートやテレビドラマでも知名度の高さは一気に加速。生半可な演出では観客もしらけてしまう危険性もあったことでしょう。
新国立の面々でしたら安心ですし、中でも音楽を聴かせながらも起伏に富んだ曲調を自在に体現し、更に場面のスケールをぐっと膨らませ
品性を高めてくださった中心位置担当の渡邊さんは計り知れない貢献をされ、大活躍でいらっしゃいました。

恐らくは『ピアノ協奏曲第2番』をバレエで観るのは初、『パガニーニの主題による狂詩曲』はアシュトンの『ラプソディー』や
昨年Kバレエのオプトで上演された森優貴さん振付Petite Maison(プティ・メゾン)"小さな家"、
それから2012年に出演者全員が男性ダンサーで構成された大阪でのPDA(Professional Dancer's Association)での
篠原聖一さん振付XXIV(読み方分からず汗)にて鑑賞しておりますが、少人数でほぼ全編まではいかずとも聴き応えある抜粋で踊り切る演出の鑑賞は初。
いくら広くはない舞台とはいえ、 音楽をリードするくらいの勢いや迫力で場面を成立させた振付者、出演者の手腕に驚かされました。

最後はミュージカル路線な終わり方なのか、一部出演者が挨拶。渡邊さん、木村さんもバレエシーン出演者の代表としてマイクを持って挨拶され
基本舞台上では声を出さない芸術分野に従事されていながらもスピーチされました。
木村さんは久々に舞台に立てた喜びを語り才能の意味合いについて力説され(確か)、渡邊さんは出演者の方々を引き立てる内容を一生懸命お話しになり、
ついさっきまで上演中は無言であった(バレエですから当然ですが)お2人の声が発せられるとびっくりした観客もいらしたかもしれませんが大きな拍手で称えられていました。
お2人が観衆の前でお話しになる姿を目にすると5年前の『眠れる森の美女』初日終演後の着物トークショーにゲストでいらしたときの日も思い出し、
あの日も筋金入りの新国立好きは圧倒的少数であった状況下においてもにこやかに真摯な姿勢で
バレエの魅力を語ってくださったお2人の話術に恐れ入った記憶がすぐさま脳裏を通過。懐かしい出来事でございます。

背景は映像を駆使し、ノブゴロドののどかな自然風景や赤の広場、血の日曜日事件など名所や歴史に残る事件を映し出しながらの演出。
赤の広場は遠方に聖ワシリー寺院が聳え石畳が続く映し方で、ちょうどボルコフが立っていた辺りに私も立っての記念撮影やら
ナターリアの家の調度品が赤の広場やボリショイ劇場からも徒歩圏内にあった
19世紀の建物を改装した宿泊先かのホテルの内装に似ていた等、我がモスクワ滞在記憶が思い起こされました。




予想よりはバレエシーンたっぷりで楽しく鑑賞した余韻に浸る。



帰りはロシアの思い出シリーズ、お寿司。モスクワで食しました。イクラが宝石の如くキラキラ。本物の宝石には手が届かぬ私ですが。



世界3大珍味っぽい3貫セット。渡航前、キャビアの押し売りに気をつけるようガイドブックに明記されていて、サンクトペテルブルクの空港では遭遇した人がいたらしい。
ひやひやしながら渡航するもモスクワでは遭わずに済んだが、現在はどんな状況なのでしょうか。シェレメチェボ第2空港のプレハブのような通路も今は綺麗になったでしょうか。

2 件のコメント:

Aki Ogawa さんのコメント...

観に行けなかったので、レポート嬉しいです。
観たかったなあ~ と思いつつ、拝読しました。
ラフマニノフは大好きな作曲家であり、優里さんの復帰の舞台も観たかった・・・
峻郁さんの踊りを堪能された様で良かったですね!
新国ダンサー達の充実したバレエシーンも、花純さんや碧さん、裕子さん、理沙子さんとは、贅沢なキャストでしたね。
楽しい舞台だった様で良かったです。

管理人 さんのコメント...

Akiさま
お読みいただきありがとうございました!
ご覧になりたかったですよね涙。
何人かの方々から話を聞く限り、今回はバレエシーンは多めな方だったかもしれません。
木村さんの復帰舞台姿、Akiさんも居合せたらさぞ喜ばれただろうと思います!
ラフマニノフ好きには想像以上に嬉しい構成で、渡邊さんの舞う姿もたっぷり拝見できたのは嬉しい贈り物でした!!
新国アンサンブルの彩りも見応えあり、バレエシーンはバレエ目当て以外の観客からの反応も良く、盛り上がっていましたね。