2023年5月21日日曜日

コンサートは今回も雨だった スターダンサーズ・バレエ団『スコッチ・シンフォニー』『牧神の午後』『コンサート』5月13日(土)





5月13日(土)、スターダンサーズ・バレエ団『スコッチ・シンフォニー』『牧神の午後』『コンサート』を観て参りました。
https://www.sdballet.com/performances/2305_theconcert/


スコッチ・シンフォニー
振付:ジョージ・バランシン
音楽:F.メンデルスゾーン 交響曲第3番”スコットランド”

塩谷さんスコッチガールの余裕ある軽やかさ、中でも跳躍を繰り返しながら対角線上をどんどん進んでいく体幹の強さや技術の高さにこの度も驚愕。
身体で音楽を奏で響かせるような歯切れ良い踊りで赤いキルト衣装もキュートでございました。
機敏に揃うコール・ドにわくわくさせられ、背丈始め体型は皆様々であってもきちんと見せる、
手脚の角度を保つといった要素1つ1つが統一されていてアンサンブルの精度も申し分ない仕上がりでした。
アダージオでの渡辺恭子さんのすっと流れるような優雅さ、手脚が優しい余韻を残す踊りにもうっとり。
フィナーレでの一斉にあちこちから闊達に飛び出してはステップを刻んでいく展開も気分が昂ぶってゾクゾク。
素朴で牧歌的な幕開けから急速に重厚さを増していく終盤まで、音楽もまた何度も耳に触れたい構成です。


牧神の午後
振付:ジェローム・ロビンス
音楽:C.ドビュッシー”牧神の午後への前奏曲”

幕が開くと昼下がりの稽古場が現れ、シンプルだからこそ人物がくっきりと浮かび上がる光景にはっと惹かれます。
東真帆さんの光を浴びる歩き姿から不思議な稽古場に迷い込んだ心持ちとなり、
腰位置が高く真っ直ぐに伸びた脚が空間を優美に切っていくフォルムにも釘付け。少女な面影がまた魅力です。
林田翔平さんのねっとりとした動きから繰り出す熱さとの交差から2人の火照りが次第に表出され、その過程から目が離せずにいるうち瞬く間に終了。
2階席で鑑賞した前回と異なり席が1階舞台正面であったため、ドアを開けたら現れたこのお2人を茫然としながら眺めてしまったような感覚ももたらされました。


コンサート

振付:ジェローム・ロビンス
音楽:フレデリック・ショパン

軍隊ポロネーズで華々しく開幕。ジャンッジャジャン!な冒頭、心が躍らずにいられません。
劇場客席空間を描いた美術が現れ、絵には同じ方向に腰掛ける客席がずらり。
先述の通り今回は1階席であったため絵の観客達の延長線上に私も着席している気分となっての鑑賞です。
前回の初演時の緊迫感がぎりぎりのところでせめぎ合って一気に発火する笑いの連続に
間のタイミングや締まりある舞台展開にあっと驚かされたわけですが今回は更に上昇。
ピアニストの小池ちとせさんが登場し、ピアノについた埃を大量にはたく箇所からじわじわと笑い声が生じたままコンサート開始です。
中でもふてぶてしい林田翔平さん夫と喜入依里さんに妻よる、着席した状態での大胆な掛け合いはお腹が捩れそうになり、
ばしっと新聞を引っ叩いたりと攻撃性のある表現であっても嫌味に映らないのは振付や音楽との調和も厳守して臨んでいたからこそでしょう。
他の客も着席間違いや音の出るものでの迷惑行為を注意する仕草等、少しのズレが大コケの一因となる
恐ろしい作品であろうと思いますが、糸を張りに張ってパンッと弾かせるような身のこなしで皆さん見事。
本来のお姿は清楚を絵に描いたような渡辺恭子さんが小池さんのいるピアノに迫り、着席するも椅子だけ持ち出され、
空気椅子のままピアノに両腕をついて居眠りする不格好な姿も目に笑いの文字が刻まれました。下の部分を引き抜かれても宙に浮くだるま落としといったところ。

客席に目を向けるとリードしていたのは子供達の反応。とにかく躊躇することなく面白いと思えば正直に笑い、パフォーマンスの上質ぶりは上階席にも届いていたのか
上から笑いの雨が降り続いていた印象。子供は正直ですし、義理で笑ったり拍手もしたりしないはず。
子供向けプログラムでもなくどちらかといえば大人なプログラムかもしれませんが、上質な舞台は子供の心にもしっかり届くと再度思わせました。
特に、ミステイクワルツのメンバーが男性達とペアになって運ばれる間までが絶妙な仕上がりで笑いの雨がやまず。
布団のようにだらんと被さっている人もいれば、全身をパタンと折り曲げた格好の人もいたりと従来の美しいバレエではあり得ぬ、
重心や引き上げを無視しているであろうおかしなポーズとサポートのオンパレードですから
リフトする側もされる側も双方非常に危険を伴う運搬作業であろうと観察。しかしするすると横切り往復したと思いきや
終いにはワルツメンバーを並ばせて配置させ、しかし最後の最後とどめに顔の向きを変えたりとやる方も観るほうも気が抜けぬスリルな展開に天晴れです。
やがて始まるワルツにおける誰かが堂々と間違えては何時の間にか軌道修正もこなしていくずっこけ展開もいよいよ笑い声が最高潮へ。
そして皆で傘を持って集合するしっとり潤うレインの場面に移り、 そういえば前回の初演時も今回の再演時も両日ともに雨模様で
コンサートは今日も雨だった、な天候でございました。(外はこの頃止んでいたかも笑)
終盤、皆が蝶々となって飛び交う春らしい光景に最後は小池さんが巨大な虫取り網を両手に舞台中央へ走り込み、捕獲に奮闘しているうちに終演。
ピンと張り詰めた緊張感と思わず脱力してしまう笑いの両極端が上手く混ざり合う、お洒落でユーモア一杯な作品です。

3作品とも昨年秋と同じプログラムで、1年未満での随分と早い再演ながらどれもレベルの底上げが感じられ、
音楽もメンデルスゾーン、ドビュッシー、ピアノとオーケストラ混在なショパン、と耳でも楽しく
スタダン色の濃い公演を大満喫。『コンサート』は是非また近年中の再演をお待ちしております。




帰りは少し早い夕食のため新百合ケ丘駅前のお店へ。まずは白ワインで乾杯。



プログラム表紙は蝶々として浮遊するお2人。



春の季節メニュー、桜海老としらすの菜花ジェノベーゼスパゲッティレモンクリームソース。蝶々が飛んできそうな春らしい色合いです。
歯応えのあるパスタに、見本の写真よりもジェノベーゼソースたっぷり。
粘度のあるレモンバターソースをかけるとより味が濃いまろやかさとなり、ワインが進みました。

2 件のコメント:

Aki Ogawa さんのコメント...

楽しい公演でしたね。
綾菜さんや真帆さんの素敵な踊りを感じて頂けて嬉しいです。
今後も、スタダンの意欲的、魅力的なプログラミングに期待したいですね!

管理人 さんのコメント...

Akiさま

大変お待たせいたしました!
スタダンの三作品全て、昨年観たばかりのはずが更に新鮮さが吹き込まれて、見応えありましたよね!
塩谷さんスコッチガールも、東さん牧神の午後も、いつまでも観ていたい姿でした!
来年はオールビンドレープログラムもありますし、夏のドラクエも楽しみです〜。