バレエについての鑑賞記、発見、情報、考えたことなど更新中
2020年よりこちらに引越し、2019年12月末までの分はhttp://endehors.cocolog-nifty.com/blog/に掲載
2021年10月7日木曜日
鬱憤も飛び去る冒険浪漫 東京バレエ団『海賊』9月25日(土)
9月25日(土)、東京バレエ団『海賊』を観て参りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2021/lecorsaire/
※キャスト等はNBSホームページより抜粋
東京バレエ団 「海賊」- プロローグ付 全3幕 -
振付:アンナ=マリー・ホームズ(マリウス・プティパ、コンスタンチン・セルゲイエフに基づく)
音楽:アドルフ・アダン、チェーザレ・プーニ、レオ・ドリーブ、リッカルド・ドリゴ、ペーター・フォン・オルデンブルク
編曲:ケヴィン・ガリエ
装置・衣裳:ルイザ・スピナテッリ
装置・衣裳協力:ミラノ・スカラ座
◆主な配役◆
メドーラ:秋山瑛
コンラッド:宮川新大
アリ:生方隆之介
ギュルナーラ:中川美雪
ランケデム:池本祥真
ビルバント:井福俊太郎
アメイ(ビルバントの恋人):安西くるみ
パシャ:岡崎隼也
パシャの従者:南江祐生
第1幕 賑やかな市場
海賊たち:山田眞央、後藤健太朗、中嶋智哉、安井悠馬、星野司佐、芹澤 創、小泉陽大、山中翔太郎、
海賊の女性たち:涌田美紀、加藤くるみ、上田実歩、中島理子、花形悠月、本村明日香、長岡佑奈、佐藤瑞来
オダリスク:中沢恵理子
政本絵美
平木菜子
第2幕 海賊が潜む洞窟
海賊たち: 海田一成、後藤健太朗、昂師吏功、山下湧吾
海賊の女性たち 涌田美紀、足立真里亜、工 桃子、上田実歩
第3幕 パシャの宮殿
薔薇:二瓶加奈子、金子仁美、涌田美紀、加藤くるみ、足立真里亜、鈴木理央、
花のソリスト: 三雲友里加、髙浦由美子、瓜生遥花、花形悠月、米澤一葉、長岡佑奈
秋山さんは持ち前の高い技術を役の表現と一体化させて駆使し、上品なデザインではあっても決してゴージャスではない衣装を着けていても
内側から放つ煌めきがいたく眩しく、被されたベールをちょこんと上げただけでも市場に宝石がきらっと撒かれたようで初役メドーラとは到底思えぬ会心の出来。
パシャとの掛け合いではややゆったりめの曲で粗が見えやすい振付であるものの、狂い無く淀みないステップを次々と繰り出して音楽と溶け合い
はっとさせられる貴さを示したかと思えばとろりと蕩けてしまいそうな悪戯っ子な愛嬌もあり
双方の備えも申し分ない。パシャでなくても頬が緩まずにいられませんでした。オダリスクの3人もですが、
囚われの身であっても悲観的な様子を見せず、からっとした輝きがをもたらしていた印象です。(このまだまだ不安定な状況下、望ましい解釈かもしれません)
伸び伸びと心を解放させての寝室パ・ド・ドゥでの色めく様子から胸の高鳴りが伝わるスケール感があり
まさかこのあと修羅場が待っているとは知る由も無いわけです。
宮川さんは朗らかで愛想の良いコンラッドで、俺様気質はあまり無い!?お人好しそうなリーダー。
冒頭からして目線から仕草から黒さをちらつかせていた井福さんビルバントの罠にあっさり嵌ってしまうのも頷けましたが笑、
真っ直ぐで胸をすく踊り方は好印象。
井福さんは前回初演鑑賞時も同役で鑑賞し、常日頃からコンラッドの行動で気に食わぬことが多々あったと窺える、リーダーを見るときの視線の怖さが増強。
されど睡眠薬の罠をコンラッドに仕掛け成功するも、メドーラの大胆な対抗におっかなびっくりするところは哀れで呆気ない様子は憎めず。
海賊達の群舞を率いる力強さも前回よりぐっと増し、全編通してやや粗暴なところとションボリ情けない面の両方を上手く描画。
終盤でのいよいよ仲間割れによる絶命では死に際まで声にならぬ執念を叫びにして倒れ、いつも二番手で複雑であっただろう心境が覗く最期でした。
大抜擢の生方さんアリはまだ線が細い気もしたものの、ひたむきで物静かでご主人に忠実そうな(これ大事)ポーズ1つ1つも決まっていて
トロワのヴァリエーションでは軸がぶれぬ大回転を滑らかに披露。主要役3人のバランスも良く、 テクニックの高さや強度は全員共通ながら
優しいコンラッド、品位と可憐な魅力が同居のメドーラ、素直で忠実なアリ、と火花を散らすよりは穏やかで清い空気が流れるトロワが繰り広げられました。
皆見目麗しいオダリスクは各々ぴたりと嵌るヴァリエーションであった点も喜ばしく、特に3つの中では最も単調気味な曲ながら
優しく歌うように軽やかに踊る中沢さんには思わず引き寄せられ、指先脚先から花の香りがふわっと匂い立つような色気にもうっとり。
スラリとした長身ながら四肢を持て余さず、明瞭にポーズを刻んでいく政本さん、仰々しい音楽にも負けぬ存在感や揺るぎない回転で魅せる平木さん、と
個性様々ながらそれぞれの強みを生かす振付、音楽で充実の布陣でした。
市場にて水を押し売り⁈しつつ、壺を手にオダリスク曲で音頭取る、他日はギュルナーラ役で登板の伝田さんにも注目。
市場を知り尽くした古株で、町内会会長でも務め日々取り仕切っていると想像できる、妙に板に付いている熱演でした。
ルイザ・スピナテッリによる衣装の上品で抑えた色彩美、彎曲を効かせた装飾や模様のデザインも1点1点集中して凝視したくなり
中でもオダリスクのブルーと金銀、白を組み合わせたチュチュと頭飾りの爽やかな美は忘れられぬ色合いです。
鬱憤も飛び去るが如く海賊達のパワフルな舞踊も壮快で、観る度にすかっとした気分になる場面の1つ。
よくよく考えてみれば、奴隷市場での人身売買等非人道的な行為が背景にある作品であり
目の敵と捉えたトルコの描写も現代の上演においては如何なものかと意見も飛び交いそうですが
(ただ、イスタンブール国立バレエのトルコ人ダンサーがガラで海賊パドドゥ踊る姿を目にしたこともあり、もう割り切っているのかもしれませんが)
また半ば無理矢理入れた花園にて、パシャに早う夢を見てもらうがために寝つきが誠に早いのもご都合主義にも思えますが
あらゆるバレエの要素が詰まって見所も豊富。わくわくと胸躍る冒険へと旅立つ心持ちとなるのですから不思議なものです。
東京バレエ団が踊るクラシック全幕作品の中では一番好みであると愉しい余韻に浸り帰途につきました。
次回の新作『かぐや姫』、『中国の不思議な役人』、『ドリーム・タイム」トリプル・ビルも楽しみにしております。
1人用舟盛りで私もいざ出航、いただきます。瓶のラベルがオダリスク色で嬉しい。翌月にはお店でのアルコールは解禁か。(無事解禁)
登録:
コメントの投稿 (Atom)
2 件のコメント:
秋山瑛さんのメドーラ、素晴らしかったですね。
瑛さんは、ジゼルも素晴らしかったし、キトリも素晴らしいし、・・・いつの間にか、どんな作品も自分の世界を舞台に創り出すことの出来るトップダンサーに。
瑛さんと真里亜さんが踊るかぐや姫もとても楽しみです。
1人用舟盛り、いいですね。
コロナも落ち着いて来たし、これからお酒の美味しい季節になりますね。
Aki Ogawa
Aki様
こんばんは。お読みいただきありがとうございます。秋山さん、テクニックも表現も物語をしっかり引っ張る安定感にこれまた驚かされました。
海賊はこれといって話の中身が濃いわけではありませんが
危機を乗り越え恋にも目覚めるメドーラの感情の移り変わりを全身で表していて、お見事でした。
かぐや姫、益々楽しみになってきております!
1人舟盛、以前海に近い千葉県内での発表会にて海賊パドドゥを観た日の帰りに駅前の房総直送居酒屋にて食して好んでしまい、
その時は九十九里の地酒を呑みましたが1人用舟盛を用意してくださっていると助かります笑。
はい、そろそろ熱燗も登場するかと思います!
コメントを投稿