2021年10月10日日曜日

1幕仕立ての幻想的なロイヤルボール   小林紀子バレエシアター バレエ・ダブルビル2021『バレエの情景』『シンデレラ・スウィート』 9月26日(日)





9月26日、小林紀子バレエシアター バレエ・ダブルビル2021『バレエの情景』『シンデレラ・スウィート』を観て参りました。
http://www.nkbt-tokyo.com/perform.html


バレエの情景

振付:フレデリック・アシュトン
ステイジド・バイ:小林紀子
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー
美術:アンドレ・ボールペール

真野琴絵   八幡顕光
荒井成也   上月佑馬  冨川直樹  望月一真
廣田有紀  澁可奈子  宮澤芽実  松居聖子
松山美月  濱口千歩  武田麗香  島沙緒梨
長村紗良  中村悠里  武田彩希  飯田穂香


4年前に新国立劇場オペラパレスで開催された公演でも鑑賞。今回は中劇場開催のため、2階席からもコール・ドも1人1人がくっきりとよく見え堪能できた気がいたします。
ストラヴィンスキーによる展開と終わりが見えぬ不思議な曲調のパズルにスポーティーなTシャツ姿の男性陣、クラシック・チュチュの女性陣が嵌め込まれた感あり。
音楽はともかくなぜこうも不協和音な衣装にしたかは謎が深まりますが、ただ観ていくうちに妙な違和感が消え失せていったのは
出演者特に女性コール・ド陣が音楽を自在に全身で表現できていたからこそ。またプリンシパルの真野さんがアシュトン作品にて
特に『シンデレラ』でよく見られる、片腕を腰より下に伸ばし顔は上を向いた決めポーズなアラベスクがクリアな軌跡を描き
腰の捻りや上体を柔軟に操る技術もお手の物。背景装置のヴェネツィアのリアルト橋風のデザインもなかなかユニークで、場面によってはアーチを潜っての登場もあり。
その昔、でもないが英国ロイヤル・バレエ団が1992年の来日公演にて上演していますが、管理人、その時はバヤデールしか観ておらず
アシュトン振付の摩訶不思議なこのクラシック作品への評価はいかほどであったか気になるところです。



シンデレラ・スウィート

振付:アルフレッド・ロドリゲス
改訂振付・演出:小林紀子
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
美術:テレンス・エメリー

シンデレラ:島添亮子
王子と:冨川直樹
道化:上月佑馬
背の高い義姉:澤田展生
背の低い義姉:佐々木淳史
春:濱口千歩
夏:廣田有紀
秋:真野琴絵
冬:澁可奈子
王子の友人:荒井成也  吉瀬智弘  望月一真  小山憲
侍従長:村山亮  杜海
侍従たち:五十嵐耕司  川合十夢  竹下虎志  廣瀬陽  情野詠太  髙野大希
招待客:
宮澤芽実  松居聖子  松山美月  武田麗香  中村悠里  吉原慶子  武田彩希  須田莉那
飯田穂香  中嶋咲妃  横山紗耶
スターズ:島沙緒梨  長村紗良  三浦舞  福島さや香  沖本悠衣   轟木寧々


『シンデレラ』の見せ場を舞踏会に凝縮した1幕仕立ての作品。幕開けから宮殿の大広間が現れ
道化や貴族達が溌剌としたマズルカを披露し、舞踏会の始まりです。今回一部に小林紀子さんが改訂振付演出を行ったとのこと。
上月さんの道化がニコニコとした表情で、軽快な楽しさ増幅の闊達な踊りも場を盛り上げてくださいました。
暫くすると、通常ではシンデレラの眼前に出現する仙女のテーマ曲が流れ、四季の精達のヴァリエーションの開始。(仙女は不在)
つまり、王子や道化、貴族達が見守る宮中での披露となるわけですが、大広間が幻想的な雰囲気に包まれ、また人々が四季のそれぞれの妖精達に対して
驚きも見せればぽわんと見惚れてしまう人もいて宮殿全体の高鳴りが強まって行く流れが見て取れ、違和感皆無でした。
四季の精達が精鋭軍団であったのか全員が職人気質な踊りで示し、濱口さんはふわふわとした浮遊感や春の訪れの喜びを体現され
廣田さんが冗長になりがちな曲調であっても誠に艶めかしく且つ芯の通った風格で魅せる夏は
仮に帰り、体温が37.5度以上に達しても納得してしまうほど火照る心持ちとなったほどです。
『バレエの情景』でプリンシパルを務めた真野さんの秋は、瞬時のポーズの切り替えが巧みで忙しさを感じさせぬどころか全身から楽しさが伝わる余裕っぷり。
澁さんの滑らかで枝木から雪が舞い落ちるような手の語りは銀世界の広がりを思い起こさせる冬で
淡く抑えた紫系の色を合わせたシックな色味チュチュもたいそうお似合いでした。
四季の精達はオペラ型の膝丈衣装で、動く度に包み込むように揺れるさまも宮殿に柔らかく色彩美を添えていた印象です。

シンデレラの登場寸前にスターズ(星の精)達も登場し、水色のすっきりとしたクラシックチュチュ着用で6人の少数構成であっても1人1人から光が零れ、物足りなさは無く
中でも三浦さんが目を惹く華の持ち主で度々観察。実は三浦さん、一昨年千葉県浦安市での発表会にて『くるみ割り人形』2幕金平糖の精で拝見し
巨大なケーキを模した背景にも埋没せぬオーラがあったのは今も覚えており、その後シアター入団と教室のホームページにて掲載されていたため
今回出演していらしたら嬉しいと思いつつ足を運んだところプログラムでお名前そして舞台でもお姿を発見でき喜ばしいばかりです。

そしていよいよシンデレラの登場。小舟或いは動く長椅子?らしき乗り物に乗った島添さんが後方に現れ
ゆったりと歩み出していく姿から全体が細かな金粉が漂う空気と化し、丹念な足運びについ見入ってしまいました。
尚頭飾りはティアラだけで十分であり、頭を覆うネットのような布は不要かとも思いましたが(姫らしさが薄れてしまう気がいたします)
王子と出会い、徐々に打ち解けていく過程や12時の鐘ではっと我に返り帰宅を急ぐ幕切れまで終始丁寧に表現して束の間の舞踏会凝縮場面を見せてくださり
受け取ったオレンジを義姉に渡す(確か渡していたはず、記憶違いでしたら失礼)優しい仕草もいじらしく映りました。

描き方で好印象であったのは義理の姉達。第1幕の家での騒動場面がカットされていますから意地悪な印象は薄れる条件は揃うにしても、とにかく上品な造形。
舞踏会でもハチャメチャな行為はせず、きらきらとした空間や王子の存在に静かにときめいたり
シンデレラの登場では何処かで見覚えありな人物と考えつつも招待客達とそっと見守りに徹したりとエレガントな姉妹。
薄紫のドレスを纏っていた澤田さんはすらりとした容姿で、そのままパラソルさして別荘地を散策していても何らおかしくない優雅な立ち姿。
佐々木さんは赤いドレスが似合う活発な姉で、澤田さん義姉に素直にくっついていく様子が可愛らしい妹でした。
12時の鐘の鳴り響き場面のほか招待客と同時に踊る箇所も豊富ながら舞踏会の和に溶け込む技術、調整力も目を見張る品性のある姉妹でございます。

過去のプログラムからの抜粋によれば、1950年代にスカラ座から依頼を受けたロドリゲスがヒロインに相応しい人材を主役級から探したものの見つからず
しかしコール・ドの中にぴったりなダンサーを見つけ、ファーストキャストにはなれなかったものの2日目に主演し大成功。
ロドリゲスに見出されてまさにシンデレラの物語そのものな抜擢をされたダンサーこそ、のちの大スターで今年逝去したカルラ・フラッチだったそうです。
フラッチがコール・ド経験者であったとは初耳で、こんな逸話があったとは驚きを隠せぬ思いでおります。

小林紀子シアターでの初演の頃の記事も頭の奥に記憶されており、稲村真実さんと中島伸欣さんだったか、パ・ド・ドゥの場面の写真が載っていたかと記憶。
当時から片仮名表記がスイートではなくスウィートである点だけは疑問ではございますが、シンデレラが見た甘い夢、と解釈すればまあ良いか。
ロシアの2人の巨匠の音楽と共に1本はシックな、もう1本は幻想的なクラシック・バレエを味わえたダブルビルでした。




オレンジと星が描かれた甘いお酒で乾杯。この手の缶飲料、これまで購入機会が殆ど無かったが
各社工夫しての綺麗なデザインが並び、眺めるのもまた楽しい。ウォーターの文字通り、色は透明なお酒でございます。


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