2021年6月30日水曜日

12年ぶりの全幕帰還マントでジャン!! 新国立劇場バレエ団『ライモンダ』6月5日(土)〜13日(日)




6月5日(土)〜13日(日)、新国立劇場バレエ団 牧阿佐美版『ライモンダ』を計5回観て参りました。牧版の全幕上演は干支ひと回り、12年ぶりです。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/raymonda/

劇場ホームページには初日の舞台写真が掲載されています。 https://www.nntt.jac.go.jp/ballet-dance/news/detail/77_020354.html

各メディアにも続々記事が掲載されています。是非ご覧ください。
2日目公演レポート。
https://www.sankei.com/article/20210610-7A7FO4XVEZPVPCM5D2CJPSJSCA/

3日目公演レポート。ジャンが天晴れ男前でございます(心臓印)
https://www.lvtimes.net/culture/10311/






大多数であろう、上記その他、既に発信されているプロアマ問わず優れた執筆内容に高い満足を得られた方はここまでありがとうございました。
次回更新予定記事である週末旅券持たず電車1本で伊太利亜周遊2日間記事或いは場繋ぎ短文記事までお待ちいただき、限りある時間を有効にお使いください。
「気力」と「忍耐力」に確固たる自信のある方は以下どうぞ。また、途中で疲れましたら、長さに耐えられず体調が思わしくないとお感じになりましたら
検温して37.5度以下であっても休憩或いは翌日以降に持ち越し、または諦めも推奨いたします。
ただ言いたい放題な表記もばらつきがあり、妄想空想想像をも並べた纏まり欠如の長文新記録感想となってしまい
人口が多い在住区の成人式と同様3分割にすれば良かったかと今となって後悔。




※キャスト詳細はのちほど。記事内容は速報でもない速報と重なる部分もございますが悪しからず。
ライモンダ:米沢唯(5日、13日) 小野絢子(6日) 柴山紗帆(11日) 木村優里(12日)
ジャン・ド・ブリエンヌ:福岡雄大(5日、13日) 奥村康祐(6日) 渡邊峻郁(11日) 井澤駿(12日)
アブデラクマン:中家正博(5日、6日、13日) 速水渉悟(11日、12日)
ドリ伯爵夫人:本島美和 アンドリュー2世王:貝川鐵夫
クレメンス:細田千晶(5日、6日、13日) 廣川みくり(11日、12日)
ヘンリエット:池田理沙子(5日、6日、13日) 五月女遥(11日、12日)
ベランジェ:木下嘉人(5日、6日、13日) 浜崎恵二朗(11日、12日)
ベルナール:速水渉悟(5日、6日、13日) 中島瑞生(11日、12日)



※牧阿佐美版『ライモンダ』は17年前(2004年初演)の新国立バレエ初鑑賞時の作品で、翌年明けの酒井さんと山本さんの『白鳥の湖』が
本腰入れて観に行く決意となりましたがその前の、通い詰め原点とも言える作品です。
また非常に思い入れの強い作品で、十字軍のような過酷行軍では全くないものの夜行バスも初体験であった人生初のバレエ鑑賞遠征(2006年10月大阪公演)、
舞台稽古見学会初当選も(2006年パヴレンコさん/コルスンツェフさん/山本さん)、海外での初全幕鑑賞も(2008年ワシントンD.C.)、
劇場ツアー初体験も(ワシントンD.C.公演時で会場のケネディセンターが土日中心に定期的開催。
予約不要で参加可能でした。日本人参加者は私1人でしたが多国籍な7、8人程度のグループで和気藹々。参加日がライモンダ初日で、夢の場の背景がある状態でした)
海上保安業務で使用しそうないたく大きな双眼鏡をお持ちのお客様がこれまでに1回だけ隣席にいらしたのも牧版『ライモンダ』(2006年パヴレンコさん日)。
つまり、我が鑑賞人生における新たな道開き及び珍体験に関わっている記念碑な作品であり
思い入れを強くしないほうが困難であり、従って今回はたいそう長うございます。罰としてアブデラクマンに攫われぬよう
(我が容姿を思えばそんな心配は一切要りませんが。ジャンも助けに来ません、これが現実。妄想だけは日課と化しておりますが)気をつけて過ごして参ります。



米沢さんは清麗なヒロインで、濁りが一滴もない水流を思わせる純度の高さ、滑らかさが身体の隅々まで行き渡り艶っぽさにも感激。
初日のみ花拾いがほんの少し手間取った感はありながらも(体勢を床に近づけたのちにすぐさま爪先立ちですからこなすのは誰でも困難)
5つのヴァリエーション全てが会心の仕上がり。僅かな粗も見つからぬ澄み切った美しさはそのままに
踊りそのものを通じて内面を表し自在に体現していらっしゃいました。
中でも1幕ピチカートでのまさに音楽と戯れながら爪先で弦を丹念弾くようなポワント運びや、2幕における回転からの素早い移動もいたく涼やか。
また同じく2幕で友人達とアブデラクマンから逃げる交互なユニゾン(言い方違ったら失礼)でも不安な心を小刻みに震わすように身体に行き届かせ
危機一髪な場面且つ大急ぎで通り過ぎて行く箇所においても職人芸なステップを堪能した思いです。

福岡さんは武勲の誉れ高い騎士で、勇ましさと品格を兼備。今回のジャンの中ではトータルの要素が一番バランス良く備え、堂々たる身のこなしや技術とサポート双方の安定感、と
全幕主役としては初挑戦作品ながら(2018年の日本バレエ協会公演ではアブデラクマンの経験はあり)ファーストキャストに相応しい舞台を届けてくださいました。
思えば米沢さんと福岡さんが全幕で組むのは2013年の『ドン・キホーテ』『くるみ割り人形』以来8年ぶり。
火花散らすテクニック合戦であった当時に比較すると落ち着きや優雅さが加わった印象で
序盤はいたくさっぱりした雰囲気かと思いきや夢の場でコール・ドに導かれ光の道を歩む箇所での視線の交わし方にて実に愛情深い様子も明示。
『ドン・キホーテ』のような超絶技巧満載ではない、宮廷を舞台にした作品においても熟練され卓越した踊りと落ち着いたパートナーシップで魅せてくださったペアでした。

小野さんはヒロインが階段を上って変化していく過程の表現は『眠れる森の美女』を観ていても頭1つ抜けた上手さであると以前から感じておりましたが
全幕は初役『ライモンダ』タイトルロールでも圧巻で、あどけない表情で花を持っての心浮き立ちながらの登場から頬を緩ませ
3幕では拝み倒したい思いに駆られるヴァリエーションを披露。静けさに包まれた場内の全空気を支配し、
物音1つも許されぬ集中度の高い客席の緊張感はそう滅多に居合わせぬ異様な雰囲気であったほどです。
随分前には経験した記憶が巡り、そうでした2006年のマリインスキー来日での「ロパートキナのすべて」におけるダイヤモンドのパ・ド・ドゥ。
『パキータ』グラン・パ、『ライモンダ』グラン・パ、そして『ジュエルズ』より「ダイヤモンド」の
3作品ロパートキナ主演によるコール・ド従えて一挙上演され、今思えば絶え間なく昇華しそうな恐るべきプログラムでございますが
中でも「ダイヤモンド」パ・ド・ドゥでの、この世のものとは思えぬ異次元、至高の芸術に触れている観客の視線の集中が凝縮した空気が漂っていた当時を思い起こさせました。
ピアノの音色を中心とした哀愁感ある曲調に沿うように静かに刻むパ・ド・ブレやクールに向けた視線、決意が込められたパッセの前進と言い寸分の隙も無し。
神様仏様小野絢子様、なる毅然とした女王の風格と神々しさを放つ3幕でした。

小野さんは今回の主演者8名の中ではただ1人牧版『ライモンダ』全幕経験者で2008年のワシントンD.C.公演(入団から約半年で夢の場ヴァリエーションにも抜擢)、
同年新潟公演、2009年本拠地公演、と出演豊富。ちなみに2006年公演は研修生として同期の仲間と共に観にいらしていたのは覚えております。
夢の場ヴァリエーションやコール・ド、グラン・パ・クラシック、1幕グラン・ワルツ、友人、と民族舞踊以外の役柄は制覇に近く
今回のチラシ裏面夢の場コール・ド一番左端にいるのが2009年公演時の小野さんと思われます。

奥村さんは夢の場が大変印象に残り、肖像画から出てくるところからロマンティックな風情十二分。
ほんのり寂しそうな表情で、ジャンもまた自らも求めて夢に現れ、ライモンダに会いたくて仕方なかった心情がすぐさま伝わりました。
当初はジャンが夢見がち過ぎてまた騎士にしては線が弱いなんぞ失礼な思い込みもしてしまったのも束の間、
あとにも述べるかもしれませんが、ふにゃふにゃとした蛇行運転を想起させる骨組みが無いに近くカウントが取りにくい夢の場のパ・ド・ドゥの音楽であっても
ライモンダと共に海の中を遊泳するかの如く気持ち良さそうにサポートしつつ踊り続けるのはよくよく考えれば至難の技で、しかもリフトを繰り返したりと多忙振付。
この場面はライモンダを神秘的な水晶のように輝かせ尽くしていた点も含め奥村さんの魅力が一番光り、4人の中でも幻想性を最も描出していたと思わせました。

小野さんと奥村さんは全幕で組むのは初で、事前の対談や毎日新聞でも大きく取り上げられたりと話題沸騰。
毎日新聞では奥村さんが戦争が背景にある作品である点を踏まえた役柄の掘り下げが腑に落ちる内容で
私も似たことは以前から考えてはいたものの整理し切れていない点もあり、鑑賞の大きな手助けとなりました。
対談映像では見どころの1つとして、ジャンが絵画から出てくる箇所はまさに王子、そしてライモンダが攫われそうになる危機一髪な状況で
ジャンが帰還する場面を小野さんが目をぱちくりさせながら強調。
凛とした表情から切り替わり、胸がキュンとするからお見逃し無く、と乙女な顔つきでカメラ目線で訴えるほどでした。
小野さんが絵画からのジャン登場に触れれば奥村さんが手でパカーンと観音開きを再現なさったり、
帰還の話となればマントを羽織る仕草をなさったりとフレッシュ且つ早く観てみたいペアであると期待を持たせる対談で
本番の舞台からは自立心の強い姫と一見お人好しそうだが見た目に反してやるときはやる意外と⁉頼もしい騎士なるペアに映った次第です。

※金曜組が長くなりそうなため先に翌日12日(土)組から
木村さんは当初体力面が不安でしたが蓋を開けてみれば心配無用で、紗幕越しで上階席から双眼鏡無しであってもくっきりと姿が見え
序盤から大きな百合の花が咲いたかのような姿で魅了。そして驚くほどに落ち着きのある丁寧な踊り方で最後まで舞台を進めていた印象です。
またメイクが随分と薄くなり、生来の華ある可愛らしいお顔立ちが生かされていた点も嬉しい収穫でした。
アブデラクマンに対しての拒絶は感情を閉ざしたかと思えば興味も示したり、分かりやすい流れを作って心情の大きな揺れを表現。
のちにジャンが救出に来ると把握していても手に汗を握る緊迫する展開を広げていっていた印象です。

オペラパレスでの有観客公演は実に久々復帰となった井澤さんは、夢の場がとても安定したパ・ド・ドゥで、
先にも述べたようにヴァイオリンソロを中心とした曲調は頗る美しいがふにゃふにゃした旋律でタイミングが掴みにくい振付ながら破綻が無かったのはお見事。
温厚に見守っている様子も好ましく、木村さんと呼吸がよく合い丹念に紡ぎ上げる方向性もぴたりと一致していたのでしょう。
2人で終始大きな絵を描くように舞台を彩っていました。思えばこのパ・ド・ドゥはいつぞやのカウントダウン東急ジルベスターコンサートにて
ザハロワとロヂキンが披露していたぐらいですから、男性もサポート要員のみならず見せ場があり見栄えもして案外好評な振付であるのかもしれません。
(その代わり、マントは無いがまあ仕方ない)

柴山さんはかっちりとしたクラシックの技術の持ち主で、決して華やかタイプではないからこそ
超絶技巧も無く勢いでは誤魔化せず魅せ方が難しい5つのヴァリエーションを始め踊りの連鎖なるライモンダは適役と期待を寄せておりましたが
どの場面を切り取っても職人気質な踊りが嵌り好演。1幕は緊張が隠せない様子でしたが折り目正しさの中から
微細な色分けを見せつつ、段階を経て成熟した女性へと変貌していく過程を体現していました。
恋に恋する乙女な1幕登場から、帰りを待ち侘び寂しくも徐々に希望を見出すように踊っていたヴェールのソロも目に届き、
最後肩に掛けるポーズがインタビューにもあった「ジャンに抱きしめられている」絵がぱっと浮かび
まもなく肖像画からの登場約2分前に迫っていながら管理人ニンマリです笑。
4ライモンダの中では最も深窓の姫君なる雰囲気を備え、されどか弱いわけではない芯はしっかりと持つ奥ゆかしさから、守ってあげたいと思わずにいられぬ姫。
上部で紹介した3日目公演レポート写真にもあるように、アブデラクマンからの誘惑にも断れずきっぱり拒絶できず戸惑いを隠せぬ様子で且つ驚かされたのは
速水さんとの身体のラインの調和がいたく美しく造形されていた点。音楽も含めドラマが重々しく動く場面においても見え方立ち方を心得た姿に唸った次第です。

※更に長く続きます。暑さも増して参りましたので水分補給及び小休止をどうぞ。
渡邊さんは間違い無く似合うであろうと妄想し続けていた甲冑を模した衣装が最初から絵になっていて嬉しい驚きを覚え、プロローグから恍惚と魅了。
立ち姿からして最初から王子ではなく、騎士でございました。紗幕越しでやや見えづらいそして分かりづらい(後にも触れますが)
出征場面でもライモンダの目をぐっと見据えてから真剣な眼差しで頷き、勝利しての帰還と結婚を約束する声がはっきりと聞こえてきそうであったほどです。
柴山さんライモンダからは待ち侘びている台詞が自然と沸いて響いていた気がいたし、
あんなにも力強い真剣な瞳で約束されたら、そりゃ姫は信じて待つしかございません。

肖像画からの登場での佇まいがまあ凛として美しく肩から膝下にかけての線もスラリ。(そして全員に当て嵌まるが誰1人としてお饅頭な騎士の肖像画に似ていない笑)
ライモンダが眠る椅子の周りで踊る、下手すればふわりと舞う薔薇の精にもなりかねない箇所も皆様感情を込めつつきっちりと踊り切っていましたが
語りかけるような目線の送り方と言いガラス細工を扱うようにそっと触れるような手の差し伸べ方と言い、されど雄々しさは残っている点も含め、眼福でございました。
パ・ド・ドゥはちょいとぎこちなく2人揃ってなかなか緊張が解けず、ひやりとする箇所があったのは否めませんでしたが、聴けば聴くほど踊るのが難解そうな
ふにゃふにゃした(グラズノフよ、すまぬ)タイミングが掴みづらい曲調でしかもパ・ド・ドゥですから難易度が相当高いのでしょう。再演に期待です。
今は鑑賞中の声の発出は極力回避が望ましいものの思わずどよめきそうになったのは3幕でのコーダにおける連続跳躍で
品良くまとめてふわっと重力を感じさせぬ印象が強い渡邊さんが、全身から強気なドヤ顔を体現していたく勇ましく逞しい質感であったこと。
戦地から帰還した上に、婚約者を巡る争いにも勝利をおさめた騎士として臨む婚礼ですから、寧ろこの場に相応しいと納得な姿でした。

さて、初台ではご無沙汰有観客公演でもやります、髪型観察。この度も丸、でございます。『コッペリア』と同様にやや明るめの色合いでしたが
変に明るくなり過ぎぬ自然な色味で、また中央分けであっても前回2009年公演に名古屋よりゲスト出演された碓氷さんのようなぺったりにはならず
(碓氷さん、ホセのときは自然な整え方で良かったのだが)前髪の膨らみも程よく残したスタイリングも好印象でした。

柴山さん渡邊さんは『シンデレラ』『ラ・バヤデール』に続いてペアを組み、2作品ともそれぞれ好印象を持ち
感情が一気に昂ぶりながら油彩画のように濃密に交わって昇華する組み合わせでは決してないながら
『ライモンダ』にはとりわけぴたりと嵌る雰囲気であったと思っております。
淑やかで奥ゆかしい聡明な深窓の姫君と、色事には一切関心を寄せず暇さえあれば武芸の訓練や勉学に励んでいたであろう愚直騎士が
少しずつ距離を縮めて徐々に睦まじい関係を築いていったと思わせる、共に古式ゆかしい姫と騎士でございました。このお二方、日本の時代劇でも観たい欲を刺激します。

ハイライト場面の1つで私個人としては最たる楽しみ場面であるのが帰還と決闘。「日によっては」黄色い声援を送りたくなるから云々ではなく、(それもちょいとあるが)
私の初新国立バレエ鑑賞であった『ライモンダ』はザハロワさんとウヴァーロフさん主演の休日公演でしたがご記憶にある方もいらっしゃるでしょう。
ザハロワさんがマントを踏んでしまい、しかしザハロワさんは暫く気づかず、ウヴァーロフさんが振り向きつつ引っ張りながら対応していた、あの日です。
4階最後列でもはっきりと様子が窺えましたから、舞台上の出演者や舞台近くの席ではさぞヒヤヒヤとなさっていたことでしょう。
このハプニングにより決闘の緊張感がだいぶ薄れてしまい、また剣の素材はボリショイと違って鉄ではないため
鋭いとは言い難いカツカツとした音が響くため、臨場感ある決闘になりづらかったのです。
また『ロミオとジュリエット』や『三銃士』より随分と前の時代ですから叩き割るに近い形状、重さの剣であり、大移動しながらの俊敏な争いにはなりづらいとも言えます。
ただ中には、好条件ではなくても上手な方もいらっしゃるかもしれぬと後日情報センターにて2004年初演4キャスト分の
決闘部分だけを連続で鑑賞したところ(何のオタクや笑)勢いの付け方や躍動感などスティーフェルさんとガリムーリンさん対決に軍配であった印象です。

それからライモンダがまさに攫われそうになるあわやのときの、ファンファーレで帰還の瞬間はジャンの最大の見せ場でしょう。
「マントでジャン!」、これがジャンの全ての決定打かと思っております。
ジャンのジャーン!な到着場面も版によって様々で、ボリショイは改訂前は横から舞台前方に出てきて手を上げて立ちはだかり援軍も大勢。改訂後は変更が生じた可能性あり。
ヌレエフ版は集団の中からいつの間にか登場だったか。マリインスキーはアブデラクマンに抱き上げられたライモンダをジャンが力ずくで奪い返す行動に踏み切り
攫われるときのみならず救出も合わせてダブルでお姫さま抱っこ、これはこれで憧れるかもしれん。(但し今回ならば金曜日のジャン限定、妄想が止まらん笑)
新国立牧版の場合は舞台後方、階段上の上手側から光沢を帯びて床を引きずるくらいに長いマントと剣を装着して颯爽と登場し
照明の妙技で煌々とスポットがあたるこれ以上にない華々しい帰還。つまりはこの演出に似つかわしい容姿も不可欠で、絵になるにはハードル高しでございます。

話をもどしまして、2021年、4キャスト見比べたところ喜ばしいことに全キャスト決闘時の腕が冴えていたのは共通。
アクション映画の段取り確認状態になっている人はおらず、全キャストそれぞれ個性も出しつつ見応えある帰還と決闘となっていました。
福岡さんは背が大きい方ではない身体の条件を忘れさせるほど立ち回りが豪快で力強さも抜きんでいて、上背がありガタイも良い中家さんに勝てるのも納得な展開。
初日のみ、帰還してライモンダを抱き寄せた途端に目も合わせずすかさず安全な場所に避難させてしまっていた点だけ気にかかりましたが
姫の安全最優先で取った行動と推察。最終日は視線を交わしてから避難誘導へ。
奥村さんは騎士のイメージからは一番遠かったはずが意外や意外、対峙した姿から堂々たるもので
事前対談映像にて一押しどころではなく激押しであった小野さんの太鼓判を思い起こさせ、立ち回りも素早く、勢いがありました。

有事でも穏便対応を好みそうと想像していた井澤さんは、立ちはだかり方がいたく余裕ある態度。
特別怖い表情を見せるわけでもないながら存在感とプライドを滲ませた圧力をかけ、既に半分勝利を確約している予感すら募らせました。
剣の差し方がもう少し後ろ側にあると尚姿形が決まった気もいたしますが、ずしっと迫る絵になっていたのは確かです。

渡邊さんは刃の如き鋭利な眼で猛然と立ち向かい、城への帰還であったためどうにか抑えていたでしょうが
アブデラクマンを即座に叩き潰したい衝動に駆られていたのは明らかであろう、目に殺意と憎悪の炎がめらめらと燃え盛る
まさに戦場しかも最前線の激戦地を統率し生き抜いて戻ったばかりであると想像。
何と言っても我が夢であったマントに剣のお姿を拝見でき、ああ、幸せの一言では尽くせぬひとときでございました。
想像はある程度しておりましたが、鋭い眼差しを含む顔つきに肩からすっと伸びるラインがマントと調和し、
差した剣もお飾りではなく使い込んでいると思わせるしっくり具合でまさに騎士。
マントの裾が長いために動きづらく、正式な決闘前の剣を手にしての争いから外してしまうために装着時間は実に短く
その約15秒を凝視するために今月は生きて参りましたので(言い過ぎか笑)目に心に深く刻んで来た次第です。
緊迫状況で僅かな時間ながら、駆け寄ってきたライモンダの目をまずはじっと見つめて頷き、安心させていた点も二重丸。そりゃ姫も信じて委ねるしかありません。
驚愕に拍車をかけたのは手袋投げで、他の方々が「投げていた」に対し、叩きつけていたこと。
しかもやや離れた場所に立つアブさんの足元に恐ろしい形相でバシッと叩きつけていましたから響く音も強力で
福岡さんの1公演とは同じ席から鑑賞していたところ床に落ちるまでの速度、音量が全然違いました。(私は何の分析をしに初台へ通っていたんだ笑)
見間違いかもしれないが、剣を交えている最中に顎でもアブさんを挑発し、双方益々闘争心に火がついた様子で、ライモンダは寿命が縮む思いであったでしょう。

ごく自然に映った行動が、倒して勝利した後に駆け寄ってきたライモンダに対してまだ目から闘争心の炎が残りかけていてギラついていた上に抱き方が控え目であったこと。
以前ハーレクイン(ときめきたいわけではなく、水戸黄門と同じく話が定番で必ず幸福な結末であるため読後の気持ち良さに目覚め、頻繁に読んでおりました)
ヒストリカルシリーズかその類の書籍でも読みましたが、返り血や砂埃を浴びている場合が多く、愛する女性をそう簡単には抱き寄せられないのが正直な事情のようで
更には試合ではなく生死を賭けた決闘となればそう簡単には心の切り替えもできず、戦闘体勢が消えるにはだいぶ時間がかかるもよう。
すぐさまにこやかな抱き止めが本来の理想かもしれませんが、リアルな描写としては金曜日ペアに合点であったと考察いたします。
剣を持っても強そうには、戦帰りの騎士には見えないかもしれぬ不安もほんの少しはありましたが
それどころか戦地での獅子奮迅な活躍が目に見える立ち向かい方で、誠に失礼いたしました。
決闘の地が本日ばかりは時代も国も変わって巌流島になるかと危惧しておりましたが中世フランスの城内で
そして帰還時の音楽が管楽器使用ファンファーレは共通でも必殺仕事人ではなくグラズノフで一安心笑。
和洋どちらであれ、友人の名言を拝借し、渡邊さんは武士にも騎士にもなれる稀なタイプでしょう。6月はマント姿でしたが7月は武士ではなく漁師ですが髷姿を拝みに参ります。

そういえば4年前の『ジゼル』にて、一見細身のアルブレヒトではあっても強面で体格も立派な中家さんハンスの肩が捥げる寸前まで押しやったりと豹変ぶりに仰天。
一歩間違えれば掴み合いの、流血騒ぎにも発展したであろう真剣勝負でした。
キャピトル・バレエ団時代に踊られた『海賊』スルタン映像を目にするといつかはアブデラクマンも拝見できる日の到来も切願しており
初めてダイジェスト動画で見た際に強面な風貌や全身から漂う恐怖感、奴隷の娘であれ海賊であれ容赦なく暴力で押さえつける獰猛さは
当時20代前半とは到底信じ難く、荒々しくも危うい色気や風格を備えていて嫌味ある役柄には決して映っていない点にも顎が外れそうな衝撃を受けました。
しかし渡邊さんのアブさんならば、ライモンダは喜んでサラセンに嫁いでしまいそうで、最後はグラン・パ・サラセンだ。
またジャンにしてもランプの精ジーンにしても、忠誠を誓って主君に尽くしお仕えする役が似合うとも結論。
ちょうど公演期間中に開催されたG7コーンウォールサミットの様子やコーンウォールの荒涼とした海辺が映像で出るたび
オペラではなく映画『トリスタンとイゾルデ』を思い出し、仕える王からも信頼される誉れ高く美しい戦士ながら王妃との関係から生じる苦悩が絶えぬトリスタンも
さぞ絵になり役としても嵌るであろうと妄想が巡っておりました。どなたか全幕バレエ化を。この関連話はまた別途綴るかもしれません。

決闘全般の描き方として牧版で良いと思えるのが双方が極力平等な条件になるような配慮。
版によってはジャンだけ兜を装着していて頭部の安全性が有利であったり、忍ばせていた短剣で止めを刺す狡い勝利もあったりと納得がいかぬ描き方があるのが実情です。
しかし牧版ではアブさんのノースリーブは目を瞑りますが、双方顔を晒した状態で武器も最後まで1本勝負であり、またジャンの援軍は無しのおひとり様帰還。
(前日の誕生会にはいたアンドリュー2世王は遠征していない?この版では分からず)
ホームに帰還しても声援の大きさは圧倒的にサラセン側が優勢で、実質アウェーの中での決闘だったに違いありません。
それまで敬意を払う態度を見せてきたサラセン側も、王の命がかかった決闘となれば本能がまさって、ジャンに対して罵詈雑言を浴びせるのも無理はないはずですし
妖精のお膳立ても無し。そうなればこの状況からするとジャンは仮に危機に瀕したときも1人で撃破せねばならず
心身共に相当打たれ強くなければ勝利が極めて困難ともいえるかもしれません。牧版ジャン、天晴れです。

ところで、投げた手袋はともかく、手元に残った片方の手袋の使い道はいかに。片方のみ再度注文とは考えにくく、
ただせっかく素材も丈夫そうであり肘手前まで覆われている形ですから、ここも友人の表現を拝借し、その後は鍋つかみとして使用か。調理場でも役立ちそうです。

このままでは帰還と決闘生中継で終わりそうなため、次行きます。
中家さんのアブデラクマンは貫禄、豪胆な凄み、風格を備えた王で、筋骨隆々で上背もある体格もまた近寄り難さを一層押し出し
物語の展開を重厚に動かしてくださいました。プロローグにて、紗幕越しでのアブデラクマンは見た、なる状況でも筋肉が山の稜線如くくっきり。
想定範囲ではありながらこりゃどのジャンも勝ち目はないと思わせるインパクト大でした。
(後に述べますが中家アブさんと対決のジャンのお2人、意外と!?強かった)
ライモンダに宝飾品を渡すときは掴み方に粗暴な面を見せて強引な印象も持たせましたが
2幕登場では同様に威厳を見せつけたかと思えばライモンダのソロの最中に立ち上がって見つめ、手を伸ばした姿は恋する男性の顔となり
このときばかりは立場も忘れて恋い焦がれる女性しか目に入っていない状態だったのでしょう。
ライモンダは久々に純粋な感情を引き出してくれた存在だったと見受けます。

新鮮であったのは速水さんで、もっとチャラチャラした(失礼)王になるかと思いきや、誘拐や人攫いではなくナンパでライモンダ強奪かと思いきや(失礼)純情一直線。
懸命に見つめては誠心誠意、心の底から懇願する求愛で、振り向いてくれないライモンダに対し悲しそうな表情すら募らせていたほどです。
(勝手な欲を申すならば、口説きが得意なチャラ王と、真面目を超越した愚直騎士の争いの構図も金曜日には見てみたかったが笑)
1点注文を付けるならば、中家さんと異なり頭飾りを極力排したものであったため権力財力も手中にある王ではなく海賊の頭領に見えてしまった点。
ただでさえ衣装も野性味はあれどノースリーブは簡素な気がしてならぬデザインで、せめて1幕と2幕でお色直しがあり
豪奢なお召し物姿もあれば王らしさが遥かに前面に出たに違いありません。
この役は従来ベテランが務める印象が濃く、若手ダンサーが踊る姿は実に珍しく鮮烈。思えばジャンもアブデラクマンも明確な年齢設定はありませんから
いくらでも描き方や対立構図が生まれるも当然で、若きジャンと若くして王に即位したアブさんのぶつかり合いもあれば
大人の成熟した余裕あるジャンとまだ青さが残るアブさんも大いにあり。ベテラン一辺倒な印象が先行していたところを速水さんは大胆に斬り込んでくださった気がいたします。
そしてお2人とも魅力ある敵役でしたから出番や見せ場が少ない演出も惜しまれ
婚約者がいる身であるライモンダであっても、中家さんアブデラクマンに対しては少々強引ではあっても力強い大人の色気にくらりとしかけたでしょうし
速水さんアブデラクマンの、保守的であろうジャンには無い開放的で情熱を懸命に曝け出す面に心が傾きかけそうになるのも頷けました。
それにしても宮廷へ偵察及び求愛に何度か訪れていたにも拘わらずジャンの帰還日時までは把握できず
鉢合わせになったのは運命の悪戯であったのか、アブさんは哀れとしか思えません。そして王の急死によりサラセンにおける後継者争い問題の浮上も案じずにいられず。

ドリ伯爵夫人の本島さんは踊る場面が僅かであったのは心残りですが、師匠であり初演時に同役を務めた豊川美恵子さんを思い出す艶と格で城の催しを牽引。
長い裾捌きや指先から顎の角度まで行き渡った美意識もまた舞台を引き締め、ライモンダがいよいよ攫われそうになるとただ一人サラセン人に訴える勇敢な一面も。
(他の版でも思うが、なぜ誰も姫を助けに行かないのか不思議だが)
モジャモジャ鬘に不自然さがない、貝川さんによるアンドリュー2世の大らかな仕切りっぷりにも毎回安堵。
この王様が不在であったら、2幕終盤は荒事に塗れ収拾がつかぬ修羅場と化していたはずです。

珍しいまた新鮮な組み合わせであったのはクレメンスとヘンリエット。細田さん池田さん組も、五月女さん廣川さん組も体格や踊りの質は全く違えど
呼吸が合っている様子を眺めるうちに綺麗な調和を見せていた気がいたします。そして細田さんのたおやかな優雅さ、透明感には何度心が洗われたことか。
全日あちこちで働きづめであった速水さんベルナールのにっこりと晴れ晴れとした踊りも彩りを添え
時々スプリンクラーな回転でなかなか収まり切らなかったのはご愛嬌。 嘗ては孫悟空と呼ばれた頭飾り(初演の頃だったか)に沿い整っているメッシュも健在でした笑。

ここまで来て書くまでもありませんが、歴史そして舞踊絵巻な作品で主役からコール・ドまで男女問わず踊りの連鎖なる振付、
更にはクラシックと民族舞踊双方、或いは混在バージョンまでもを踊り切る技術が不可欠でありながら総力を挙げ高いレベルの舞台を連日届けてくださいました。
中でも3幕グラン・パ・クラシックの壮麗な仕上がりは絶品で、加えて男性陣の平均身長が180cmに到達したのか、見栄えも力強さも一気に押し上げられた光景でした。
コーダでの最後の一斉リフトのテンポが速く、瞬時に高所へ移動なる鬼振付であっても5回とも危うい人がおらず、喝采。
そしてその勢いのまま、ギャロップだよ全員集合!の流れとなり、版によってはギャロップ無しであったり、
チャルダシュとマズルカのみ出演などまちまちですが牧版では主役からグランパ、チャルダシュ、マズルカまで総出演。
途中フォーメーションを大きく組み変えての交差から縦横揃えての移動など全員が呼吸合わせての締まった踊りが出来なければ大失敗に終わる場面ですが、連日壮観。
私は2018年の頃からぼやいているのだが、NHKバレエの饗宴で披露すべき幕でございます。
ヴァリエーションは躍動感溢れる池田さん、上体も豊かに語る飯野さんお2人とも素敵で壮麗なグランパの直後でも引けをとらぬ晴れやかさでした。
チャルダシュのソリストも皆古株ながら初顔合わせなペアで、福田紘也さんの腰の深い入れ方や
今回キャラクターダンスで生き生きと大活躍な寺田さんの思い切りの良さがぴたりと結合。
奥田さんの見せる角度を入念に計算しているような巧さとこの役にしては幾分のんびりした雰囲気がかえって風変わりな味として引き立っていた小柴さん組も
眺めていて面白みあるペアでした。コール・ドのポーズを揃えつつもメリハリに富んだ踊り方や盛り上がりにつれての熱帯びも血が騒ぐ出来栄えで
優雅さの中にしなやかな強さ美しさを秘めたマズルカは特に手の表情が豊かでじっと見入ってしまいました。

最大の盛り上がりの曲調にてUの字をジグザグに描きながら並びを紡いでいく箇所が教習所のコースかと見紛うのを始めこれといった振付の特徴が見つからぬ第1幕ワルツも
柔らかな襞を重ねていくような繊細さが光るファンタジアも、12年が経った今回久々に鑑賞でき、嬉しさはひとしおです。
サラセン陣営も弾け方と王に仕える品が融和した具合もちょうど良く、スペインは上品過ぎた感もありましたが、サラセントリオ男女の勢いは頗る良く
妖艶さを見せつける渡辺与布さんや朝枝さんの魅せ方も芳醇な色気があり脳裏に焼き付いております。
礼を尽くして余興を見せていたサラセン陣営も、王が愛した姫を争奪するべく本来の目的を露わにしていく終盤は
熱が一気に上昇する踊り狂いでライモンダを取り囲んで眼前封鎖。まあこれならなかなか助けにも行けないか。
それとも、プログラムをよくよく読むと宴の客人の中にアブデラクマンがいると書かれており、決して突撃訪問や飛び込み営業で来たわけではなく
ドリ伯爵夫人は認知してはいたがリスト入りするまでの危険人物とは思っていなかったのか、謎が深まります。
もう1つ謎と言えば、ジャンがライモンダに送った手紙。文字以外に絵らしき物が描かれ、気になっております。中世の手紙事情を調べるしかなさそうですがまさか絵手紙か?
2日目のジャンならば、異国で目にした珍しい動植物を描いて送る姿が容易に浮かびます。

衣装や装置の美しさも特筆に値し、きらりと輝く上品な繊細で目が何度も潤みそうになる色彩美です。
女性のチュチュの胸元が平たいカッティングであるのも嬉しく中世のデザインが盛り込まれ
刺繍が目を見張る凝った細かさで間近でもっと観察したくなり、いつの日か展示会の開催を願います。
ライモンダの頭飾りの耳上が隠れる形状で細かく編まれているような作りにも見入ってしまい
女性陣の腕カバーは初演時は事務仕事のカバーにも見えてしまったものの再演以降は慎ましい品を引き立てるデザインに思えてきており、
ファンタジアのエメラルドグリーンの長めのチュチュはふわっと靡くさままでが優美です。
地球が反転してもあり得ぬ夢でその前に容貌や体型を何とかせいとのお声が入るのは目に見えておりますが
もし世界各地あらゆるバレエの衣装の中から1着だけ選んで着用させてもらえるならば、第2幕のライモンダの青と金、白地の衣装を選びたいと思っており
冒頭で述べた内容と重複いたしますが、誰も攫いにも助けにも来ないでしょうが夢の中でも良いので許されるなら着てみたいものです。
ちなみに管理人の財布の色はこの衣装に似た配色でございます。

紗幕効果も忘れられず。実在したジャン・ド・ブリエンヌが第5回十字軍遠征した13世紀からは大分過ぎた1400年代に描かれたとされる
ベリー公のいとも豪華なる時祷書5月「若葉狩り」ですが、緻密な写本の色合いとそこからイメージを膨らませた衣装舞台美術のデザインから
写本を1枚1枚捲っているかのようなロマンチックな想いに駆られ、いつもなら時代考証に対して中途半端に口煩い捻くれ者な私も気にならず。
さすがに『眠れる森の美女』で使用されるような貴族衣装や、精巧な全身板鎧甲冑が次々と登場すれば時代の先取りにも程があると文字で斬らせてもらいますが笑(ヒュッべ版のようなロココ時代に設定など大幅改訂版は除く)
牧版の場合は写実性を抑えて具体的な時期を出し過ぎぬ、中世十字軍の時代を大枠で捉えてのデザインが誠に魅力あるプロダクションに繋がっていると思えるのです。

また照明の変化の妙も欠かせず、第1幕のワルツ開始時には少しずつ翳り、再び明るさを増して行く流れに目を奪われ、肖像画からの出入り時のジャンが歩く道を照らす光も美しや。
グラン・パ・クラシックでのアダージオに入る部分で全体が翳り、一見星座早見表な背景のモザイク画に星が瞬くように光が灯される箇所も唸らせる演出です。
決闘が終わり爽やかな色と光が広がりぱっと照らしてのジャン勝利祝福も、スケールが浮き彫りとなって3幕結婚式へと繋がる幕切れです。

そして挙げずにはいられません、グラズノフの音楽。ソ連崩壊前からチャイコフスキー三大バレエよりも好みな音楽と思っており
(当時は語り合う友もいなかったが)全幕通して5回聴けたのはこの上ない喜びです。面と向かって或いは執筆物でチャイコフスキーに比較すると
抑揚に欠けるだのつまらないだの後ろ向きな評価を度々見聞きし、確かにチャイコフスキーは偉大ではあるが
どこもかしこもチャイコフスキー賛美に溢れるのも如何なものかと昔から捻くれて考えていた管理人でございます。
三大バレエ作品や音楽の魅力も身に沁みてきたのがソ連時代より虜となっていたボリショイくるみを除けばいかんせんここ17年ぐらいの間でありごく最近。
恥ずかしいながら『ライモンダ』や『シンデレラ』、『ロメオとジュリエット』よりもずっと遅かったのです。
グラズノフに話を戻しますが、星屑が散りばめられたような旋律からスペインやチャルダシュは他の作品以上に地鳴りがしそうな迫力もあり
また2幕序奏や3幕グラン・パ・クラシックにおける渋みある格調高さを帯びた曲調にも毎度聴き惚れております。
1幕の幕開けは吟遊詩人達が楽器を奏でながら戯れる光景が目に見えるような、中世の宮廷へとゆっくりと案内された心持ちになる曲です。
この曲、グリゴローヴィヂ版では改訂後にカットされてしまい寂しうございます。これがあるからこそ中世の浪漫に浸り始める気分になれるのだが。
1幕前半の、ピチカートのヴァリエーションを挟むワルツは世界一好きな曲と言っても過言ではなく
私に万一の事態が生じて旅立つときには流して欲しい曲でございます。(ここに書いても意味をなさず、親族に伝えるべきでしょうが)
事前に視聴した冨田実里さんによる音楽講座にて、アラビア音階を用いたライモンダとアブデラクマンのアダージオにおける魅惑的な旋律も異国情緒な空気に誘われ
聴き方によっては懸命に愛を訴えるアブさんと困惑するも魅力に取り憑かれつつあるライモンダの会話にも思え、一層胸騒ぎを覚えるようになりました。

またプティ版コッペリアのときも綴りましたが、バレエのあらゆる作品の中で一番好きな女性ヴァリエーションは
同意見の方は東京都民で1人いるかいないかの確率でしょうが、2幕でのホルン主旋律で踊り始めるライモンダのヴァリエーション。
ジャンの帰りが近づき希望を募らせつつも久々の再会に内に秘めた恥じらいも見せるような華と哀愁が隣り合わせとなった
歯切れ良くも大きく空間を使ったりと実に優雅な振付で、前半はホルン、オーボエ?、フルートかピッコロ?と
管楽器リレー主旋律な構成も変化に富んでいて聴きどころなのですが、先生方もご存知の方は少なく定着していないのか
全幕上演は別として発表会やコンクールでも披露される機会はまずありません。知名度が上がるよう願っております。
福田一雄さんも講座で仰っていたように、コンクールでライモンダと言えばなぜ夢の場のゆったりした踊りが人気なのか、
そもそも元はライモンダの曲ではなくバレエの情景からセルゲイエフが勝手に挿入したものであり
もっと他にも良いヴァリエーションがあるのに、と寂しがっていらしたご意見に首を縦に振り続けていた管理人です。
2幕ヘンリエットの抑制された中へ晴れ間が段々じんわりと差し込んでいくような旋律が耳に残るアレグロなヴァリエーションも好きですが
淡々としたイメージがあるのか知名度が低いのか、単独で踊られる機会はやはりございません。

グラズノフの音楽についての決して前向きではない印象も周囲その他執筆物で散々見聞きいたしましたが笑、
それ以上にご意見があったのはあらすじで、踊りは楽しいが話はくだらないつまらないとのお考え。
しかし決してそうとは言い切れぬ面白さが詰まった作品と思え、何しろ異なる魅力を備えた男性2人に挟まれる話、しかも双方負けず嫌いで正々堂々争うわけで、
実際には管理人の身にはまず起こらぬ状況設定ですから余計に胸が高鳴るわけです。32年前に初めてボリショイの映像で観たとき
ジャンのヴァシュチェンコとアブさんのタランダには全くときめかなったのだが(失礼)
その頃からこれといった根拠は無いものの三角関係を描くものならば女性2人に男性1人よりも
男性2人に女性1人のほうが潔さがあり、観ていて心躍ると頭の片隅で思っていたように感じます。
更に、幕ごとに成長を遂げていく点は共通であれどひたすら夢いっぱい花いっぱいで世間の綺麗な部分ばかりを見て育っていく『眠れる森の美女』オーロラ姫と違って
ライモンダは姫であってすぐに助けてくれぬ環境にも身を置いて異国から訪れた男性からの誘惑を拒絶し続けたり、自身を巡っての流血絶命事件
また優しさのみならず有事には敵を容赦無く斬り倒す猛者でもある婚約者の二面性にも直に触れてしまったのも
武芸の訓練に励む様子を常日頃より『巨人の星』の星明子の如く物陰から眺めていたならば別として、恐らくは決闘時が初めてだったでしょう。
生々しい騒動に翻弄されていく過程も面白いと映るのです。(実際に身近で起こっては困りますが)
数々の試練を乗り越え精神を鍛えられたライモンダの結婚生活は安心ですがオーロラ姫は100年の時間差を差し引いても結婚生活に苦労すると妄想が過っております笑。

牧版の特徴の1つがジャンが出征するプロローグが付いている演出。別れを惜しむ2人の姿をアブさんは見た!の状況でライモンダを見つめては
嫉妬に駆られたりと恋心を止められずにいる三角関係が見て取れる場面です。十字軍の大きな旗の横切りも
歴史書物に記録された実際の蛮行には一旦目を伏せ、浪漫をも掻き立て物語の世界へと誘われる瞬間です。
しかし管理人は解釈力が無さ過ぎたのか、初演で観たときまさか出征場面とは思えず終い。ジャンが夢の場と同じ身軽な格好でしたし
遠征へ出向くとは言っても当たり前だが私の鑑賞遠征の一例とは規模が桁違いで日帰りで東京大阪往復な短期間行程ではなく
長期間に渡る危険を伴う遠征ですから、もう少し儀礼な装い、演出が望ましいかと思ったものです。
登場すると思い込んでいた1幕ワルツにジャン不在で初演鑑賞時暫くは疑問が消えぬまま夢の場突入でございました。
例えばマントと剣を装着した格好であれば見るからに出征と捉えるでしょうし、勇ましい出陣にも繋がるでしょう。
しかしその格好は2幕のマントでジャン!までのお楽しみに取っておきたかったのかもしれません。(牧さんがそんな安易な意図を組むとは思えぬが)

それから牧さんが最も配慮した点でしょう、アブさん始めサラセン達の描き方。野蛮な異教徒の印象は皆無で、後にも述べますが色鮮やかでお洒落な衣装を纏い
サラセン陣営とライモンダ達フランス側が互いに敬意を払って接する様子をしっかりと描写した仕上がりで2008年米国での公演実現もこの点が大きかったと見受けます。
例えばライモンダのみならず友人達のヴァリエーションでも踊り手が眼前を通りかかるとサラセンの人々も手を掲げて讃えたり
優雅な美しさをじっと見つめたりと礼儀正しい姿が光り、一方ライモンダも芸人達やスペインなど
サラセン達の出し物を嫌そうな顔どころか興味津々に眺め、彼らを丁重にもてなすドリ伯爵夫人と並んで楽しく鑑賞。
いくらサラセンとの接点のある地域に属するプロヴァンス育ちとはいえ普段は城の閉ざされた空間で過ごしていたであろう姫からすれば
異国からの珍しい芸術に触れた初めてのひとときであったのでしょう。 アブさんとのアダージオや終盤の求愛ソロでは心に陰が差し不穏な内面を募らせてはいたものの
もし求愛に関係が無く、ライモンダがジャンに出会っておらす別方向に舵を切った余興であれば、楽しい異文化交流会或いは東西舞踊合戦になったであろうと想像できます。
実際十字軍とイスラムの軍がちゃっかり仲良くなって交流を深めていた例はいくつもあったようで
十字軍側が試合の手ほどきをして、大会後はイスラムでは禁じられているお酒を振舞って宴会状態であったとか。(塩野七生さんの著書より)
十字軍時代よりだいぶ後のギュスターヴ・ドレによる絵ですが、十字軍もイスラム軍も入り混じって所謂「密」状態で宴を催す様子が描かれていました。

考えてみれば、牧さん版初演が2004年で振付に着手なさったのはもっと前でしょうから、2001年に発生した同時多発テロからそう月日が経過していなかった時期と
重なっていたとするならばサラセン達の描き方には尚更神経を擦り減らしていらしたと思われます。
(そういえば、2006年/2007年シーズン開幕前にホワイエで行われたオペラと合同だったか演目説明会でも仰っていたと記憶)
余談ですが、2008年のワシントンD.C.公演鑑賞での往路にて、ロナルド・レーガン・ナショナル空港内の
シャトルバスに乗車し地下鉄乗り場へ向かう際、乗客は私1人であったのですが
運転席の上に貼られた運転手さんの名札を見ると、お名前がムハンマドさん。お顔立ちからして中東あたりがルーツであろう男性で少々ぶっきらぼうな方でしたが笑
目的地を聞かれメトロに乗りたい旨を伝えると、到着時に電車の乗り場への行き方をさらりと説明してくださり親切な心遣いに感激いたしました。
同時に翌日と翌々日に控えた『ライモンダ』公演がぱっと浮かび、米国で上演できるぎりぎりで絶妙な描写、演出であると脳裏を過った次第です。
ABTのレパートリーにあるアンナ=マリー・ホームズ版はアブデラクマンはサラセンの騎士として登場するもののジャンは出征せず十字軍にも触れず
決闘はしても絶命まではせず<追い払う>とプログラムには記されており、(来日公演鑑賞したが記憶が曖昧で失礼)演出が大幅に変わっていて別枠扱いなのかもしれません。
ABTも長らく3幕抜粋上演が続いたのち、ようやくレパートリー入りした全幕版であったそうで、演出にも配慮がかなりなされていると見受けます。
尚、3幕抜粋上演の写真は1980年代後半の雑誌にモノクロながらゴージャスな雰囲気伝わる1枚が掲載され、ジャンは恐らくパトリック・ビッセルと思われます。

セルゲイエフ版やグリゴローヴィヂ版も上演不可能ではないでしょうが、(諸外国でどの程度上演実績があるかは分かりかねますが)
出演者がいくらサラセン側にも敬意を持って踊り演じたとしても、中世ヨーロッパの大河ドラマを彷彿させる重厚で歴史書から飛び出したような演出や衣装、装置で
加えてジャンが勝利する筋書きを追っていくと、ヨーロッパとイスラムの交わりの要素よりも
どうしてもヨーロッパ優位な対立を強調しがちな舞台にならざるを得ないと、あくまで私の勝手過ぎる想像、考えですが捉えております。

思い出したが何かの本で読んだ記憶があるのは、初演の頃はアブさんに連れ去られ囚われたライモンダを助けにジャンがサラセンへ行く演出もあったとか。
情勢を考慮すれば上演し難いでしょうが、アブさんの城への乗り込み方や救出場面など、観てみたい気持ちにはなります。
(但し今回ならば金曜日のジャン限定。また身勝手な笑)

牧版は戦争の史実を題材としていながらも前面に出し過ぎず、中世のデザインを盛り込んでの繊細なデザインを採用し
サラセン側も金や銀を取り入れた色鮮やかな衣装を用いて双方同等に近い洗練された美を追求。
また守護神の白い貴婦人を無しにして夢の中ではジャンがライモンダを導く側になり
また2幕にてライモンダは危機に瀕してもまずは自力で耐えて乗り切る必要があり、自分を巡っての流血事件も目の当たりに。
またジャン帰還時も援軍は無しのおひとり様帰還。3人の血の通った交流や接触
ときには衝突も含め実はかなり生々しくしっかりと描かれており、メルヘンなお伽話にもならず。
複雑に入り組む要素のバランスの図り方が絶妙な加減である演出と思っております。

12年ぶりの全幕再演で出演者の殆んどが初挑戦であり、何しろドリ伯爵夫人の本島さんが前回タイトルロールを務めた公演。
携帯電話にライモンダと入力を試みると、雷門だ、と変換された時代です。
ライモンダ、ジャン、アブデラクマン、そしてドリ伯爵夫人、アンドリュー2世王も全てゲスト無し登録ダンサー無しの
自前契約ダンサー配役であったのはまだゲスト頼みな時代であった12年前を考えると、層が厚くなったとしみじみ。
『コッペリア』終演後練習期間がおよそ1ヶ月間ながら極上な仕上がりで久々のオペラパレス有観客公演
そしてバクランさんも久々の指揮でグラズノフの音楽を存分に楽しませてくださいました。
ただ久々の再演でもうあと一歩な箇所もいくつかあり、だからこそ一層踊り込んでバレエ団の総合力が更に深化しているに違いない次の再演が俄然楽しみでなりません。
今回この状況下で公演に足を運びたくても断腸の思いで諦め、ご覧になれずにいた方も多いはず。2年後あたりには再演熱望です。

振付も音楽も、あらゆるバレエの中で一番好きな作品を全幕で新国立劇場にて12年ぶりに鑑賞でき
しかも錚々たる先輩方が代々袖を通してきた衣装を今のダンサー達が着用して舞台に立ち並んだ姿にも感慨深くそして心躍る5日間でした。
それからまたもや当て嵌まった干支一回りの法則。何と言っても、新国立での全幕再演と同じく12年ぶりに心から虜になるジャンにお目にかかれた至高の幸福の余韻からは
明日からの2021年下半期突入後も当分は抜けられそうにありません。







ヨドバシカメラ新宿西口店の酒館(店内は広々、駅直結で便利)で購入し、冷やしておいた十字軍シャンパンで帰宅後乾杯。
絵のモデルはティボー4世とのことです。ご参考までに。https://www.enoteca.co.jp/article/archives/9542/
渡邊さんのジャンを観た日の夜に必ず呑もうと準備をし、いざ当日。帰還時の姿を浮かべるだけで、或いは
お姿をラベルやコルクの絵に重ねて何杯でも呑めました笑。絵にあるような、本物の騎士の格好も似合うでしょうなあ。今思い出してもニンマリ。
後日キャップを見せ、兜を外すとあのお顔が出てきたらどうしようかと、我が妄想に友人が付き合ってくださり深謝。





速報でもない速報記事でも紹介いたしましたが、前半日程に販売された米沢さん小野さん考案
涼やかな味わいで頭飾りを模した飴細工も美しい「ライモンダの夢」。
それにしても椅子に腰掛け眠り込み、目を開けたら肖像画から出てきた婚約者が手の甲に口付けして導いてくれるとは、ロマンティック過ぎる内容です。



マエストロにてノンアルコールスパークリングと前菜の鰯のマリネとラタトゥイユ。
南仏を意識したメニューと思われ、レモンも十字軍によってヨーロッパにもたらされた食品の1つであった、と
以前のプログラムに掲載されていた木村尚三郎さんの解説を思い出しつついただきます。



メインは大山鶏のソテー リヨン風クリームソース。カリッと香ばしい大山鶏と馨しいソースで
ノンアルコールのロゼとパンが進みました。相変わらず食いしん坊な管理人。



後半日程は福岡さん井澤さん考案のデザート、愛のヴェール。シャンパンムースがふわりと溶け、甘さ控えめで爽やかにいただけます。
ロマンティックな要素が詰められ、よく考えられた凝った一品です。
想像力欠如な私なんぞこんなにお洒落なものは考えつかず、今回ならば「バケツ型兜 ジャン・ド・プリン」が限界。
武骨な品しか構想に至らず、近年は硬めのプリンが喫茶店で再び人気を呼びつつあるとは聞くものの、即却下が目に見えております。



何度か紹介している雑誌『バレリーナへの道』。2004年の初演公演にて吉田都監督がライモンダ役で表紙を飾っています。
のちに購入いたしましたが最初図書館で借りる際、貸出担当のスタッフの方が思わず「まあ綺麗」と暫く眺め感嘆の声を漏らしたほど。
一瞬で吉田監督のポーズや衣装、美術にも惹かれたご様子でした。
振付の進め方や牧先生からの助言など初演時に主演を務めた志賀さん、山本さん、寺島さん、森田さんの対談が面白く
特にのちの2009年公演以降カットされた第3幕のパ・ド・ドゥの辛さについても本音がぽろり。
グラン・パ・クラシックの後にあのパ・ド・ドゥは過労勤務に相当でしょう。カットされて良かったと一観客としても思います。
2020年のニューイヤーバレエで復活しましたが、ガラで披露すると誠に呆気ないため評判は宜しいとは言い難く
何のために作ったパ・ド・ドゥであるのか知りたいものです。
またハードなライモンダ役ではあるが、パ・ド・ドゥにのときは元気が出ていた、と志賀さん談。山本さんは偉大だ。
主役デビューであった寺島さんも、頼り甲斐のある森田さんに助けられたと心からの感謝の言葉が次々と飛び出していました。



雑誌『クララ』における『ライモンダ』のあらすじや登場人物紹介の変遷。
2002年の人物紹介イラストは明らかにグリゴローヴィヂ版を参考。
衣装のみならず、アブさんがタランダにしか見えず。ライモンダと言えばボリショイな印象が今以上に濃かったのでしょう。
ちなみにレッスンモデルは現在新国立にて活躍中で、今回の1幕ワルツファンタジア出演者の中で唯一前回全幕上演2009年の同場面経験者で
さぞ頼りにされていたであろう今村美由起さん。2002年当時は橘バレエ学校の生徒として紹介されています。
他の特集記事では新国立にてプティ版『こうもり』初演。そうか、サッカー日韓W杯の年でございます。

2014年のくりた陸さんによる漫画での紹介は、牧版、グリゴローヴィヂ版、3幕の主役衣装はアンナ=マリー・ホームズ版を参考にしているであろう混在路線で
白い貴婦人がちょっぴりおせっかいな女性としてユニークに描かれています。
結局存在有無のほどは分からぬがSTAP細胞報道が話題となっていた頃にあたる2014年春ですから、牧版は2004年の初演、2006年2009年の再演を経た後ですし
(この間本拠地以外でも大阪や新潟、ワシントンD.C.公演も実施)、ホームズ版は2005年のABT来日公演でも披露済み。
セルゲイエフ版はちょうど現在はつい先日オレシア・ノーヴィコワのプリンシパル昇格で注目を集めている真っ盛りですが
古式ゆかしい演出のためか普段はなかなか着目されぬ版なのかもしれません。私の中でこの版といえばソ連時代に収録されたイリーナ・コルパコワとセルゲイ・ベレジノイでございます。
ところでくりたさんの漫画ではジャンとアブさんの対峙場面はお互い静かに視線を交わす程度でいたく穏やか。
今回の金曜日における、帰還の瞬間から激昂喧嘩腰、目から憎悪の刃を突き出していたジャンとは大違い笑。



今回目を通した十字軍関連書籍。牧版初演時や3年前の日本バレエ協会でのエルダー・アリエフ版上演時にはもっと多くを読んだが
いかんせん十字軍の行為の記述は蛮行ばかりが目立ち、バレエ作品の世界に浸るには読み過ぎないほうが良いかもしれません。
(塩野さんはそこまで生々しい表現は無く、淡々且つ明解な文体で読み進めやすい印象です)
管理人が若かりし頃、世界史の便覧を眺めていて一番の衝撃であったのは十字軍の戦争でイスラム側に運ばれた負傷者は麻酔付きの治療を受けたられたが
ヨーロッパ側に運ばれると斧で切断されてお終い、だったとの記述。
こりゃライモンダ、医療も食も充実進歩しているイスラム側に攫われたらむしろ生活は安心安泰だったか、など考えが巡回したのでした。



福田一雄さんによるライモンダと海賊の音楽講座受講記事でも紹介した、セルゲイエフ版の全曲CD。全体的にテンポ遅めです。
アンドリュー2世が決闘を言い渡してから始まるまでが長く、余りに形式ばってまどろっこしい笑。映像でも観たが、早う始まらんかいと口走りたくなるほどです。
アブさんの姿を目にした瞬間から大剣幕で、即座にこの場で叩き潰す決意が漲っていた金曜日のジャンからしたら我慢ならない展開であったことでしょう。



何を思ったのか、2幕のライモンダ衣装や頭飾りにすっかり魅せられ、見つけた同系色の頭飾りを8年前インテリア用に購入。
製作者にも眺める目的である旨を伝えた記憶がございます。
購入以降そしてこの先々も、管理人の頭上に載る日が生涯到来しないのは目に見えておりますため
知人友人で必要な方がいれば喜んで貸し出します。『海賊』メドーラあたりでも似合うかと存じます。
尚、装着したからと言って危機一髪時に誰かが救出に来る保証はございません。自力解決を宜しう頼みます。


ところで金曜日は帰宅後十字軍シャンパンを呑み、夢見心地で就寝し素敵な夢が見られたらと願ったのも束の間。
会ったのは(遭った)のはジャンではなく長時間の金縛りでございました。数ヶ月に1度は体験するためすっかり慣れてしまい恐怖感は最早無いのだが、
ヴェールは無いからとベッド近くの椅子に洗顔用白地タオルを掛け、そしてなぜか最近我が家の敷居を跨いだ
北国の銘菓白い恋人の袋を貴婦人の代わりに念のため立て掛けた安易にもほどがある準備に罰が当たったのか
バレエのような筋運びは夢のまた夢。現実はこんなモンダ。
しかしライモンダな日々はまだ終わらず、8月にはバレエ・アステラスがある上に9月は抜粋が上演される舞台を鑑賞に西側へ「遠征」予定。
無事に帰還、ではなくそれ以前に本来ならば昨年開催のはずであった舞台。生徒さん達のためにも今年こそは予定通り上演できますように。

2 件のコメント:

aruyaranaiyara さんのコメント...

いやはやはてさて、膨大な量に圧倒されましたよ。
思い人への溢れる想い、もう読者の皆様にはご理解頂いているかと思いますので。
序文?の「保険掛け」みたいな前ふりは、ぼちぼち不要なのではと思いますよ、管理人様。
執筆、お疲れさまでした。

管理人 さんのコメント...

aruyaranaiyara様

こんばんは。気づけば膨大な量になってしまいすみません。ご訪問そしてお読みいただきありがとうございました。
毎日少しずつ書いておりましたら瞬く間に月末を迎えました笑。
そうですね、シンプルにすぐに本題、にいたします!