2020年2月3日月曜日

英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン2019/2020 コンチェルト/エニグマ・ヴァリエーション/ライモンダ 第3幕




シアタス調布にて、英国ロイヤル・オペラ・ハウスシネマシーズン2019/2020
『コンチェルト』『エニグマ・ヴァリエーション』『ライモンダ』第3幕を観て参りました。
http://tohotowa.co.jp/roh/movie/?n=concerto


「コンチェルト」  【振付】ケネス・マクミラン
【音楽】ドミトリー・ショスタコーヴィッチ
【美術】ユルゲン・ローゼ
(第1楽章)アナ=ローズ・オサリヴァン/ジェームズ・ヘイ
(第2楽章)ヤスミン・ナグディ/平野亮一
(第3楽章) マヤラ・マグリ、 アナ=ローズ・オサリヴァン/ジェームズ・ヘイ、 ヤスミン・ナグディ/平野亮一
ピアノ:ケイト・シップウェイ


マクミランにしては珍しいであろうシンフォニック・バレエ。小林紀子バレエシアターによる上演は
NHKバレエの饗宴含め何度か観ております。衣装の細かな点はバレエ団に任されているのか合わせているのか
小林バレエではブルーを基調としていましたがロイヤルは黄色や赤といったはっきりとした色彩を採用しているようです。
パートによって色は異なるが男女ともシンプルなレオタード姿で
プロが普段着用しているレッスンウェアよりも全身のラインが露わとなり、バレエ学校の生徒並み。
解説映像でダンサー達が語っていた通り誤魔化しが全く効かない恐ろしい演目とも言えます。
第1楽章のオサリヴァンが音符1つ1つを刻むかの如く正確で音楽にぴたりと合う踊りで気持ち良く
ピアノのタッチとステップが吸い付くように調和していて見事。
今夏新国立劇場バレエ団客演時のアリス役では果たしてどんな姿を見せてくださるか。
相手役の新国ジャックに相応しいヒロインであるか、「確と目を光らせ」鑑賞したいと思っております。
安定感抜群であったのはマグリで、決して大柄ではない体躯ながら
終盤に向けて力強くひたすら歩み続ける群舞を牽引する頼もしさがあった印象です。



  「エニグマ・ヴァリエーション」  【振付】フレデリック・アシュトン
【音楽】エドワード・エルガー
【出演】エドワード・エルガー:クリストファー・サウンダース
キャロライン・エルガー夫人:ラウラ・モレーラ
ヒュー・デイヴィッド・スチュアート・パウエル:ポール・ケイ
リチャード・バクスター・タウンゼンド:フィリップ・モーズリー
ウィリアム・ミース・ベイカー:リース・クラーク
イザベル・フィットン:ベアトリス・スティクス=ブルネル
アーサー・トロイト・グリフィス:マシュー・ボール
ウィニフレッド・ノーベリー:ロマニー・パイダク
A.J.イェーガー(ニムロッド):ベネット・ガートサイド
ドーラ・ベニー(ドラベラ):フランチェスカ・ヘイワード
ジョージ・ロバートソン・シンクレア:アクリ瑠嘉
ベイジル・G・ネヴィンソン:エリコ・モンテス
レディ・メアリー・ライゴン:イツィアール・メンディザバル


映像含めて初見作品。大袈裟な所作は無くても気分を沈ませている佇まいに寄り添いたくなるサウンダースのエルガー、
そっと静かに励まし愛を紡ぐモレーラのエルガー夫人、とクラシカルで品ある演劇を眺めている心持ちにさせられました。
次々と現れる個性豊かな人物たちに引き込まれるのはさることながら、最たる驚きはエルガーの音楽。
『威風堂々』と『愛の挨拶』ぐらいしか知らずにおり、1幕物のバレエ作品が成り立つほどに存在する
実にスケールのある楽曲の数々に触れられたのは幸運でございました。



  「ライモンダ 第3幕」 
【振付】ルドルフ・ヌレエフ (原振付:マリウス・プティパ)
【音楽】アレクサンドル・グラズノフ
【出演】ライモンダ:ナタリア・オシポワ
ジャン・ド・ブリエンヌ:ワディム・ムンタギロフ
チャルダッシュ イツィアール・メンディザバル、リース・クラーク
第1ヴァリエーション 金子扶生
第2ヴァリエーション ミーガン・グレース・ヒンキス
第3ヴァリエーション クレア・カルヴァート
パ・ド・トロワ アシュリー・ディーン、イザベル・ガスパリーニ、ロマニー・パイダク
パ・ド・カトル アクリ瑠嘉、セザール・コラレス、ヴァレンティノ・ズケッティ、ジェームズ・ヘイ
第5ヴァリエーション ワディム・ムンタギロフ
第6ヴァリエーション ナタリア・オシポワ


ヌレエフがロイヤルのために3幕のみ上演用に再振付・構成。同じ衣装と装置を採用して
少し振付や音楽構成を変更した版は2015年に小林紀子バレエシアター公演にて鑑賞しております。
(Kバレエカンパニーでもロイヤルと同じ3幕ヌレエフ版を上演していますがこちらはまだ観ておらず。
大阪のKバレエスタジオもよく似たデザインの衣装を採用)
幕が上がると黄金色に彩られたタペストリーの背景に息を呑まずにいられぬ
衣装装置ともに金と白を基調にした重厚な趣きです。
オシポワのライモンダは優雅な深窓の姫には全く見えなかったが(失礼)、 押しの強さが前面に出た(出過ぎた)潔さを備え技術も盤石。
ジャンの代わりにアブさん打倒をやってのけたであろうと容易に想像させる姫君でした。
ムンタさんのジャンは柔和な印象がまさって十字軍から帰還した騎士には全く見えなかったが(失礼)
恐らくは財も潤い人材も豊富な軍であったため、役職クラスは前線に赴かずに済んだためでしょう。
或いは内勤業務で備品発注や給与計算していたか。『ラ・バヤデール』ソロルにも通ずる妄想はこの辺りにして
予定通りパリ・オペラ座のヌレエフ版『ライモンダ』に客演していたら、どんな人物を造形していたか気になるところです。
女性のパ・ド・トロワ男性のパ・ド・カトルは、バレエ団の中間層の充実ぶりが如実に表れる場であると思われるが
両者ともなかなか冷や汗な仕上がり。前者は三角のフォーメーションが崩れ
後者は譲り合いの精神を見せるためか否か観る度に首を傾げ未だ振付の意図は謎だが
エレガント化したダチョウ倶楽部の如く順番に向かって右側の人に片腕を横に差し出したところで
1人ずつ始まるザンレール連発で、斜めロケット発射そして着陸失敗の連続。見かけ以上に難易度は高いのでしょう。

ヴァリエーションで目を惹いたの金子さんで、見映えするゴージャス感に反し
踊りは精緻で正確。真珠を転がしたような繊細な音楽に溶け合う踊りから幸福感を与えられた思いです。
フィナーレ(ギャロップ?)は主役、グラン・パ・クラシック、そしてチャルダッシュも全員総登場な演出であるの嬉しく
続々となだれ込んでは交差したり、縦横きっちりフォーメーションを描きながら舞台を覆って圧巻。
演出によってはチャルダッシュとマズルカのみで行われたり(記憶が正しければグリゴローヴィヂ版)
フィナーレ無しでめでたしのアポテオーズに突入する版もある中、総登場は観る者を高揚させ壮観な舞台となる効果大です。

概ね満足した作品ではございますが、違和感を覚えた点もあり。
1点は解説にて、字幕の読み逃しが無い限り一度たりともフランスのフの字も出てこなかったこと。
ハンガリーとロシアの繰り返しで、どうやらロイヤルではライモンダもハンガリーの王女として捉えている様子でした。
これまで見聞した資料や話ではあくまで舞台は中世の南フランスで、ライモンダはフランスの令嬢だが
(姫や令嬢、貴族など人物紹介は文献によってまちまち)
ジャンとの結婚式では、ジャンと共に出征した或いは仕えているのかハンガリー王アンドレイ2世への敬意を表して
ハンガリーの味わいを帯びた振付で踊られるとの見解は違ったのか、気になるものです。
もう1つはロシア帝国の連発。恐らくはプティパが振り付けた最後の大掛かりな 全幕古典バレエの世界を堪能いただきたいとの呼びかけであると受け取りましたが
余りに繰り返されるため仮に初鑑賞の作品であったならロシアの話と思い込んでしまいそうになった次第です。

それから音楽の構成。3幕のみ上演となれば全幕上演時よりも見せ場を増やしたい気持ちは分かるものの
ヴァリエーションに夢の場面の曲が用いられているとどうもしっくり来ないのです。
例えば誰がどれを作曲したかもはや混沌状態となっている『海賊』や『パキータ』ならまだしも
(アダンやドリゴ、プーニ、ミンクス達から天罰が下りそうな表現だがお許しを)
作曲家グラズノフと振付家プティパが1場面1場面入念な話し合いを重ねながら制作したバレエですから
夢幻の世界を描写した曲を突如ハンガリー色の濃い重厚な結婚式場面にて披露されても気持ちがついていけず
特に今回は「ハンガリー」主張が解説でもインタビューでも強かっただけあり殊更感じたのは否めません。

そうは言っても黄金に煌めく格調高い舞台を映像にてじっくり鑑賞できたのは大きな喜びであるのは変わらず。
女性の頭飾りが大ぶりで、ウルトラマンシリーズのウルトラの母のヘルメットを彷彿とさせてしまった点も小林バレエでの鑑賞に続き気にかかったが
オシポワのライモンダならば「3分」で敵を薙ぎ倒しそうな強さを備えた正義の味方な姫君であったからまあ良いか。




鑑賞後シアタス調布近くにて。ライモンダはプロヴァンスの姫だった気がするが、と考えを巡らせ耽りながら南仏のワインで乾杯。
ちなみに管理人は小学3年生のときに発表会での『ライモンダ』3幕にてチャルダッシュを踊った経験あり。
人数が少ない教室で、最初で最後の群舞経験でした。
『白鳥の湖』や『コッペリア』と異なり冒頭から晴れやかで終盤の怒涛の勢いからなる曲調に聴き惚れ
当時からバレエは鑑賞や書籍閲覧を遥かに好んでいたとはいえ、グラズノフの音楽で踊れた幸せは今も覚えております。
ギャロップフィナーレもあり、しかし中盤の複雑交差はカット。
主役やグランパの上級生たちは終わりに近づいたところでようやくなだれ込んでくる流れであったため
それまでは大人1人と小学生約10人のチャルダッシュで場を持たせる羽目に。
生徒も観客もわくわく楽しめ、少人数でも舞台が華やかに見える振付を
創意工夫して考えてくださった先生には感謝が尽きません。
会場はシアタス調布からも、そしてこの店舗からも目と鼻の先に位置する調布市グリーンホールでございました。

2 件のコメント:

さくらもち さんのコメント...

ライモンダってフランスの姫だったのですね、アブデルラーマンがトナリ感覚で訪れるので東欧の姫かと。
という由来はおろか、ダーシーさまは絶対にロシアとハンガリーの区別がついてなかったですね。
途中で「はんがりー」と相方から軽く訂正が入っていた気がします。
アナ・ローズ・オサリバンがピアノそのものみたいに踊ってよかったですし、エルガーもこれぞな雰囲気を堪能しました。
今回は日比谷で見てしまったのですが、また調布に行くときには南仏ワインに挑戦したいと思います。

管理人 さんのコメント...

さくらもち様

こんばんは。お待たせして申し訳ございません。
ご覧になってのご感想もありがとうございます。
思えば時系列距離感がぐしゃぐしゃで、突撃隣の晩御飯状態なんぞ本来はありえませんが笑、
何度振り返ってもハンガリーの姫とは聞いた記憶がなく、
ロイヤルではどう解釈されているか気になった次第です。
そうですよね、バッセル、あれこれ混在させてしまって語っていましたよね。
調布、のんびり寛げて良い空間ですよね。
今回他所にする予定でしたが時間が作れてどうにか調布での鑑賞に至りました。
映画館の近くに食事処多数ありますし、是非南仏ワインお召し上がりください。