2025年8月1日金曜日

所属団体ならではの作品の嬉しいお披露目 バレエ・アステラス2025 7月19日(土)






7月19日、バレエ・アステラス2025を観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/asteras2025/

※プログラム等はホームページより


第1部
『トリプティーク~青春三章~』
振付:牧 阿佐美
音楽:芥川也寸志
出演:新国立劇場バレエ研修所

新国立劇場バレエ研修所研修生達による上演。これまで何度も上演を重ねている牧阿佐美さん振付の伝統作品です。
歯切れ良くも風変わりな哀愁感が刺激を誘い、生演奏で聴けることも上演のたびに楽しみでおります。
研修生達の癖のない伸びやかさや清々しさが前面に出る作品で、中でも小寺夏鼓さんの強弱をしっかりつけつつ空間使いやアピールの上手さも目を惹きました。


『サタネラ』よりパ・ド・ドゥ
振付:マリウス・プティパ
音楽:チェーザレ・プーニ
出演:中島 耀 (ドレスデン国立歌劇場バレエ)、モイセス・カラーダ・パルメロス (ドレスデン国立歌劇場バレエ)

今回数少ないクラシック作品の1本。中島さんは安定した技術の持ち主で、発表会でも頻繁に踊られる王道パ・ド・ドゥながら華やぎある見せ方で魅了。
パルメロスさんは少し踊り慣れていない様子にも見て取れましたが、晴れ晴れした姿で中島さんを支えていらっしゃいました。


『アンナ・カレーニナ』よりパ・ド・ドゥ
振付:ユーリ・ポソコフ
音楽:イリヤ・デミューツキー
出演:金澤優美 (ジョフリー・バレエ)、清沢飛雄馬 (ジョフリー・バレエ)

プログラム解説によれば、キティとリョーヴィンを描いたパ・ド・ドゥとのこと。
2人とも質素な身なりながら(キティは可愛らしいピンクのワンピースだったかも)
豊かなときめきが舞い上がる感情が踊りに現れ、カーテンの降下だったか、空間が力強く動き出しそうな演出も目を奪われました。


『ラ・シルフィード』第2幕よりパ・ド・ドゥ
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:ヘルマン・ルーヴェンシュキョル
出演:ジェシー・ドーティー (ヒューストン・バレエ)、アクリ士門 (ヒューストン・バレエ)

良くもそうでなくてもアメリカンなパ・ド・ドゥに。ドーティーさんは浮遊感は今ひとつで妖精には見えづらかったが、音楽にはよく乗っていて、
アクリさんの瞬発力は見事。全体通して大味に見えてしまったが、健やかな風味はそれはそれで魅力に映ったかもしれません。


『ロメオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥ
振付:クシシュトフ・パストール
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
出演:チョン・ジェウン (ポーランド国立歌劇場バレエ団)、北井僚太 (ポーランド国立歌劇場バレエ団)

プログラムによれば、舞台を20世紀のイタリアに移し、1幕はムッソリーニのファシズム台頭期、2幕は50年代の政治テロ、
終幕は90年代ベルルスコーニの社会分断を描いているとのこと。全編で観たくなります。
所謂バルコニーのパ・ド・ドゥのため恐らくはファシズ台頭期の若者の叫びを描写していると思われ
白い現代風のシンプルな格好をした2人のユニゾンの疾走感や密度の濃さ、
ただ恋い焦がれるだけでなく自由か何かを追い求めるように訴えかけるパワーも強し。今回のアステラスの白眉の1本です。


『Within the Golden Hour』よりパ・ド・ドゥ
振付:クリストファー・ウィールドン
音楽:アントニオ・ヴィヴァルディ
出演:高田 茜 (英国ロイヤルバレエ)、平野亮一 (英国ロイヤルバレエ)
ヴァイオリン演奏:城戸かれん(東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団ゲスト・コンサートマスター)

高田さん、平野さんの舞台はそう多くは観ておりませんが古典よりもネオクラシックな作品のほうが抜群の身体能力といい良さが出ていそうと想像。
内側から沸き上がる香りを指先脚先から放ち、キンキラキンとした衣装(と記憶している)とは相反するしっとりした動きや
平野さんの磐石の支えで高田さんの脚がスラリと伸びてこを描いて行く面白い変化球なパートナーリング振付にも注目が止まらずでした。



~休憩~

第2部
『ゼンツァーノの花祭り』よりパ・ド・ドゥ
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:ホルガー・シモン・パウリ
出演:パリ・オペラ座バレエ学校

『ナポリ』よりパ・ド・シス
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:エドヴァルド・ヘルステッド、ホルガー・シモン・パウリ
出演:パリ・オペラ座バレエ学校

世界のバレエ学校枠として独自の創作だったり、次世代の星といった人材を一足早<目にできる楽しみが毎回あっただけに今回は今ひとつ印象なし。
(パリ・オペラ座好きな方、すみません)
ただゼンツァーノもナポリも、清々しく初々しい魅力がしっかり出る作品であるとは思っております。
ゼンツァーノのコーダにて、男性ソロの前半における鉄琴部分が鐘の音の如くしっかり鳴っていたのは嬉しい。


『Take Me With You』よりデュエット
振付:ロベルト・ボンダラ
音楽:レディオヘッド
出演:野黒美茉夢 (西オーストラリアバレエ)、フリオ・ブラネス (西オーストラリアバレエ)

これといったストーリーはなさそうであったが、野黒美さんとブラネスさんの身体の躍動がみるみると加速したり、
ゆったりと絡み合ったりと変化に富んだ振付をつい目で追ってしまう作品。あっという間に終わってしまった感があるほど。


『コッペリア』第3幕よりパ・ド・ドゥ
振付:アルテュール・サン=レオン
音楽:レオ・ドリーブ
出演:升本果歩 (ノーザンバレエ)、石井 潤 (ノーザンバレエ)

升本さん石井さんともにしっかり美しい技術を備えていただけに、演目が王道過ぎたか印象に残りづらかったかもしれません。
ノーザンならでhの作品も観たかった気がいたしますが端正で微笑ましい祝福感いっぱいな雰囲気は宜しく、全幕を観た気分に。


『シンデレラ』第2幕よりパ・ド・ドゥ
振付:スタントン・ウェルチ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
出演:藤原青依 (ヒューストン・バレエ)、チャン・ウェイ・チャン (ニューヨーク・シティ・バレエ)

藤原さんの往年の女優彷彿なヒロインでシンデレラの新しい像なのか艶めかしく魅了。2人で舞台を縁側のようにして腰掛けたりと珍しい光景の連続でした。
チャンさんの王子はみえない秘書らしいのだがサポートは超絶に冴え渡り、片手で斜め回転させる腕前に驚愕。
満天の星空の広がりもロマンチックな雰囲気を後押しです。


『アスフォデルの花畑』よりパ・ド・ドゥ
振付:リアム・スカーレット
音楽:フランシス・プーランク
出演:高田 茜 (英国ロイヤルバレエ)、平野亮一 (英国ロイヤルバレエ)
ピアノ演奏:巨瀬励起、滝澤志野

背中の動きからして遠目に観ていても音楽と溶け合って感情が伝わってくる序盤から釘付け。
2人で繊細に紡ぎ上げながらクラシックから少し枠を出たユニークな動きもこなしつつ大らかに花を開かせるように舞台を満たしていく美しいパ・ド・ドゥでした。


〈フィナーレ〉出演者全員


夏場はガラが多々ある中でバクランさん指揮でのオーケストラ演奏付きはいたく嬉しく、しかもチケット代金もお手頃。
フィナーレはグラズノフのバレエの情景よりポロネーズで、格調高く華々しい旋律に毎回聴き惚れております。 時々曲が変わることもありますが、このポロネーズの高揚感は格別です。
また所属団体ならではの特性ある作品を目にできるのも強みなガラであると思っております。
しかしこの手の帰国系ガラが乱立し、アステラスが始動した頃の2009年に比較すると大増加。
今年も不安は的中し、上階はガラガラでエリアによっては1列にぽつんと一軒家状態での鑑賞でした。
来年も2日間構成でしかも夏の競争率最たる日程であろう8月最初の土日とのこと。宣伝方法は工夫必須です。




2019年アステラスポスター。テクニック炸裂バジル懐かしい。



2022年アステラスポスター。忠臣なアリ、懐かしい。



真夏日でしたので冷やし豆乳担々麺!レモンも搾り爽やかに。



都庁と、ゆずもびっくりな夏空。初台を本拠地するダンサーの方々がロンドン公演に向けて渡航し始めた頃。初台の夏空が熱く応援しています。



帰りは毎度のところにて、大阪から出張とタイミング合い鑑賞なさった方と。
(ヤングガラ宇宙作品振付者と同じスタジオに子供の頃から社会人になった今も通っていらっしゃいます)
渡英経験2度おありで、知識豊富!



2杯目!



ゲストのお2人、高田さん平野さんの本拠地ロンドンの英国ロイヤルオペラハウス。
現地時間7/22の20時頃当方撮影。夜の時間帯でも青空が覗いていて不思議な天気でした。

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