2025年8月5日火曜日

灼熱のダブル・ビル 佐々木美智子バレエ団『ロミオとジュリエット』「ESPRIT de corps」7月31日《東大阪市》




順番が前後いたしますが7月31日(木)、東大阪市にて佐々木美智子バレエ団 篠原聖ーさん版「ロミオとジュリエット」「ESPRIT de corps」を観て参りました。
篠原さん版ロミジュリ全幕は2006年に東京にて下村由理恵さん山本隆之さん主演で初鑑賞。
パ・ド・ドゥのみ抜粋では下村さん山本さんペアで2008年に高松市と渋谷区で行われたガラにて拝見。
その後2016年に佐々木美智子バレエ団公演にて全幕を下村さん、佐々木大さん主演で鑑賞し、全幕としては今回が3度目の鑑賞でございます。
https://sasaki-michiko-ballet.cloud-line.com/_m/


https://ameblo.jp/sasaki-ballet/entry-12920121480.html


インスタグラムにも関連写真多数。どうぞご覧ください!



ロミオ:今井智也
ジュリエット:佐々木夢奈
運命:佐々木大
ティボルト:北井僚太
マキューシオ:佐々木嶺
ベンヴォーリオ:小森慶介
キャピュレット公:山本隆之
キャピュレット夫人:杉原小麻里
乳母:河森睦生
モンタギュー公:奥田慎也
モンタギュー夫人:堤本麻起子
パリス:今井大輔
ベローナの大公:アンドレイ・クードリャ
僧ロレンス:丸山陽司



夢奈さんのジュリエットはあどけない少女の殻を破って恋を貫く過程を大胆に美しく表現。
実のところ、キトリのような溌溂とした町娘或いは純クラシックのお姫様なら馴染みもあり想像しやすく感じておりましたが
究極のドラマティック作品のジュリエットはどうだろうかと、なかなか想像できずにおりました。
しかし、篠原さん版の特色でもある冒頭プロローグにて光を浴びて暗闇にぽっかりと現る姿からして恋する喜びを胸にしなやかに踊るジュリエットそのもの。
乳母と戯れるときの悪戯っ子な笑みも可愛らしく、そうかと思えば結婚を言い渡されパリスと出会ったときの戸惑いや
ロミオとの出会いで不思議そうにじっと見つめ合い恋焦がれていく様子も手に取るように伝わってきました。
両親からの結婚命令に背こうと奮闘するときも、倒れ込んでも決して強さを絶やさぬ意思が見え、
1人ベッドに縋りながら命がけの行動を取ろうと決意と覚悟を滲ませる姿は身体の奥底から叫びが静かにされど熱く響いてくるひと幕でした。

今井さんは2017年に篠原さん版ロミジュリでロミオ役を経験されているそうで、最近お見かけしたのは東京文化会館での上野の森バレエホリデイにおける
ジゼルになりきって花占い企画のアルブレヒト役でしたが(別イベントへ行く道中に開催していて野次馬の如く見物しておりました)
更に青年らしくなっている気すら覚えるほどに若々しく、上品で少しおっとりしたロミオとして出現。
マキューシオ、ベンヴォーリオと並んでいると賑やか仲良しトリオであっても何処か別世界にいるような温和な雰囲気もあり、
だからこそ敵対する家の令嬢との恋に突っ走ってしまうという周囲からは到底予期できぬ行動への飛び込みも観る者に一段と衝撃を与えたと捉えております。

見せ場の1つ、バルコニーのパ・ド・ドゥは息が少し合わなかった箇所もあったか、僅かにぎこちなさが目に残ってしまったものの
思えば篠原さん版ロミジュリにおけるジュリエット役を下村さん以外のダンサーが務めるのは夢奈さんが初と思われ、その重圧は計り知れなかったことでしょう。
また全幕とパ・ド・ドゥ抜粋を鑑賞したのはたった4回とはいえ、また当時は今のように動画も活発に残されていない時代ながら
下村さんジュリエットの水を得た魚のような、ごく自然にお喋りするように柔らかさも鋼のような強さも自在にメリハリの効いた踊りや表現から繰り出す
ポーズ1つ1つが未だ刷りに刷り込まれており、この記憶を跳ね返すのは容易でないはず。
更には今回気づいたのだがバルコニーの振付は疾走感もありつつ適度にクラシカルでカチッとしたポーズが盛り込まれ、
そのバランスを図りながら恋するときめきを保ちつつ息ぴったりに踊りこなすのは非常に高難度なテクニック、空間使いのセンスを要すること。
そんな恐ろしい重圧を一切感じさせず、夢奈さんと今井さんが臆することなくスピード感たっぷりに
恋の歓喜を丁寧に歌い上げていらしたパ・ド・ドゥに心からの拍手を送りたい思いでおります。

舞台を司り、或いは脇を固める重鎮やベテランな方々の存在も忘れられず。
全編通して舞台の行方の鍵を握るように操っていらした大さんの運命の、
時に支配感を前面に出して観客を不気味で不思議な世界への引き込むかと思えば
登場人物達に忍び寄り、次の展開を示唆する役目も担当。しかも出過ぎずに存在感を示して舞台を取り纏めるお力が何ともずば抜けていらっしゃること!
また終始半裸ながら、ジャクソンで入賞なさった頃に掲載されたダンスマガジンでのアクティオンのカラーグラビア彷彿な若々しい肉体にも驚愕です。

そして山本さんキャピュレット公はグローブ座やイタリアの歴史大河ドラマに登場なさっても違和感無き美しさと重厚感!
ちょっとした仕草や歩き方1つで空気の色が変わり、杉原さんのキャピュレット夫人の艶やかなオーラ、
しきたりと娘への愛情の板挟みに苦しんでいるであろう3幕の嘆きも脳裏に焼き付いております。
後にも紹介して参りますがつい先日までロンドンのシェイクスピアなパブに入り浸っていたため、感じ入るものがありました。

意外性に驚かされたのは嶺さんのマキューシオ。端正爽やかなイメージが先行しておりましたが、
お茶目な面から鋭い強面ティボルトをサラッとあしらう危なっかしさやカッとなりやすい噴火体質な面まで多彩に軽やかに表現されていて、一癖ある役柄の似合いっぷりに拍手。
そんな一癖も二癖もあるマキューシオやティボルトに常にきっちり対応しようと奔走する小森さんベンボーリオも目に留まり、
この人がいなければマキューシオは無茶が行き過ぎてもっと早期に命を落としていたのではと思います。

先月東京でのバレエアステラスでは近現代イタリアに舞台を置き換えたロミジュリパ・ド・ドゥを踊られた北井さんのティボルトの俊速に刺さる恐怖感もお手のもの。
登場し目を見据えるだけでも冷ややかな空気が増し、身体のラインも踊りも綺麗なため見映えも十分にあり目を惹きました。
賑やかな広場をぐっと引き締めていらしたのは杉前玲美さんのジプシー。何かと隊長ポジションにいらっしゃるイメージがありますが今回も頼もしいリーダーとして君臨し
上階の後方から双眼鏡無しでもぐいぐいと迫り来る踊りにこの度も魅了されるばかりでした。

それから挙げずにいられない要素が照明や装置。篠原さん作品は照明工夫秀逸で、今回はあえて3階から鑑賞したほど。
両脇に黒階段があるだけのシンプル装置ながら可動させてスケールある舞台転換に貢献し
舞踏会では燭台蝋燭を階段に並べて動かして貴族のコールドが蝋燭達と連なるような光景の麗しさも見事でした。
お屋敷の縦長な窓の格子のシルエットが縦に伸びた床照明や、冒頭のロミオとジュリエットそれぞれを暗闇の中で照らす見せ方も効果をより体感。これからも再演重ねて欲しい版です。

同時上演の「ESPRIT de corps」タンゴをテーマに黒い衣装姿のダンサー達の次々と変わりゆくパートから目が離せず。
プリンシパル役は佐々木須弥奈さん北井さん。スリット入りの赤いドレスで颯爽と現れた須弥奈さんの色気、切り換え巧みな踊り方も洗練されていて感激。
英国ロイヤルでの躍進も嬉しい限りです。北井さんとのペアは息も合い、主軸に相応しい統率力でした。
タンゴに大作文学、ともに灼熱なエネルギーを感じさせる佐々木バレエらしい魅力満開なダブル・ビルで暑い熱い7月最終日を彩る公演でした。


※マキューシオを好演された嶺さんが明日8/6に福岡市で開催されるSHIVERガラにご出演。福岡市民ホール中ホールです。
訳あって私も観に参ります。公開センターレッスンもあるとか??
少人数ガラのためバレエ団の公開クラスレッスンよりも一層くっきり観察できそうか。出演者は女性4名、「男性2名」。共演楽しみでございます!
https://nanatsu-dougu.jp/ybc/shiver2025_fukuoka_sp.html



午後半休を取り、昼下がりに東京駅到着。暑い日でしたので、昼からビールで酒盛りです笑。
新幹線は利用するとしたら大概は早朝出発便のためお店の多くは営業開始前。
しかし今回は昼頃でしたので通りかかった東京駅構内のパン屋さんにてビールに合いそうなチェダーチーズ、ハラペーニョ入りのピリ辛ツナサンドイッチを購入。ビールが進みました!
先月末に新国立劇場バレエ団『ジゼル』ロンドン公演へ一緒に行き仲良くなったミャクミャクさんとしらかわんも今回も同行。
ミャクミャクさんは親族が大阪万博にて購入、今回はちょこっと里帰り。
大阪訪問は初となるしらかわんは福島県白河市のキャラクターで私が2022年に新白河駅にて購入。



新大阪には16時頃到着。昼の東京より夕方の大阪の方が遥かに暑く、新大阪下車時には蒸し風呂に思えたほど。しらかわんもびっくりしているようです。



なんばで近鉄線に乗り換えのため、ちらっと道頓堀へ。しらかわん、派手な看板に衝撃を受けているようです。
白河市にはこういった街並みはないとのこと。ミャクミャクさんは久々の里帰りに興奮。
それにしても尋常でない暑さのせいか観光客も減少気味に思えました。



反対側、観覧車!



会場



会場内のライブラリーカフェにてティラミス。うさぎさんが本を抱えている可愛らしい絵です。ひょっとしてシェイクスピア文学に夢中なのかな?



ティラミス上から。



ロビー。広々としています。



帰り、余韻にどっぷり赤ワイン。



ロンドンの大英博物館近くにて。文学の絵が色々。



今年7月末の新国ジゼル鑑賞ロンドン滞在にあたり、佐々木バレエ団関係者のロンドン通なお方より事前に細かく助言をいただき大変お世話になりました。
ロンドンのロイヤルオペラハウスから徒歩7分くらいの場所にある地下鉄ホルボーン駅そばのパブ、シェイクスピアヘッド。
ガイドブックやネット上でもあまり見掛けず知名度は控えめかもしれませんが地元の方々で程よく賑わっていて奥に長く広々とした空間が広がり、居心地の良いお店でした。
店内はシェイクスピアの絵や関連作品の絵がたくさん!
新国立ジゼル初日前日に舞台版「となりのトトロ』を観劇後に宿への帰り道にて利用し、夜の1人利用でも安心感があったため気に入って帰国日の朝には朝食利用いたしました。
朝食メニューも豊富で、トーストのみメニューもあり。この界隈ではお手頃価格かと思います。
尚、似た名称の店舗がオックスフォードサーカスにもありましたが、繁華街どん中に近いせいか観光客で大盛況でした。



舞台版となりのトトロ鑑賞帰りにて。



ビールサーバー近くにもシェイクスピアの絵。



帰国日の朝、次の鑑賞は大阪でシェイクスピア作品やねん、と脳内を過ぎりながら味わった朝食です。


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