
4月25日(金)、東京バレエ団『眠れる森の美女』を観て参りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2025/sleeping/
※キャスト等はNBSホームページより
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
台本:イワン・フセヴォロシスキー、マリウス・プティパ(シャルル・ペローの童話に基づく)
原振付:マリウス・プティパ
新演出・振付:斎藤友佳理
ステージング・アンド・プロダクション・コンセプト:ニコライ・フョードロフ
舞台美術:エレーナ・キンクルスカヤ
衣裳デザイン:ユーリア・ベルリャーエワ
照明デザイン:喜多村貴
国王フロレスタン14世 安村圭太
王妃 大坪優花
オーロラ姫 秋山 瑛
デジレ王子 大塚 卓
カタラビュット、式典長 鳥海 創
悪の精カラボス 伝田陽美
リラの精 中島映理子
- プロローグ -
妖精たち:
カンディード(優しさ) 長谷川琴音
フルール・ド・ファリーヌ(やんちゃ) 中沢恵理子
パンくずを落とす精(寛大) 加藤くるみ
歌うカナリヤ(遊び心) 工 桃子
ヴィオラント(勇気) 平木菜子
- 第1幕 -
4人の王子:
フォルチュネ王子 陶山 湘
シャルマン王子 樋口祐輝
シェリ王子 南江祐生
フルール・ド・ポワ王子 本岡直也
- 第2幕 -
公爵令嬢 三雲友里加
ガリフロン、デジレ王子の家庭教師 後藤健太朗
- 第3幕 -
宝石の精:
ダイヤモンドの精 涌田美紀
サファイヤの精 中川美雪
金の精 工 桃子
銀の精 中沢恵理子
プラチナの精 井福俊太郎、二山治雄、加古貴也、山下湧吾
長靴をはいた猫と白い猫 加藤くるみ-岡崎隼也
青い鳥とフロリナ王女 長谷川琴音-池本祥真
赤ずきんと狼 瓜生遥花-山田眞央
親指小僧とその兄弟と人食い鬼 中嶋智哉
野本紗世、植村まお、川村いろは、那須井遥、林凛々花、深澤夏乃香、松岡由記
指揮: ベンジャミン・ポープ
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
協力:東京バレエ団OB・OG、東京バレエ学校
オーロラ姫は今回是非とも観てみたいと思っていた秋山さん。登場時から人間離れした格式高さ、お人形のような麗しい可愛らしさが異次元級に煌々していて
淡くもきらりとした装飾が細かく彩られたピンク色のチュチュも、不要と思うクルクルヘアな鬘も、往年の少女漫画から飛び出したかのようにしっくり。
(あとに述べるが不要と思えてならぬ鬘が多数)
お恥ずかしい話、目に星が宿っているような絵が苦手で『アラベスク』や『SWAN』といった
所謂名作バレエ漫画を読まずに現在に至っておりますが(そうかといって目に炎な運動競技漫画も読んでおらず笑)
ちらっと目にした限り、少女漫画の巻頭ページを大々的に飾っていそうな近寄り難いほどにインパクトある姫っぷり。
登場、ヴァリエーション含めて薔薇の香りを散りばめながらの軽快なジャンプやポーズの描き方も、何処を切り取っても職人プリンセスでした。
2幕でのしっとりした風情にも魅せられ、伏し目がちであっても優雅な透明感を帯びた踊りで森の妖精達の中をするりと出入りしながら舞台をリード。
3幕はメルヘンなお祝いの空気を一変させる、国を挙げての厳粛な結婚式に相応しい威厳ある姫君。
身体使い方も大きく、されど大味にならずコントロールをきっちり行いながらの踊りで、小柄な体型と思わせぬ見せ方でした。
デジレ王子初役の大塚さんは2幕森の狩猟の場面に登場したあたりは少々埋もれ気味で、歩き方や立ち居振る舞いで惹きつける難しさを再確認。
3幕も視線の合わせ方がまだぎこちなかったりと、人気実力ともに十二分なプリンシパルの秋山さんのスター性に圧倒されて緊張も走っていたように思えます。
サポートもそつなくでしたがサポートするご自身もしっかりと見せるまではもう一歩でした。
ただ私が観た日は初回日でしたので2回目はより堂々と振る舞っていらしたことでしょう。
2幕でのリラに導かれてオーロラに恋い焦がれる様子や、終盤オーロラの目覚めでの、戸惑うオーロラを徐々に心を開かせていく過程の描き方が丁寧で
3幕ヴァリエーションのノーブル且つ勇ましい踊り方は好印象でした。容姿はとても恵まれていますから、ご活躍に期待です。
怪我で長らく舞台から離れていらした中島さんのリラの精を目にできたのも嬉しく、表情が硬めであった点だけ気にかかりましたが
伸びやかな手脚を生かした統率力、カラボスにも屈しなさそうな強い上体での語りが印象的。
リラの見せ所を増やした2幕のソロも、身体がすっと高らかに舞い、舞台の支配力が更にあれば尚良かったかと思います。
思い切り笑わせてもらったのは伝田さんのカラボス。メイク効果か清水ミチコさんに似て見えるときもあり(褒め言葉です)
身体をぐっと屈めて歪んだ歩き方をなさっていても、やること成すこと何でも楽しそうで、
姫の16歳に起きる悲劇の予言も客席上階の隅々にまで恐怖を巻き起こしているように妙に生き生き。
プロローグが終わり、1幕が始まるまでの間に手下達とせっせと糸車製作もシメシメとの会話が聞こえてきそうな熱中ぶりでした。
王子との対決がほぼないに等しい演出で、いつのまにか退散してしまうのが勿体無いものの、
カーテンコールにおいても共演者も観客もあっと楽しませてくださる愛すべきカラボスでした。
ソリスト陣で目に色濃く残ったのは平木さんのヴィオラント。ビシッとした芯からエレガントな味も指先から放っていて強弱の付け方の豊かさに脱帽です。
ひょっとして、伝田さん2号でしょうか!?平木さん、次はリラの精もみてみたいダンサーです。
衣装は色々ご意見を耳にしており、女性宝石達のそれぞれの特徴を盛り込んで全員チュチュデザインも頭飾りも大きく異なるクラシカルなチュチュは魅力に感じた次第。
男性陣は皆同一と思われ、宝石ならばもう少し光沢あるデザインも取り入れて欲しかったと思えます。
プロローグ妖精達はだいぶメルヘン路線なデザインかと思うものの、色分けしているのは初台の民からすると羨ましく、丸!
6人集まると七色の虹に見えて明るく華やかです。カヴァリエ達はなかなかの力は入った紫衣装でライラックよりもラベンダーズといったところ。しかし紫を取り入れたのは丸。
初台の民からすれば、ブルーインパルスよりはセンス良き色味でしょう笑。
親指小僧とその兄弟と人食い鬼は、子供達の衣装がクレヨンセットの如く濃いカラフルな並びで、宮廷でのお祝いに似つかわしいかと聞かれたら答えに詰まりそうです。
時間も妙に長く、失礼ながら少しダレてしまう箇所でした。子供達のみの出番が多過ぎる気はいたします。
貴族達やポロネーズ衣装は上質感、重厚感に欠け、花のワルツ衣装もペラっとした印象を拭えず。
衣装以上に突っ込みどころが多くあったのは鬘。衣装や鬘を見ていると恐らくは斎藤さんはロシア特にボリショイ眠りの伝統ある香りを大事にしたいと
制作指揮に当たられたと思われますが、日本バレエ団に取り入れての装着時の違和感は前回2023年初演時と同様に相当厳しいものに見えてしまったのは事実。
オーロラ姫は今回の秋山さん、前回観た沖香菜子さんともに持ち前の麗しい華に助けられていましたが(それでも3幕の白鬘はびっくりポンだったが)
貴族男性陣の長髪鬘は西洋史のコントに思えるときもあり、或いはサッカーの北澤豪さんを思い出したりと、
令和の新制作にしては必要性に疑問符が浮かぶ不自然な鬘がずらりと並んでいました。
王子が試練なく剣も手にせず(本当は色々乗り越えているのかもしれないが振付観る限りは伝わりにくい)
オーロラ姫と結ばれるのもどうもめでたさが半減する気もいたしますが、ただまずはゆったりとしたヴァイオリンソロでの目覚めで姫と王子がじっくりと歩み合い、
そこからけたたましい目覚まし時計風なファンファーレも入り、どちらの曲も好む私としては、あらゆる版の中で一番好きな目覚めの音楽構成です。
目覚めのパ・ド・ドゥだけではしっとりし過ぎて、しかしパンパカパーン!と賑やかなだけでは
起床と同時に婚約の流れが今ひとつに思えるため、双方の取り入れは喜ばしいと捉えております。
美術は1幕での緻密な花模様がたっぷり描かれた背景はまさに薔薇の花園で、オーロラ姫の16歳の誕生祝いのめでたい香り満載。
だいぶレトロと思える箇所もあって好みに合わぬ部分もあれど、古典の芳醇さ、古き良き味わいを堪能できるプロダクションです。

ロビーにて、装置の外観は東京バレエ団スタジオ外観。

プロローグ。

1幕。花模様が緻密。

バレエホリデイの記事で載せましたが、鑑賞の翌日に訪れた上野駅近くのレトロな喫茶店その名も王城にて。

古めかしい看板。

1幕オーロラのピンク色のチュチュを思わすイチゴミルク。
滑らかで食感はしっかり。1幕オーロラは淡いピンク色が理想であると羨望の眼差しを送ってしまう初台の民です笑。

鑑賞の帰り、ロイヤルハイボール。べらぼうのパンダさん達も呑みたがっていそうです。
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