2025年5月23日金曜日

オーストラリアでの成果を短期集中で披露   東京バレエ団『ジゼル』 5月18日(日)








5月18日(日)、東京バレエ団『ジゼル』を観て参りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2025/giselle/





※キャスト等はNBSホームページより
音楽:アドルフ・アダン
振付:レオニード・ラヴロフスキー(ジャン・コラーリ、ジュール・ペロー、マリウス・プティパの原振付による)
改訂振付(パ・ド・ユイット):ウラジーミル・ワシーリエフ
美術:ニコラ・ブノワ


ジゼル:足立真里亜
アルブレヒト:生方隆之介
ヒラリオン:岡崎隼也

- 第1幕 -

バチルド姫:加藤くるみ
公爵:中嶋智哉
ウィルフリード:大塚 卓
ジゼルの母:奈良春夏
ペザントの踊り(パ・ド・ユイット):金子仁美-南江祐生、涌田美紀-加古貴也、工 桃子-樋口祐輝、安西くるみ-鳥海 創
ジゼルの友人(パ・ド・シス):伝田陽美、三雲友里加、政本絵美、中島映理子、長谷川琴音、長岡佑奈

- 第2幕 -

ミルタ:平木菜子
ドゥ・ウィリ:加藤くるみ、長谷川琴音

指揮:ベンジャミン・ポープ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


足立さんのジゼルは踊りも表現もくっきりと愛らしく、優しく落ち着いた接し方でアルブレヒトの心をほぐして導いている少女。
一見余りに可愛らしく小柄なため、もっとチャキチャキ溌剌かと思いきやしっとりした風情を醸す魅力あるヒロインでした。
アルブレヒトよりも強く賢そうな印象もあり、1幕の段階から精霊になっても命懸けで守りそうな予感すら募らせます。
踊りのコントロール力も自在で美しい仕上がりで、1幕ヴァリエーションでは空間を大きく使い、身体も目線の運びもより伸びやかになっていました。
バチルドの婚約者がアルブレヒトと知ると顔が徐々に歪んでいき、信じたくない葛藤や怒りが入り混じったように狂乱へ。
2幕登場でのぶれぬ回転や高いジャンプも目を見張り、しかもあくまで精霊らしくふわっと舞い上がる軽やかさや
打って変わってアルブレヒトとの再会でのゆったり佇みながら語りかけるポーズの腕や肩のラインにも注目いたしました。

生方さんはアルブレヒト初挑戦。若く世間知らずで少し内向的そうなアオブレヒトの誕生です。
緊張からかおとなしそうで感情の振り幅が少ないかと序盤は思ったものの、お城で窮屈な生活を強いられていて
ジゼルと一緒にいても心を一気には開けない若様であろうと想像です。ジゼルの導きに優しく微笑みながら懸命に応えていく様子も青さが一層引き立っていました。
ちょいと髪型が若い頃の堺正章さん風に見えましたが、2幕での苦しみ踊りでは綺麗な脚のラインを生かした跳躍を拝見。
勿論全編通してみるとジゼルやウィルフリードとのやりとりもまだぎこちない部分はあれど、経験重ねてどんどん洗練されていくことでしょう。

全体をぐっと引き締めていたのは岡崎さんのヒラリオン。顔つきも芝居もしっかりとしていて仕草や間の取り方も雄弁に嵌め込んでいた印象です。
ジゼルへの迫りもそこまで強引過ぎず、村人達とも踊りの輪で楽しんでいたりと周りからの好感度も高く、信頼度も万全そうな森番でございます。
圧巻であったのはミルタに踊らされる場にて、今にも倒れそうなほどに疲労困憊であっても脚が勝手に動いてしまう訴えを
脚を押さえつつ奥底から発していて、しかしミルタは断固拒否。その呼応が落下死へのカウントダウンを強調していて、身の毛がよだつ場面でした。

大塚さんウィルフリードはおっとりお坊っちゃまの強力監視員で、ツンとした目つきで常時冷静に物事をこなしていそうな有能従者。
しかしジゼルがバチルドから首飾りを貰い喜んでいる姿にはその後の悲劇を予期する不穏な表情を隠せず。
またジゼルが息絶えるとアルブレヒトがすぐ駆け寄ったのはウィルフリードで、
貴公子と従者にとどまらない分かり合える関係性が見て取れる場面でした。閉鎖的で窮屈なお城での生活ぶりをずっと見てきたのでしょう。
朗らかに場を沸かせたのは加藤さんのバチルド。描き方によってはキツめの女性のときもありますが
東京バレエ団ではあくまでにこやかな貴族女性で、ジゼルへの接し方も優しいお姉さん風。
ジゼルの婚約を我がことのように嬉しがっていて、だからこそウィルフリードの顔がみるみると曇っていったのも納得。
他の貴族達もそこまで傲慢そうでもなく、上野の森貴族奥様会はきっと温厚な会なのでしょう。初台の森貴族奥様会は序列制度設けていて怖しです笑。

直近で観た他団の『ジゼル』と比較すると、例えばウォーリーを探せ状態で人も芝居も凝った装置も隅々までわんさか詰め込まれている新国立に対して、
東京バレエ団は古き良きロシアな版で、1幕前半の人数も少なく踊り中心の進行でシンプルな演出。
新国立が乗り物で言うなら急流川下りな勢いやスリルを持ち合わせている点に対して
東京バレエ団は遊覧船に乗ってゆったり味わう気分。それぞれに良さがあります。
背景美術は必要最小限であっても遠くに見える山々やお城、こじんまりとしたジゼルのお家やパ・ド・ユイット女性陣の色違いパステルカラーのお衣装も
御伽噺の1頁のよう。リアリティ重視型の方からすると村人はそんなテカリある派手な服を着ていないとお思いかもしれませんが
村の収穫祭を描いたバレエ作品としては華やいでいて良かろうと捉えております。
ジゼルの青いグラデーションが美しい衣装も、清らかさと深みが混ざり合っていて好きでございます。

東バ名物のウィリー達の統制の取れた群舞のピンと張り詰めた集中力も昇華して、ただ揃っているだけでなく
冷たい空気を腕や肩から一斉に放っていくような哀しみの湛えも鳥肌もの。
統率する平木さんのどしっと構えた貫禄で、ティアラもなく全員同じ衣装と頭飾りであっても抜きん出た女王様っぷりも見事。
元祖リニアモーターカーと思わす地に足がつかずにひた走るパ・ド・ブレの滑らかさもゾクッとさせられました。
アルブレヒトを守ろうとするジゼルを前にして、時折除く寂しそうな表情もまた、嘗てはジゼルと同じ恋する乙女であった過去を持つ精霊であると考えさせられます。

『眠れる森の美女』から僅か2週間少々での上演で、短期集中練習であったでしょうが、オーストラリアでの長期公演での踊り込みで鍛えられた成果がよく見える公演で
ゆったり味わうオーソドックスなロシアの版の魅力に再度気づかされるきっかけになりました。
そうこうするうちに『ラ・シルフィード』そして『ドン・キホーテ』のキャスト発表。
前者は2日間のみですが、同月中に上演の後者は多彩な組み合わせ。この日の『ジゼル』ではジゼル友人を乙女度充満させながら楽しそうに舞っていらした
伝田隊長のキトリ、待ち切れません!!!もしや東京バレエ団での全幕本公演では主役デビューでしょうか。主演日に居合わせたい思いでおります。




百合の花達



お墓が巨大です。



6月公演『ザ・カブキ』告知。新国立劇場オペラパレスに討ち入りです!!



説明パネル




カブキの2幕討ち入り四十七士場面は大人数を要するため毎回助演者も入っているようですが、どうでしょう。新国立劇場バレエ団から募ってはいかがでしょう??
劇場の構造を知り尽くしていて、しかもベジャールの大作の大掛かりな見せ場ですから、希望者多数集まりそうな予感。勝手な想像ですが。
加えてNBSと新国の上層部達、少し前から関係性に変化が出てきて舞台興行者同士仲良く手を取り合っていくようになって安堵しております。



この日5月18日(日)は国際博物館の日のため隣の国立西洋美術館の常設展が入場無料。
鑑賞前に立ち寄って参りました。昨年8月の企画展、中世の写本展で来て以来です。殆んどの作品は撮影可。
短時間でしたのでまた次回上野へ行ったときも鑑賞に出向く予定です。
1400年代後半のアウグスブルクの教会史料。色味が品良く鮮やか。























ダイアナとアクティオン。東バ札幌ガラで秋山さん二山さんが踊られます!



帰りは毎度の我が後輩と、終演後もドイツに浸ります。後輩はお洒落にビアカクテル、私は白ワイン。
さっぱり絹引きに近いヴァイスヴルストと淡路玉ねぎに生ハムのせたグリルです。どんどん食べてしまう我々でございます笑。
しっかし後輩のスタイルの良さよ~。本当に身長そう変わらないのだろうか、腰位置の高さよ、同じ昭和生まれか笑?
満席に近い文化会館の中にいても、ラピュタのシータほど視力が良いわけではない私でもすぐ分かる華やかオーラの持ち主でございます。



ジャーマンポテトです。表面がカリッと、中はほくほく香ばしい。ゴールデンウィークはお互い遠出したりと充実であった期間を振り返り。
酒井はなさんを観に高槻市と名古屋市へ行ったそうなのだが、名古屋では私の大好物・喫茶店コンパルの海老フライサンドを朝に食べたそうだ。
海老フライ3本使った独特のソースも塗られたボリュームあるサンドイッチ、気に入ったそうで仲間が増えた~!!!
私が昨年京都での観劇前日に、一昨年は新国立ドンキ名古屋公演日の朝に食べた、愛おしいメニューです。



中世らしい器のデザインが気になって、1人では食べ切れそうにないため今回注文したロングガーリックトースト。
お互いに最近は新国立のジゼルも観ており、東京バレエ団と新国立それぞれに良さ、魅力があると確認し合い
足繁く通うバレエ団公演はあっても、あらゆる団体をこれからも観ていきたいと話も弾みました。



備え付けの鋏で後輩が切ってくれました。優しい。サクサクした軽い食感で美味しくいただきました。
さてジゼル大当たりの2025年、次回は来月牧阿佐美バレヱ団です。
青山さんのラスト全幕、しっかりと観て参ります。

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