
1月24日(金)、The 11th BALLET TRADITION(第11回バレエトラディション)を観て参りました。
http://www.shinobutakita.com/ballettradition/bt11.html
『ライモンダ』夢の場より
音楽:アレクサンドル・グラズノフ
原振付:マリウス・プティパ
振付指導・演出:田北志のぶ
ライモンダ:神野日菜
ジャン・ド・ブリエンヌ:厚地康雄
第1Va:荒木彩
第2Va:大城美汐
第3Va:冨士原凛乃
幕が開き、紗幕越しに整然と集まって並ぶ左右対称に片腕を掲げるポーズや、
青いチュチュで揃えた幻想的な美しさにに感嘆。2階席からはフォーメーションの緻密な変化や出入りのタイミングの揃え方、
とりわけ上体の動かし方の豊かさに統一感を持たせる群舞の落ち着いた品が調和したコール・ドに魅せられました。
2023年のトラディション『ジゼル』でひょっとしたら錚々たる主役3名以上に衝撃を受けた、統制の取れたコール・ドを再び眺めることができ感激。
所属団体も活動拠点も様々とは思えぬほどの纏まりがあるとこの度も感じた次第です。
今回の衣装、薄い青のチュチュにカチッとした濃い青地を重ねた美しいデザインで、他の団体における同場面上演時や
愛媛県西条市にて上演された2・3幕ハイライト版での第2幕でも目にしたことがあり、ライモンダでは選ばれがちな馴染み深い衣装であるのかもしれません。
ソリスト陣は皆様これまでにも拝見している方々で再度鑑賞の機会に恵まれ嬉しい限り。
第1Vaの荒木さんは昨年8月の江戸川区にてチャイコフスキーパ・ド・ドゥでのキビキビと切れ味のある踊りが印象に残っており
今回は新たに追加された初めて聴く曲でしたが(確か)、どの箇所もきちんと決まる職人な味わいで楽しませてくださいました。
第2の大城さんは2022年の田北さんオープンクラスの発表会でのダイアナとアクティオンで光る潔い強さあるテクニックに驚かされ
今回は細やかなポワントワークやポジションのおさめ方の正確さに惚れ惚れ。
第3冨士原さんはシティ公演やエンジェルアール等何度か観ており、ぱっと華やぐパワーで支配する空気の変えように目を見張りました。
それにしても、グラズノフの音楽は傑作と再確認。夢の場ソリストのよく知られたヴァリエーション2曲にしても
真珠と星屑が仲良く転がるような曲調と、流星の宴を思わす瞬きに満ちた曲の双方に聴き惚れました。新たに追加されたVaの曲が思い出せず、お許しを。
ライモンダの神野さんは長い手脚のラインから優雅さを放つヒロインで、音楽をたっぷり使いながらの大らかな踊りも魅力的。
厚地さんは正直ソロは少々ヒヤヒヤであったものの、ライモンダを優しく導く夢の中の騎士を体現。
(しかし夢の中とはいえ出征中の騎士にしては線が細くも感じたかもしれぬ)
マントが中途半端な長さ、素材に見えたのは自称マント評価委員東日本支部長な私の厳格基準の影響かもしれずですが笑
お2人揃って白がお似合いな、気品ある主役ぶりでした。
ワルプルギスの夜
音楽:シャルル・グノー
原振付:レオニード・ラヴロフスキー
振付指導・演出:田北志のぶ
巫女:秋山瑛
バッカス:秋元康臣
パン:森本亮介
全編通して観るのは2回目くらい。大阪のMRBガラにて観た記憶があるが、音楽がどれも心底好きであるため
また涼しげなバランシン版は近年スターダンサーズ・バレエ団で2度観ていながらラヴロフスキー版はまだ観ておらず。上演を待ち侘びておりました。
まず巫女の秋山さんが衣装は真っ赤で情熱的ながら、技術は余りに涼やか軽やかに刻んでいく余裕っぷりに口あんぐり。
爪先のコントロール力もお手の物で、更にはガラやコンクール等では目にする機会も多いであろうソロでの
達者でお茶目なサチュロス4人を引き連れての女王然とした姿もまた天晴れでした。往年のボリショイ思わす、少し演歌テイスト入ったプレゼンテーションも作品にぴったり。
前半、秋元さんバッカスとのアダージョの天高く聳える塔の如きリフト移動からの横倒しキャッチされる空間遊泳の雄大なことよ。
そしてパンの森本さんが今まで観た役柄の中で一番魅力が花開いていた印象で、闊達に跳ね回ってはキャラクター達とコミュニケーションを取りつつ舞台を力強くリードされ、
舞台中央奥にて横笛を吹く仕草もリアル且つ音楽に乗って雄弁。目が離せませんでした。
ニンフ達の滑らかで気持ち妖しげな彩り、ベールの踊りトリオの哀愁吹かせる踊りも音楽としっとりと溶け合って、
フィナーレでの全員の大団円は狂うような高揚感。是非早期の再演お待ち申し上げます。
ウィンナー・ワルツ
音楽:ヨハン・シュトラウスⅡ世、ヨーゼフ・シュトラウス
原振付:アニコ・レフヴィアシヴィリ
改訂:ニキータ・スホルーコフ
振付指導:田北志のぶ
カルロ:田北志のぶ
フランツ:ニキータ・スホルーコフ
カイザーリンク伯爵:ヤン・ワーニャ
2022年の田北さんオープンクラス発表会にて田北さんとスホルーコフさんによる抜粋版鑑賞以来全編観てみたかった作品。
スホルーコフさんがウクライナ国立に移籍して初めて踊った、思い出深い作品でもあるとのこと。
バレリーナのカルロを巡って裕福なパトロンのカイザーリンクと若き作曲家フランツの三角関係が織りなす
シュトラウスⅡ世やヨーゼフ・シュトラウスの名曲に乗せた、切なくもお洒落な展開です。
田北さんは以前よりも更に細身になられて少々心配になりましたが、身体で語りかけて物語を動かして行く踊りや
フランツへ想いを持ちつつも伯爵主催の舞踏会で板挟みになる戸惑いや苦しみの陰も切々と表現。
スホルーコフのフランツがまさに愛に生きる作曲家で、寝室でとうとう2人きりにカルロへの首っ丈な気持ちを溢れんばかりにぶつけ
しかしどんなにエネルギッシュでも品を失わず、滑らかなサポートも美しや。
結局はカルロは立場を譲れず、フランツは1人舞踏会を去ってしまうものの、ドナウ川にてカルロへの想いをしたためていると
最後は美しく青きドナウへと繋がって爽やかな群舞で締め括り。清々しい後味で幕が下りる作品でした。
今回は3作品全て音楽構成が好みである点も大きく、またスホルーコフさん(発音としてはスハルコフさんとどちらが近いのだろうか)もご出演で楽しみに足を運びましたが、
作品や配役選びともに手堅くもワクワクさせてくださる田北さんの毎回の企画力や演出力に脱帽です。
気品ある古典、躍動感ある作品、そしてお洒落なセンス光る作品のバランス良きトリプルビルでした。
それから毎回の楽しみの1つが田北さんのご挨拶文。変にかしこまっておらず、紙面越しに読み手と会話するような文体にすっと引き込まれます。
頻繁にパートナーを組んで、伯爵役も踊っていたアレクサンドル・シャポバールの戦死を悼む文には胸が痛み、
スホルーコフさんがドネツク出身と知った3年前からお生まれの故郷も心配で、11年前のクリミア併合時から対立や混乱がずっと続いています。
ドキュメンタリー放送でも惨状に苦しむご様子が映し出されて。まだまだ終わりが見えぬ事態が続いていますがどうか平穏な日が1日でも早く訪れますように。

会場

タイムテーブル。ライモンダとワルプルギスの間はヴァイオリンとチェロの演奏が行われました。出演者やスタッフは早替え早転換タイム!!

ビールで乾杯!ビール短編集で缶ビールを綺麗に注ぐ方法を読み、実践。まずまず上手く注げた気がいたします。

レモン付きで酸味が効いたボルシチ。
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