2024年2月28日水曜日

純白な恋を紡ぐ2人  パリ・オペラ座バレエ団『マノン』 2月18日(日)








2月18日(日)、パリ・オペラ座バレエ団『マノン』 を観て参りました。前日の大阪フェスティバルホールでの鑑賞を終え、1泊して新幹線でそのまま上野へ直行。
奇しくも、6年前のハンブルグ・バレエ団『ニジンスキー』鑑賞と似た流れとなりました。
(そのときは京都で石井潤さん作品公演を鑑賞後に1泊してそのまま上野へ直行。
京都の前日と前々日は東京で新国立劇場バレエ団ホフマン物語鑑賞。振り返ると恐ろしいスケジュール笑)
https://www.nbs.or.jp/stages/2024/parisopera/manon.html


※NBSホームページより
振付:ケネス・マクミラン
音楽:ジュール・マスネ
オーケストレーション・編曲:マーティン・イエーツ
原作:アヴェ・プレヴォ「騎士デ・グリューとマノン・レスコーの物語」
装置・衣裳:ニコラス・ジョージアディス
照明:ヤコポ・パンターニ

パリ・オペラ座バレエ団初演:1990年11月9日

指揮:ピエール・デュムソー 演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

マノン  ミリアム・ウルド=ブラーム
デ・グリュー  マチュー・ガニオ
レスコー、マノンの兄  アンドレア・サリ
レスコーの愛人  エロイーズ・ブルドン
ムッシューG.M.  フロリモン・ロリュー
マダム  ロール=アデライド・ブコー

第1幕
第1場
パリ近郊の宿屋の中庭
レスコー、 レスコーの愛人、 デ・グリュー、
ムッシューG.M.、 マダム、 マノン

乞食の頭 フランチェスコ・ムーラ

乞食
ラム・シュンウィン、 ルーベンス・シモン、
サミュエル・ブレ、 ナタン・ビッソン、
ミカ・レヴィーヌ、 レミ・サンジェール=ガスネール
ディアーヌ・アデラック、 リサ・プティ、
リュシアナ・サジオロ、アナスタシア・ガロン

高級娼婦
カン・ホヒョン、 オーバーヌ・フィルベール、
ビアンカ・スクダモア、 ニーヌ・セロピアン

3人の若い紳士
アレクサンドル・ボッカラ、 ニコラ・ディ・ヴィコ、
イサック・ロペス・ゴメス

紳士
レオ・ド・ビュスロル、
アレクサンダー・マリアノフスキー、
エンゾ・ソガール、ケイタ・ベラリ、シリル・ショクルン、ポール・マイヤラス

娼婦
セリア・ドゥルイ、 アンブル・シアルコッソ、
桑原沙希、パティントン・エリザベス・正子、
  ルナ・ペニェ、イゼ・ブルティニエール、
イロナ・カブレ、 カミーユ・カラザン、
リサ・ガイヤール=ボルトロッティ、
オルタンス・パジョレール、グロリア・プボー、
ニノン・ロー、山本小春

老紳士 ジャン=バティスト・シャヴィニエ

第2場
パリ、デ・グリューの下宿
マノン、 デ・グリュー、 レスコー、 ムッシューG.M.


第2幕
第1場
高級娼家でのパーティー
マダム、 紳士、娼婦、 デ・グリュー、 レスコー、
レスコーの愛人、 ムッシューG.M.、 マノン

高級娼婦
カミーユ・ボン、 カン・ホヒョン、
オーバーヌ・フィルベール、 ビアンカ・スクダモア、
ニーヌ・セロピアン
男装した娼婦 ルナ・ペニェ

第2場
デ・グリューの下宿
マノン、 デ・グリュー、 ムッシューG.M.、 レスコー

近衛兵
ラム・シュンウィン、ルーベンス・シモン、
ナタン・ビッソン、サミュエル・ブレ、
マニュエル・ジョヴァーニ、
オジリス・オナンベレ・エヌゴノ、
レミ・サンジェール=ガスネール

第3幕
第1場
ニューオーリンズの港
高級娼婦、娼婦、 マノン、 デ・グリュー
看守 アルチュス・ラヴォー

兵士
ラム・シュンウィン、ルーベンス・シモン、
ケイタ・ベラリ、ナタン・ビッソン、
サミュエル・ブレ、マニュエル・ガルリド、
ミカ・レヴィーヌ、ポール・マイヤラス

市民
ディアーヌ・アデラック、リュシアナ・サジオロ、
ロドリーヌ・ショール、山本小春、
アナスタシア・ガロン

第3場
沼地
マノン、 デ・グリュー、これまでの登場人物

協力:東京バレエ団



ウルド=ブラームのマノンは無垢に輝く天使で、派手さ無くても手脚の隅々迄しっとりした動きに溜め息。
馬車から飛び出しての登場ではふわりと優雅な風が吹くような走り方で、自身の魅力には気づいていないと思われ
何の混じり気のない笑みを湛えてレスコーに駆け寄っていた印象です。
GMからネックレスを受け取ったときは不思議がりながらそっと手を添えて一呼吸してから価値を考えていた様子で
すぐさま欲を露わにする人もいる一方、自身がどこか渦巻く世界へと導かれて行く不安と期待を静かに抱いていたと見受けます。

表現が過剰はなくいたくシンプルでありながら品を保っていたのはウルド=ブラームならではと思われ、
娼館にやってきたときはすっと澄ました顔で登場し、殿方たちを虜にしている自身の魅力をよく分かっていないのか、チヤホヤされても気にしていない様子で
そっと歩く姿がまた美しい。貧困から抜け出そうとがむしゃらに挑むのではなく、あくまで欲はそこまで持たず
だからこそ持ち前の美しさに気づかぬうち、これ見よがしに誇示もしないままあれよあれよと騒動に巻き込まれていってしまったのでしょう。
ルイジアナでボロボロの姿になっていても天性の美は全く失われず、犯罪であるのは重々承知だが、看守が惚れてしまうのも頷ける美しさでした。

ガニオのデ・グリューは登場時から高貴な容貌で、奥の方にて見えかけた鼻筋からして庶民や苦学生には思えぬ美貌でしたが笑
結果としてウルド=ブラームのマノンとは好相性で、周囲から異質なほどに浮く純白な恋を紡ぐ2人として説得力あり。加えてデ・グリューは貧しくはあっても美しさはあって欲しいと勝手に理想づけております。
2人もベテランの域に達していて全盛期な踊りっぷりではなかったのは否めませんが
威勢よくアクセントを付けず荒っぽくならず、代わりにしっとりと丁寧に四肢を操り
沼地のパ・ド・ドゥも、多量の結び昆布な吊るし美術の中であっても(食料品売り場でおでんセットを見るたびに思い出す笑)
2人の姿は尚美しい光を放っていて、デ・グリューの腕の中で息絶えたマノンは苦しそうでは決してなく
愛する人の温もりの中で最期を迎えた安堵が顔に表れていた気がいたします。
『マノン』の濃密な作風を考えると幕間は赤ワインを飲むかと思いきや、
この2人の出会いと寝室のパ・ド・ドゥを観た後は心が白色に純化されたのか白ワインな気持ちになったものです。
サリのレスコーはあくまで好みの問題ですがもう少し色気があれば尚良かったかと思ったものの、
冒頭ソロの脚の蹴り上げ方のシャープで盤石に繰り出すバランス、愛人のブルトンも力強く歯切れ良い音楽に乗せたソロにおける刺すような強さのあるポーズも目に残ります。
ムッシューG.M. は若い描かれ方で、ロリューが端正な顔がみるみると厭らしさを帯びながら
脚触りをしている仕草が毒々しく笑、ベテランが演じるイメージが先行していただけあって鮮烈でした。

衣裳装置はこれまでオーストラリア・バレエ団製作のデザインしか生では観たことがなく
ニコラス・ジョージアディスが手掛けたデザインをようやくこの目で鑑賞できたのも大収穫。
細部まで凝った、特に2幕は緻密で重厚な、異なる色味の赤を組み合わせた美術が壮観で、馬車の細かな錆や朽ちた部分も実にリアル。
娼婦たちの赤茶な鬘と赤系で整えた衣裳も豪奢で、何度も双眼鏡で観察いたしました。

音楽構成の妙にも再度唸り、様々な作品からの寄せ集めとは到底思えず。幕開けのレスコーの佇み、
マノンのテーマや3つのパ・ド・ドゥ、レスコーや愛人の欲がぶつかるソロ曲も耳に残ります。
全編の中でも、娼館のワルツは集う人々の歓喜と苦悩、欲望が渦巻き昇華するような旋律にこの度も胸を揺さぶられ、
快楽と現実の狭間をうねるように彩り心を抉るマスネの曲に蕩けた夜でございました。

本家本元は英国ロイヤル・バレエですが、映像で一番脳裏に焼き付いているのはパリ・オペラ座で(公式販売はしていないが)
ベラルビのレスコーとピエトラガラの愛人の香り立つ翳ある色気にどれだけ酔いしれたことか。
今回初めて生でパリ・オペラ座マノンを鑑賞でき、英国ロイヤルとはまた違った、
退廃な箇所はぐっと押し出し、一方で美しさをとことん強調するされど仕草も踊りもあくまでエレガントにこなしていた魅力があったと捉えております。




幕間に白ワイン。『マノン』観て、赤ではなく白の気分になるとは思いもいたしませんでした。
そして会場では多くの方々から「(大阪から)お帰りー」と声をかけてくださりありがとうございました。
思えば昨年のオペラ座・ガラは鑑賞後に夜行バスで大阪に向かい、その旨を会場であった方々に話すと「いってらっしゃーい」。
2年連続、大阪とパリ・オペラ座来日公演は隣り合わせらしい。
さて管理人は現在、ベラルビさんのレスコー以上に!?鋭く冷たい色気放つフレンチメソッドの悪魔に未だ耳元で囁かれていそうな感覚が残り、
そうこうするうちに明日には2月も末日。今年は閏年でございます。

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