2024年2月21日水曜日

オーケストラ演奏付きでオディールの存在と白鳥コール・ドもたっぷり  (公社)日本バレエ協会関西支部・関西バレエカンパニー公演  第50回バレエ芸術劇場 山本隆之さん版『白鳥の湖』再演   2月17日(土)《大阪市北区》





2月17日(土)、大阪フェスティバルホールにて山本隆之さん改訂振付『白鳥の湖』を観て参りました。
2021年の吹田市制施行80周年・メイシアター開館35周年記念公演に続く再演です。今回は井田勝大さんオーケストラ演奏付きで上演されました。
大阪フェスティバルホールは2008年のボリショイからスヴェトラーナ・ルンキナとアンドレイ・ウヴァーロフを迎えた新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』公演、
そして忘れもしない5年前9月の新国立劇場バレエ団こども『白鳥の湖』における直前の主役2人変更で急遽予定外に出向いて以来3回目でございます。
http://balletkansai.com/2023/02/06/ballet_kansai_50th/

オーディションの様子。山本さん、樫野隆幸さん、振付補佐の真忠久美子さん、石川真理子さんにお姿も。
http://balletkansai.com/2023/09/05/第50回バレエ芸術劇場「白鳥の湖」全幕の出演者選/

照明下見の様子。
http://balletkansai.com/2024/01/30/20240130/



オデット:北野優香
ジークフリード王子:水城卓哉
悪魔ロットバルト:青木崇
悪魔の娘オディール:椿原せいか

指揮:井田勝大
演奏:関西フィルハーモニー管弦楽団


オデットは京都バレエ団の北野さん。2017年のバレエ団公演『くるみ割り人形』全幕や2度の京都バレエ団ガラにおける『眠れる森の美女』、
『ゼンツァーノの花祭り』でも拝見しており、毎回優美な魅力に惹かれておりましたが
オデットでの腕使いの柔らかさ、弧を美しく描くラインにもうっとり。華奢なタイプながらも悲しい可哀想なばかりでなく確固たる軸から繰り出す強さも覗いて
上品且つ白鳥達を率いる凛然とした姿も目に刻まれております。王子との出会いはマイムでの経緯説明がなくても
踊りから感情を醸しながら王子へ切々と訴える悲しみが伝わり、キラリと雫が光るような表情にも見入ってしまいました。
オディールは悪女になり過ぎないようあくまで黒い衣装を付けたオデットに近かった印象。
その中でふと隙を突いて妖しい笑みを流したり、あとにも述べますが椿原さんのオディールと
さらりと入れ替わって王子を益々翻弄させる恐ろしさが伝っていたと捉えております。
髪をセミクラシックになさっていたこともあってか、また目がくりっと愛らしい点と着用衣装の流線形な模様が似通っていたのか
斜め後ろから見るとお若い頃の森下洋子さんに似ていると観察。ぱっと目を惹く華やチャーミングな品が想起させたかと思います。(褒め言葉として受け止め願います)

王子の水城さんは、一昨年の貞松浜田バレエ団とスターダンサーズバレエ団の共同制作作品Malasangre   マラサングレの東京公演にて、
古典の貴公子のイメージを一変させる次々と大胆に斬り込んでいく身体能力の高さにたまげた記憶は未だ残っておりますが今回は正統派な王子様。
牧阿佐美さん改訂版『白鳥の湖』に似たブルーのベルベット生地に金糸で彩られた衣装で登場され、朗らかな王子様で場を楽しませてくださいました。
音楽をゆったり吸って掴むような丁寧な身体の運び方や、オデットにみるみると心惹かれていく様子、
オディールの罠に嵌って遂には結婚を誓ってしまい嘆きっぷりも哀れな様子で、王子の混乱ぶりをくっきりと体現なさっていました。

王子の心理により迫ったリアルな描写も見どころで、ユリア・レペットさんによる王妃と一緒には登場せず1人遅刻して
ぎりぎり花嫁候補達のお披露目に間に合うも、王妃からは身分を弁えるよう警告の眼差しを食らってしまう箇所は
王家の取り決めとはいえ舞踏会に行く気分にならず、重い腰がなかなか上がらなかった本音が行動にそのまま出たと窺えるひと幕でした。
そして跳んで弾けてだけではなく王妃王子親子を気にかけ、玉座の台に体育座りのようにしてちょこんと腰掛ける道化の末原さんの健気なこと。

青木さんのロットバルトは高い背丈を生かしての悍ましい羽ばたきや眼もパワーがこもっていてオデットと王子2人揃って呑み込んでしまいそうな迫力。
3幕では黒い衣装に赤色で彩られた元祖・セルゲイエフ版を思い出させるデザインで
観客の間でも呼び名が色々上がり、デーモン小暮或いは私はシャ乱Qと思い浮かべましたが
(御堂筋線とお好み焼きが好きな東京人である管理人、大阪エレジー好きでございます。お若い方はご自身でお調べください)
仰天メイクや頭飾りを付けたオディールの父親であるのも納得なお姿でございました。

初演時に山本さんは、突如舞踏会でのオディール登場に違和感を覚えていたと仰っていて、疑問点をナチュラルな展開に仕立てたセンスにもこの度も唸りました。
1幕の幕開けからオディール登場させてオデットを脅かす力の存在を示し、また湖畔では拒絶する白鳥達との静かな対立も自然に映り、
オデットとオディール双方がソロ(オディールはオーボエの曲のソロ)を踊る流れもスムーズ。
オディールの登場やソロのときは照明の切替効果も鮮やかで、朝焼けのような朱色の光と水色が交じり合った光が摩訶不思議な空気を後押しし、
湖畔にオディールが出現したら静かな白い世界観が壊れてしまう心配を忘れさせるほど説得力があると唸らせました。
3幕2場も白鳥コールドの見せ場たっぷり。そういえば近年ご無沙汰していた悲しみを引き摺るワルツも取り入れ
白鳥達が悲嘆を体現しながらフォーメーションを作り上げていく光景の中でオデットが王子を許して愛を確認しあうパ・ド・ドゥを展開し、
最後までコール・ドも一緒に丹念に積み上げていく流れから、愛の勝利で締め括る終盤をより引き立ててスケールの大きな幕切れへと繋がっていた気がいたします。
前回以上にコール・ドの精度が高くなっていた印象で、各地からの選抜ですから背丈や体格もばらばらなはずが
踊りも呼吸も全員が丁寧に行う意識が自ずと広がって、身体のラインの見せ方も美しや。実によく整っていたと思わせました。

そして今回はオーケストラ演奏付き。所々乱れかけた箇所もあったような記憶が走りますが、
井田さんの指揮による演奏で山本さん版白鳥全幕を鑑賞できたのは喜びもひとしお。
東京の公演では度々目にする井田さんを大阪しかもフェスティバルホールで拝見する日が来るとは思いもしませんでしたが安心感を持つ指揮者でいらっしゃいます。
井田さんといえば公演の指揮のほか、一般向けのバレエ音楽関連講座での講師も頻繁に務めていらっしゃり私も受講経験は5回以上はありますが
語り口は明るく楽しいもののだいぶ早口で笑、入門者には難易度少々高い内容を一気にまくし立てていくなかなか強者でございます。
しかし深入りした内容も知ることができ、毎回楽しみな時間です。実技だったら全滅でしょうが笑、
バレエの「座学」なら多分私は上級クラスもいけるのかも笑。いや、調子に乗ったらあきまへん。
それはそうと思えば12年前に三重県四日市で開催されたトヨタ二大クラシックバレエハイライトにて
四日市のオーケストラや地元のバレエ教室そしてゲストダンサーとの共演公演にて指揮をなさっていたのがまだ駆け出し!?であった井田さん、
そしてほぼ全幕な演出であった白鳥の湖にて王子を踊られたのが山本さん。
ロットバルトが宮尾俊太郎さんで大変珍しい顔合わせであった公演でもあり、初の鳥羽水族館訪問も合わせて懐かしく思い起こされます。

衣装は前回はほぼ全て新国立劇場バレエ団の牧阿佐美さん版衣装を借りての上演で今回は叶わずであったものの
1幕の宴の衣装は落ち着いたトーン且つカラフルで品があり、線の細いお城や山道の描画はセルゲイエフ版を思い出させました。
湖畔は青みがかった繊細ですっきりとした背景美術、そこへロットバルトの脅威を表すときには燃えるように真っ赤な照明が入り、変化にはっと驚かされる演出です。
レペットさん王妃が舞踏会でお召しになっていた金色の獅子が描かれたドレスも煌びやかで豪華。

衣装については1点だけ、3幕舞踏会の民族舞踊にて、チャルダッシュが可愛らしいデザインながら『コッペリア』村人のように思えてしまい
マズルカは白地の高貴な雰囲気のあるデザインだっただけに心残りでございました。
そうはいっても関西にしては⁈ドヤっとならず全体に品良い纏まりで、山本さんの魅力がそのまま投映されている味わいに思いました。
客席やカーテンコールでの山本さんの変わらぬ爽やかな品あるお姿、やはり素敵です!

それから東京人の素朴な疑問で大阪のバレエ界の方々は何とも思わないかもしれませんが
プログラムに掲載された主要役の方々の紹介顔写真が舞台メイクで、だいぶ古風に思えた次第。
大阪の老舗である法村友井バレエ団が今もチラシ写真を見ると舞台メイク顔写真を使用していて、その伝統かもしれませんが
せっかく今回の白鳥のチラシの写真はナチュラルメイクなお顔で北野さんにしても水城さん、椿原さんにしても皆さん綺麗。
プログラム用とはいえ、プロフィール欄の顔写真に舞台メイク写真を載せる必要性について考えてしまうと同時に
関西と関東の文化の相違点について考察する面白さを更に見出すきっかけとなりました。
私が高校生の頃に書いた人生初の大阪上陸であった修学旅行の文集のような締めになりましたが
大阪の舞台芸術の殿堂であろうフェスティバルホールにて山本さん版『白鳥の湖』全幕をオーケストラ付きで鑑賞できたのはたいそう幸運。
視点や切り口の面白さに再演触れ、上演時間縮小の傾向がある近年の傾向から離れてあえてしっかりと終盤のコール・ドも見せる、音楽も聴かせる、
しかも舞台に引き寄せられるためか時間が長く感じず、寧ろグランド・バレエを心から堪能した心持ちになれる演出でした。またの上演お待ち申し上げます。





行ってみたいと思っていた太陽ノ塔洋菓子店へ。看板上部に、まいどおおきに、と記されています。府内に何店舗かあるようです。
そういえば、2021年の山本さん版白鳥初演は太陽の塔がある吹田市の市制記念としての公演でした。



お目当ては、スワンケーキ!ロールケーキにホワイトチョコレートで作られた頭と首、
羽はメレンゲ、胸元にはおリボンらしきクリームもあるお洒落な白鳥さんです。
とても丁寧に作られていて、スポンジの質感はしっかりされどふわふわ。ちなみにブラックスワンもございます。(但し茶色)
ピンク色のマグカップにお花や果物が描かれているのも可愛らしい。カトラリーはアンティークゴールド。優雅な所作を心掛けたくなる色彩、形です。
コーヒーの深みある挽き方も嬉しい味わい。そして内装にも注目。



額縁から白鳥さんが飛び出してきました



「ワテも山本さん版白鳥観たいさかい」と語りかけたかったのでしょう。
或いは「だいたいなあ、チャイコフスキーさんとサンサーンスさんが白鳥は優雅な生き物って勝手にイメージを作りはって
ほんまはワテらはガーガー鳴くわ、ガニ股でバタバタ歩くわ、賑やかな鳥やねん。
あの湖畔のアダージョなんて7分も持たへんわ。気性に合っている曲は2幕湖畔のコーダの4羽の白鳥さんらが
ジャガジャジャンガ、ジャガジャジャンガと勇壮にケンケンしていく曲くらいやで。白鳥を優雅に静かにできはるのは人間さんだけやから」とでも訴えたかったとか。
(管理人、今年で大阪での観劇は18年、訪問回数は70回を超えておりますが、未だきちんとした大阪弁を話せません)

着席すると真横に白鳥さんの圧。ふかふかのぬいぐるみな作りです。レジ近くにはオデットらしきバレリーナ人形もあり、是非足をお運びください。



昨年9月にも行きましたが、心斎橋パルコのどんぐり共和国。この場面、トトロ達のプリエが見どころ。深いところからの引き上げができているのです。
いわゆるジューシーなプリエ、でしょう。




猫背なカオナシ。私も気をつけます。



千と千尋な世界、迫力あります。この日の山本さん版白鳥出演者の中に、千と千尋の神隠しが大好きな知人が出演。
白鳥コール・ド登場にて、先頭を走りながら頼もしく仲間達を率いていました!
1年前の2月、初台で落ち込む私をオペラシティのオアシスにてずっと励ましてくれた優しいお方でございます。
せっかく大阪から東京まで観劇に来たにもかかわらず地元の人間の励まし慰め係を担うなんて思っていなかったでしょうが、優しさの塊な人柄なのです。



どんぐり共和国はしご、梅田のルクア店。あなたはだあれ、の場面を思い出します。気分はメイちゃん。



オーロラ姫を目覚めさせるデジレ王子のいる角度。どんぐりもいっぱい。



魔女の宅急便、グーチョキパンもありました。お届け物の依頼をしましょう。
天候とカラスには左右されますが、(身代わりジジ、手に汗を握りました)渋滞の心配はなさそうです。
パンも美味しそう。宅配の申し込みのついでにたくさん買ってしまいそうです。



お昼は会場近く、歴史ある建造物ダイビル本館1階にあるドイツ、オーストリアなカフェへ。カフェアマデウスだったか。レリーフな模様が美しい。



ビールグラスの模様が中世の写本に描かれていそうな絵でとても素敵。季節外れな温暖気候であったためぐびっと呑んじゃいました。
ハムやザワークラウトも塩っぱ過ぎない味で、お勧め。デザートも何種類かあるようです。



淀屋橋から眺めるフェスティバルホール。大阪府の中でも特に好きな景色の1つ。川と重厚な建築、ビル群が調和した穏やかな風景です。



フェスティバルホール、快晴です。



宿泊先は会場すぐそば。お1人様で2人部屋プランなるものがありました。お布団を敷いて就寝する部屋で、エアウィーヴだからかふかふかで気持ち良し。
お風呂とお手洗いが別々であるため(入浴時寛げるので嬉しいのです) チェックイン後に大きなバスタブでゆったり入浴し、
サスペンスドラマの再放送を見ながら柔らかなお布団でつい昼寝笑。



大階段



夜になると蝋燭が灯されるロビーのテーブル。



終演後は北新地の鉄板焼きお好み焼き屋さんで乾杯。西日本中心にあらゆるバレエ公演や発表会でお馴染みの女性カメラマンさんと語り合いました。
こちらのお店、終演後でも営業していそうなお好み焼き屋さんを事前に何店舗か調べていた中で候補にあげていたお店でしたが大当たり。
お値段はそこまで高くもなく、しかし牡蠣炒めや牛すじ炒めにしてもタコ玉のお好み焼きにしても
味付けが変なコッテリ感がない上にふわっとした焼き上がり。上品な味付けでした。ああ、山本さんなお好み焼き鉄板焼きだ、と感想一致。



とん平焼き。まず東京で食べる機会がないため注文。薄くのばした具をこれまた丁寧に包んでいて、注文して正解でした。
広々した店内で席の作りも間隔に余裕があり、お店のスタッフの方々もさっぱりと朗らかな方ばかり。寛げる雰囲気です。
今回の白鳥や、都内のバレエ団の大阪公演鑑賞感想から健康維持の秘訣もお聞かせいただき実りある時間となりました。
私の観劇生活についてもたくさん聞いてくださり、救われる言葉も多々いただき、励まされっぱなしでございました。
加えて、大阪のバレエにおけるメイクの濃さの疑問もぶつけてしまい、あのオデコや耳前にクルクルカールを描くのは何やねんと
失礼極まりない質問だったかと思いますが汗、でも長年の疑問なんです。うどんのお出汁とは逆で、バレエメイクは関西(大阪)は濃く関東は薄い。



夜の肥後橋。



おはようございます。題名のない音楽会を視聴したり(趣味においてはクラシック音楽三昧な環境に身を置いているせいか
この日の番組テーマであった、耳に馴染みはあっても曲名や作曲者が分からない特集にて、サンサーンスの白鳥やラヴェルのボレロが取り上げられていてびっくり)
チェックアウトぎりぎりまでエアウィーヴのお布団にくるまっておりました。自宅ではないねん笑。
しかも夜には東京の自宅に着く前にパリへ行くんやで。そんなこんな、晴天に恵まれ、梅田まで徒歩移動。



切りかけてしまいましたが梅田にて食べてみたかったピスタチオクリームトースト。
パンにさくっと染みていて美味しい。コリコリしたピスタチオの食感も散りばめられています。



梅田のヨドバシカメラで見つけた阪神タイガースポテトやチーズ包みおかきと、アサヒリッチビールで乾杯。
山本さん、この度は再演おめでとうございます!そして昨年は阪神優勝おめでとうございます。
王妃様のドレスに獅子が描かれていたことも思い出しつつ、この後は上野へ直行パリ・オペラ座『マノン』です。
さらば大阪、また会う日まで!!

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