2024年2月15日木曜日

オルガンとバレエが出会ったヨコハマフランス祭り オルガンavecバレエ 2月10日(土)《横浜市中区》




2月10日(土)、神奈川県民ホール小ホールにて、オルガンavecバレエを観て参りました。
中田恵子さんのパイプオルガン演奏と遠藤康行さん振付の舞踊が合体した、これまでにお目にかかったことがない形の企画で
オルガンの無限な可能性と舞踊との好相性に気づかされた大変面白い公演でした。
https://www.kanagawa-kenminhall.com/d/avec_2023

https://ontomo-mag.com/article/interview/organ-avec-ballet/


※県民ホールホームページ参考

企画・演奏:中田恵子
振付:遠藤康行
舞踊:渡邊峻郁、遠藤ゆま、三宮結、田中優歩、周藤百音、斉藤真結花
照明:櫛田晃代
照明チーフオペレーター:成久克也
舞台監督:藤田有紀彦
プログラム:
第1部
『ロバーツブリッジ写本』(14世紀)よりエスタンピー・レトローヴェ
渡邊峻郁、遠藤ゆま、三宮結、田中優歩、周藤百音、斉藤真結花

A.ヴァレンテ(ca.1520-1581):松明の踊り
三宮結、田中優歩

M. ヴェックマン(1616-1674):第1旋法による5声の前奏曲※

J. パッヘルベル(1653-1706):カノン
遠藤ゆま、三宮結、田中優歩、周藤百音、斉藤真結花

J.S. バッハ(1685-1750):小フーガ  ト短調   BWV578 ※

G. ボヴェ(1942-):ピンクパンサーのフーガ
周藤百音、斉藤真結花

G. ガーシュイン(1898-1937):アイ・ガット・リズム
渡邊峻郁

J-L. フローレンツ(1947-2004):「賛歌」作品5より、第7曲 光の主
渡邊峻郁、遠藤ゆま、三宮結、田中優歩、周藤百音、斉藤真結花

第2部
P. チャイコフスキー(1840-1893):「眠れる森の美女」より、第1幕 ワルツ
渡邊峻郁、遠藤ゆま、三宮結、田中優歩、周藤百音、斉藤真結花

C. サン=サーンス(1835-1921):白鳥
遠藤ゆま

F. メンデルスゾーン=バルトルディ(1809-1847):ソナタ 第1番より、アダージョ ※

C.V. アルカン(1813-1888):《ペダルのための12の練習曲》より、第4番
三宮結、田中優歩、周藤百音、斉藤真結花

C.ドビュッシー(1862-1918):牧神の午後への前奏曲
渡邊峻郁、遠藤ゆま

C-M. ヴィドール(1844-1937):《オルガン交響曲 第5番》より、トッカータ
渡邊峻郁、遠藤ゆま、三宮結、田中優歩、周藤百音、斉藤真結花

※オルガン・ソロ



中田さんや、神奈川県民ホールで制作に携わっていらっしゃる中野さんの投稿にて、リハーサル写真や舞台写真も多数掲載されています。


遠藤康行のインタビューをお届け!『オルガン avec バレエ』

DancersWebさんの投稿 2024年1月23日火曜日



〈オルガンavecバレエ〉終演しました。 難曲になるとなぜか自分も一緒に緊張してしまい。 特に前半は、普通の演奏会でもバレエ公演でもない公演にお客さんと一緒にドキドキしました。後半はほぐれて拍手がたくさん。こういうものなんだと、やる側も観る...

中野敦之さんの投稿 2024年2月10日土曜日












まず私はオルガンの知識が皆無に近く、オルガンと聞いて思い浮かべるのは教会やコンサートホールにあるパイプオルガン、
或いは小学校の教室に置かれ音楽の授業で先生が弾く中型のもの、あとはバッハ、といった印象。
殊にパイプオルガンに関しては、教会の礼拝にしてもコンサートにしても荘厳に奏で、
奏者は後ろ向きであっても口を真一文字にした険しい表情が背中からも表れて大真面目に弾いている印象しかございませんでした。
(オルガン業界の皆様、偏重なイメージをお許しください)
そんなわけで、オルガン1台の演奏とバレエが共演と聞いても想像ができず、更には曲目を見るとガーシュインや映画音楽もあり
神聖で厳粛な空気を壊さぬよう奏でているお堅い印象しかないパイプオルガンでジャズ要素を盛り込んだ軽快な楽曲をいかにして披露されるのか
バレエでもお馴染みな『眠れる森の美女』花のワルツやサンサーンスの『白鳥』、
ドビュッシーの『牧神の午後』の編曲やバレエとの相性、構成も含め誠に失礼ながら不安すら過っていたのです。

ところがどっこい。様々な不安は幕開けから吹き飛び、まず中田さんの色彩感豊かな演奏に驚愕。
自在に色付けするかの如くキラリと光を放っていくような演奏で、最初の数秒間でこれまで抱いていたパイプオルガンの偏重な印象は消え去っていったのでした。
またバレエとの相性の良さにも驚かされ、決して一方通行にならず、演奏とバレエが瑞々しく溶け合って昇華していき
舞台真正面に聳え立つパイプオルガンは堅固な舞台装置も兼ねていた印象もあってか
堅苦しさは無いものの何処か神聖な香りと清らかな余韻が残っていく、そんな心地良い空間を味わえた思いでおります。

中でも印象深かった曲がいくつかあり、1本はガーシュインのアイ・ガット・リズム。
昔から好きな曲であり、まさかオルガンで聴く日が到来するなんて夢にも思いませんでしたが
お洒落な空気を軽快に表現なさる中田さんの演奏と、意外と申したら失礼ですが渡邊さんの品良くも飄々とした軽やかな乗り具合がぴたりと合わさって
演奏前に渡邊さんが手を差し出してのどうぞ~、の掛け合いも楽しく映った次第です。もう舞台からはみ出そうな心配も演出のうちなのか笑
所狭しと跳び回って魅せる術に音楽目当ての観客も沸いていた様子で、開始と同時に
突然客電もほぼ明るくなる仕掛けも含め、あっと驚く洒脱な味わいが詰まったプログラムでした。

もう1本は牧神の午後への前奏曲。下手すればぼんやりしがちな微睡むような旋律を音の1粒1粒から柔らかな輝きが弾けるような中田さんの演奏が
大きな優しいベールとなって包み込まれるような心持ちとなる中、遠藤ゆまさんの若い大胆さと
情熱を秘めながら包容する渡邊さんのワイルド且つ穏やかな力が絡まってのパ・ド・ドゥから目が離せず。
予測不可能な身体能力での造形美なる競演で、ゆったりした曲調の中で芽生える刺激の張り合いにも釘付けになりました。

バレエで馴染み深い『眠れる森の美女』花のワルツはオルガン1台であっても大編成のオーケストラとさほど違和感無く、躍動感たっぷり。  
2021年に東京文化会館で観た、渡邊さんも出演された日本バレエ協会公演における遠藤康行さん振付コンテンポラリー『いばら姫』幕開けを思い出しつつ
文化会館大ホールとは面積も見え方も全く異なる間近で聳え立つパイプオルガンの演奏と共にパワフルに弾け散る踊りを鑑賞するのは鮮烈な体験でした。

オルガンの構造からしてイメージを覆されたのが『ペダルのための12の練習曲』。
そもそもピアノと違ってペダルそのものから音が出ることすら知らずにおりましたので、ペダルのみで曲を奏でていく様子に仰天でございました。
しかも椅子の両脇を両手で掴みながら脚を腿上げ運動のようにしてペダルを押す姿は
バレエダンサーやスポーツ選手も驚きを隠せないであろう、強靭な腹筋や背筋が不可欠。オルガンとバレエの脚技競演で中田さんの身体能力にもたまげた1曲でした。

序盤から中田さんの色彩豊かな演奏に驚かされ、プログラムは古楽から映画音楽までも用意した変化に富む構成で、オルガンのド素人な私が
パイプオルガンと聞いて咄嗟に思い浮かべる、小フーガト短調もあれば(NHK名曲アルバムでのドイツの教会と険しい顔したバッハの像が映し出される映像も)
これでオルガン⁉と意表を突く選曲もあったりと飽きさせない曲構成に楽しませていただきました。
全曲解説掲載付きで、古楽から歴史を辿り舞踊は抽象的にまとめた第1部に対して
第2部はより具体性や物語性を強めた演出で、全編通して演奏舞台の世界へとスムーズに入り込む大きな助けとなりました。
遠藤ゆまさんら若手女性ダンサー達の踊りの巧さ、フレッシュな魅力にも背中を押されるようなパワーを感じさせ、1人1人少しずつ異なる編み込みヘアもお洒落。
何より、渡邊さんが洒脱系から魔物系まで切替巧みに万華鏡の如きコンテパワーを全開にして何曲も踊られるお姿を、
時には衝立或いは楽器の作りを生かしてオルガンの下の辺りからひょっこりと登場なさるなど
登場からして斬新な振付を間近で鑑賞できた喜びは、当日会場すぐ隣の昼下がりの時間帯におけるの横浜港を照らす晴天の青空を突き抜ける勢いでございました。

それから、遠藤康行さんの振付も実に入り込みやすく、我が脳内で疑問符が一切なく進行していったのは初かもしれません。
あくまで私の視点ですが大概1箇所は突っ込みどころがあり、無音や無に近い音響の中で延々と床でごろごろ寝転がる振付が今回は無く一安心した次第です。
いかんせん、2018年に新国立劇場で開催されたジャポンダンスプロジェクト夏ノ夜ノ夢にて
せっかく渡邊さんが踊るコンテンポラリーを念願叶って初鑑賞、しかも第2幕は下着一枚姿でいらしたにもかかわらず
音楽構成といい、特に2幕でのひたすら息継ぎオンパレードな振付といい受け入れ難さがまさってしまったのは今も脳裏に焼き付いております。
2021年のいばら姫でも、発砲スチロールだったか用いながら床でゴロゴロ、もあったはず。
しかし今回はまずは中田さんの演奏ありきで、また演奏目当てに来場の観客も多数いることが良い意味で制約になったのか!?
音楽を目一杯生かして斬新過ぎる調理はしない路線が吉と出たのか、最初から最後まで疑問符の出番は無し。
オルガン演奏とバレエの醍醐味を最大限に味わえるように、またそれぞれの初鑑賞者も
距離感を抱かないよう、工夫が行き届いた振付演出であったと捉えております。

終演後はアフタートークもあり、中田さんと遠藤康行さんによる歯切れ良くも穏やかな対談を拝聴。
第1部と第2部の構成での工夫や、お互いにフランスで長らく仕事をしていた共通点、
また大学生のときにバレエを始め数年間レッスンに通われた中田さんが語る、オルガン演奏に役立つバレエの体幹鍛錬の好影響話も出たりと
楽しさ満載なトークでした。今回ダンサー達に合わせて中田さんもバレエな衣装で演奏されたことについて
非常に動きやすいと感激なさっていた様子であったため、今後の演奏会の衣装が変わってきそうですねと遠藤さんも引き続きの着用を推奨。
この日も東京はパリ・オペラ座来日公演祭りで『白鳥の湖』昼夜両方完売な盛況でしたが
中田さんに遠藤さん、そしてプロとしてのキャリアをトゥールーズのカンパニーで開始され、
10代の頃より古典からコンテンポラリー作品まで幅広く務めてこられた渡邊さんトリオが主軸となって実現した今回の企画は
東京のパリ・オペラ座来日公演や会場近くの中華街を爆竹や獅子舞で賑わせていた春節にも負けぬ、横浜における盛大なフランス祭と位置付けております。再演を熱望です。
 


※急遽カーテンコールは撮影可能と中田さんが舞台上から告知してくださいました。真正面席に着席していながら我が写真撮影の腕の下手っぷりはお許しください。
写真も下手、バレエも下手、絵も歌も下手、工作も下手、楽器演奏も下手、学業運動芸術全般駄目人生どうしたものでしょうか。
そう自覚して何十年も経過しておりますが。



出演者と振付家全員横並び。



「礼」の姿も美しや。こちらまで自然と背筋が伸びます。



きゃ!



顔出しパネル撮影スポット



この日は晴天に恵まれ、開演前には会場隣の山下公園を散策。いかにも港のヨーコの横浜港らしい風景です。
この後はこの青空以上に爽やかなダンサーを間近席で鑑賞いたしました。目は終始心臓印。



横浜大世界。辰とパンダ。



帰りは中華街の飲茶へ。春節真っ只中で、爆竹の音と匂いが街中で賑やかな祝福感を強めていました。
友人が予約してくれたお店、今年で創業35周年らしい。私の観劇歴(劇場でのバレエ鑑賞が趣味であると自覚してから)と同じ年月です。



紹興酒で乾杯。ああ、幸せな時間です。横浜で大好きなダンサーを観た後に中華街で飲む紹興酒は格別の美味しさです。
(札幌ではサッポロクラシック生、山口県ではひれ酒と、全国各地で似た発言しております私でございます)



前菜3種。海月の歯応えが面白い。



小籠包、香菜入り牛肉焼売アスパラのせ、大根ぎょうざ。大根ぎょうざのしっかりとした食感とさっぱり感の合わせ技が新鮮。
立て掛けてあったメニュー裏側の絵も人間味が感じられて素敵です。



チャーシュー入りクレープ、海老のウエハース巻き揚げ。お茶はジャスミン茶です。



ふかひれ入りスープ



大海老と春雨のピリ辛サテー風味



小柱入りチャーハン香港えび味噌風味!



なめらか杏仁豆腐。



ビントレー版『アラジン』より一足お先に本物の獅子舞!商店街を練り歩いていて、店舗にも立ち寄るらしい。
あの音楽が脳内旋回!!色鮮やかで滑らかな足運びでした。
1月の山口県防府市に続いて今年2度目のかぶりつき鑑賞後にお獅子さんからのかぶりつき。良き年になりますように。

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