2023年11月28日火曜日

若手の挑戦ベテランの円熟味 新国立劇場バレエ団   DANCE to the Future: Young NBJ GALA パ・ド・ドゥ集/NBJ Choreographic Groupより/ドゥエンデ





11月25日(土)26日(日)、新国立劇場バレエ団 DANCE to the Future:Young NBJ GALA  パ・ド・ドゥ集/NBJ Choreographic Groupより/ドゥエンデを観て参りました。
若手ダンサーに焦点を当てた、バレエ団として初の企画公演です。
https://www.nntt.jac.go.jp/dance/young-nbj-gala/


◆パ・ド・ドゥ集
『ラ・バヤデール』第3幕より
【振付】マリウス・プティパ
【音楽】レオン・ミンクス
【出演】廣川みくり 石山 蓮

今回の4本のパ・ド・ドゥの中で最難度な変則構成で、音楽は切り貼りで2幕の男性ヴァリエーション挿入、小道具としてベールあり。
しかもトップバッターで装置も何もない中で幻想的な悲恋を表せねばならず、試練たっぷりな条件でのご披露です。
初日はお2人とも緊張でガチガチで(そりゃそうだ)ベールを持ちながらの回転場面ではベールが徐々におしぼり或いはしめ縄状態になってしまったり
廣川さんの衣装に巻き付いたりと冷や汗展開続出でしたが2日目にはだいぶ改善され、ベール扱いもスムーズに変化。
廣川さんはステップが場面によってはたどたどしく、ニキヤの幻影として伏し目がちを意識し過ぎたか眠そうに見えてしまう箇所は少々気になったものの
時折はっと唸らせるフォルムを描き出していて、背中の柔らかさ雄弁さを生かしての訴えかけは好印象。
石山さんは明るい踊りが持ち味なイメージを持っておりましたが、取り返しのつかないことを起こしてしまっての
猛反省な悲しみを背負ったソロルの登場から物語を立ち上がらせていたのは良き仕事ぶりで技術は安定し、
サポート時も静かな語り合いが聞こえてきそうで、悲劇物もいけそうな印象。楽しみでございます。


『眠れる森の美女』第3幕より
【振付】ウエイン・イーグリング M.プティパ原振付による
【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
【出演】中島春菜 渡邊拓朗

初日、珍しく拓朗さんも緊張されていたご様子で本当に珍しいと思うと同時にグラン・パ・ド・ドゥの尊さ、特別感を再確認。
サポートがおぼつかなくなってしまったり、中島さんもヒヤリとした部分もあれど、
2日目はきっちりと纏め上げ、ゴージャスな迫力で魅了。イーグリング版の、3幕の主役達の衣装には全く合っていないバランス取れていない
重厚美術や装置にも負けぬ存在感、オーラで満たすお2人と想像いたします。登場したときの盛大な結婚式に似つかわしい雰囲気や
中島さんオーロラ姫の大らかな華やぎ、拓朗さんデジレ王子の風格はバッチリでしたからその印象を維持しつつコーダまで繋げていければ
輝き麗しい祝福感に満ちたグラン・パ・ド・ドゥとなるでしょう。


『ジゼル』第2幕より
【振付】ジャン・コラリ/ジュール・ペロー/マリウス・プティパ
【音楽】アドルフ・アダン
【出演】吉田朱里 仲村 啓

吉田さんが全幕を思わす完成度の高いジゼルで驚かせ、今夏の急遽の『白鳥の湖』全幕主演での鍛錬が窺える出来栄え。
身体の置き方、角度、役の掘り下げ、音楽の細部をも踊りで表現して持て余さず隙なく、精霊ジゼルとして存在していた気がいたします。
ただ手脚が長いだけでなくその強みをしっかりと生かしていて、特に腕のラインが描く弧が抜群に美しく、音楽と柔らかに溶け合って浮遊感を漂わせていた印象です。
仲村さんは最初の歩き方が日常生活っぽさを残してしまっていた点は惜しかったものの、立ち方は上品で(これ大事)
思えば昨年の『シンデレラ』ヒマラヤフレッシャーズこと王子の友人抜擢時もポジション組んで正面立ちしていても目を惹く端正な立ち方であったと記憶しております。
純白でピュアゆえに崩れてしまった悲恋物語を読み進めている心持ちとなり、
住む世界は変わっても互いを慈しみ合う空気感ですら愛おしいと感じさせるパ・ド・ドゥでした。
そうでした、月明かりが照らされていましたが、何時の間にか消えていました。月は何時消えた事件、意見があれこれ飛び交っていた昨年の全幕上演が懐かしい。


『ドン・キホーテ』第3幕より
【振付】マリウス・プティパ/アレクサンドル・ゴルスキー
【音楽】レオン・ミンクス
【出演】金城帆香 山田悠貴

つい最近まで全幕上演していた作品なだけあってプレッシャーもあったかもしれませんが
キトリの金城さんは手堅いテクニックの持ち主でサクサクキビキビとした足運びも爽快。初日はフェッテ、悔しかったと察しますが2日目はきっちり。
顔の付け方はやり過ぎず上品に抑え、対するバジルの山田さんはアダージオでも全身からドヤッとした自信たっぷり笑。
新国立ではなかなかいないタイプかもしれません。されどガラであっても瞬時にお祭りな光景を体現できていたと思うと大物の片鱗はありそうと思えました。


◆NBJ Choreographic Groupより  
『Coppélia Spiritoso』
【振付】木村優里
【音楽】レオ・ドリーブ、カール・ジェンキンス
【出演】木村優子 木村優里

木村優里さんワールド全開な作品で、可愛らしさと危うさおどろおどろしさが隣り合わせな展開。
テーブル下からマジックショーのように身体がにょきにょきと見えてくる光景や序盤の時計の音の響きも、とんでもない世界に飛び込んできてしまったと思わす仕掛けです。
パッと見て、コンセプトや内容の詳細が分かるかと聞かれたら再演の今回も私は解釈が難しく思えているものの(我が理解力の欠如です)
ダブル木村さんが並んで踊る箇所は無機質になったかと思えばゾーンに入った木村優子さんが前回以上に独特のダーク感を醸して
お馴染みのスワニルダのワルツが不気味に聞こえてきたほど。フリルは白い衣装がかえって2人の存在の摩訶不思議な魅力を更に浮き立たせていた印象です。


『人魚姫』
【振付】木下嘉人
【音楽】マイケル・ジアッチーノ
【出演】米沢 唯 渡邊峻郁

待望の再演。前回のプログラムによれば、「人魚姫が人間に恋をし、人間になりたいがために魔女の元を訪れ、
美しい声と引き換えに人間になる為の飲み薬をもらった後のお話」との説明。
劇中の大らかなスケールも持ち合わせた曲の部分は海の揺らめきと昂ぶる思い双方の溶け合いを帯びた膜を彷彿させて2人を優しく覆うようにも聞こえ
静かな部分は王子がそっと近づきながら接するうちに人魚姫が心を少しずつ開き、2人の距離感が近づく語らいに思え、音楽の選曲にも再度唸りました。
悲しくも清らかな物語を米沢さん渡邊さんがリフトや手の翳しで丹念に紡ぎ、
リフトが豊富にありながらも何処かの『くるみ割り人形』とは違ってやみくもに詰め込んだのではなく
人魚姫と王子の高揚する感情をそっとのせた美しいリフトばかりであったのも好感を持ちました。
渡邊さん王子の心の襞の表現や追いかけて光と消える幕切れにも身震い。
人魚姫と出会い、歩けず転倒しそうになるときの身体の支え方や急かさない接し方も優しいことよ。
またリフトにて持ち上げるときのみならず降下させるときの丁寧な過程にも目を奪われ
人魚姫は勿論のこと王子の指先に至るまでさりげなく美しさを見せながらこなす力量に脱帽。
後味は変に重たくならず、このあと人魚姫と王子の運命はどうなったか、王子が観客にそっと疑問を残しての幕切れとも受け止めました。
何もかもを浄化させ洗い流すように神秘的で美しく、涼やかな潤いに抱かれた思いに駆られる作品です。
尚、王子の衣装が一新され、前回は暗めの緑色っぽい長袖襟付きシャツで現代風だったデザインから、白いブラウス?に白い棒タイ。
跳躍するたびに顔にバシバシ当たるのが気になってしまい(効果音が入りそうなほどずっと激しく当たっていました汗)もう一工夫あれば尚素敵に映ったかもしれません。
前回の現代風シャツでも、王子であっても海に行くときは動きやすい服を選ぶ可能性もあり得ると解釈して観ており
モダンな風味はあっても何ら違和感はございませんでしたので、前のデザインもまた観たい気もいたします。


『Passacaglia』
【振付】木下嘉人
【音楽】ハインリヒ・ビーバー
【出演】小野絢子 福岡雄大 五月女遥 木下嘉人

4人とも白い衣装で小野さんと五月女さんは短い丸みあるスカートが付いていて、宇宙にて繰り広げられていそうなSF風な雰囲気。
小野さんと福岡さん、五月女さんと木下さんが光を浴びながら同じことを交互にこなしていても
ふとした仕草や角度が少しずつ異なっていて、されど音楽にぴたりと嵌って気持ち良く両ペアの踊りを堪能。
照明も工夫されていて冒頭から静寂の中に光の道が出来上がり、2階から観ると奥から1階席全体に広がるように道が光っていていた印象。
身体を自在に絡めたり、静かな間の取り方も含めて立体的な美しさを次々と表していく4人の技術力にも脱帽。
後半、照明を灯す福岡さんの指パッチンも2階席奧までよく響きました。


◆ドゥエンデ
【振付】ナチョ・ドゥアト
【音楽】クロード・ドビュッシー
【美術】ナチョ・ドゥアト、ウォルター・ノブ
【衣裳】スーザン・ユンガー
【照明】ニコラス・フィシュテル
【ステージング】キム・マッカーシー
【オーガナイザー】カルロス・イトゥリオス

振付・美術
ナチョ・ドゥアト

【出演】
「パストラル」 直塚美穂、木村優子、中島瑞生
「シランクス」 花形悠月、西 一義
「フィナーレ」 山田悠貴、石山 蓮、小川尚宏
「神聖な舞曲」 赤井綾乃、徳永比奈子、山本涼杏、中島瑞生、西 一義、森本晃介
「世俗の舞曲」 全員

2015年以来8年ぶりの上演。これまでベテランが主軸を担当してきた印象が余りに強く、また2008年のバレエ団によるワシントンD.C.公演でも上演され、
現地の客席で観ていた私も細胞が暴れ出しそうなほどに大喝采を受ける好反応。
バレエ団の底力を見せた作品でもあるため、今回は若手中心での上演と聞いたときは正直不安が過ったものです。
しかしこれまでさほど気にとめずにいた方の力量がぐっと示されたりと収穫たっぷりでした。
まず木村さんの体幹の強さ、独特の質感に釘付け。重心を下に落としてのポーズはずしっと力強く、そうかと思えば身体が音楽と触れ合うように流れが鮮やかで
この作品はやや暗がりで踊られるため顔の表情での誤魔化しも不可能な中で身体の動き1つ1つから不思議な魔物感を放っていたと思えます。
それから中島さんは、何しろ嘗ては山本隆之さんが長年務めていたパートを担当と知ったときは大不安ばかりが募りましたが大変失礼な心配で
2階から観ていても立体的な身体の使い方やパストラルでの直塚さん木村さんを包み込むように纏め上げながらリードする力にもびっくり。
頭を床につけてのポーズも全く危なげなく、奇怪な彫刻のような体勢もくっきり。恐れ入りました。
フィナーレでの小川さんの背中が機敏に動くしなやかさも目に留まり、全員で織りなす最後の「世俗の舞曲」は神秘的な音楽と振付がじんわりと溶け合い
何度観ても体内にまで森の精霊達が放つパワーが流れ込んでくるような気分。ドビュッシーの曲の中で最も好きであり
また私自身人生初のコンテンポラリー作品の鑑賞が2006年のナチョ・ドゥアトの世界(ドゥアト作品3本立て公演)でしたから
思い入れが深くなった17年前を思い出したりと感慨深いものがありました。
ナチョ・ドゥアト3本立て公演でも上演されたポル・ヴォス・ムエロ、そしてジャルディ・タンカート
(センスや成熟して研ぎ澄まされ、洗練された色気も不可欠な作品で、渡邊峻郁さんに是非踊っていただきたいと夢を抱いております。
勿論、トゥールーズ時代に踊っていらっしゃるポルヴォスも)再演お待ち申し上げます。

日本ではガラを観る機会も多く、例えば10分ごとにフランス王宮、ギリシャの海、深夜の森の墓地、バルセロナの街、と
次々と異なる物語の舞台が登場して一瞬で作品の世界観を表現し伝える光景にすっかり慣れてしまい
公演におけるパ・ド・ドゥ集で若手が挑戦してこなす大変さを感じた企画で厳しめな意見も出してしまいましたが
ただ誰にでも初回、初挑戦はあるわけです。2日目に見違える出来になったペアもいたりと1回の本番の大切さも身に沁みました。
しかし全パ・ド・ドゥが初日から冷や汗物オンパレードであるのはそれはそれでバレエ団の公演としては成立が難しいでしょうから
今後は中堅のダンサーも混ぜつつのパ・ド・ドゥ集企画も期待したいところ。大王道の、ダイアナとアクティオンやタリスマン、サタネラ等
ズンチャッチャ音楽系統のものを新国立の公演として上演したらどんな舞台になるか興味はございます。
そしてドゥアト作品は世代問わず、ベテランの味わいも観たい作品ばかりで、定期的な上演を心待ちにしております。

※2006年に上演されたナチョ・ドゥアトの世界の概要。こういう企画もまた観たい!
https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_004939.html


※ご参考までに、2021年秋のDance to the Future感想です。『Coppélia Spiritoso』、『人魚姫』、『Passacaglia』が初演されたときの公演でございます。
https://endehors2.blogspot.com/2021/12/dance-to-future-2021-selection-112728.html


※ワールドバレエデー、確か今月末までだったか。私も駆け込みで再度視聴の予定でおります。
新国立劇場バレエ団もSNS駆使して宣伝していました。このポーズ、立体感といい鮮烈さといいカメラに向ける眼差しといい何度でも見つめたくなります。






2日連続で、オペラシティのパスタフローラの後に新しくできたキンボシパスタカフェへ行ってみた。人魚姫な色彩の翠で乾杯。
そしてドキドキしながら観た若手パドドゥ集の話も弾みました。



翌日はミント入り



バジルクリームパスタ。名古屋での2日目バジル、海老フライの話も聞いていただき(海老フライの存在が2日目バジルと並んだ笑。まあ滞在中8本も食べたのは事実である)
今振り返っても、カロリー過剰摂取も含め楽しかった名古屋でございました。


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