2023年11月24日金曜日

ステージバレエアカデミーにて江藤勝己さんによるバレエセミナー  ライモンダ




11月19日(日)千葉県柏市のステージバレエアカデミーにて開催された、
江藤勝己さんが務めるバレエ音楽セミナーを受講して参りました。今回は『ライモンダ』です。
https://www.stageballet.net/

https://www.stageballet.net/pdf/ballet_communication.pdf#zoom=100

結婚式場面の上演機会はしばしばありますが全幕上演の機会は少なく、しかし度々当ブログでも触れております通り、私の中では音楽も振付も最も好きなバレエ作品です。
昨日11月23日にはバレエカンパニーウエストジャパンが神戸で全幕上演が行われ、
阪神とオリックスの同時交代優勝パレード以上に興味をそそられましたから、どこでもドアーがあれば観に行きたかった私でございます。
(それよりも、同日開催でチーバくんも参加した千葉県県制150周年記念パレードも観てみたかったが)

それはそうと毎回のセミナーもですが江藤さんの一方的な進行の説明ではなく受講者達もああだこうだと映像や音楽を鑑賞しながら言い合ったりと和気藹々。
今回は以前にも同じテーマで開催もされていたためか少人数の参加者であったため、一層親密度も高まりながらの学びとなりました。
今回は開始にあたってまず江藤さんから『ライモンダ』を「生での全幕鑑賞」経験有無について質問。
咄嗟のことで私も整理がつかぬまま後出しであれも観たこれも観たとお伝えしてしまうこととなってしまいましたが今一度整理。
生での全幕鑑賞最多は新国立劇場バレエ団で2004年が1回(人生初新国。用事が入りそうだったため1日空けていたら入らず、
そこで新聞の告知で気になっていたため当日券で行ってみた次第。これで我が人生の主軸が決まったモンダ)、
2006年が東京公演でゲネプロ1回本番5回、大阪公演が1回。2008年ワシントンD.C.公演で2回、新潟公演で1回。
2009年が6回、2021年が5回。計22回?です。計算に自信ございませんが。
他にはABTが2回、キエフ(現ウクライナ国立)が1回、牧バレヱが1回、バレエ協会1回、と思います。
「生での全幕鑑賞」は恐らく約30回でしょうか。発表会ではほぼ全幕が姫路で1回、2、3幕のみ愛媛県西条市で1回ございます。
映像での全幕はボリショイLD(ベスメルトノワ)、シネマ(スミルノワ、)、キーロフのコルパコワ、ミラノ・スカラ座復刻版、です。
安西先生からお叱りを受けそうですが、計算はもう諦めます。トラベリングだけは散々やらかして試合終了です。

もしかしたら回数だけは観ている方かもしれませんが、また作品関連の講座はこれまでに守山実花さんのラファエラ・アカデミアや
福田一雄さん、井田勝大さん、と複数の講座を受講しているものの切り口が皆様違っていて毎回が発見の連続。
今回初めての気づきも勿論あり、まずは転調が多いこと。1曲の中で場面によっては数秒ごとに転調が行われていて
少しずつずらしながら不思議な高みを目指しているように聴こえ、心がすっと昂ぶっていく気分となる曲が多々ある気がいたします。
私が世界で一番好きと綴っております、1幕のグラン・ワルツも胸がふわっと吸い上げられそうになるわけです。

もう1点は管楽器の多さ。よくよくオーケストラ編成を見ると本当に多い。元吹奏楽部員もびっくりです。
だからこそ、序曲における静かであってもロマンを掻き立てるファンファーレや、2幕の帰還・マントでジャン!の箇所、
迫力もさることながら強弱も自在で耳にも残りやすい旋律と感じます。バレエ音楽の中で、吹奏楽用に編曲された曲をいくつか聴いたことがありますが
実は最も違和感がなく聴けたのが『ライモンダ』で、管楽器の豊富さが影響していると思うとようやく納得できました。
なぜかピチカートのヴァリエーションも入っていましたが、クラリネットが弦楽器の代わりに頑張っています。
そういえば、吹奏楽部の先輩が『白鳥の湖』の吹奏楽バージョンもあるけれどあれは本物の弦楽器がないと厳しいとぼやいていらした姿は今も記憶にございます。

また管楽器に限らず、1曲の中で様々な楽器が主旋律を交互に奏でつつ、調和が取れている部分にも注目。
特に2幕のライモンダと友人たちの踊りのコーダを聴いてみると、楽器同士で会議でも行っていそうに思えるほどです。
それから余談ですが東京どころか関東に1人いるかいないかの珍しさでしょうが私が世界で一番好きなヴァリエーションである2幕のライモンダのソロ。
女性ヴァリエーションの中でこうにも次々と異なる管楽器が立て続けに主旋律を奏でる曲はそうそう無いと思われ
特別ドラマティックなわけでも派手な見せ場もありませんが、好んで観て聴いてしまうヴァリエーションです。
チャイコフスキーが行書で装飾もふんだんにある文字ならば、グラズノフは楷書であっても文字の太さ細さ、濃淡は豊かに連ねていくイメージを勝手に持っております。

また女性だったらスカーフを贈ってくれてそのまま出征したジャンと、貢ぎ物わんさかなアブデラフマンに挟まれたら揺れ動くか否か、
3幕ヴァリエーションの重み等、各キャラクターの魅力や、現在の情勢下で上演する難しさについても説明。
私もつくづく思いますが、いくら19世紀末に振り付けられた作品とはいえ、
バヤデールや海賊等以上に、あらゆる全幕古典バレエの中での東洋世界の描写において最も上演が難しい作品と捉えております。
いくら綺麗にサラセン達を描いたところであっても結局勝利はヨーロッパ側であり、(決闘しても絶命しない版も近年誕生しましたが)
ただ綺麗に上品にサラリとし過ぎるとインパクトが残りにくく、かといって悪者には描きたくないのが現状でしょう。
新国立が米国で上演できたのはサラセンの描き方や衣装が極力品良く仕上げ、
フランス側(ヨーロッパ側)とサラセン側が互いに敬意を払って接する様子をしっかりと描写した点が大きな理由の1つと思っております。
新国立のワシントンD.C.公演時に、到着した空港内で地下鉄乗り場へ行くシャトルバスで移動する時、
運転手さんのお名前がムハンマドさんで、お顔立ちからしてもイスラム圏にルーツがありそうでしたから
米国で生計を立てて暮らしているムハンマドさんが仮にご覧になっても嫌な気持ちにならないか、到着早々から考えが巡ったものです。
実際には2幕の芸人達の踊りで客席では笑いも起きていたくらいでしたので、ひとまず受け入れてもらえたのでしょう。
そうはいっても私が牧さん版で毎回笑ってしまうのはお饅頭の騎士かと見紛うジャンの肖像画が登場したときで、あれだけは描き直しを要望笑。
そんなわけで、令和5年に初演したバレエカンパニーウエストジャパンの山本康介さん版は気になる演出です。

話を戻します。映像は主にミラノ・スカラ座バレエ団による初演復刻版に沿っての説明で、私も所有していながら観るのは10年ぶり。家の何処かに眠っているはず汗。
とにかく出演者大人数で、エキストラも多し。夢の場面や結婚式も多層コール・ド構成で立ち役もたくさん、舞台に隙間が無い。
そして衣装が妙にカラフルで、ただ十字軍の格好は写実的で歴史書から飛び出した感があります。
帰還の場面は危機感に欠けてやや迫力不足に思えたものの、当時の観客は東西の文化の交差が織りなす悠久の歴史ロマンに浸りながら観ていたのであろうと考察。
(ただ武勲を立てての戦地から帰還である上に婚約者が誘拐されかけていた状況を思うと、
2021年6月11日の初台にて慄いた、目をぎらつかせて全身から炎上げながら颯爽と出現のほうが理想だが)

また江藤さんも携わっていらした2018年バレエ協会での全幕上演時のエピソードもお話しくださり、更に作品の面白さに触れたセミナーでした。
協会公演は2日目の昼夜2回公演を観ており、衣装の一部が十字軍時代よりもだいぶ近代に思える云々と不満もかなり書き連ねておりましたが
ロシアのプロダクションを丸々上演できたのは今思えば幸運であったとしみじみ。アリーエフ版の再演も願っております。




ミラノ・スカラ座復刻版『ライモンダ』DVD。主演はノヴィコワとフォーゲル。フォーゲルは円熟味と締まりが増した現在の方が魅力ある気がいたします。



夕日が綺麗に照らす南柏駅のホーム。

0 件のコメント: