2023年11月21日火曜日

古典の味を重んじた新版   東京バレエ団『眠れる森の美女』11月11日(土)








11月11日(土)、東京バレエ団『眠れる森の美女』を観て参りました。斎藤友佳理さん新演出版の初日です。
https://www.nbs.or.jp/stages/2023/sleeping/


※キャスト等はNBSホームページより

音楽:ピョートル・チャイコフスキー
台本:イワン・フセヴォロシスキー、マリウス・プティパ(シャルル・ペローの童話に基づく)
原振付:マリウス・プティパ
新演出・振付:斎藤友佳理
ステージング・アンド・プロダクション・コンセプト:ニコライ・フョードロフ
舞台美術:エレーナ・キンクルスカヤ
衣裳デザイン:ユーリア・ベルリャーエワ
照明デザイン:喜多村貴

国王フロレスタン14世  中嶋智哉
王妃          奈良春夏
オーロラ姫       沖 香菜子
デジレ王子       秋元康臣
カタラビュット、式典長 岡崎隼也
悪の精カラボス     柄本 弾
リラの精        政本絵美

- プロローグ -
妖精たち:
カンディード(優しさ)         三雲友里加
フルール・ド・ファリーヌ(やんちゃ)  涌田美紀
パンくずを落とす精(寛大)       足立真里亜
歌うカナリヤ(遊び心)         安西くるみ
ヴィオラント(勇気)          伝田陽美

- 第1幕 -
4人の王子: フォルチュネ王子     ブラウリオ・アルバレス
シャルマン王子      鳥海 創
シェリ王子        安村圭太
フルール・ド・ポワ王子  後藤健太朗

- 第2幕 -
公爵令嬢             榊優美枝
ガリフロン、デジレ王子の家庭教師 安村圭太

- 第3幕 -
宝石の精: ダイヤモンドの精       伝田陽美
サファイヤの精        二瓶加奈子
金の精            足立真里亜
銀の精            加藤くるみ
プラチナの精         池本祥真、安村圭太、鳥海 創、加古貴也
長靴をはいた猫と白い猫    後藤健太朗、涌田美紀
青い鳥とフロリナ王女     生方隆之介、中島映理子
赤ずきんと狼         安西くるみ、岡﨑 司
親指小僧とその兄弟と人食い鬼 髙橋隼世
大野麻州、小野陵介、小仲 花、野本紗世、長谷川結子、花田純之介、矢崎佳奈海

指揮: トム・セリグマン
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
協力:東京バレエ団OB・OG、東京バレエ学校


沖さんのオーロラ姫はオーラが実に眩く、登場時に薄茶なカーリー鬘付きであった衝撃もやんわりと中和させてくださったのは
ぱっと華やぐ顔立ちで小顔、手脚が長く恵まれたプロポーションであるため装着の違和感が最小限であった救いによるものでしょう。
やや技術で不安定な箇所はあったものの、ゆったりした音楽を持て余さず四肢が伸び、終始姫らしい輝く気品を放っていた印象です。

プロローグの妖精は技術達者な方々ばかりで盤石な踊りを堪能。さりげなく小難しい回転取り入れられた
難度高き振付ながら、ぎこちなさ皆無で紡いでいく光景に層の厚さを再確認。
とりわけ足立さんが爪先で細かく奏でるように踊るパンくずを落とす精(寛大)、
シャープに潔く切り込んで角度を整えていく伝田さんのヴィオラント(勇気)が脳裏に焼き付いております。
伝田さんの職人芸な踊りは古典、モダン問わずいつ観ても気持ち良く目が冴え渡り
3幕での硬質に捌くダイヤモンドも宝石隊の隊長としてびしっと場を引き締めていらっしゃいました。
フロリナ王女中島さんの張りのある強さと優雅さを放つ踊りや生方さん青い鳥の柔らかく高く舞い上がる飛翔も目を惹く2人です。

事前に目を通した斎藤監督のインタビューにて非常に力を入れた旨が書かれていた幻影の場面の
オーロラ姫、、デジレ王子、リラの立ち位置関係は上の階から眺めるとリラを軸にオーロラと王子の間に、リラのお付き達と森の妖精達が整然と壁を作り隔てながら
王子の恋心を更に昂らせていたと見て取れ、もどかしさの強まりが伝わるひと幕。
秋元さんが着こなし難しい白っぽい衣装ながら(絵になるのはハードル高きデザイン汗)
繊細な恋心を全身で体現され、ポーズ1つ1つの連なりも端正。もう少し踊る場面もあれば見応えある場と化していたかと思います。
しかしこの場面、1階席での鑑賞者によれば姫と王子達が妖精達に隠れて何をしているのか非常に見え辛いそうで
床照明でもないのに上の階から観るほうが流れがよく分かるとは皮肉なこと。再演時は要改善な点の1つかもしれません。
加えてリラが何でもかんでも御膳立てな進行で王子が剣も持たずそんなにも踊らず
王子の試練乗り越えが見えにくく残念。何時の間にか眠る姫出現な流れも少し首を傾げました。
舟のリラ号は大き過ぎず小さ過ぎず、船舶免許なくても問題なさそうなサイズで一安心。(無駄に大きい団もある汗)

通常はオーロラが踊る部分も担当するなどやること盛りだくさんな大忙しな妖精として描画されているリラを
政本さんは凛とした威厳で魅せ、すらりと高い身体を粗なくコントロール。優しい母性よりもクールな統率力で惹きつけ安堵感を与えるリーダーでした。
柄本さんカラボスは烏の頭がデカデカとリアルに屋根部分に設置された椅子に腰掛け登場したときは烏の頭にばかり目がいってしまい困り果てましたが笑
(夜行バスに乗車されたことがある方、顔を覆う半球型のカバーがついている座席のカバーが烏の頭とご想像ください)
腰を曲げて歪ませながら歩く姿もふと上げた顔からも恐怖より寂しさが入り乱れ、招待枠から漏れてしまった悲しみが仕草からも伝わって
薄幸な雰囲気を醸し出し、悪女では全くない造形。だからこそお城を脅かす存在となってしまっても何だか頷けてしまう説得力がありました。
歩くときに杖に手と脚がやっと追いつくような、歩くのも精一杯な姿も、他日に王子を踊る人と同一人物に思えず。

特に演出で好ましい印象を持ったのはじっくりと描写した目覚め。目覚まし時計倍増なファンファーレも好きであると同時に
オーロラと王子が愛情を確かめ合う所謂目覚めのパ・ド・ドゥの音楽両方好きであるため
どちらも取り入れた振付観てみたかったのです。前半に眠りの静寂から少しずつ解放され王子と心を交わす過程を丁寧に、
後半ではファンファーレ目覚まし音楽にのせて両親達を起こしにいく晴れ晴れとした様子を描写。
オーロラのベッドがいたく狭そうで新幹線のグリーン車席1席分かと思わせた点を除けば(柵もないため寝返り打ったら落下しそう)工夫光る演出と捉えております。

記憶が正しければ2005年まで上演していたバレエ団オリジナル全幕版の衣装美術が
とにかくコテコテ大レトロな色味、デザインであったためひとまず衣装や美術一新はめでたきこと。
前版を私が観たのは2005年夏の小出領子さんとマニュエル・ルグリ主演の1回のみで、
創立早々から海外公演多数の名門バレエ団ですから三大バレエもさぞ豪華絢爛な衣装美術であろうと予習もせず期待だけして行ったら
巨大なピンク色リボンが描かれた背景といいフラダンスか南国の舞踊を思わす森の妖精達といい
目を疑うようなセンスの連続に上演時間中は空いた口が塞がらぬままであったのは未だ忘れられぬ衝撃でした。
ただこれは序の口に過ぎず、翌年の世界バレエフェスティバル全幕プログラムで初めて観た
『白鳥の湖』村人衣装やロットバルトのアップリケがもう1段上を行くセンスでしたから眠りの衝撃は薄れていったものです。
ただ前版眠りは制作時期が昭和の真っ只中でしたから平成半ばの時代に観て今ひとつ時代錯誤な印象を持たせたのは仕方ないと諦め
その後はマラーホフ版眠りが取り入れられて2006年、2015年の2回鑑賞したのち、遂に令和になってようやく東京バレエ団の新版眠りが完成。まずは安堵です。

そうはいっても令和の日本のバレエ団の全幕新制作にしては衣装において疑問を投げかけたくなるセンスもあり
中でも姫の鬘がローズアダージオ登場時に視界に飛び込んできたときは思わず脳内ソ連にタイムスリップして「セミゾロワ??」
幸いにも私が観た日の沖さん、そして他日主演された秋山さん金子さんともに写真で見る限り似合ってはいたため良かったものの
繰り返しにはなりますが日本のバレエ団の新制作で姫の鬘付きはびっくりでございました。
私もロシアバレエ特にボリショイは好きですし、斎藤監督のロシアバレエへの愛着は分かりますが姫の鬘は疑問に残りました。
また古典バレエの最高峰と呼ばれる、究極のお伽噺な作品なだけあってしかも3幕は贅を尽くしての結婚式。
一部の衣装だけでも調和がずれると途端に全体のバランスも危ういと思わせ、親指小僧とその兄弟と人食い鬼達の色違いベッタリ原色勢揃いデザインは
いくら他の物語からの客とはいえども場違いな印象を抱かせてしまった気がいたします。赤ずきんは可愛らしかったが赤と緑の主張が強すぎた感が拭えずでした。

一方でうっとり見入った衣装も勿論あり、プロローグ妖精達は色味も頭飾りのデザインも全て異なり、
石だけ色違いですと言われても客席からは分かりません状態になる初台と同じ事態にならず笑。
カヴァリエ?達はリラ色で纏められたと思われますが色味が強いせいかラベンダーにも思えたものの男性陣の踊りもレベルが高く統制が取れていてラベンダーズ大活躍。
(初台はブルーインパルス。どうしても呼び名を付けたくなる性分や風変わり着眼点をお許しください)
ヴィオラント(勇気)のルビーで纏められたような高貴できりりとした色彩や、フロリナ王女の胴部分はベルベットでチュチュは淡めのブルーで整えた組み合わせも上品。
宝石女性陣もそれぞれの宝石が持つ特徴をよく表し、サファイアの渋めな青もまた良きスパイス。
対して男性4人のプラチナが皆お揃いである上に宝石らしい煌めきは随分と抑えめであったのが惜しい気もいたします。
1幕オーロラはひとまずピンク色であるのは胸を撫で下ろしたところですがテカリが目立った印象が先行してレトロな漫画や絵本を彷彿。
沖さんに似合っていたから良かったが。

郊外の高速道路から見えるゴテゴテな宿泊施設思わすセンスから脱却して装置は壮麗且つ洗練度も上がり、3幕の多層な柱とアーチで彩られた大広間は隅々まで観察。
貴族は1着1着衣装も違って凝った作りながら1幕も3幕ももう少し人数増やした方が隙間が無く豪華さも前面に出ると思いました。
一部東洋人にはしっくりしづらいピンクもあり、これまた少女漫画趣味かと思えたものの
初日の客席も舞台もまだ緊張走る日であったせいか私が何でもかんでも過敏反応してしまっただけかもしれません。
ロシア(旧ソ連含む)の古典の味を重んじた斎藤監督版、現在ではもはや貴重かもしれないメルヘン要素が濃いめな王道眠りでございました。





2幕装置



3幕装置



上野駅近くの喫茶古城へ、ど迫力な入口。






1幕オーロラ、ピンク色衣装で安堵、ふわふわと泡立ついちごジュース。



翌日、秋山さん宮川さん主演日を観た我が後輩と合流してロゼで乾杯。キャスト違い感想に興味津々!

2 件のコメント:

Aki さんのコメント...

東バの新しい眠り、素敵な舞台でしたね。
オーソドックスで温かくて美しい舞台でした。
金髪のオーロラ姫は初日、大きな違和感がありましたが、だんだん慣れました。(笑)
秋山瑛さんのオーロラ姫、ぴったりで最高でした。
親指は要らなかったかも、ですね。

管理人 さんのコメント...

Aki様

こんばんは。新制作で期待が集まっていたからこそ様々な意見が飛び交いましたが
王道な御伽噺な演出、なんだかんだ言いながらも堪能いたしました!
複数回観ていくと、金鬘も慣れそうです笑。初日は驚きの反応、息遣いがあちこちから漏れていた気がします。
秋山さん、軽やかな高いテクニックに、可愛らしさと美しさが合わさっていたであろうオーロラ、素敵な姫君であったと想像できます!

親指は、衣装をもう少し周りと調和できたら。
あと、長い印象も残ってしまいましたよね。