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2023年6月8日木曜日
月と地球の往復ファンタジー バレエシャンブルウエスト「ルナ」ー月の物語かぐや姫 5月28日(日)
5月28日(日)、バレエシャンブルウエスト「ルナ」ー月の物語かぐや姫を観て参りました。
https://www.hachiojibunka.or.jp/archives/eventinfo/0528balletruna/
KAGUYA:柴田実樹
時の帝:逸見智彦
銀百合のしずくの精神:伊藤可南
長耳:土方一生
赤目:吉本真由美
月の帝:佐藤崇有貴
龍の頭:藤島光太
竹取の翁:西川古柳
序奏が始まるとまだ幕が開く前の段階から満天の星空が会場に投影され、宇宙に身を置いた気分。
やがて幕が開くと月の世界へ。王族や住民達の生活が描かれ、原作ではむかしむかし竹取の、と始まる以前の
心が廃れていたが故に栄養摂取のために地球へ送り込まれるかぐや姫の生い立ちの設定に興味津々に見入りました。
柴田さんのKAGUYAは何処かミステリアスで美しく、月の帝に対してもきっぱり意思表示をする姫。
地球へと行くように命じられたときは少し戸惑うも、いざ地球に降り立つと人々の中に溶け込みつつも、着物衣装がよく映え
頭1つ抜けた美もまた貴い身分をよく表していたと思えます。芯の通った踊り方も目に響き
昨年の『眠れる森の美女』に続き主演舞台を鑑賞でき幸せを感じた八王子の夕べでございます。
月世界からのお供としてうさぎさんも活躍。耳から頭にかけての頭飾りの形が
ボリショイ『ライモンダ』ジャン・ド・ブリエンヌの兜に似通っている気がしてならない私でしたが(銀色の丸い頭型の帽子にラディッシュが生えたような形ですが)
長耳の土方さんがぴょんぴょんと弾け跳びながら恭しく仕える頼もしいうさぎさんで、KAGUYAにとって心強い相棒であったことでしょう。
赤目の吉本さんの愛嬌と厚みの加わる踊りも味わいがあり、思えば長耳も赤目もうさぎの特徴をそのまま役名にしたのであろうと想像いたします。
KAGUYAと惹かれ合う時の帝の逸見さんは平安貴族の装束が絵になり、このまま百人一首の絵柄になっていても違和感皆無な雅やかさでしょう。
終盤にはパ・ド・ドゥであったか、跳躍も多々ある振付も軽やかな身のこなしで、衰えぬ身体能力に驚きを覚えた次第です。
KAGUYAとの別れはそれはそれは切なさが突き刺さり、最後の最後まで愛おしむように視線を向け
ついのKAGUYAが月へ帰ってしまうと佇んで光を静かに浴びる姿がいつまでも引き摺る余韻として刻まれております。
かぐや姫のバレエは国内外問わずバレエ化はされていて、その昔レニングラード国立バレエが来日公演で持ってきたときはびっくりしたものです。
また2021年に第1幕から披露し、今春に第2幕、そして今秋に全幕版としての上演が予定されている東京バレエ団の公演も注目度が高まっているかと思います。
シャンブルのルナでは衣装に着物デザインも取り入れてはいても押し出し過ぎず、全体がカラフルでファンタジックな路線。
婚礼の場なんぞ平安宮廷に洋物が混ざった華麗なる絵巻物で、ヴァリエーションもふんだんに用意され、
ディヴェルティスマンやかっちりとした様式美が連なっていた印象です。
KAGUYAのもとを求婚者が訪れる場も見どころで、4人の皇子がやってくるとのあらすじを読み
ローズならぬタルトならぬ「バンブーアダージョ」がお披露目かと脳内を駆け巡ったのは私くらいかもしれませんが
アダージョではなく持ち前のテクニック合戦。皇子達の名前も、槍、剣、弓、力、といった特徴をそのまま明記していて、
火花を散らし合いながら手にそれぞれの商売道具を持っているため分かりやすい。力の皇子の場合は岩を持ち歩いていましたがアピール効果はあったのか笑。
音楽は東洋を特別意識せず、華やか勇壮なクラシック音楽が目立ち、中でも婚礼の場におけるグラズノフの四季の使用は
幻想的に香り立つ華麗な宮廷との溶け合いがしっくり。和物とグラズノフがこうも好相性とは鮮烈でございました。
音楽構成は福田一雄さん、選曲は江藤勝己さんだそうです。
地球にやってきて生まれ変わった幼年のKAGUYA、竹取の翁と翁の妻は西川古柳座の人形遣いが操る八王子車人形が演じ、
人形遣いが1人1体ずつ持ち、車輪のついた踏み台のような椅子に座り小回りも自由自在に移動しながら人形芝居を展開。
写真で見たときは人間よりも随分小さいため果たして客席からどう見えるか少々心配もありましたが
竹の精のアンサンブルを背景にしたり囲まれたりしていると高く細長い竹林の中に身を置いている状態が実に自然で、これまた意外性に驚かされました。
バレエと伝統芸能、和と洋を掛け合わせた月と地球の往復ファンタジーの世界を満喫できた作品でした。
※実は鑑賞にあたり最初にあらすじをざっと目を通したところ、月から地球に降り立ち転生するKAGUYAの生い立ちにすぐさま浮かんだのは
漫画やアニメでも一斉を風靡した『美少女戦士セーラームーン』。漫画やアニメ通ではないため私も詳細までは把握しておりませんが
確か月と地球が戦争を起こし、月の王国の姫であるプリンセスセレニティが地球へと送り込まれて月野うさぎとなり
東京都港区の中学生兼セーラー戦士として生きていくのが始まりであったかと思われ、しかもお供には日本語堪能な猫のルナの存在もあり。
勿論関係性はないのでしょうが、7年前にまさにうさぎたちが生活していた辺りの地域での開催であった
六本木ヒルズで開催の展覧会に行ったせいか、重なる部分があると思えてならずでした。
尚管理人は愛野美奈子派であったため、うさぎちゃんの詳細知識はございません。気になる方はご自身でお調べください。
JCOMホールが入っている建物の中に八王子の郷土史料館があり、八王子車人形も展示。撮影自由とのことです。
帰りは八王子でシャンブルを鑑賞したときは大概立ち寄るお店へ。スパークリングワインで乾杯。
毎度ここでケーキを食すのも楽しみの1つ。今回は柑橘使った甘酸っぱいものを選択、名前は「初恋」とのこと。さっぱりと淡い甘さで美味しい。
お茶はジャスミン茶にいたしました。どこか中国の悠久な雰囲気なるポスターやプログラムに通ずる色彩です。
それはそうと、会場前のルナのポスター隣に掲示されていたのは舟木一夫さんのコンサート。
一度で良いので、『高校三年生』を生で耳にしてみたい。名曲です。
そういえば管理人がその年齢当時は日本の歴史に残るであろう大きなスポーツの祭典がございました。
東洋の魔女の頃か否かはご想像にお任せいたします。
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