2023年6月4日日曜日

花緑マイヤーが橋渡し 東京シティ・バレエ団   柳家花緑の落語バレエ 「くるみ割り侍」―バレエ「くるみ割り人形」5月27日(土)





5月27日(土)、東京シティ・バレエ団   柳家花緑の落語バレエ 「くるみ割り侍」―バレエ「くるみ割り人形」を観て参りました。
https://www.tokyocityballet.org/schedule/schedule_000880.html

このシリーズ企画の鑑賞は2017年の『おさよ』(ジゼルの落語とバレエ)以来2度目の鑑賞。
高校生の頃に芸術鑑賞教室にて落語の面白さに触れ、寄席などに単独で聞きに行ったことは未だないものの
バレエとの共演ならば勇んで行きたい気持ちとなりこの度も足を運んだ次第です。

柳家花緑さんの落語くるみとバレエくるみを交互に進行させていく演出はジゼルのときと似ていましたが、今回は花緑さんはバレエの中の役も兼任。
クララがくるみ割り人形を貰う場では2ステップも踏みつつドロッセルマイヤー役でバレエと落語を橋渡ししながらの進行でした。
着物の上にマント羽織り、眼帯も装着なさると違和感なし。子供の頃に小林紀子バレエにてバレエ経験があるだけあり、
また子役でくるみ割り人形への出演経験でのお兄様の小林十市さんとの共演や今回の2ステップ披露も誇らしげに語り、観客からも心解れた笑いが起こりました。

時間軸戻りまして、幕が開くとまず花緑さんが登場。座布団の前にはくるみ割り人形が置かれていました。
そして言葉のないバレエと踊らない落語は実は好相性であろうと思われた旨や、落語版くるみを背景設定についてのお話も盛り込んでのご挨拶。
日本の江戸時代に置き換え、しかしお江戸にはクリスマスがないため、少し時期をずらして裕福な呉服屋のお正月にしたそうです。
新年の挨拶に大勢の人々が集う賑わいをバレエくるみのクリスマスパーティーに重ねつつ
花緑さんは1人で何人もの人物を自在に語り分け、呉服屋を訪れる小さな子供達から常連客、取引先もあったか、
江戸の町人文化が栄えた頃であろうめでたい行事での生き生きとした人々の光景が浮かび上がってくるように話を進めてくださいました。
お江戸のクララは一文字抜いて「くら」として、ドロッセルマイヤーはからくり人形を操る「しげぞうおじさん」であったかと思います。
江戸とからくり人形は密接な結びつきがあり、1995年9月に鑑賞した世田谷区のエトアールバレエが発表会にて上演した
江戸時代の日本を舞台にした『コッペリア』ー唐繰人形和蘭競舞宴ーにおいても
オランダとの交易や、技術者や芸術も花開いた江戸の文化隆盛な時代を背景にした演出にて、あらすじはそのままであってもごく自然に映り
今回もからくり人形の下りからは一層話にすっと入り込み、くらにも感情移入できました。

それから今回の特徴として、くらの人間性に焦点が当たっていたこと。くらは人気者な兄のぜんのすけ(恐らくこの名前でした。お江戸のフリッツ)と自身を比較して
ずっとコンプレックスを持っており、しげぞうおじさんにも打ち明けます。
するとおじさんは眺める富士山を例えに出し、高い富士山だけが素晴らしい山なのではなく
そびえる木々や流れる川、咲く花々など中身も大切であることを説き、おじさんにくらはどれだけ励まされたことでしょう。
やがておじさんはくらに一風変わった容貌をしたくるみ割り侍人形を贈り、くらは大事に受け取り抱いているのでした。
その夜ねずみの大軍が押し寄せ、くらが怯えているとくるみ割り侍人形が勇敢に大軍に挑み、勝利。
そして、くるみ割り侍は人間の姿となり、頭は小さく肌の白い、鼻筋の通った美しい若様に変身したのでした。
花緑さんのお話に耳を傾けているだけでも、この若様に変身後のくるみ割り侍のあたりで落語版くるみは脳内にて配役決定即刻実写化。
もう、1人しか思い浮かびません笑。そうです、花緑さんのお兄様に南仏にて師事した某ダンサーです。
次行きます。

バレエくるみでは舟や気球、ソリなど何かしら乗り物でおとぎの国やお菓子の国に誘われるわけですが、落語くるみではお喋りな鷲が登場。
コンドルではなく空いています等と笑わせたのち 若様が乗り、「落ちないようにしっかり掴まるように」との声かけからその上にくらが乗って
しがみ付くように掴まっていたのかと想像いたします。(勝手に実写化心臓印)
どうやらここではくらは子供から21歳の成人になった設定で、飛翔する鷲に乗りつつ若様から行きたい場所を尋ねられると
「酒場」「遊郭」(確か)等と大人の社交場を相次いで希望。劣等感の塊な子供であったくらはすっかり変貌し
若様の優しさからも引き出されたのでしょう。自信に溢れた女性になっていたのでした。
ただ一度自信を持つとくらはエスカレートするのか、くらの積極性超えた大はしゃぎ大胆な言動の数々に
温厚な若様も徐々に不機嫌になりかけ、時に眉を顰めたりしていたかもしれません。
しかしそのやり取りが人間味に溢れ、互いに心を解放させたからこそできた交流と考えると、何とも微笑ましく大きな魅力に思えたのでした。
お菓子の国ならぬおかしな国に到着し、すると1人離れての冒険にも繰り出したりと果てしない旅が続きました。

バレエくるみでは松本佳織さんが愛くるしくダイナミックな踊りで魅せ、小柄な印象を持たせず。
花緑さんドロッセルマイヤーとの人形を受け取り喜び合う息も、岡田晃明さんくるみ割り人形との出会いの場のときめきが込められたパ・ド・ドゥも見応え十二分でした。
落語とバレエの転換も実にスムーズで、暗転してさっと花緑さんが袖に入る場合もあれば
2幕でのバレエくるみ序盤にてグラン・パ・ド・ドゥのアントレが流れる中で飯塚絵莉さん金平糖の女王が
スペインと中国の男性による王子の代わりとしての交代でサポートを受けつつ
盛り上がりを見せて行くところで金平糖の女王も各国の人々も一斉にポーズを取って
花緑さんを迎え入れたりと工夫された演出。落語とバレエを無理なく途切れ感もなく交互に鑑賞できました。

それから子供の観客も多く、落語にちょこっと隠し味程度に潜む現代のアニメや漫画要素も惹きつけ
炭治郎、るろうに剣心、そして鷲に乗って山々を眺める高所飛行においてくらが少しも寒くないわと言い切る箇所など
さりげない盛り込みは特に小さな観客の笑いを誘っていた気がいたします。
これがもし、先日鑑賞した帝政ロシア時代に生きる大作曲家同士で坂本九を丸々高らかに歌うような無鉄砲演出を思わすものならば
またもや私のおでこには何本もの縦線が入ったに違いないでしょうが汗、あくまでほんの隠し味程度に抑え
時代設定にもその状況にも上手く溶け込む要素であったからこそ自然な笑みを引き起こしてくださいました。
ちなみにくらは若様が連れて行ってくれる場所をあれこれ想像を巡らしているときお菓子の国ならぬ和菓子の国も確か思い浮かべ、
私も再び思い出した、宮崎駿さんがくるみ割り人形を書き下ろした展覧会を三鷹の森ジブリ美術館にて鑑賞したときに目にした和菓子の国の絵。
おしるこの泉やお団子の幟など、日本版のお菓子の国、日本版のくるみもどなたかバレエ化をと想像しては願ったりしておりましたので
ちょこっとだけ夢に近づけた気分。落語とバレエの共演、是非とも継続いただきたい企画です。

同時に太古の昔の記憶が脳裏を過ぎり、芸術鑑賞教室では落語そのものが面白かったのは勿論のこと
後日地理の授業にて先生が鑑賞教室のことを皆で振り返る時間を冒頭に設けてくださって、予想よりもモダンな味があって落語もとても楽しかったれど
観たものをこうして皆で感想を語り合うのもまた楽しいんだよね、と仰っていたこと忘れられず。
ひょっとしたら今の私の原点の1つかもしれません。芸術鑑賞直後から、落語聞くにはどうすれば良いか
生徒から質問が殺到していたと語る他の先生の話と合わせて思い起こされる記憶でございます。




鑑賞前に、ティアラ敷地内のカフェに初訪問。空へと続く階段景色を眺めながら爽やかに白ワイン。



お肉も野菜量もはみ出るほどに多し、バイン・ミー。パクチーは苦手なため抜いてもらいました。(店員さん、ありがとうございます)
パンがふっくら香ばしく表面はカリカリで、これまた美味しうございました。



先の写真の階段を上るとスカイツリーがお目見え。新緑に囲まれ涼やかな風が吹き抜けました。



くるみ割り侍人形の変身後の姿であろう若様のシルエットも描かれ、刀差した立ち姿が凛然としておりまする。
くらが危機に瀕したときは、刀抜いて救出してくれるに違いありません。(脳内実写化)
ちなみに、太古の昔の高校生の頃に落語に興味を持つときっかけとなった芸術鑑賞教室の会場となった場所に今夏バレエ鑑賞で出向くことになりそうです。
概要だけはかなり前から目にしていたものの会場含めつい最近詳細が明らかになり、どうやら高校生以来の訪問となりまする。

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