2022年1月7日金曜日

清々しい双眼鏡事件




昨日は東京も大雪となり今朝は路面凍結に悩まされた方も大勢いらっしゃるかと存じます。
普段は駅まで自転車利用の管理人も本日はペンギンを意識した徒歩で向かいました。尚、カフェではありませんからカクテルは運搬しておりません。
途中、すれ違う一回り以上はお若いであろう女性がツルッと前に転倒しそうになり、偶然なのかすぐさま受け止め転倒を未然に防ぐことができました。
その方からも、打ちどころが悪かったら怪我していたかたかもしれないと丁重にお礼を言ってくださり、お互い安堵した通勤の朝でございます。
ただ気がかりが一つ、受け止めたのが私ではなく素敵な王子様であったならばその女性にとって、朝から美しき銀世界を巡る、いい夢旅気分になったであったろうに。
状況としては似通っていたこのお正月の某舞台1幕ときめきハプニングを思い出しつつ、背中から廃れた哀愁漂わせ改札へ向かった管理人でございます。

さて相変わらず頭の回転が宜しくないため昨年末からの新国立くるみ感想は連休あたりに回しまして
本日も大寒波で雪解け困難な1日でしたので、昨年最終日の記事序文にて少し触れた、劇場の隣席にいたZ世代の方との心温まった話です。

新国立劇場でのとある日(詳細公演日はこの後の内容からすぐお分かりになるかと思いますが)のくるみ割り人形公演でのこと。
2幕開演前に、私の隣席の女性が、あのうすみません、、、と恐る恐る声をかけてこられました。
もしかしたら私の腰掛ける体勢が良くないのか、それとも体調が思わしくなくスタッフを呼んで来て欲しいのかもしれないと
まずは話を聞いてみると、少しだけで良いので可能であればオペラグラスを貸していただけないか、とのこと。
その席は4階末端エリアで、恐らくは1幕の最中は持参してこなかったことを悔やみ、しかし現在は貸出中止のため幕間に悩んでいたのかと思います。
そして意を決して、勇気を出して、隣席の私に声をかけてくれたのでしょう。隣席とは言え見ず知らずの他人に声をかける、
しかもオペラグラスを少しだけでも貸して欲しいと申し出て、機嫌を損なわれたらどうしよう、と大変緊張しながらの決心だったに違いありません。
私からは、勿論!少しだけなんて言わず終演まで使って欲しいと渡した次第。
すると、終演までなんてそれは申し訳ない、少しで良いんですと当初は遠慮がちな返答でしたから、私からとどめの二言。

私ね、あと5回はこの公演観に来るから。
それから今日の主演キャスト、お正月には1階の舞台近くの席で鑑賞するから、だから遠慮しないで最後まで使って!

尋常でないオタクな隣席者に驚いた様子でしたが何処か安心した表情も見せ、ズームは好みに調節して良いからと伝えると嬉しそうに受け取り使ってくれました。
5回は来るからとの箇所には、すぐそばに座ってた学校団体の生徒さんの1人も反応していたのは気のせいか笑。
若人達よ、ここでのバレエ観劇がある限り社会人生活は楽しき人生であると伝える契機になったか
それはさておき時折一生懸命駆使して踊りや装置、衣装の細かな部分も眺めていたようで私も我が事のように嬉しくなったものです。
帰り1階へ降りる階段の道中も含め少し話もし、ご両親の影響でクラシック音楽が好きになり、やがてチャイコフスキー三大バレエに興味を持ち始めたとのこと。
学校制服を着用し、スポーツシューズのケースを手にしていたためもしやと思ったら現在高校生で運動部に入っているそうです。
くるみ割り人形は前にも観たことはあるそうですがまだ観劇経験は少なく、この日はちょうど都合もつき
ようやく観に来ることができて今日はとても嬉しいと噛み締めるように語る姿に、管理人、心が清流のシャワーを浴びたような気分。
私が10代の頃を振り返るとここまで純粋で理知的な要素、無い。(現在もだが)高校生の頃には感性が廃れていた記憶すら過ぎります。
学業やスポーツに真面目に打ち込みつつ、寛ぎの時間にはクラシック音楽を嗜み、バレエ観劇も始めた素敵な高校生との出会いでした。
プログラムの配布袋に入っていたチラシを見てニューイヤー・バレエにも興味があると話してくれましたので、
チャイコフスキーの音楽が好きならばテーマとヴァリエーションはきっと気に入ると、勧めた次第です。

観劇回数はまだ少ない中、劇場の中に入るだけでもきっと緊張もあったでしょうし、何事もなく穏やかに終われば問題ありませんが
万一後ろ向きな気分にさせられる騒動に遭遇してしまえば、以降劇場から足が遠のいてしまうかもしれません。
私自身、既に通い詰めている頃であっても観客同士の口論がすぐそばで発生した際は、1幕で帰ろうかと本気で考えたものです。
一方で、嬉しい、ほっと心が安堵する出来事への遭遇ならばその劇場のイメージもより良好となり、また行きたいと足を運ぶ機会も増えることでしょう。
もしこのとき会った高校生がニューイヤーでも何でも、今後新国立劇場を訪れる機会が増えたならば、オペラグラスを貸したオタク気質な私なんぞの印象を掻き消すほどに
舞台パフォーマンスが上質であった点が影響したわけで、柴山さんや渡邊さん始め出演者の皆様や、彼女が観劇に関心を持つきっかけとなった
チャイコフスキーの音楽を美しく奏でてくださったオーケストラの皆様、制作に携わった方々のお力が高校生の女性の心に響いたからこそです。

ところで高校生の女性が私に話しかけようとした決定打を探っているのですが、年齢が近そう、では全くなさそうですし(ご両親より私の方が年上である可能性も大)
そうだ。声をかけてくれたタイミングが2幕開演前に着席後、入場前に購入したカレンダーを取り出し表紙を眺めながら
2022年は1年中『シンデレラ』の写真のページを開いて飾りたいと、目を細めながら見惚れていたときであったと記憶。
高校生の女性からしてみれば、隣の人、怖くはなさそうであるとの判断材料に繋がったのでしょう。もしそうならば渡邊さん、ありがとうございました。
そもそも私は当初発表の主演キャストではこの日は鑑賞しない予定でしたから、巡りに巡ってこの素敵な高校生に出会えたのです。
平日昼間ながら観に来た理由を高校生も気になったようでしたので、王子役の人が好きで
仕事は休みとって観に来たと話すと、情熱に再び驚きを隠せぬ様子でしたがそりゃそうだ笑。
とにもかくにも、心洗われ、清々しい気持ちとなった双眼鏡事件でございました。私も高校生を見習い、上手くいかぬことがあっても
彼女が打ち込む競技を題材にした人気作品の人物の名言「諦めたらそこで試合終了ですよ」を脳裏に浮かべ、2022年頑張って参りたいと存じます。

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