2021年12月16日木曜日

サイコロと橋で描く人生の紆余曲折   Plough Dance Performance vol.2  Bridge   12月15日(水)夜公演




12月15日(水)、座・高円寺にてPlough Dance Performance vol.2  Bridge夜公演を観て参りました。 
振付演出は、Plough主宰で一般社団法人バーオソルピラティス協会代表理事を務めていらっしゃる井野美瑞希さんです。
  https://bpa.tokyo/

https://www.excite.co.jp/news/article/Atpress_281027/  


井野美瑞希さんのブログに終演後写真が掲載されています。配信予定の旨もお知らせくださっています。
 https://ameblo.jp/odorueigyoman/entry-12715900767.html


第1部はサイコロを用いたCUBIC、休憩を挟んで第2部は橋をイメージしたBridgeの2部構成。
いずれも人生の描画が軸となっていて、出演者の経歴も実に様々な方が集結しての披露でした。
最近まで新国立劇場バレエ団で活躍された、今春故郷での『シンデレラ』全幕を拝見し振付手腕に驚いた菊地飛和さん、
入団前の2007年夏の福岡の舞台から注目、虜であった小村美沙さん、大和シティー・バレエ公演でも印象深い盆子原美奈さんもご出演です。

開演前から幕は開いていてアンティークな丸テーブルと椅子、CUBICの名の通りサイコロがあちこちに積まれて配置。
英国婦人が静かに物思いに耽りながら案内して本編の始まりです。サイコロはどれも同じサイズで両手で抱えぎりぎり踊れる大きさで、角はしっかり尖った形状をしており
手に持って踊る箇所や移動もふんだんにありましたが人に当たっては大変ですから軽量であっても扱いが非常に難しいはず。
観ている限り衝突はなく踊るときも移動も実にスムーズで、練習の賜物なのでしょう。

1 孤独・自由  2 愛・友情  3 変化  4 遊び・安定  5 破壊・挑戦  6 成長・統一  7  奇跡・光  とサイコロの数字にテーマが込められたプログラムで、
1での盆子原さんを中心としたきびきびとした展開、2でのショパンのピアノの調べにのせた菊地さん小村さんのしっとりとしたデュエットが刻まれ
天真爛漫な雰囲気で溌剌と伸びやかな菊地さんに対して小村さんは優雅な香りと繊細な余韻が残る踊りでそれぞれの魅力が溶け合い、至福なひととき。
中盤(確か4)ではデッキブラシを持った人達の間を縫うようにして入り込んでいくコミカルな流れも楽しく映りました。
本来サイコロにはない7は特別な意味合いがあると思われ、白いロマンティックチュチュ(バランシンのセレナーデの白版といったデザインな衣装)を纏い
テーマである奇跡・光そのものな美しさであった新国立出身トリオの菊地さん小村さん盆子原さんの身体が光り輝くように踊る姿に惚れ惚れでございました。

音楽はショパンからバロック、現代の曲まで多彩でしたが決して混沌とはしておらずそれぞれのテーマに沿うような選曲且つ整理整頓されてぶつ切りにならず。
大きなサイコロを手にした方々を間近で目にするのは小堺一機さんが司会進行をしていたお昼の番組『ごきげんよう』を現場スタジオにて観覧したとき以来で
サイコロの目ごとにエピソードがある点は共通であれど、CUBICの場合は何が出るかなと転がすのではなく
抱えたまま踊っては時には素早く集めて積み上げたりと音楽の中で滑らかに行わねばならず更には生本番ですから失敗も厳禁。
転がしを前提とした、重量感はあっても丸みを帯びているごきげんようサイコロとは異なり
積み上げも振付に組み込まれているため安定感も不可欠で先述の通り角張った形ですので「当たれば」痛みが走るでしょうから(ライオンの洗剤はもらえません笑)
話を戻します。サイコロを駆使しつつ振付もダンサーのパフォーマンス双方がよく練り上げられていた印象です。

第2部Bridgeはベルリオーズの『幻想交響曲』を使った、喜びと悲しみの起伏に富んだ展開でロープを用いて橋のフォルムが描き出されたり
或いはダンサーの配置で道が連なって見えたりと面白い視覚効果。上はグレーや薄いピンクなどのカットソーにタイトなショートパンツを組み合わせた
身体の線がよく出る衣装であったためポーズや並びによっては全身が橋のパーツに思えた箇所もありました。
前半のワルツは今秋に逝去された牧阿佐美さん版『椿姫』冒頭が浮かばずにはいられませんでしたが、
新国立入団後最初の舞台が『椿姫』であった小村さんが久々にこの曲で、しかも中央で歌うように舞う姿に心洗われた思いがいたします。

『幻想交響曲』を使用したバレエは『椿姫』のほか、6年前のバレエ団ピッコロ公演にて山本隆之さんや佐々木大さん、下村由理恵さんが主要役を踊られた
『幻覚のメリーゴーランド』と題したベルリオーズ本人の半生を辿る作品では鑑賞し
いずれも登場人物やあらすじが明確な作品。またパリ・オペラ座バレエ団の映像も鑑賞直前に見つけ、レパートリーにあるとは知らずちらりと視聴し
登場人物達からして恐らくはベルリオーズ本人の伝記風作品と見て取れましたが
(翳りある風貌の音楽家役はもしやと思ったらカデル・ベラルビさん。他にファニー・ガイダの名も。いずれじっくり視聴する予定)
今回はBridgeの名称からして作風や展開が全く想像がつかずでしたが
この音楽が持つ危うさと夢幻のせめぎ合い、そもそもこの曲成り立ちの背景にベルリオーズ本人の恋愛における挫折や苦悩があると本で以前読み
晴れ晴れと橋を渡れるときもあっても迷いや苦しみに覆われてしまう場合もある浮き沈み激しい人生の悩ましさに自然と接点ができると捉えております。
サイコロと橋を用いて人生を描画し、舞踊化された井野さんの創造力にただただ恐れ入った次第です。

座・高円寺は初訪問でしたが、舞台と客席の距離が非常に近く、ダンサーの息遣いが伝わる空間を堪能。
ロビーも客席も赤で統一した色彩美もセンス良く、居心地良い劇場でした。




鑑賞前、2階にあるカフェ、アンリ・ファーブルへ。 シルクスイートのなめらかパフェとホットコーヒーのセットで500円とはお手頃。
ねっとり滑らかなシルクスイートと軽い口当たりの生クリーム、スポンジの3層パフェ、美味しうございました。
コーヒーは濃くも大変すっきりとした味わいで、職場から駆けつけてからの鑑賞前の備えに嬉しい。スタッフの方の穏やか丁寧な接客も好印象でした。
地産地消のすぎなみパスタも気になるメニューです。
絵本が多く置かれ、時節柄クリスマス関連の書籍多数。奥右側に見える横型の赤い本は子供では全くない管理人も今なお愛読、『ゆうびんやのくまさん』。
勤勉なくまさんの職業従事シリーズで、他に石炭屋、植木屋、パン屋とあります。
ただ近年ふと思ったのは、仮に全て同一のくまさんであるとすると、くまさんは転職の名人及び先駆けだったのか。現実味の増した想像を失礼。
一番右手には『くるみ割り人形』。そういえば、原作ではお菓子の国に着くまで王子は現れず
人形のままでマリーを先導だったであろうかとぱらぱら捲りながらざっと斜め読み。太い線の絵で迫力満点です。
そして更に右手には今週の本として紹介であったか『美女と野獣』。どうもご縁がある作品でございますが
盆子原さんも出演されていた、昨年末の大和シティー・バレエが上演した宝満直也さん版をもし今からでも配信視聴できるようであればしてみようか。
8分程度の短縮映像見た目限り好みそうな印象ではあったがいかんせん思い入れ強き他版がありますので、まずは観てからのお楽しみといたしましょう。



帰り、高円寺駅近くの酒場で乾杯。舞台では美しいダンサー達がサイコロを手に踊り、私はサワーの大ジョッキを目指して一振りです。
大吉か大凶が出ると無料で大ジョッキでいただけるようで、何が出るかな、何が出るかな。吉でした。



通常サイズでも十分な量でした。お通しのケバブらしき品、かなりボリュームあり。



客自身が焼く出汁巻け卵。せっかくですので2007年の人生初の九州訪問地であった博多で好物となった明太子をトッピング追加。


火加減に注意しながら慎重に焼いておりました。


ねじめ正一さんの作品で知った、高円寺純情商店街。

2 件のコメント:

aruyaranaiyara さんのコメント...

ここでも、バレエ!
しかも美沙ちゃん。
長年、お仕事で通った高円寺。
仕事帰りの、夏の阿波踊りが楽しみな思い出があります。
近くの酒場とは何処でしたかな?

管理人 さんのコメント...

aruyaranaiyara様

おはようございます。コメントお寄せいただきありがとうございます!
はい、小村さんの久々の舞台姿を目にでき大変感激いたしました!

高円寺、ご縁の深い街なのですね。阿波踊りの絵もあちこちで見かけ、高円寺が誇る文化を見てみたくなりました。さぞかし賑やかでしょうね。

酒場は駅前のロッキーカナイというお店です。店員さんの元気な接客印象も良く、お値段も手頃で、1人でも入りやすいお店でした!