2021年12月28日火曜日

深川秀夫さんの粋なエレガンス 川上恵子バレエスクール発表会 12月27日(月)《大阪府吹田市》





12月27日(月)、大阪府吹田市にて川上恵子バレエスクール発表会を観て参りました。2021年最後の遠征鑑賞です。
http://www.kawakami-ballet.com/


バレエコンサートから深川秀夫さん作品まで多彩に富み、小さな生徒さんも大勢活躍する小品から開始。
川上バレエの生徒さん達は基本をしっかりと品良く丁寧に着実にこなす踊り方である印象で、無理なテクニックは避けている振付である点も含め好感を持っております。
また衣装はチュチュ中心であとにも述べますが星空の背景も洒落ていて麗しく、ロマンティックな気分に浸っておりました。
舞踏会、やプリンセス、などキュッとときめくような御伽噺な世界観の作品をディズニー音楽をも使用して可愛らしい光景を届けてくださいました。

バレエコンサートの中盤には、ラフマニノフの曲に振り付けられた板東ゆう子さんと山本隆之さんによるアンダンテ・カンタービレも披露され
今秋に愛媛県西条市でも拝見したとき以上に滑らかでしっとりとした美しさ、疾走感にも感じ入り、お2人の身体から高鳴って醸される情感や色気にただただうっとり。
山本さんの舞台姿を目に心に刻む幸福が胸に沁みる年の瀬でございます。

生徒さん中心の作品では2016年以来の再演と思われる『うさぎがくれた贈り物』を上演。
バレエを一生懸命頑張る女の子がある日ピンク色のチュチュを着たうさぎさんに導かれ、靴職人ときびきび踊るうさぎさん達も加わって女の子が励まされ
やがてポワントを贈られますが実は夢の中の出来事だった、といった流れかと想像。ピンクうさぎさんが女の子に付き添いつつ(シンデレラと仙女のような関係か)
森の中の仲間達が次々と登場して桜やハチ、森の妖精や桜の妖精、小鳥にリス、てんとう虫さんも一緒に女の子と友情を育んでいく微笑ましい物語です。
てんとう虫さんの、前屈みになると羽がばさっと広がる工夫された作りや、小鳥達の水色とクリーム色の綺麗なグラデーション、と衣装もいたく凝ったデザインでした。
また選曲も光り、女の子が不安を募らせているであろう箇所はカヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲で
桜と桜の精たちだったか、ワルプルギスの夜の幕開けの緩やかで歌うような曲で優美に舞ったり、
「リーズの結婚』の木靴の踊りの曲で靴職人さんとうさぎさん達が仕事に打ち込んだり
森の妖精達はチャイコフスキーの弦楽セレナーデのワルツで浮遊していたかと思います。単なるお子さん対象の作品ではもはやございません。

そして最後は、川上バレエが毎回上演を重ねてきた深川秀夫さん振付作品。今回は昨年逝去された深川さんをしのんで、『三人のキトリ』の上演となりました。
『ドン・キホーテ』を基盤に1幕広場のキトリ、ドルシネア、結婚式のキトリに焦点を当てた演出で、中盤の野営地はジプシーのみ。
ドン・キホーテやサンチョ・パンサ、エスパーダを筆頭とした闘牛士も終始不在で、代わりにバジルは最初から最後まで1人のようです。
作品全体の特徴を挙げるとするならば、観慣れたドンキに比べてエレガント。
手脚を勢い良く上下させたりする振付が殆ど見られず、音楽を優しく扱うようにそっと手を胸のあたりに持ってきたり
グラン・パ・ド・ドゥ冒頭でバジルにリフトされたキトリが両腕を高く上げるのではなく
チュチュを横から両手で摘まむように優雅な仕草を見せてとても小粋な印象に一変。
時間軸戻って、第1部バルセロナの広場においても熱気ムンムンとした空気ではなく
スカートを両手で掴み小刻みに振っては肩を少し動かし続けて色っぽさを上品に見せる振付も可愛らしくお洒落。
深川さん作品を毎回発表会で上演してきただけあってジュニアの生徒さんに至るまで洗練された身のこなしが出来ていて
肩動かしやスカート掴んでの前後に振る仕草も、下手すれば媚を売る印象にもなりかねませんが
品が香っていてお手の物。継承がきちんとなされている様子が窺えたひと幕です。
ドンキに抱きがちな情熱溢れる勢いと解放感の連続のイメージは無く、隅々まで優雅で洒落たセンスが詰まった深川さん版を鑑賞できました。
今年5月には東京の代々木上原で開催された深川さんの舞台映像公開や愛用品の展示企画に足を運び魅力に再度触れ
作品上演舞台に早くお目にかかりたい欲が募っておりましたので、川上バレエさんで堪能できたのは実に幸運でした。

バジルの描き方も独特で、キトリの友人が出ている設定であってもお調子者や浮気性の要素は皆無で、ひたすら端正街道まっしぐら。
全編でバジルを踊られた張縁睿さんの真面目そうな、はっちゃけるお姿が想像つかぬ持ち味にもよく合っていたと見受けております。

それから前半のバレエコンサートでも綴った通り、背景の照明の美しさにも感嘆。特に夢の場でのキャラクターごとに変化を見せる空色に見惚れ、
深みある青、時には暁色に帯びていく色彩の繊細な表情と優しく光り瞬く星空に目を向ける度に清らかな心持ちとなりました。
きっと深川さんもこだわりの色味が込められた照明であったかと推察いたします。
音楽も馴染みない編曲が何箇所もあり、なだらかで穏やかな趣が前面に出ていた印象。特別録音された音源か詳細は分かりかねますが
深川さんが思い描く理想に近い、音楽の節々からきらりとした優雅な輝きが表れていたように感じる演奏でした。

全員のフィナーレは恒例のメリー・ウィドウのワルツの音楽が流れる中で行われ、大阪にて川上バレエの舞台でこの曲を聴くと
『くるみ割り人形』や『第九交響曲』のように今年も残り僅かと語りかけられている気分となり、1年が過ぎ去る早さにはっとする自身がおります。
一輪の薔薇を受け取られた川上先生の上品なお姿、そして今年は発表会の予定通り開催、振付作品が無事上演され
一風変わったされど洒落た美的感覚を愉しめる『三人のキトリ』に惜しみない拍手が送られた会場の光景に
深川さんも喜びの笑みを浮かべていらっしゃることでしょう。これからも深川さん作品上演を重ね続けて欲しいと願っております。





※他の写真等は後ほど。帰りは京都と名古屋間の大雪による新幹線の徐行運転により東京到着が約30分遅れ、終電を逃してしまった管理人。
しかしなかなか面白い体験と『三人のキトリ』の余韻が再び巡ってくる出来事もございましたのでまた後ほど紹介予定でおります。





にっこりと微笑む深川さんのお写真と川上バレエ卒業生からのお花。川上バレエで学んだ後に新国立のバレエ研修所を経て現在新国立劇場バレエ団に在籍し
今年の『白鳥の湖』ではハンガリー王女に、そして現在上演中の『くるみ割り人形』では花のワルツのリードにも抜擢されている中島春菜さんからも届いていました。



往路の新幹線車内から。青空に富士山。久々にこの景色を目にできました。



ふと外を見ると岐阜のあたりか、大雪!記念にこちらのチラシと。



昨年のKバレエスタジオの舞台で訪問して以来のお気に入り、お好み焼きのおかる。冬限定かき玉いただきました。牡蠣がたっぷり。
店員さんが描いてくださるマヨネーズアートがお上手。



道頓堀の景色。曇り空を青空が割っているような不思議な空模様。そんな歌詞の曲が約20年前あった気が。19(ジューク)だ。



行ってみたかった鮨店。府内に何店舗かあるようで、曽根崎警察署すぐそばのこちらは今年2021年7月26日開店とのこと。
日本酒の徳利がピンク色であるのは初めて、可愛らしい色味です。剣先イカととろりとしたウニ。



これも食べてみたかった、トロたく。



鰤とサーモン。カウンターに1人で単品注文でも快く受け付けてくださいます。また行きたいお店です。



宿泊したのはビジネスホテルですが、15階ラウンジにてビールとハイボール、その他ソフトドリンク飲み放題。
ビールやハイボール、初めて自身でサーバーから注ぎました。食べ物の持ち込みも自由で、すぐそばで購入したたこせんと一緒に乾杯。
今年を思い出し、色々なことがございました。
ラウンジとは言ってもラグジュアリー感やエグゼクティブ云々なる高級感は我が身の丈に合わぬので笑
このさっぱりとした空間がちょうど宜しい。あべのハルカスも見えます。



大阪訪問約70回目?にして初めての大阪城。上空を飛行機通過中。



白と薄緑が眩しいお城です。



梅田駅に行くと、阪急うめだでアニメージュ展開催!当日空きがあれば現地で当日券購入して入場も可能です。
ナウシカ、ラピュタ、トトロ、好きで止まないジブリの世界がお目見えでございます。
宇宙戦艦ヤマトの頃のアニメージュから、近年の記事まで。また制作現場の裏側や当時の宣伝映像や紙媒体まで、充実した展示会です。
一部のエリアでは写真撮影も可能。1月10日までの開催かと思います。近日中に大阪へいらっしゃる方、是非どうぞ




ナウシカがお出迎え。胞子を育て研究している地下室の巨大絵もあり、人肌に触れるようなあたたかみと吸い込まれそうな色彩美でございます。



ラピュタのポスターも色々。何度か前ブログ時代から申しておりますが、ラピュタはバレエ化できそうであると
ビントレーさんの『アラジン』初演以来妄想が止まらずにおりますが、『もののけ姫』も不可能ではないと思っております。ミュージカル化はされたとか。
そうだ千と千尋は来年帝国劇場にて開幕。



ラピュタの終盤、ムスカの名場面「目がー目がー」の後あたりです。



梅田の新食道街にある、気にはなっていた喫茶店ドリヤード。『ドン・キホーテ』夢の場において
森の女王をドリヤードの女王と表記のバレエ団もございますが、呼び方の基準をどなたかお教えください。
キューブ型フレンチトースト、カリッと香ばしく美味しうございました。



帰りの新幹線。余韻に浸って箕面ビールで乾杯。ラベルのお猿さんも祝杯を上げています。



京都と名古屋間の大雪による徐行運転で東京駅到着が午前を回ってしまい、終電間に合わず。
しかし近畿を襲った大雪でありながら運休にならずであったのは幸運で、安全のためであれば徐行が望ましく、途中駅では車輪の雪を払う作業もあったようです。
新横浜を過ぎた神田辺りのホテルを予約を考えていると、終電を逃した乗客向けに東京駅の新幹線ホームのとある車両を
朝5時まで休憩所として開放してくださるとの放送があり、大変助かりました。
暖房が効き、化粧室の利用もでき、朝5時までは新幹線の座席にて熟睡、までには至らなかったもののゆったり休めたので対応に感謝。
5時過ぎには出発し自宅へ。自宅最寄り駅到着時はまだ外は真っ暗でしたが家に着く頃に
ふと自転車を止めて見上げると、まさに『三人のキトリ』夢の場で目にした暁色の美しい空。思わず舞台の光景が脳裏を過ぎり、再び余韻に浸った管理人でございます。
6時には家に到着し、シャワーや食事等諸々準備してから無事出勤。不思議な一日を過ごした川上バレエさん発表会の翌日でした。
さて、今年の鑑賞は残すところあと1本。初の大晦日にバレエ鑑賞、新国立劇場のくるみ割り人形でございます。31日限定で鴨ネギ蕎麦も販売です。
さらば大阪、また1か月後!!

2 件のコメント:

aruyaranaiyara さんのコメント...

終電を逃した、とあってドキドキし、どうしたのやらと心配しましたが。
最後の方に、JRの粋な計らいを読んでホッとし。
暁色の美しい空に遭遇した管理人さんに拍手!
この日本で、大晦日、新年の公演、驚くばかりですが。
明日は私も鴨ねぎ蕎麦、食べたか~!

管理人 さんのコメント...

aruyaranaiyara様

こんばんは。お読みいただき、ご心配までありがとうございました。
車両開放は大変助かり、ひとまずは始発まで暖かく過ごせましたので安心いたしました!
はい、自宅近くの道で信号待ちしていたとき、まさに舞台で目にした暁色の空が広がっていて、幸せが再び舞ってきた気分となりましたね。
明日、まさかの⁈新国立劇場で鴨ネギ蕎麦笑、食もバレエも満喫して参ります!