2020年10月30日金曜日

2021年1月より放送開始NHKBSドラマ『カンパニー』




来春1月より、NHKBSにて放送が始まるバレエを題材にした井ノ原快彦さん主演、熊川哲也さん監修のドラマ『カンパニー』。
このたび主な配役、出演者が追加発表されました。

Kバレエカンパニーツイッター
https://twitter.com/kballetofficial/status/1321222014120595456?s=21

NHKの紹介ページ
https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/20000/438219.html


熊川哲也さん監修ですから海外で活躍するプリンシパルダンサー役を宮尾俊太郎さんが務めるのを始め
Kバレエカンパニーのダンサーの複数名出演の予想は的中いたしましたが、小林美奈さんのご出演も嬉しい限り。
テレビドラマでどんな演技を見せてくださるか楽しみです。

原作は伊吹有喜さん。ごく平凡なサラリーマンが突如出向を命じられ老舗バレエ団再生に奮起する物語です。
2017年5月に新潮社より出版され、一昨年には宝塚歌劇団で舞台化され上演されています。

原作を読み進めておりまだ途中段階ですが、大変面白くリアリティに富んだエピソードも満載で筋金入りのバレエ鑑賞愛好者も楽しめる内容である印象です。
以下ややネタバレな展開ですのでまっさらな状態でこれから原作を読まれる、或いは放送をお待ちになりたい方はお控えください。

まず、ビジネスとして成り立っているとは言い難いお稽古から発展した日本独自のバレエ文化に主人公の青柳が素朴な疑問を次々とぶつける箇所が痛快。
仕事として踊っていながら給料が出ず、アルバイト無しでは生活不可能である団員の実態や
実力ではなく納める費用が配役決定を左右するしきたりに首を傾げ、声を大にしておかしいと意見し
解決策を見出そうと奮闘する姿が丁寧に描写されています。
バレエのバの字も殆ど知らずサラリーマン一筋で生きてきたからこその視点がバレエ団を転換に導くと想像し、展開が一層楽しみになっております。
またバレエと言えば妖精お姫様王子様の印象を持っていたのであろう青柳がバレエ団訪問時に
『ラ・バヤデール』の話を聞き、憎悪渦巻く生々しい人間関係のバレエ化に驚きつつもバレエの寛容性に興味を少しずつそそられいく箇所も面白く読みました。

それからダンサーの心理も現実味あり。男性ダンサーあるある!?かもしれませんが
世界規模で活躍するダンサー高野悠(ドラマでは宮尾さん演じる役)が帰国して『白鳥の湖』に客演する話が上がりますが、
王子役を依頼されながらも正直なところロットバルトに魅力を感じている様子。
貴公子役の印象が先行しがちなダンサーが個性の強いキャラクターももっと踊りたいと
インタビューで語る記事はしばしば見かけますから男性ダンサー心理を細やかに捉えていると思えた次第です。
ちなみに青柳と高野の初対面状況はなかなかの衝撃ある場所で、映像でも同様に描かれるのか想像するたびに笑いが込み上げてきてしまう場面です。

他にもチケット捌きに苦心する協賛企業の社員ならではの悩みも華やかな公演の裏にて目に浮かぶ光景ですし
冒頭にて、青柳が会社内で回ってきたチケットを手に足を運んだ公演にて主役が幕の最中に降板し、上演中に客席が騒ついたのち幕間前に芸術監督が舞台上に現れ
怪我の経緯や王子役ダンサーが代役の女性ダンサーと組むのは初との説明に場内騒然な展開は
2006年のパリ・オペラ座バレエ団来日公演『白鳥の湖』マリ=アニエス•ジロのプロローグ直後の降板により湖畔の場からエミリー・コゼットに交代した公演を想起。
幕間前にルフェーヴェル監督が舞台上に登場し、コゼットと王子役マルティネスは初めて組む旨が伝えられ、
エトワールクラスの代役を控えさせずそんな事が起こるものなのかとその公演に居合わせ、開演直前にアニエス・ルテステュと
会場前の横断歩道にてすれ違っていたこともあり私も驚きを覚えたものです。

物語の舞台はかなり具体的に描かれ、主に京王線沿線。敷島バレエ団は調布市の深大寺周辺で青柳の自宅は調布駅、
高野の日本での仮住まいは調布市と世田谷区の境界周辺で防音設備の整ったアパートも多いと記されていますから、桐朋学園大学のある仙川駅でしょう。
そのうち温泉「湯けむりの里」も登場するか笑、それはさておき京王線利用者の方はより一層親しみながら読み進める物語かと思います。
ドラマではどの程度再現されるか、ロケ地にも注目です。

読む限り、青柳役には井ノ原さんもぴったりと重なりまことに嬉しい配役です。
仕事に一生懸命打ち込み心優しくも妻に別れを切り出されもやもやしながらの生活を続けていた青柳を
細やか説得力のある演技で見せてくださる気がしております。

『ミッドナイトスワン』感想でも少し触れましたが、約四半世紀前に短期ではありますが夢中になった2つのグループの方々が
こうして今、バレエが絡む大きな作品に出演されることに何だか不思議なものを感じます。
井ノ原さんを最初のテレビで観たのは恐らくV6全員が出演した1995年放送の謎の体育会系ドラマ『Vの炎』で
何じゃこりゃな展開に口あんぐりであったと記憶しておりますが、だいぶ年月が経過いたしまして『カンパニー』は期待度大。放送が今から待ち遠しいばかりです。

2020年10月27日火曜日

【速報でもないが】【大変おすすめ】新国立劇場バレエ団 吉田都監督体制始動及び『ドン・キホーテ』開幕




ご訪問ありがとうございます。ドン・キホーテ全日程7公演分総括感想はこちらです。
個性が見事なまでに様々な7人のバジル、堪能いたしました。
https://endehors2.blogspot.com/2020/11/67-1023111.html

10月23日(金)、24日(土)昼夜、25日(日)、新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』を4公演観て参りました。
中止になった5月公演をそのままスライドし、無事吉田都監督体制2020/2021シーズン第一弾公演開幕です。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/donquixote/

新国立劇場バレエ団公式ツイッター。まめに更新してくださり、一部のゲネプロ映像もあり。
バジルとキトリ友人トロワの映像もあるのが嬉しくバジルは中家さん、キトリ友人は廣田さん、横山さんです。
https://twitter.com/nntt_ballet

まだ公演期間中ですので詳しい感想は全7公演鑑賞後にまとめて綴って参ります。
この3日間で鑑賞した主演ペアは初日から順に米沢唯さん/井澤駿さん、木村優里さん/渡邊峻郁さん、小野絢子さん/福岡雄大さん、柴山紗帆さん/中家正博さん。
意外なほどに熱々カップル造形したペアもあれば緻密な芝居も取り混ぜて一気に纏め上げるペアもあり個性様々で
数あるドンキの中でもボリショイ版を基盤にした王道路線なファジェーチェフ版ながら
それぞれ全く異なる味わいで楽しませてくださり、似たり寄ったりが皆無。
また初日から全体のエネルギー大全開で、演出が古色蒼然として好みでないと毎度言い張る私も
今回ばかりは初日の幕開けから気分の高揚が止まりませんでした。
初日のカーテンコールには吉田監督も登場。控えめに袖近くに立ち、観客にお辞儀をして出演者を讃え前に出るよう促して
すぐ袖に入られましたが、監督に対する観客の拍手の大きさから
緊張状態が続く最中、待ちに待った開幕の喜びやバレエ団牽引の期待度の高さが込められていたと思います。



そして何と言っても、恐らくはバレエ団史上最多の自前で男性主役6人配役は快挙。
3日間でバジル4人を鑑賞し、出演日程順にサロンオーナー、三色ポールが目に浮かぶ古式ゆかしき床屋、
ちょいとワンマンだが(失礼)人気美容師、頼りになるあんちゃん理髪師、と各々個性が強烈。
前回のドンキ2016年公演に比較すると一段と堪能いたしました。
抜けるようなバルセロナの青空を描いた背景美術は爽やかこの上なく、1幕中盤のセギデリアの整然としながらもうねるような勢いも心を浮き立たせ
今週末も楽しみでなりません。31日(土)昼夜11月1日(日)の3回まだありますのでどうぞ足をお運びください。心からスカッと元気になれるバレエです。

10月31日夜公演はNHKチコちゃん課外授業にて有料配信されます。どうぞご覧ください。また3幕、颯爽とした紫ボレロも是非ご注目ください。
https://chicoissyo.com/special/ballet.html




ホワイエでのアルコール販売休止の為、幕間は劇場内レストランにて販売しています。24日昼公演幕間に乾杯。
念願の全幕バジルを鑑賞できました。それにしてもバジル6人の並びは壮観。



連絡先記入所がこちらにも設置。



初日は大学の後輩とオペラシティ内の店舗のテラスで一杯。ワイン片手に生ハムが食したくなるバレエです笑。
飲食日記続編もまた後日、載せて参ります。管理人の肝臓も元気にしております。

2020年10月22日木曜日

それぞれの船出 ベテラン陣が締めた千秋楽 Kバレエカンパニー『海賊』10月18日(日)




10月18日(日)、Kバレエカンパニー『海賊』千秋楽を観て参りました。Kバレエの『海賊』は約10年半ぶりの鑑賞。
3月のトリプル・ビル中止、5月上演予定であった『海賊』延期公演に漕ぎ着け、8ヶ月ぶりの公演再開です。
https://www.k-ballet.co.jp/contents/2020corsaire


カーテンコールにて、熊川さんから大きな花束を贈られる中村さん。



『海賊』ダイジェスト集。殆んど熊川さんアリの出番セレクション映像ですが、出番や見せ場の多い役として描かれています。



山本さんがアリを踊られた2017年公演のダイジェスト映像。当時と比較すると見違えるほど進化していました。


メドーラ:中村祥子
コンラッド:遅沢佑介
アリ:山本雅也
グルナーラ:小林美奈
ランケデム:石橋奨也
ビルバント:宮尾俊太郎
サイード・パシャ:ビャンバ・バットボルト


中村さんのメドーラは登場時から誠に艶やかで、重厚な音楽と溶け合いながら張りのある美しい跳躍で魅了。 瞬時に吸い寄せられ、中村さん一色なオーラに包まれました。
しかし人をすぐさま信じ易いお人好し過ぎる性格なのか困っている人を放っておけないのでしょう。
浜辺に現れた海賊達を怪しがらず、手を差し伸べようと懸命で周囲を心配させる姿は堂々たる登場場面とはまるで別人。
人間味のあるヒロインであると序盤から伝わる描写でした。2幕以降は決然としてコンラッドをビルバントから守り
いざとなれば斬りつける手段に出るなど展開と共に強さを増していったのは目にも明らかで、コンラッドと出会いや
危うく売り飛ばされそうになる市場での試練を経てみるみると変化を遂げていくさまをはっきりと示していました。
今回ほど、場面が進むにつれての変化が目に見えてはっきりとしていたメドーラは初めてお目にかかったかもしれません。

遅沢さんのコンラッドは目線は鋭く立ち姿からして隙の無さそうな威厳があり、乗組員で反抗できる者はいないでしょう笑。
裏切りとはいえビルバントの下克上は相当な度胸がなければ不可能であろう行動でそれだけ常日頃から思うところは諸々あったと推察。
常時目を光らせ作戦はことごとく連戦連勝であったと思われるコンラッドも恋だけは盲目気味だったのか、
呆気なくビルバントによって弱味を掴まれ、罠に掛かってしまったのは哀れとしか言えません。

他の版よりも遥かに見せ場が多い主役級として描かれたアリで嵐を巻き起こす活躍を見せていたのは山本さん。
市場でランケデムをおちょくっては怒りを買うも余裕の笑みで交わし、ランケデムの腸が
一段と煮え繰り返る様子との呼応もテクニック合戦効果もあってか含め怖いを超えて笑いが込み上げてきたほど。
終盤は猛スピードで駆け抜け、中でも両肩に手を置いたままでのつむじ風の如き回転移動には口をあんぐりしてしまい
しかもただ超絶技巧お披露目会ではなく周囲とのやりとりや物語の流れの中で、
音楽の中で遊んでいるような自然なこなしぶりも見事な野性味あるアリでした。
ちなみにヴァリエーションは、序盤の跳躍してからのバランスの2セット後は片脚立膝で屈むポーズ。上下の躍動がくっきりと見映えしましたが
ここは個人の趣味だが南仏地域のバレエ団による片脚伸ばし座り姿勢で射抜くような視線を送る振付が好みでございます。(務めるダンサーにもよるが)

2幕のハイライトとも言えるパ・ド・トロワは、遅沢さん山本さんともに中村さんメドーラに礼を尽くす献身ぶりが熱く
中村さんはどこまでも伸びやかで格調高く、 舞台上のダンサー達も観客も祈るような心持ちで見届け観客半数の会場である状況を忘れてしまうトロワでした。

どうにかアリのからかいを制圧しようと奮起していた石橋さんのランケデムは明快な悪党で
グルナーラとのパ・ド・ドゥでの周囲に手にした美女を自慢をしてはすぐさまサポートに戻りつつも途切れ感は皆無で市場の熱を上げて盛り上げに大きく貢献。
宮尾さんの、忠実な部下には最初から見えぬ(褒め言葉)ビルバントと手を組む場面でも企みを見据えた笑みで交わし
怪しいアジトにいそうな2人で、敵対関係にあったはずがコンラッドへの恨み節を語り合うような様子から気が合うのは時間もかからずであったのは頷けます。

メドーラの妹として描かれたグルナーラの小林さんは舞台にピリッとスパイスを与える存在感で 疑うことを知らなそうな笑、
優し過ぎる姉を毎度身近で見守っては保護者のように安全確保に務めていたであろうしっかり者。
浜辺で海賊達をすぐさま救助を試みる姉をまずは止めに入り、怪しい人物かもしれぬと頬に触れつつ目を覚めさせていた
堅実な性格にメドーラはこれまでに何度も助けられていたと想像できます。
ランケデムとのパ・ド・ドゥでの通常とは異なるヴァリエーション音楽も小林さんに似合い、
可愛らしい哀れみのある曲ではなくガラやコンクールでお馴染みのタンバリンを持ったエスメラルダの曲を使用。
踊りはスパスパっと鋭くも、嘆き悲しみは指先に至るまで迸り増幅し
確固たる技術を備えているだけあり演歌調な表現も独り歩きせず、グルナーラの感情が凝縮したヴァリエーションとなっていた印象です。

大掛かりな花園の群舞場面は無しであっても海賊の男性達がわんさかと踊る演出はKバレエらしく、殊に初演では熊川さんが踊られたアリの描き方は
当然なのでしょうが随所で登場しては場を沸かせる主役級キャラクター。
ただ先にも述べましたが物語を繋ぐキーパーソンとして確立していて周囲とのコミュニケーション力も抜きん出ている人物でもあるのは大きな魅力です。
冒頭には現れる海図の紗幕越しに海賊達が姿を徐々に見せ、冒険にいざなわれる演出も宜しく
船の造りが精巧で隅々まで凝った設計にも見入ってしまいます。
マリインスキーが30年以上前から上演を重ねている極楽アドベンチャーな演出も楽しいのですが
(2006年の来日上演時、ロパートキナの芝居が上手いとは言い難く、かえってとんでも冒険潭に拍車をかけていたと記憶)
アリの悲劇な結末までが事細かに描写された熊川さん版も非常に面白いと思えた次第です。
中村さん、遅沢さん、宮尾さん(9月よりゲストアーティストに就任)の区切りとなる公演に相応しいベテラン陣が締めた千秋楽でした。

カーテンコールでは熊川さんが豪華な花束を持って登場し、中村さんに贈呈。中村さんは目元に涙溜め、終演案内のアナウンスが流れ始めても音声を掻き消すように拍手は鳴り止まず。
スタッフや非番のダンサーも舞台に登場し、中村さんを讃え続ける光景を目に焼き付けて劇場をあとにしました。
松岡梨絵さん、浅川紫織さん、そして中村さんとKバレエで好きな女性ダンサーが去っていく状況は寂しいものの
他日メドーラを踊りこの日はオダリスクで淑やかな美しさを見せていた成田紗弥さんを始め、台頭してきているダンサーにも注目していきたいと思っております。



あちこちで呼び掛けが行われていました。入場時も間隔の取り方を細かく指示され、対策が窺えます。


マスクも通信販売中。着物姿の監督は2019年初演『マダム・バタフライ』カーテンコールのはず。カレンダーも発売のようです(もうそんな時期か)。



換気のためドア開放



Bunkamuraに何度も来ていながら初訪問、ホール向かいの松涛カフェ。店員さん達が笑顔一杯な接し方で
これからバレエ鑑賞である旨を告げるともうすぐ開演ですね、楽しんで来て!と あたたかく送り出してくださいました。



食してみたかったシフォンケーキ。バターを薄く塗って軽く焼き、表面はカリッと香ばしい味。
トッピングで更に生クリーム追加していただきます。もっと多めの量追加でも良かったかもしれぬ。
管理人、生クリームは好物の1つでエベレスト並みに盛られた一時は行列もできていた
ハワイ系の甘味も1人でペロッと食べてしまうほどです笑。(似合わぬと周囲から言われますが笑)
それはさておき、お皿の青色が2幕のメドーラの衣装を思わせ、
粉砂糖のまぶし具合もビーズ刺繍と重なるものがあり開演前から浮き立ちます。



帰りはギリシャブランデーで乾杯。内装が古い書斎のようで、立派な船舶の内部にも思える空間。





タコのカルパッチョとも合います。熊川さん監修来年1月開始のNHKBSドラマ『カンパニー』も楽しみです。
原作途中まで読みましたが、2006年のパリ・オペラ座来日公演での驚きの出来事に似た光景など
親しみ深い場面展開が綴られており、感想は明日からのバルセロナ7回訪問の合間か後にでも
綴って参りたいと思っております。


2020年10月16日金曜日

映画『ミッドナイトスワン』



新宿TOHOシネマにて、映画『ミッドナイトスワン』を観て参りました。
https://midnightswan-movie.com/

まだ公開中ですので詳しい感想は控えますが、ショーパブに勤務するトランスジェンダーの主人公と
家庭の事情で上京してきた親族の少女が同居し当初は反発し合いながらも距離を縮め
物語の基盤としてバレエが題材となっている点も話題になっています。

展開にやや無理感はありましたが、まず一果役の新人服部樹咲さんの心閉ざした少女の演技力に感嘆。
言葉数が少ない役ながら視線や間の取り方も見事で、バレエと出会い少しずつ心を開き
性格も外向きになっていく過程もリアリティがありました。
複雑な家庭環境で育った一果に寄り添いそして草彅剛さんの凪沙を壁を作らず一果の母として受け止める
真飛聖さん演じるバレエ教師の存在が安心感を与える素敵な人物。
体験レッスンに来た一果がなかなか言葉を発せずにいたり、動きやすい服装として綺麗とは言い難い体操着を持ってきても
背景を察してか急かさず苛立ちもせずありのままの一果を受け入れ
この教師ではなかったら一果のバレエも、一果のバレエを凪沙が応援していくことも継続は困難であったかもしれません。
レッスンでは声を張り上げて厳しくも、愛情溢れる教師です。

それからバレエの描き方について。ヨーロッパでのキャリアを経て新国立劇場バレエ団にて長年活躍されていた
千歳美香子さんが監修にあたり、スタジオやレッスン場面での振付や音楽選曲も違和感の無い描写でした。
その昔1995年、TBSドラマ『未成年』で後に歌手として大成する浜崎あゆみさん演じるバレエを習う高校生の役どころを観たり
榎本加奈子さん主演のP.A.(プライベート・アクトレス)にてバレエがテーマの回も視聴いたしましたが
演出に難があったのか、記憶が曖昧で具体例が申せずであるのはお許し願いたいのだが
Kバレエカンパニー全面協力の『眠りの森』を除けば、長らくドラマや映画で描かれるバレエ場面が苦手になりかけておりました。
牧阿佐美バレエ団のゆうきみほさん主演『赤い靴』や宇津井健さんがバレエ教師役を務めた
大映テレビ制作の『赤い激突』を視聴できずであったのは悔やまれますが
話を戻しまして、『ミッドナイトスワン』においては妙な違和感は殆んど見当たらず
バレエ好きには馴染みあるCDやスタジオ名もありますのでエンドロールにも是非ご注目ください。
私個人としては、スタジオを対角線上にひたすら跳躍を繰り返すレッスンと
故郷の広島にて一果が特別個人レッスンを受けているときに流れている音楽に興奮を覚えました。

また、ややネタばれにはなりますが、ショーパブにて泥酔し暴れる男性客の視界に
私服のままでバレエを踊る一果の姿が飛び込んだ瞬間心を掴まれうっとりと見入り
更には従業員や他の客にも観るよう促す場面もあり。バレエの美しさは状況を問わず人の胸を響かせる魅力があると再確認です。
ただ一果の急激過ぎる成長、バレエ習得の異常な早さには疑問を投げかけたくなり
女子が中学生の年齢でバレエを習い始めてすぐさま規模の大きなコンクールで入賞できるものか
加えていくら思い入れはあっても習い始めて間も無い状態でオデットのヴァリエーションをコンクールで踊る点も不自然さが残りました。
オデットのヴァリエーションについては、コンクールで踊る若い人もいるが
あれほど難しいヴァリエーションはないと思う、と森下洋子さんが音楽之友社刊『バレエの本』1989年夏号での
巻頭カラーインタビューでも断言なさっています。
一方で一果に関しては他の生徒とは明らかに異なる複雑な背景があり、オデットの悲しい運命を状況に重ねることができたのかもしれません。
女性ダンサーの中では、カナダ出身で日本でも「マラーホフの贈り物」初回での『ジゼル』を始め
世界各地で活躍したイヴリン・ハートのように14歳からバレエを習い始めてスターとなった稀な例もあるものの
映画の展開はあくまで「物語」として捉え鑑賞した次第です。

時が経ったので追加、一果がコンクールで踊るもう1本のヴァリエーション『アルレキナーダ』コロンビーヌは
ただ可愛らしく踊れば良い作品ではないこと、また友人の運命も背負った背景も描かれているため、この映画を観た後には子印象が大きく変わるかと存じます。(2023.1更新)

鑑賞後は意見が様々に分かれる作品かと思いますが、息苦しい状況下にいる人々が
懸命に生きようとする姿をスクリーンで是非ご覧いただきたいと思っております。

最後になりましたが、草彅さんによる凪沙の存在は社会に強く訴えかけてくる人物。
現在多くの職場においてLGBTについて学ぶ機会は増え、知識が無いよりは良いものの
いざ本人を目の前にすると悪気は無くても接し方に戸惑ったり傷つける発言をしてしまう光景が
凪沙の転職活動の過程でも描かれ、生き辛さが浮き彫りになる場面の1つでした。

草彅さんの主演映画を観るのはテレビ放映分も含め初めてでしたが、今でこそ多数のドラマ、映画、番組にて主演を務めていらっしゃり
タモリさんが全国津々浦々を行くフィールドワーク番組NHK『ブラタモリ』では
淡々と落ち着いたナレーションが聞き取り易く私もしばしば視聴しておりますが
テレビの流行事情に疎い私が一時期SMAP(当時)の方々が出演のテレビドラマを全部網羅まではいかずとも
視聴やテレビガイドでの情報収集を行っていた四半世紀前の頃のこと。
木村さんは『人生は上々だ』『ロング・バケーション』またそれら以前以降も『あすなろ白書』『若者のすべて』『ラブジェネレーション』など
既に飛ぶ鳥を落とす勢いで主演、主要役をこなしていたり中居さんは『輝く季節の中で』『味いちもんめ』『勝利の女神』、
稲垣さんは『東京大学物語』『最高の恋人』、香取さんは先にも述べた『未成年』『透明人間』『ドク』など
主演ドラマも多くありましたが草彅さんは出番ほんの少しな役続きであったのはよく覚えております。
(1996年に離脱しオートレーサーに転身した森さんは別枠で)
『家なき子2』は現在は再放送不可能と容易に思えるほど内容が重過ぎてちらりと観た程度ですが
同年の小泉今日子さん中井貴一さん主演のほっこりコメディ『まだ恋は始まらない』花屋の青年役では
各回1時間のうち出番は3から5分のときもありとにかく短く、翌年の中山美穂さん主演『おいしい関係』も同様。
SMAPを追ったドキュメンタリー番組でも1人だけ極端に出番が短時間で
そんな最中、単発ではあっても1995年の木曜の怪談『秘密の仲間』にてようやく初主演ドラマが登場し新聞のテレビ番組表にお名前も掲載。
賭博の誘惑に陥る重たい話で、滝沢秀明さんの怪奇倶楽部シリーズの圧倒的人気に押されていた感はあったものの安堵したものです。
恐らく初主演連続ドラマは1997年『いいひと』であったと思いますが、その頃には他のグループに目移りしてしまっていた管理人。
その辺りの話は、来年1月NHKBSでの放送が発表された監修は現在8ヶ月ぶりの公演『海賊』公演真っ只中である
Kバレエカンパニー芸術監督熊川哲也さんが手掛け、ドラマ『未成年』から派生した未成年の主張が人気を呼び
マラーホフや吉田都さん、中村祥子さんも出演された番組『学校へ行こう』グループとして司会進行出演なさっていた
井ノ原快彦さんが老舗バレエ団再生に奮起するサラリーマン役で主演するドラマ『カンパニー』原作本の感想で触れるかもしれません。


※5年前に紹介いたしましたが、LGBTの苦悩とバレエ『眠れる森の美女』花のワルツの音楽を軸に展開する物語が
2011年には出版されています。外は表れぬ奥底に秘めた苦しさに花のワルツを重ね
バレエでは祝祭感溢れる音楽の響き方も変わってくるかもしれません。
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2015/06/httpwwwnhkorjpo.html




バレエ監修にあたった千歳美香子さん(これまでの映画におけるバレエ監修も何本かなさっています)、
新国立劇場にてバレエピアニストを務め音楽提供もされた蛭崎あゆみさんによる
制作裏話が次々と繰り出される楽しいお話です。メガホンを取った内田監督の初バレエ鑑賞は
新国立劇場バレエ団の『ロメオとジュリエット』急遽のマキューシオ回であったことや
撮影地訪問にて蛭崎さんがピアノ伴奏を嘗て行ったスタジオであったなど意外な接点話も。
司会進行はバレエ講師にとどまらずバレエイベントでも活躍中の新居彩子(にい あやこ)さん。気になるバレエ場面についての秘話を
気持ち良いほどにキビキビと質問を投げては千歳さん、蛭崎さんから興味深い回答を引き出してくださっていました。



TOHOシネマ新宿からの帰り道、行ってみたいと思っていたカレー店FISHにて3種コンボカレーとカクテル南インドの風で乾杯。
ココナッツのまろやかさとピリ辛度の比率が絶妙であった白身魚カレーの味が特に気に入りました。



千歳さん蛭崎さんのウェブトークで司会進行をされた新居さんは小林紀子バレエアカデミー、シアターのご出身。
アカデミー時代クララに抜擢された『くるみ割り人形』を鑑賞しておりました。くるみと言えばボリショイやキエフバレエを繰り返し映像で観ていた私にとって
クララと金平糖を別のダンサーが務めたり子役が大勢登場する演出に仰天した、バレエ鑑賞入門者丸出しで鑑賞した舞台でもありました。



ダブルキャストでクララ役を務めた鹿野沙絵子さんは後に新国立劇場バレエ団に入団。
雑誌『バレリーナへの道』にて、『テーマとヴァリエーション』新国立初演か2度目の再演の頃の舞台写真で
フィナーレへと突入する寸前のパンパカパッパッパッパッパーンと(分かり辛い表現で失敬)管楽器が鳴り響く場面にての
パンシェポーズで華やかに大きく載っていらしたと記憶しております。



ダンスマガジン1993年6月号にて表紙を飾ったイヴリン・ハート。細身で物憂げ、叙情性が滲むオデットです。
そういえば1996年のマラーホフの贈り物初回では日本でまだ珍しかった『スターズアンドストライプス』を
ニューヨーク・シティ・バレエ団のマーガレット・トレイシーとダミアン・ウーツェルが披露。
と思っていたら、ほぼ同時期開催のルグリと輝ける仲間たちガラでも
座長ルグリと当時は新鋭で現在はパリ・オペラ座芸術監督オレリ・デュポンも同作品を披露。
本家本元の誇りか、洗練優雅と化したアメリカンマーチか、両方ご覧になった方が羨ましうございます。

エスメラルダのヴァリエーションを踊る写真がジャケットに載った
既に廃盤と噂のドキュメンタリービデオ『イヴリン・ハート 輝ける瞬間』は未だ観ておらず
若かりし頃のカデル・べラルビさんの色っぽい大人なロミオも登場するなど、見所満載らしい。
瀬戸秀美さんによる舞台写真やダンスマガジン表紙写真をまとめた写真集Dancersの表紙も
ハートのオデットだったはずで、図書館にて取り寄せ中でおりますため確認いたします。

2020年10月12日月曜日

恵子先生の魂を繋げるリレー Kバレエスタジオ34th CONCERT 10月4日(日)《大阪府豊中市》




大阪府の豊中市立文化芸術センターにて、Kバレエスタジオ34th Concertを観て参りました。約8ヶ月ぶりの大阪訪問です。
http://www.k-ballet-studio.com/index.html

KバレエスタジオFacebook


スタジオ出身で新国立劇場バレエ団所属の福岡雄大さん、福田圭吾さん、福田紘也さん、
そして石川真理子さん、吉田千智さんから子供の生徒さんまで総出演。古典からコンテンポラリーまで様々な作品が披露されました。

小さな生徒さん達も大活躍で、幕開け『五色のオレンジのマーチ』ではプロコフィエフの音楽に乗せて
オレンジを大事そうに手にしながら登場。オレンジ色のチュチュも可愛らしく、始まり早々から嬉しい気分を届けてくれました。
披露の真っ最中であっても思わず拍手したくなったのは、どの作品においても皆終始落ち着いて加えて楽しそうに踊っていたこと。
特に『ドン・キホーテ』よりアムールの踊り(結婚式前座のキューピッドの場面)は最前列にいる3歳ぐらいの生徒さんも
しっかり順番を覚えて立ち位置も間違えず全員の息も合い、先生方の指導の行き届きが窺えました。

吉田千智さん、福田圭吾さんによる『ゼンツァーノの花祭り』はほっこり感一杯で
隅々まで美しいラインを描く吉田さんと全身の表情豊かな圭吾さんが作り上げる爽やかさにニンマリ。
眼前にお花畑が広がって見えたのは明らかです。

嬉々とした懐かしさが込み上げたのは『バヤデルカ』第2幕より婚礼の場。記憶違いでなければケイスタでの上演は2008年以来干支一回りぶりで
当時ヴァルナ国際バレエコンクールにて3位入賞を果たした直後であった福岡雄大さんが同じくソロル役。
新国立劇場でも何度も鑑賞している役ですが、12年が過ぎ備わった十二分な貫禄や技術、場の空気を一変させる存在感を再度頼もしく拝見した次第です。
アダージオにて対になって支えていたのは福田兄弟。貴重な構図である上に男性と組む踊りに余り慣れていない緊張気味な生徒さんを優しく支え、
これまた信頼を寄せられるお2人でございます。コーダでは端から端へと揃って鮮やかな跳躍を披露され、見せ場を作って盛り上げてくださいました。
衣装は所々(恐らく)前回と異なり、ガムザッティはパリ・オペラ座風紫色の袖付きから白と金ベースにピンクも入った細かな装飾模様デザインに変わり
着用する生徒さんに合わせたと想像。とてもよくお似合いでした。

3部は矢上恵子先生の小作品中心にリレー式で披露。観客の目に触れる機会が少ないコンクールのための振付作品も多数あり
この機会に鑑賞できたのは喜ばしい限りでした。短い作品を11本一挙上演しながらも切り貼りした印象がなかったのは
作品と作品の間にバトンを手渡すように出演者同士が少し絡み、音楽を止めず繋げていく方式であったため。
まるで恵子先生の文献をそっと捲りながら眺めているような心持ちとなり、一層舞台へと吸い込まれていきました。
狂おしい系からポップなものまで作風は多岐に渡って難しい作品に果敢に懸命に挑む姿は胸を打ち
中でもStressは押し潰されそうな痛み苦しさから壊れていきそうな身を保とうと奮闘しもがく姿が心を抉らずにいられませんでした。
人格が複雑に交錯するさまを生々しく暗闇から醸していた恵谷彰さんを主軸に5人で踊るMultiplex Personalityでの
身体中に冷水をかけられたかの如く覆われた恐怖感、背けたくても向き合わねばならぬ苦悩の洪水も強烈な印象に刻まれております。

殆どが恵子先生作品である中、異彩を放っていたのは福田紘也さん振付『愚者の蛙、うっかり砂漠へ』。
子供達向けに振付けられた3人構成の新作で、蛙は蛙でも着ぐるみではなく黄緑色のキャップ型帽子と靴下の装いで
襟付きシャツにリボンを付けて整えたお洒落な蛙さん。両掌を客席に向けて跳びはねては雨水に喜んだり
よく紘也さん作品に登場するコーラの代わりなのか笑、水をごくごくと飲み干す振付もいたく楽しそうに踊っていて
砂漠へ行く蛙さん達の冒険が短時間に詰まった、可愛らしくユニークな作品でした。

痺れが止まらなかったのは大トリ石川真理子さん、福岡雄大さん、福田圭吾さんによるADO。
2009年のMRBガラでは恵子先生本人と同じ愛弟子2人によって踊られ、迫り来るスピード感、天使と悪魔の板挟みになり歪んでいく姿に
大変な衝撃を受けましたが、恵子先生の魂が乗り移っていたとしか思えぬ石川さんの叫ぶような凄味や
11年前に観たとき以上に黒の福岡さん白の圭吾さんの対立構図も震わすものがあり
最後石川さんが天を仰いだ仕草は間違いなく恵子先生は受け止めてくださったことでしょう。

昨年のプログラムには外部の方々も加わって恵子先生の作品を踊る大きな企画を告知していましたが
今年は舞台開催ですら危うくなる状況に見舞われ、来年に延期のようです。
しかし規模縮小とは言ってもクラシックからコンテンポラリー、オリジナルの新作まで多彩に組まれ
先述の通り一般の観客前での披露機会が少なかったコンクール作品上演は嬉しく
外部からも次々と依頼が舞い込んでいた恵子先生が1対1で多感な若い生徒と真剣に向き合いながら振付指導なさる姿までもが目に浮かんだ次第です。

対策をしながらの開催は主宰の久留美先生始め相当悩まれたのは想像に難くなく、10月初旬のこの時期は1席置きの客席規制緩和と重なり
チケット追加販売対応も加わって尚のこと目も回るような慌ただしさで当日を迎えられたことと存じます。
レッスンも長期間休みになり、コンクール等多くの舞台が中止に追い込まれた生徒さん達の状況を思うと
晴れ舞台の機会ができたのは観客としても喜ばしく、心から満喫いたしました。
カーテンコールでの久留美先生が登場では観客全員が温かく見守る光景に映り
愛弟子達が掲げた香織先生と恵子先生の遺影からは光を放っていたようにも見えました。
照明スタッフの方々の計らいかもしれませんが、変わらず眼を光らせつつ空からしっかり見ているとのメッセージにも受け取れます。

ところで、最たる驚きと興奮は入口にて招待者受付業務をなさっていた山本隆之さん。
名札も首から掛けていらして思わず見入ってしまいましたが、チケット等を手渡すお姿からも高貴なオーラが漂い
注目の的となっていたのは言うまでもありません。山本さんの舞台姿もまた拝見できる日が待ち遠しいばかりです。





いざ新幹線で大阪の陣。奈良の老舗笹八の鮭の彩弁当。モーニングビールで失礼。



新大阪駅到着。中川家の礼二さんパネルが改札にて出迎えです。
中之島線開通など、大阪の電車事情は礼二さんのネタで学びました。



通天閣へ。大阪訪問は約60回に及びますが、有名観光地で未だ行っていないのが通天閣と大阪城。
(通天閣は傍の銭湯は何度か利用)
先日大阪の回数について家族からオタクぶりに半ば呆れられたのは、
約60回中バレエ以外が目的での訪問は初回の高校の修学旅行1度のみであること。



入口にて、チャランポランとは私のことである…。この言葉と言えば
2018年に新国立劇場バレエ団にて上演された『不思議の国のアリス』WOWOWでの特集番組にて
大阪ご出身で白ウサギ役が大好評であった奥村康祐さんによるご発言。
ジャンプが得意な人にこういった性格の人が多いが、とやや濁しつつ語り笑、
しかし彼は違います、見て ての通り真面目であると共演するジャック役ダンサーを紹介。
紹介された当の本人は姿勢を正してびしっと武士のように腰掛けていましたがいたく緊張なさっていたのでしょう。
つくづく、今年はアリスの再演の全中止も残念であった。
愛知と群馬公演も行く予定で6月は全週アリス月間となる予定でございました。いつか再演を。



通天閣内は大阪のネタ宝庫で展望室に行く前から楽しい。
ローマの休日ネタは、以前高知県内に貼られていた「竜馬の休日」ポスターのほうが面白かったかもしれぬ笑



展望室より、あべのハルカスが見渡せます。



追加料金を支払い、更に上の展望台へ。


ここに来たかった、迫り出し台。記念写真を係員さんに撮っていただきましたが、
味気ない棒立ちおのぼり観光客な写りでしたので勿論載せません。ご安心を。
あべのハルカスの、命綱を用いての絶壁歩行は現在休業らしく、いつの日か参加したいと思っております。




床が透明です。高所好意症、まだまだ大阪府内で訪れたい高い所はいくつかあり
万博記念公園に開業した万博BEASTもその1つです。
BEASTと言えば、今年の年末に福岡雄大さんが神奈川県大和市にて宝満直也さん新作振付『美女と野獣』に主演されます。
素敵な作品になるのは間違いないでしょうが、私の中では刷りに刷り込まれている美女と野獣がございまして…。
千葉県の夢の国の新エリアのモチーフではありません念のため。
それよりも今は大阪の話やでと天から声が聞こえてきましたので次行きます。



黄金を背景にビリケンさん。バヤデールの装置に良さそうです。



光が振子のように動き、時計の音が低く響いていました。くるみ割り人形の真夜中の場面を思い出します。



通天閣の庭園にガネーシャ。ふと思い出し帰京後、12年前にバヤデール抜粋を上演した際のケイスタプログラムを開くと
冒頭の先生方の挨拶文のテーマは関西弁を喋る象のガネーシャが導く『夢をかなえるゾウ』。
当たり前のことを当たり前に行う大切さについて再度学ばれた旨が記されていました。今読むと殊更沁みる挨拶文です。



最後まで大阪ネタ満載。今更ながら、通天閣おすすめ観光地です。大阪ネタの湖にどっぷり浸かることができます。



日本橋(ニホンバシではなくニッポンバシ。路線検索時要注意)へ移動し、行きたいと思っていたお好み焼き屋さんおかるへ。



鉄板にて、女将さんが焼いてくださいました。管理人、お好み焼きは辛うじて焼けますがたこ焼きは生涯無理でしょう笑
以前大阪の蛸之徹で焼きましたが、くるっと回転させることができず店員さんにお任せしました…。
レッスンでも回転、苦手です。いや、得意分野も無いか。
跳躍力もありませんが、子供の頃は幼稚園の天井低く広いとも言い難い空き教室で習っていたため
天井や壁、ガラス戸への激突を避けるため思い切りできなかったせいか縦でも横でも跳ぶほうが好きでございます



女将さんがマヨネーズアートを描いてくださいます。メニューはたこ玉で、大ぶりのたこがたくさん入っています。



大阪のエッフェル塔こと通天閣、だそうです。ちょうど行ってきたばかりでしたので嬉しさもひとしお。



街全体が立体美術館な道頓堀周辺。



帰りの新幹線車内にて、笑う門には福来るの文字に和みながら乾杯。
出演者に、福の字が多いとチラシを見ても感じますから尚更です。さらば大阪、年内にまた訪阪できますように。

2020年10月9日金曜日

プロローグから格式な美が凝縮 牧阿佐美バレヱ団『眠れる森の美女』 10月3日(土)




10月3日(土)、牧阿佐美バレヱ団『眠れる森の美女』を観て参りました。ウエストモーランド版眠りの全幕は初鑑賞です。
https://www.ambt.jp/pf-the-sleeping-beauty2020/

スパイスイープラスの主演3人のダンサーへのインタビュー
https://spice.eplus.jp/articles/276143





青山さんのオーロラは1幕ではにこやかな笑みを湛えつつも華奢な肢体から醸す儚さですぐさま守りたくなるお姫様。
実のところ3年前のNHKバレエの饗宴にて結婚式場面上演時、威厳を保ちたいのか単なる緊張であるのかどっちつかずな表情で
望まぬ結婚を強いられた姫君の設定と思わせるほど幸福感が欠如していて消化不良を覚えたものですが、
全幕で観ると淑やかで愛らしい姫が2幕ではしっとり夢幻的な、手の届かぬ憧れの姫なる風情を見せてそして格式高く結婚式、の流れが明確。
NHKのときとは大きく異なる印象を与えていました。全幕通して観る大切さを再確認。
清瀧さんの王子は登場時の貴公子オーラは抑えめでしたが(失礼)、1人物思いに耽り心の整理がつかぬ苦しさを
リラの精に訴える姿は、思わず導いてあげたくなる純粋真っ直ぐな眼差しで説得力がありました。
そういえば目覚めのパ・ド・ドゥが披露されませんでしたが、今回は諸事情によりカットされたのかもしれません。

密度の濃い魅力で場を攫ったのは保坂さんのカラボス。国や時代こそ異なるがエリザベス1世の肖像画を彷彿させる
細かな模様やレースで彩られた赤いドレスが似合うこと。恐怖感、不気味さ美しさが入り混じった存在感を示し
毒を弾いていそうな指先に至るまでマイムも雄弁でした。

先述の通り初めてお目にかかるウエストモーランド版眠り全幕で最も感激したのはプロローグ。
貴族達のゴールドを基調とした格式と絢爛たる衣装やベルベットの紺地カーテンを模した美術、
そしてパ・ド・シス妖精達のチュチュ模様や色味、頭飾りの形状まで異なる凝った装飾は細部までが幕開けから麗しく
年季が入っていながらもむしろ長年の継承に裏打ちされた伝統美に繋がっていた印象すら抱かせました。

他ソリストでは米澤真弓さんの空間を大きく無駄無く使い輪郭のはっきりとした踊りで魅せた清爽で美しいフロリン王女、
上中穂香さんの音楽にぴたりと嵌り楽しそうに戯れ卓越した技術が光る達者な宝石にも満悦。
青い鳥の山本達史さんも好演でしたが惜しかったのはメイクで、指定があったのでしょうが
眉の真下に青いラインを引いた形で眉が倍に太くなったと見え、まるでこち亀の両さん状態。
こちら文京区役所前?と思わず公共施設である点は同じと言わんばかりの例えを挙げたくなったのも束の間、
米澤さんとの息の合ったパートナーシップやしなやかで軽快、高らか軽やかに跳ぶ技術が救いでございました。

舞台装置で気にかかったのは3幕結婚式の美術。恐らくは1幕ローズアダージオと同じ背景に柱を追加したのみで
1幕で観れば初夏の緑に彩られた爽やかな中庭で初々しいオーロラ姫の16歳誕生日祝いにふさわしい色合いですが
そぞろ歩く大勢の貴族達の瀟洒な衣装、次々とおとぎ話のキャラクター達も登場し締め括りに主役のグラン・パ・ド・ドゥが披露される
格式高い結婚式の背景美術としては妙にあっさりしていて物足りなさを感じてしまいました。
それ故、プロローグでの重厚な色彩美をそのまま3幕で用いても良さそうに思えた次第です。

一部の打楽器やピアノを舞台上下手側手前に配置し、オーケストラも対策が窺える演出。
打楽器好きな身としてはこれまで以上にポロネーズのタンバリンや宝石のトライアングルが高らかに響き渡り、好みな演奏形態でした。
何より、この状況下でチャイコフスキー三大バレエの中でも音楽もスケールも最高峰と呼ばれる『眠れる森の美女』全幕を
生で聴けたのは喜びとしか言いようがりません。牧バレエ伝統のウエストモーランド版眠り、これからも上演を重ねていって欲しい作品です。



展示衣装



背中まで花々が彩るリラの精



ほんのり甘さも香るローズビールで乾杯。眠りの設定からはだいぶ現代寄りですが、ヴィクトリア調の内装もお洒落です。柱も見えます。

2020年10月2日金曜日

熱量充満の空間 DAIFUKU vol.6 Strong.B 9月27日(日)夜公演





9月27日(日)、横浜市のTHE HALL YOKOHAMAにてDAIFUKU vol.6 Strong.B夜公演を観て参りました。
新国立劇場バレエ団や小林紀子バレエシアターでも長らく活躍されていた大和雅美さんと
新国立劇場バレエ団ファーストソリストの福田圭吾さん監修企画で、今回で6回目。毎回新鮮味を与える企画で楽しみにしている公演です。
3月上演の予定が延期となり無事9月末に4回公演全て完遂、安堵いたしました。
https://www.angel-r.jp/event_ar/daifuku/daifuku-vol06/27087/


1.opening
大和雅美 /福田圭吾/福岡雄大/梶田留以/木下嘉人/速水渉悟/小柴富久修/福田紘也
東菜摘子/阿部美絵/上原理沙/内山陽瀬/川澄藍/澤田知里/島田亜紀/高橋里奈/中野百花/原田奈津子/繁昌楓

2.rice cake stuffed with…
大和雅美/福田圭吾

3.Enchant(e)
木下嘉人/速水渉悟/小柴富久修

4.Scramble
大和雅美/福田圭吾/福岡雄大/梶田留以/木下嘉人/速水渉悟/福田紘也
東菜摘子/阿部美絵/上原理沙/内山陽瀬/川澄藍/澤田知里/島田亜紀/高橋里奈/中野百花/原田奈津子/繁昌楓

5.conecting people
梶田留以

6.“b” 福田圭吾/福田紘也

7.あいう
小柴富久修/HIRONA(ゲストミュージシャン)

8.witz[振付 矢上恵子]
HIRONA(ゲストミュージシャン)
福岡雄大

9.Yoki
東菜摘子/阿部美絵/上原理沙/内山陽瀬/川澄藍/澤田知里/島田亜紀/高橋里奈/中野百花/原田奈津子/繁昌楓

10.remember
福岡雄大/梶田留以

11.solo
HIRONA(ゲストミュージシャン)

12.assemble
全キャスト


オープニングは全員登場。ランウェイのように迫り出したT型舞台を生かし、特設舞台の両脇や奥の出入口からもダンサーが次々と現れ
全員黒めの衣装で統一。スタイリッシュな幕開けでした。今回客席は360度ではなく舞台を半円で囲む形で、
舞台近くでなくても場所問わず所狭しと眼前に現れて踊るときも度々あり、どの席からもスタジオ開催ならではの近距離で堪能。
最前列席席での鑑賞者用にフェイスシールド配布も頷ける近さでした。

恐らくはDAIFUKU初登場の梶田さんの可動域の広さしなやかさには大仰天。顔つきは涼しげながら全身がこれでもかと自在に動き操る身体能力は瞬きも惜しいほどで
男前かと思えば一瞬にして色っぽさも見せるなど、めくるめく変化を見せる身体の表情から目が離せませんでした。
福岡さん梶田さんのデュエットも実に新鮮で、静けさの中から沸々とせめぎ合うパワーを放出。

注目度の高い作品の1本であったのは福岡さん福田圭吾さんがダブルキャストで披露した師匠矢上恵子さん振付witz。
元々は福岡さんのために振付けられたそうですがローザンヌ国際バレエコンクールで圭吾さんが踊ったことがきっかけで
メイクが似ているからか「アトム」の愛称と共に瞬く間にお茶の間に広まり、圭吾さん用に振付けられた作品と思っておりました。
低姿勢からの予期せぬ跳躍やギリギリのバランスが息する暇もなく繰り出され、10代の頃にコンクールで踊った作品を現在も踊り切る力に脱帽。
生来の身体能力に加え相当な訓練を積まねば習得不可能であろう過酷な振付ですが
昨年春に逝去された恵子先生も空の上から両腕を組みつつも喜びながらご覧になっていたに違いありません。

機会があるようでなかなか無い福田圭吾さん紘也さん兄弟デュエットも面白く、リフトも用いながらコーラのペットボトルを静かに奪い合い
いつの間にかリレーのように繋げて行く運びで、思わず笑いそうされど真剣さは不変であるため境界線辺りで鑑賞。

そして出ました、毎回何かしらやってくださる小柴さん。今回は出で立ちはバレエ学校の生徒さんの如きシンプルな格好で登場。
何が起こるかと思えばG線上のアリアが流れる中で題名の通り五十音順であ、い、う、と発音が始まり、
各々の文字が付くポーズやテクニックを恐らくはHIRONAさん?が低い声で発音し小柴さんが体現。
そうです、近年ではマリインスキーのガラや今年のアリーナ・コジョカル ドリーム(救済)プロジェクトでも上演された作品の日本語版です笑。
マリインスキーガラではパリッシュ、コジョカルプロジェクトではコボーが踊る姿を鑑賞しましたが
小柴さんは肩の力も抜かず生真面目一直線でこれはこれで笑いが止まらず。肉体張る熱演でした。
気になったのはあ、い、う、と発音していたのやや高音の男性はどなたか、そして「よ」は「米沢唯」でチャコット広告での勇ましい跳躍ポーズまで再現していましたが
本人から許可を得たのか笑、想像を巡らすと一層楽しくなる作品でした。

クラシックもコンテンポラリーもお手の物な木下さんは何処を切り取っても職人芸な姿で見せ、近距離で観てもコントロール力が圧巻。
速水さんのこれ見よがしな決め顔(褒め言葉)にも相応のパワフルに斬り込んでくる踊りやオーラも好みは別として(失礼)あっと驚かせるものがあり
今月末に控える新国立劇場バレエ団公演全幕主役デビュー『ドン・キホーテ』バジルはさぞお似合いでしょう。
きびきび颯爽と舞台を彩るオーディションで選抜された女性ダンサー達のレベルも高く、休憩無しであっても冗長な箇所は皆無で瞬く間の終演でした。

それから初めて生で聴いたHIRONAさんのビートボックスの迫力、口1つで多彩な音楽を奏でてしまう技術もインパクトが大きく
呼応するダンサーの肉体がより前面に押し出していた印象です。

3月の上演が半年先に延期となっても開催できるか否か先が見えぬ中で準備を進めてこられたと思うと特に座長の大和さん福田圭吾さんの胸中は計り知れず
押し潰されそうな不安に悩まされていたのは想像に難くありません。
4月の毎日新聞に掲載された圭吾さんへのインタビューで、手掛ける舞台が中止に追い込まれた同じ状況下にいる方々を案じていらしたご様子からは
いたく優しいお人柄が伝わり、上演に漕ぎ着けたことに心から安堵。これからも継続開催して欲しく、次回も心待ちにしております。



港のヨーコ、横浜港にて。横浜は何度も来ておりますが横須賀は2013年の東京バレエ団公演以来ご無沙汰中。
馬蹄形が美しいよこすか芸術劇場もまた行ってみたい劇場です。



黄昏時もブルーライトな夜景も今回は鑑賞せず。五木ひろしさんといしだあゆみさんの名曲はまた次回に。



昼公演も鑑賞した友人達から感想も聞きつつ帰りは中華街にて紹興酒で乾杯。


のんびり寛げるお店で、定食はこの他水餃子に杏仁豆腐、食後には中国茶のサービスまで付いて満足でございます。