2020年11月23日月曜日

自前で6人のバジル実現そして新監督の味付けで7公演完走 新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』 10月23日(金)〜11月1日(日)




だいぶ遅くなりましたが10月23日(金)から11月1日(日)まで、新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』7回全公演を観て参りました。
予定通りの千秋楽を迎えたのは1月のニューイヤー・バレエ以来です。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/donquixote/
※キャストは後日掲載する予定。月日がかなり流れてしまい札幌公演にも行って参り、長いだけの大雑把な感想となりそうで
思い出しつつ更新するかもしれませんが悪しからず。


10月23日(金)

キトリ  米沢 唯
バジル 井澤 駿
ドン・キホーテ 貝川鐵夫
サンチョ・パンサ 福田圭吾
ガマーシュ 奥村康祐
ジュアニッタ 奥田花純
ピッキリア 飯野萌子
エスパーダ 木下嘉人
街の踊り子 寺田亜沙子
メルセデス 渡辺与布
カスタネットの踊り 細田千晶
ジプシーの頭目 中家正博
二人のジプシー
井澤 諒/宇賀大将
森の女王 木村優里
キューピッド 五月女遥
ボレロ 益田裕子/速水渉悟
第1ヴァリエーション 奥田花純
第2ヴァリエーション池田理沙子


10月24日(土) 13:30

キトリ  木村優里
バジル 渡邊峻郁
ドン・キホーテ 趙 載範
サンチョ・パンサ 髙橋一輝
ガマーシュ 小柴富久修
ジュアニッタ 廣田奈々
ピッキリア 横山柊子
エスパーダ 井澤 駿
街の踊り子 柴山紗帆
メルセデス 渡辺与布
カスタネットの踊り 朝枝尚子
ジプシーの頭目 中家正博
二人のジプシー
福田圭吾/木下嘉人
森の女王 細田千晶
キューピッド 広瀬 碧
ボレロ 益田裕子/速水渉悟
第1ヴァリエーション 
五月女遥
第2ヴァリエーション 廣川みくり


10月24日(土) 19:00

キトリ  小野絢子
バジル 福岡雄大
ドン・キホーテ 貝川鐵夫
サンチョ・パンサ 福田圭吾
ガマーシュ 奥村康祐
ジュアニッタ 奥田花純
ピッキリア 飯野萌子
エスパーダ 木下嘉人
街の踊り子 寺田亜沙子
メルセデス 益田裕子
カスタネットの踊り 朝枝尚子
ジプシーの頭目 速水渉悟
二人のジプシー
井澤 諒/宇賀大将
森の女王 細田千晶
キューピッド 五月女遥
ボレロ 川口 藍/中家正博
第1ヴァリエーション 奥田花純
第2ヴァリエーション 池田理沙子


10月25日(日)  

キトリ  柴山紗帆
バジル 中家正博
ドン・キホーテ 趙 載範
サンチョ・パンサ 髙橋一輝
ガマーシュ 小柴富久修
ジュアニッタ 廣田奈々
ピッキリア 横山柊子
エスパーダ 井澤 駿
街の踊り子 木村優里
メルセデス 益田裕子
カスタネットの踊り 朝枝尚子
ジプシーの頭目 速水渉悟
二人のジプシー
福田圭吾/木下嘉人
森の女王 細田千晶
キューピッド 広瀬 碧
ボレロ 川口 藍/渡邊峻郁
第1ヴァリエーション
  五月女遥
第2ヴァリエーション 廣川みくり


10月31日(土)  13:00

キトリ  池田理沙子
バジル 奥村康祐
ドン・キホーテ 趙 載範
サンチョ・パンサ 髙橋一輝
ガマーシュ 小柴富久修
ジュアニッタ 廣田奈々
ピッキリア 横山柊子
エスパーダ 井澤 駿
街の踊り子 木村優里
メルセデス 益田裕子
カスタネットの踊り 朝枝尚子
ジプシーの頭目 速水渉悟
二人のジプシー
福田圭吾/木下嘉人
森の女王 細田千晶
キューピッド 広瀬 碧
ボレロ 川口 藍/中家正博
第1ヴァリエーション 五月女遥
第2ヴァリエーション 廣川みくり


10月31日(土) 18:30

キトリ  米沢 唯
バジル 速水渉悟
ドン・キホーテ 貝川鐵夫
サンチョ・パンサ 福田圭吾
ガマーシュ 奥村康祐
ジュアニッタ 奥田花純
ピッキリア 飯野萌子
エスパーダ 木下嘉人
街の踊り子 柴山紗帆
メルセデス 渡辺与布
カスタネットの踊り 細田千晶
ジプシーの頭目 中家正博
二人のジプシー
井澤 諒/宇賀大将
森の女王 木村優里
キューピッド 五月女遥
ボレロ 川口 藍/渡邊峻郁
第1ヴァリエーション 奥田花純
第2ヴァリエーション 池田理沙子


11月1日(日) 

キトリ  小野絢子
バジル 福岡雄大
ドン・キホーテ 貝川鐵夫
サンチョ・パンサ 福田圭吾
ガマーシュ 奥村康祐
ジュアニッタ 奥田花純
ピッキリア 飯野萌子
エスパーダ 木下嘉人
街の踊り子 寺田亜沙子
メルセデス 渡辺与布
カスタネットの踊り 細田千晶
ジプシーの頭目 中家正博
二人のジプシー
井澤 諒/宇賀大将
森の女王 木村優里
キューピッド 五月女遥
ボレロ 益田裕子/速水渉悟
第1ヴァリエーション 奥田花純
第2ヴァリエーション 池田理沙子


初日の米沢さんは一目で虜になるキトリで席巻。ややきっちり優等生な踊り方にも見えていたチコちゃん配信のリハーサルからは打って変わり
肩の力が抜け、次のポーズに移る過程も深いところから引っ張りあげるようなダイナミックな魅力が光って
約8ヶ月ぶりの本公演再開初日を飾る最たる緊張が走るであろう立場であろうに全くそう感じさせず
本公演再開幕開けに勢いをつけてくださいました。
大きな変化の1つはメイクで、生来のすっきりした美しさを生かしつつ目回りの描き方が随分とナチュラル且つ映えるようになりこちらも嬉しい驚きです。
速水さんと組まれたときには何事も万全に受け止めるお姉さんキトリで主役デビューをサポート。

木村さんは一段と垢抜け、表情や四肢も豊かに躍動するキトリ。前回2016年公演ではそれはそれは初々しいされど目元の濃過ぎるメイクに
要改善と貼り紙をしたい欲に駆られてしまいましたが随分とメイクも自然志向となり、生来の可愛らしいお顔立ちが活きて好印象。
終始笑顔でバジルを引っ張る心意気頼もしいキトリを感じさせました。
熱々カップルとは一味違った、堅物床屋青年に懸命についていく健気な女性といったところです。

柴山さんは職人気質に加えリラックスした開放感も備わった可愛らしいキトリ。周りの目をしっかりと見ながらのソロも良く、
初めて組む中家さんバジルによる万全サポートが噛み合い相性抜群ペア誕生を目にした思いです。

目に見える大変化を披露していたのは池田さん。ややぎこちなく詰まり気味だった上体の使い方が驚くほど柔らかくなり、周囲とのやりとり滑らか。
常に笑い声が聞こえてきそうな奥村康祐さんバジル楽しいペア構築です。

お茶目な愛らしさを振り撒いていたのは小野絢子さん。登場時から吸い寄せるように目配せをしつつ視線を集め、
バジルを尻の下に敷くも笑、活発でありながら粗削りには決してならぬ魅力にもうっとり。 大胆な表情の切り替えで笑いを誘う、喜劇の女王なるキトリでした。

井澤さんはエスパーダ以上に華あるバジルで床屋ではなく美容師と想像。今回開眼したのか踊り方も芝居もはっきりとした意思表示が見え
表情のくるくるとした変わりよう、近年はなくなってきましたが米沢さんに対する遠慮がちな箇所も皆無で会話のキャッチボールも益々活発。
女王なスター米沢さんキトリを何度も可愛らしく見せたのは良い意味で目を疑う嬉しい収穫でした。

昨年バレエ・アステラス2019での大トリにてグラン・パ・ド・ドゥを披露された渡邊さんバジルは
品行方正な中から少しずつ茶目っ気が覗く、三色ポールが目に浮かぶ古式ゆかしき床屋さん。
どう考えてもキトリ父さんことロレンツォが娘の結婚相手として猛反対の対象にはならなそうな
出納帳記入を日課及び喜びとする堅実勤勉そうな青年でしたが(父さんガマーシュと裏取引か!?)
だからこそ、キトリ友人とこれ見よがしに浮気する様子にはキトリも堅物バジルの豹変に対する驚きを更に高めていたもよう。
(しかしバジル、いたく後ろめたそうであったが笑)
さて吉田都監督体制になってからも継続いたします髪型観察。やや七三な横分けで前髪は少し残した形で整えられたザ・床屋さんで二重丸!
ヴァリエーションでの踏切していると思わせずにふわっと高々と舞うジャンプにも見惚れ、(札幌では更なる飛翔が待っていた)
念願叶っての全幕バジル、じっくり堪能いたしました。

自粛期間中ダンサーとの1対1の対談企画『雄大の部屋』やバレエ音楽に合わせて披露のドラマティック筋肉体操も好評を博し
楽しい家時間を届けてくださった福岡さんは、技も表現もキレキレで驚愕。
小野さんとは看板ペアとして定着し過ぎたイメージもありますがドンキにおいては
1投げたボールを2、3、とどんどん膨らませながら投げ合い一番楽しい方向へ持って引き上げていた印象。
1幕前半のキトリ、ロレンツォとの素早い雲隠れいたずら競争からして 目も回りそうな急速ピッチなスリル満点展開で引き込む力量に天晴れでした。
狂言自殺では寝込み直前に一呼吸置きつつ観客に対しても内緒を呼びかけ、対話しながら一時就寝笑。
客席にいながら気分は居酒屋の客になりきって見守ることができました。

中家さんは頼りになるあんちゃん理髪師。街の人々への掛け声が聞こえてきそうで人気者感も十二分、
柴山さんとは身体のバランスも良好なのか、お2人ともリフトや駆け回る箇所も規範を保ちつつも豪快で外向きなパワー全開。微動だにしないリフトも目を見張りました。

バジルは以外にも7年ぶりの奥村さんは、前回のあどけない弟な青年から一転、キトリを穏やかに見守るにこやかで心優しい青年。そしてテクニックも浮気もまあ軽やかなこと。
観ているこちらも笑いが絶えずとびきり明るい舞台を届けてくださいました。

約半年の持ち越しを経て待望の主役デビューを果たした速水さんは少しやんちゃな浮気性バジル。
しかし思っていたほどの幼い弟キャラクターではなく、米沢さんと釣り合うなかなかの好青年。
チャラ男な弟バジルになるであろうとばかり申していて失礼、ただ前髪のメッシュは誠に気になるが
酒場でのめでたきフィナーレにて突如の超絶技巧⁈(540度の技)を繰り出したりと身体も乗っていて、それに対して仰け反りながら反応する福田さんサンチョ始め
幕開けから舞台上、客席双方から祝福大応援あたたかさ一杯の舞台でした。サポートはもうひと頑張りでしたが芝居はこなれた感すら漂い、良いデビューでした。
それにしても、何度も申しますが恐らくはバレエ団史上最多の自前で男性主役6人配役は快挙です。

さて、特に6組6様に個性様々であったのが酒場の卓上。アドリブか自由度が高いのか各キャストに任せていたようで観察が楽し過ぎ
この居酒屋劇場をしっかり観るために上階であってもキトリ達が腰掛ける下手側のテーブルがよく見える席を取った甲斐がありました。(24日昼のみ舞台すぐ近くであったが)
ボリショイの版らしくあれこれや芝居をせず、しかし熱々に見えたのは米沢さん井澤さん、米沢さん速水さんペア。井澤さんバジルは膝の上にキトリを乗せ、
速水さんは横に引き寄せ派手な行いはしていないにも拘らず視線を少し交わすだけでも熱々ぶりが伝わるカップル。(褒め言葉としてバカップル笑)
速水さんのシャツのはだけ方が目立っていたのはご愛嬌として許します。

演者にとことん敬意を表して鑑賞に臨んでいたのは渡邊さんバジルで、フラメンコショーなどまずは真剣に演者の踊りを鑑賞し食事はその後で、がパターンなのでしょう。
或いは居酒屋初体験バジルだったのかもしれません。
木村さんキトリが一生懸命扇子で仰いであげていた姿が何ともいじらしく映りました。

宴会部長ぶりを発揮していたのは中家さん。飲み物の行き渡りを確認したり、キトリから扇子を借りてパタパタ仰いであげたりと気遣い青年。
そうかと思えばキトリが夢中になっているエスパーダに立ち上がって度々眼を飛ばしては周囲に止められ、
それでも振り切ってメルセデスが卓上で踊る際には前へ出ようと熱い青年と化し、変化がめまぐるしい現場でございました。
柴山さんキトリがあからさまにデレデレ恍惚とエスパーダの虜になってバジルの競争心に火を付ける一因にもなったりと感情を互いにぐいぐいと引き出し合っていた点も面白く、そしてバジルはカスタネットの女にも興味津々。追いかけようと必死でした笑。

一番ほのぼのしていたのは池田さん奥村さんペア。友人らも交えてまるで先輩達の三角関係が乱れていく恋模様を放課後に観察する下級生達に見え
濃密なエスパーダ達を実に楽しそうに傍観している様子が微笑ましい平和な4人でした。

とにもかくにも細かな作り込みで熟成たる練り上げであったのは小野さん福岡さん。
飲兵衛な2人で店主はさぞかし心配であったに違いありません。バジルはラッパ飲みもしていたか、エスパーダに恋しかけているキトリを制止して無理矢理振り向かせ、
そしてお通しであろうパンのお皿も囲い込んだりと恋も食も独占欲が強いバジルでした。
そうこうするうちに酔っ払うキトリはコップを倒してしまい、飯野さんピッキリアがすぐさま挙手して店員を呼び、見事な連携プレーで解決です。
余談だが、お通しのパンが美味しそうであると毎回思った管理人。心の中ではアヒージョを注文して一緒に乾杯していた次第です。
酒場にて大人数での賑やかな飲酒がこの先も数年は困難であろう状況下、舞台上だけでも光景が覗けてワインや生ハムも好物である身としては嬉しいひとときでした。

考えてみればタイトルロールであるドン・キホーテ、貝川さんは少々狂いのありそうなユーモアに満ちた老騎士。
サンチョへの語りかけや驚きを示すときには目をギョロッさせたり、クスッと笑いを誘う場面も多々ありました。
対する趙さんはドン・キホーテはどっしり構えた重厚な風格。ひたすら崇高で何事にも動じず、仕草もはっきりとしていて包容力もあり。
水戸黄門を若返らせて西洋版にしたイメージでございます。

福田さんのサンチョは晴れやかな魅力満開、現れただけで場を一気に盛り立て舞台に厚みを加えてくださる活躍で一挙手一投足から目が離せず。
ただ腕を振って歩く際も気づけば舞台全体がサンチョワールドと化し、胴上げのときも客席に視線を送ったり身体を横に伸ばしたまま回転したりと多彩に表現。
ハートの熱いサンチョでした。ドン・キホーテとはコミカルに掛け合うコンビです。

髙橋さんはおっとり、目をくりくりして可愛らしくドン・キホーテには忠実にお仕えしていた様子。
24日(土)昼では胴上げされたとき斜め上方向に飛んでしまいましたが闘牛士さん達の冷静な判断により無事キャッチ。
太古の昔だが管理人が通っていた中学校にて遊び半分に男子生徒の集団が胴上げ大会を行い、受け止めに失敗して生徒が大怪我を負う事故が発生。
プロのダンサーですから訓練を重ねているとはいえ、新聞沙汰にもなった当時の出来事が一瞬脳裏を過りましたが、本番中の軌道修正に拍手そして一安心いたしました。
髙橋さんは高度な場所で空中回転を披露し、上階で観ていると視界から消えかけてしまったときも。鞄を大事そうに抱える姿がまた可愛らしさを増幅です。
千秋楽だったか、福田さんサンチョが胴上げ直後あたりに帽子を落としてしまい、誰が拾って渡すのか双眼鏡で眺めて着目していたところ
他日サンチョ、その日はセギデリアに入っていた高橋さんがキトリ友人の踊りが始まる頃にさりげなく手渡し。(多分。もはやウォーリーを探せ状態だが)
探していた落とし物を見つけて安堵するサンチョと拾い主、互いを讃え合う姿が幸福に満ちていた印象です。

エスパーダはもダブルキャスト。木下さんはマントの捌き方、持ち方が非常に上手く、両手でピンと張っての持ち方は熟練のクリーニング店主級。
髭付きのお顔はNHKでの内村光良さんのコント番組で田中直樹さん演じる胡散臭い記者を思い浮かべてしまったが
斜めから構えたような皮肉めいたものをも醸していた点や斬れ味もなかなか良かった印象です。
井澤さんはイケイケドンドンな調子で(褒め言葉)華と色気が共存。
当初はもっさりしているかと想像し期待もしてはおりませんでしたが(失礼)予想を大きく上回る好演で
平均身長約180cmの長身闘牛士軍団を率いていても埋没せず、むしろ華やかさ倍増。
冒頭の片腕を差し出す振付がキザな交通警備に思えてどうにも好きになれぬ居酒屋でのソロも絵になっていて、バジルに続きこれまた嬉しい収穫でした。
居酒屋にて演歌調な悲哀感を醸出しお色気たっぷりなカスタネットの踊りの朝枝さんと井澤さんエスパーダの濃密な2人の並びを額縁に嵌めると
大映テレビ制作による山口百恵さん三浦友和さん主演のメロドラマ赤いシリーズを彷彿させ(お若い方はご存じでないかもしれませんが嘗て一世を風靡したシリーズです)
更にクールで気の強そうなメルセデス益田さんが登場しいよいよ三角関係勃発な事態になるとスペイン版昼ドラの完成。
この場面がこうも心臓をどきどきとさせたのは初めてかもしれません。
メルセデスと言えば、本島さんが今回は全日公爵夫人のみの出演者であったのは非常に寂しく居酒屋でビシッと情熱的に締める役も務めていただきたかったと心残り。
まだまだ踊れるどころか20代の頃よりも身体能力が向上していそうですから(札幌のカラボス、圧巻でした)踊る役でもっと観たいダンサーです。

これまでは3幕結婚式の謎の前座と呼んでいた茄子色ボレロも印象が覆り、仰々しい紫色が渡邊さんに似合うこと。
資料室にて前田新奈さん山本隆之さんが踊られた2002年公演映像を以前視聴したときも、モニター入れ替え前の映像越しであったせいか色合いも好みにならずでしたが
長身でスタイル抜群な川口さん渡邊さんが着用すると映え、美しいと思えたのは初めてでした。
分野は異なれど、トゥールーズ時代の映像で土を敷いた舞台上でタンゴを踊る姿は繰り返し何度も観て、
昨年1月の藤原歌劇団『椿姫』におけるギラギラな闘牛士も圧巻でしたからスペインもののキャラクターはまたみたいと欲が募り続けており
顔の付け方や跳び上がるフォルムの美、視線の交わし方にも酔い痴れたボレロでございました。
願わくは渡邊さんのエスパーダも観たかったが次回の楽しみとしてとっておきます。
椿姫での闘牛士、及びバレエダンサー志望から闘牛士へ転身した濃野平さんの著書を振り返ると
綺麗事だけではいかない修羅場に揉まれながら花形へと到達したに相応しい内側からギラついたオーラを醸すエスパーダになると想像しております。
オペラのときと同様、揉み上げ付けて、髪はオールバックシニヨンのクラシカルな装い再現を。初台の観客にも是非ご覧いただきたい。

奥村さんガマーシュの張り切り求愛もただ変人ではなく品もあり、ロレンツォと大の仲良しである関係も何だかほっこり。2人も自称キトリの応援隊長なのでしょう。
何処かの日で登場して早々帽子が取れてしまうハプニングもありましたが
ささっと拾って何事も無かったように急ピッチで繕う姿もまた味がありました笑。

前回の同役から大進化を遂げていたのはロレンツォの福田紘也さんで、 タオルを床に叩きつける音までもを客席に響かせ
熱気を帯びた振り幅の広い体当たりな演技は極太サインペンで輪郭を縁取ったが如き存在感。
バジルといちゃつくキトリが視界に入った途端にガシャーン!と音を立てて食器の載ったお盆を落とす箇所なんぞ、卓袱台ひっくり返す寺内貫太郎な勢いで
その後の隠れんぼ悪戯のバジルとの駆け引きの急速展開な笑いは鉄板。 2016年公演の印象とは大違いでした。
ただ単なる雷親父ではない点も描かれ、キトリ登場のソロでは街の人々と喜び合い、妻の肩を抱き寄せながら目を細めて愛娘を見つめる優しく愛情深い面が表れ
本当は憎めないお父さんそして愛妻家なのです。
だからこそ、バジルの狂言自殺が発覚し騙されて項垂れるどころか自棄酒に浸り決して祝福はしない徹底ぶりもまた同情を誘う一幕でした。

初役、守屋さんによるロレンツォの妻もチャーミングで、気風の良い宿屋の女将さんな雰囲気満点。
バジルと熱々な娘の味方で、タイミング悪く現れるロレンツォの襲来を2人に懸命に知らせようと奮闘する姿にも目が留まり、
サンチョが落としてしまった帽子をちょっと嫌々拾って持ち主に手渡す流れも実に自然なその場対応。
そういえば井澤さんエスパーダの登場で投げた帽子がホームランのように舞い、舞台袖手前にいた男性(恐らく小川さん?)がキャッチして被り
意気揚々とくるくる回ってそのまま袖に運び込んでいたときもあり
隅々で描かれる生ならではのやりとり全てを含めて舞台を何倍にも面白味を加えていると再確認です。

ファジェーチェフ版ドンキを初めて観たのは比較的最近で15年前の2005年。初鑑賞時は酒井はなさんキトリと山本隆之さんバジルの主演ばかりに目が行き
周囲をさほど観ていなかった点も悔やまれますが
(狂言自殺がとても可愛らしいバジルで
オットセイのように上体をヒクヒクさせながらキトリに繰り返し接吻していたのは今も忘れられません笑)
先に居酒屋狂言自殺が来てその後ジプシー、夢の場、結婚式の順序からして盛り上がりに欠けると捉えており
今も心から好きな演目ではなく古色蒼然、要改訂とよく呼んでいたものですが(失礼)
初日の幕開きから沸き上がるエネルギーが上階席にまで届き、活気づくセギデリアにも大いに高揚してこんなに楽しい演目であっただろうかと過去の上演を回想。
現在の全世界に及ぶ不穏な状況をも消し去ってくれそうな明るい演目である点もさることながら、
今までとは違った踊る喜び、熱量がびっくり箱を開けたかのように弾け飛んでいた点やキャラクター1人1人がより個性を発揮していたのは明らかでした。
結婚式にも両親臨席をとは思いつつも、きっと貴族の館を出た後に街に戻り、親族やガマーシュも交えて!?盛大な2次会を開催したと想像しております。
冒頭ドン・キホーテの本の中身が英文表記(多分)や闘牛士達が毎度難航する剣刺演出には謎が残り
またプロローグからバルセロナへの幕開けと、ドン・キホーテ気絶から夢の場への転換は真っ暗状態から突如照明量が増え、毎回目がチカチカしなくもないがまあ良いか。

演出で大きく変わった点の1つが情勢を鑑みて子役を無しにしたこと。 宿屋の見習い少年も無しとなり業務はロレンツォと妻の2人で回し、多忙な旅館に。
そして前面に出て踊る箇所も多いキューピッド子役も無しで、さほど違和感はありませんでしたが
先にも述べた前田さん山本さんがボレロを踊られた2002年日韓W杯開催記念で韓国国立バレエ団からも主役をゲストに呼んだ年の公演では
現在新国立団員の加藤朋子さん、そして海外の第一線で活躍中の影山茉以さん、野村千尋さん、高田茜さんのお名前もあり(同姓同名でない限り恐らくはご本人かと思います)
未来のバレエダンサーの舞台経験の場が少なくなるのも寂しい気もしており複雑でございます。

大原前監督が思い切り配した男性主役6人を始め、5月上演予定であった公演のキャストはそのままにして吉田監督が引き継ぎ味付けした7回全公演完走に今も心底幸せを感じております。
吉田監督と共に漕ぎ出したばかりの新体制の新国立劇場バレエ団の今後、通い続けの鑑賞が一段と楽しみです。




24日(土)昼公演幕間にて、2017年イーグリング版『くるみ割り人形』びわ湖公演で渡邊さんのネズミ王
そして昨年こども『白鳥の湖』大阪フェスティバルホール公演にて急遽代役で主演された渡邊さんの王子もご覧になって好印象を持ってくださった
大阪から観にいらした方と乾杯。先月の大阪府豊中市で開催されたKバレエスタジオの舞台会場にて
福岡さんバジルと合わせての昼夜鑑賞をすすめた管理人でございます笑(大阪でも営業活動すみません汗)
ホワイエではなく劇場レストランマエストロ店内にてワインや軽食を昼公演1幕後の休憩時間に販売されています。静かにゆったり過ごせました。



劇場中庭の池越しに高層ビル。新宿界隈らしい景色です。



初日を観に来た当ブログレギュラー大学の後輩と。米沢さんのファンで、大満足の舞台だった様子。
会った知人からは随分と可愛くスタイルの良い人、と必ずと言って良いほど声がかかる、華のある容姿且つ性格も文句無しに良い後輩で
幼少期から存在感埋没人生を歩む管理人とは正反対。羨ましうございます。



ついメニューで見つけてしまったバジルチキン定食。24日昼公演を振り返りつつ、また観たい役です。生真面目バジルも好きです。



11月末が楽しみ、シェイクスピア・ソネット。小野さんと渡邊さんの翳りある美しいペアの誕生に期待がかかります。
『ロメオとジュリエット』ジュリエットとパリス、『マノン』マノンとレスコーでの緊迫感ある濃密な化学反応は忘れられません。



ホワイエは記者会見仕様。対面にならぬよう配置されています。



来年1月のニューイヤー・バレエ、2月の吉田都セレクション公演に演目変更が生じています。
20年前から上演を重ねているテーマとヴァリエーションもオンライン指導許可はやはり難しいもよう。



お世話になっている方とスペイン料理店へ。「バルセロナ」との名称が付いたサングリアでまずは乾杯。赤い内装がまたスペインらしい。



海老のアヒージョに白ワイン、止まりません。



これも食べてみたかった魚介のパエリヤ。具沢山、豪快です。



目の前の壁に描かれた色鮮やかな絵。スタッフの方がお描きになったそうです。写真、快く撮らせてくださいました。
ところで顔を上げる度に目が合った牛さん、闘牛士の話ばかりしていたため内容が気になっているのだろうか。



バルセロナを思わせる雲1つない晴天のある公演前、渋谷スクランブルスクエアから眺めた新国立劇場やオペラシティ。
こちらはSkyStageですが、この後はバレエの舞台へ。


空の文字アート。屋上のため遮るものがなく太陽が近くに見え、錦野旦さんの代表曲『空に太陽がある限り』を思い出します。
お若い方はご存じでないかもしれませんが、昔はスターでした。



シーズンガイドブックも販売。ソーシャルディスタンス版の集合写真やマスク着用の写真は今季ならでしょう。
自粛期間中の生活についてのインタビューも全契約ダンサー分が掲載されています。
22、23ページを彩るのはソース顔と醤油顔の頂上対談とも呼ぶべきか、ニンマリが止まりません笑。
今年の札幌公演では叶いませんでしたが来年『眠れる森の美女』公演にて、2017年におけるイタリアと「韃靼」ロシア求婚者の
金閣寺と銀閣寺同時に建立なる圧巻な並び、復活を望みます。



ムンタギロフがお好きな人生の先輩ことムンタ先輩に2月の『マノン』以来再会。
渡邊さんの髷姿を楽しみに『竜宮』最終日をご覧になれそうでしたが直前に公演中止となってしまい久々の新国立でのご鑑賞です。
31日の夕方以降ちょうどご予定が空き、ボレロにお名前もあるからと楽しみにいらしたそう。ご堪能いただけて安堵しております。


最終日こちらへ、カウンセラー友人と。無事完走に乾杯。お互い7回全て鑑賞の身でございます。



最近4種のカレーも加わり、ビーフカレーをいただいてみました。辛過ぎず、しかしスパイスがよく効いています。
管理人、カレー食べ歩きも趣味の1つです。



量たっぷりサングリア。アルコール度数も高めな印象。



新国立劇場バレエ団が大特集されたダンスマガジン2020年11月号を発売早々書店で手に取った瞬間
管理人の記憶は◯回目の年女を迎えた干支2回り分24年前へと時空旅行。その記憶力を他に生かせんかいとのご反応は受け流しますが
そっくりなポーズをパキータの衣装を着用したモニク・ルディエールが取って写っていたと帰宅後すぐさま本棚より取り出して確認いたしました。1996年12月号です。
脚の形や差し出し方、腕の掲げ方まで不思議なほどによく似ており我が家では並べて飾っております。
ところで米沢さんの次のスペイン系演目のご出演は年明けのニューイヤー・バレエでの『パキータ』。
そしてパートナーを務めるリュシアン役は、嘗てトゥールーズ・キャピトルバレエ時代にルディエールより指導を受け多大な影響を受けた経験をインタビューでも語っていらっしゃる渡邊さん。
勝手な無理矢理感はございますが、色々繋がります。



お持ちの方がいらっしゃいましたら嬉しい、音楽之友社出版Ballet 1999年7月号。(2000年代前半に休刊となったはず)
20年程前、地元の図書館での図書引き取りキャンペーンで大放出されていて、職員の方に一言断り同雑誌を10冊以上は持ち帰ることができました。
表紙は英国ロイヤルバレエ団プリンシパル時代の吉田都芸術監督。巻頭インタビューにて、控えている来日公演における『リーズの結婚』で組む若いカルロス・アコスタにもっと教えたい、
そしてパソコンを遂に購入しブルース・サンソムに設定など教わっているお話など嬉々として語られ当時の英国ロイヤルのご様子や関係性が垣間見え面白いインタビューです。聞き手は守山実花さん。
ちょうど吉田監督が新国立劇場でのファジェーチェフ版『ドン・キホーテ』初演にゲスト出演された頃で
(まさか約20年後に芸術監督に就任し、世界中を巻き込む困難極まる情勢での自身の監督シーズン始動の演目になるとは当時は知る由も無かったでしょう)
いかにしてロシア人スタッフが結集し、リハーサルや衣装合わせ、装置製作が行われたか、また装置の船便レポートや搬入の光景に至るまで初演特集記事にて実に詳しく紹介されています。
ファジェーチェフ版ドンキは他所で上演されたプロダクションではなく新国立の依頼で振付演出、衣装装置も全て新制作された大掛かりプロジェクトであったことや
デザインを手がけた、既に新国立での仕事経験も豊富なオークネフが日本人に合うよう気を配った装飾など興味を惹きつける逸話満載です。
牧阿佐美さん、島田廣さん、石井潤さん、小林紀子さんが並ぶ写真もあり。

この頃は本物のお馬さんにドン・キホーテが跨って登場、ゲストの長瀬信夫さんの威風堂々なる姿が写っています。
(まだ団員のダンサーだけでは男性の主要役の一部分や年配者の役まではできず、眠れる森の美女の国王などは長瀬さん頼みでした。
エスパーダも現在研修所で指導なさっているガリムーリンさんがバジルと兼任。ゲスト無しで全役回せるようになったのは近年のことです)
勿論吉田監督とアンドレイ・ウヴァーロフの新国立史上に残る身長差ペア誕生のリハーサル、本番両方の舞台写真もカラーで掲載されています。

1999年当時はインターネットは存在したもののまだまだ今ほどには普及せず、
管理人は利用経験ないがポケットベルやPHSが出回っていた時期でございます。(移動通信機器を極力敬遠したかったため、連絡取りたいときは家の電話へどうぞと周囲にも話していた)
SNSや動画サイトも当然無く、書籍の記事がどれだけ愛おしかったことか。 現在は街の図書館にも置かれてはいないと思われますが、開場の頃から新国立をご覧になっている方も、最近になってから足を運んだり配信をご覧になり始めた方にもおすすめの書籍です。
初演から約20年が経過し、不穏に包まれた世の中を吹き飛ばすが如く大成功をゲスト無しで収めた2020年。
度々の再演を重ねているファジェーチェフ版『ドン・キホーテ』のバレエ団初演幕開けまでの道程が詰まっています。

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