2020年10月9日金曜日

プロローグから格式な美が凝縮 牧阿佐美バレヱ団『眠れる森の美女』 10月3日(土)




10月3日(土)、牧阿佐美バレヱ団『眠れる森の美女』を観て参りました。ウエストモーランド版眠りの全幕は初鑑賞です。
https://www.ambt.jp/pf-the-sleeping-beauty2020/

スパイスイープラスの主演3人のダンサーへのインタビュー
https://spice.eplus.jp/articles/276143





青山さんのオーロラは1幕ではにこやかな笑みを湛えつつも華奢な肢体から醸す儚さですぐさま守りたくなるお姫様。
実のところ3年前のNHKバレエの饗宴にて結婚式場面上演時、威厳を保ちたいのか単なる緊張であるのかどっちつかずな表情で
望まぬ結婚を強いられた姫君の設定と思わせるほど幸福感が欠如していて消化不良を覚えたものですが、
全幕で観ると淑やかで愛らしい姫が2幕ではしっとり夢幻的な、手の届かぬ憧れの姫なる風情を見せてそして格式高く結婚式、の流れが明確。
NHKのときとは大きく異なる印象を与えていました。全幕通して観る大切さを再確認。
清瀧さんの王子は登場時の貴公子オーラは抑えめでしたが(失礼)、1人物思いに耽り心の整理がつかぬ苦しさを
リラの精に訴える姿は、思わず導いてあげたくなる純粋真っ直ぐな眼差しで説得力がありました。
そういえば目覚めのパ・ド・ドゥが披露されませんでしたが、今回は諸事情によりカットされたのかもしれません。

密度の濃い魅力で場を攫ったのは保坂さんのカラボス。国や時代こそ異なるがエリザベス1世の肖像画を彷彿させる
細かな模様やレースで彩られた赤いドレスが似合うこと。恐怖感、不気味さ美しさが入り混じった存在感を示し
毒を弾いていそうな指先に至るまでマイムも雄弁でした。

先述の通り初めてお目にかかるウエストモーランド版眠り全幕で最も感激したのはプロローグ。
貴族達のゴールドを基調とした格式と絢爛たる衣装やベルベットの紺地カーテンを模した美術、
そしてパ・ド・シス妖精達のチュチュ模様や色味、頭飾りの形状まで異なる凝った装飾は細部までが幕開けから麗しく
年季が入っていながらもむしろ長年の継承に裏打ちされた伝統美に繋がっていた印象すら抱かせました。

他ソリストでは米澤真弓さんの空間を大きく無駄無く使い輪郭のはっきりとした踊りで魅せた清爽で美しいフロリン王女、
上中穂香さんの音楽にぴたりと嵌り楽しそうに戯れ卓越した技術が光る達者な宝石にも満悦。
青い鳥の山本達史さんも好演でしたが惜しかったのはメイクで、指定があったのでしょうが
眉の真下に青いラインを引いた形で眉が倍に太くなったと見え、まるでこち亀の両さん状態。
こちら文京区役所前?と思わず公共施設である点は同じと言わんばかりの例えを挙げたくなったのも束の間、
米澤さんとの息の合ったパートナーシップやしなやかで軽快、高らか軽やかに跳ぶ技術が救いでございました。

舞台装置で気にかかったのは3幕結婚式の美術。恐らくは1幕ローズアダージオと同じ背景に柱を追加したのみで
1幕で観れば初夏の緑に彩られた爽やかな中庭で初々しいオーロラ姫の16歳誕生日祝いにふさわしい色合いですが
そぞろ歩く大勢の貴族達の瀟洒な衣装、次々とおとぎ話のキャラクター達も登場し締め括りに主役のグラン・パ・ド・ドゥが披露される
格式高い結婚式の背景美術としては妙にあっさりしていて物足りなさを感じてしまいました。
それ故、プロローグでの重厚な色彩美をそのまま3幕で用いても良さそうに思えた次第です。

一部の打楽器やピアノを舞台上下手側手前に配置し、オーケストラも対策が窺える演出。
打楽器好きな身としてはこれまで以上にポロネーズのタンバリンや宝石のトライアングルが高らかに響き渡り、好みな演奏形態でした。
何より、この状況下でチャイコフスキー三大バレエの中でも音楽もスケールも最高峰と呼ばれる『眠れる森の美女』全幕を
生で聴けたのは喜びとしか言いようがりません。牧バレエ伝統のウエストモーランド版眠り、これからも上演を重ねていって欲しい作品です。



展示衣装



背中まで花々が彩るリラの精



ほんのり甘さも香るローズビールで乾杯。眠りの設定からはだいぶ現代寄りですが、ヴィクトリア調の内装もお洒落です。柱も見えます。

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