2025年1月19日日曜日

妖精達との交流で変身前から内面が変化するヒロイン K−BALLET TOKYO『シンデレラ』 1月11日(土)




再び順番前後いたしますが1月11日(土)、K−BALLET TOKYO『シンデレラ』を観て参りました。2013年、2021年に続き3度目の鑑賞です。
https://www.k-ballet.co.jp/performance/2025cinderella.html


シンデレラ:飯島望未
王子:ジュリアン・マッケイ
仙女:日髙世菜
シンデレラの義姉:戸田梨紗子  小林美奈
継母:ルーク・ヘイドン
バラ:塚田真夕
トンボ:木下乃泉
キャンドル:長尾美音
ティーカップ:弟子丸智絵
4頭の雄鹿・王子の友人:石橋奨也  栗山廉  田中大智  山田博貴
2人の道化師:吉田周平  栗原柊
オレンジマン:堀内將平
2人のオレンジガール:島村彩  布瀬川桃子






飯島さんのシンデレラは1幕前半はいたく薄幸で細身過ぎる身体から常に涙を落としていそうな悲壮感もあり。
しかし少し踊り出すだけでも伸びやかな四肢が空間を大きく使ってはっとさせられる光を放って、オンボロ姿であっても生来の美しさは隠しきれない魅了がありました。
舞踏会に現れるとそれはそれは内側から眩いばかりの発光で満たし、金色に彩られた衣装が霞んで見えたほど。クリアで繊細な足運び、腕のラインにも惚れ惚れです。

2人の義姉は女性ダンサーが務めるためか、またシンデレラを床に転倒させたり布で丸め込んで苦しそうにさせた挙句に母親の肖像画を火が灯る暖炉に投げ捨てるなど
虐める場面が過剰に尖って見えて少々辛辣過ぎる気もいたしましたが、戸田さん小林さんコンビの寸分の狂いもない阿吽の呼吸でサクサクと踊り続ける息の合い方が痛快。
半端な技量者や下手な人がやったらただ痛々しいだけにとどまって舞台の格も大崩壊になりかねません。技術も芝居心も十二分に備えた物でないと務まらない役でしょう。
登場して手を一振りしただけでも空気をピリッと変えていくヘイドンさんの継母も存在感の重みあり。

仙女の日髙さんはしっくりと装着するのが難しそうな白いショートカット鬘も違和感なく(鬘にする必要性については初演時の2012年から疑問で聞きたいところだが)
暗闇にたった1人で踊っていても魔法の広がりをしなやかに体現され、細くも強靭な軸や手脚の先端からふわりと柔らかな光を散りばめていて見事な空間支配力でした。

マッケイは2023年『蝶々夫人』ピンカートン以来に鑑賞。今回もきらめきがあったのは事実ですが
豪華な美術装置やスピード感ある妖精4人や妖精コール・ドに囲まれる、更には王子もたっぷり友人達と踊る場面もあるためか
とりわけ踊り満載の場における頭1つ抜けるオーラに関してはピカピカピンカートンのような仰け反るまでのインパクトは抑えめだったかもしれません。
シンデレラの王子は名前もなく、物語バレエでは貴重であろうこれといった過ちもやらかさず、欠点無き王子の中の王子でしょう。
版は違えど全幕は定期的に観ている作品であり、なにしろ初台の『シンデレラ』にて
2016年クリスマスイブにこの作品で本公演全幕主役デビューされた王子のような、
上の台から人々を見守り取り仕切るプレゼンテーションにおいても抜群なセンスのある、パートナーへの気遣いといい
友人達に囲まれて踊るワルツにて容姿のみならず踊りからオーラを燦然と放つ王子を何度も観ているためか、余程の強烈さがない限り心動かされないのかと思います。
ただ再三申し上げますがマッケイはきらり輝く王子であったのは間違いなく、飯島さんとの見た目のバランスも好ましい上に虐げられてきた可哀想な少女が
光り輝く王子と出会い、ガラスの靴の持ち主探しを経て再会を果たして結婚式にてお城に向かって並んで歩む姿は美しく目に残り続ける風景です。
舞踏会で義姉達に迫られ、継母にも捕まって逃げ場がない危機を歪んだ顔で観客に主張する場面は笑いがあちこちから起こりました。

1幕にて四季ではなく身近な愛用品が4人の妖精に変わる演出や、仙女からの問いかけに対して何を変身させるか、シンデレラが提案する場も設けられているのは
素敵な展開。仙女や妖精達との交流によって変身する前からシンデレラが薄幸な少女からみるみる積極的な女性にまず変化していく様子が温かく胸に響きます。
バラ、とんぼ、蝋燭、ティーカップそれぞれ変身直後は頭飾り含めてバラやキャンドルの被り物、トンボのリアルな羽等の奇抜なデザインに驚かされますが
ソロが終わって1幕途中の段階でシンデレラお見送り係となると早替えでクラシカルにお色直しして登場!
ティーカップの精のウェッジウッドなチュチュ模様がまたお洒落で、トンボのきらりとした透け感あるエメラルドグリーンも目を奪われました。
それぞれのソロも見応えがあり、バラの塚田さんは大ジャンプや軽やかさで大輪の花を体現され
トンボの木下さんは優雅に伸びやかな身体で語る涼しげな踊りが印象に刻まれております。木下さんのことはまだジョン・クランコバレエスクール留学前の2018年に
ご出身の三重県での小原芳美バレエスタジオ発表会『シンデレラ』全幕にて冬の精を踊られ、クールで透き通るように麗しいお姿を目にしていただけに
今回は夏(トンボ)の精の音楽のソロで観ることができ感慨深さが込み上げてきます。

長尾さんは強く潔く鋭い回転や駆け抜けるステップで炎を現し、ティーカップの弟子丸さんの巧みで職人気質な正確なポワントワークも目を見張りました。
全員個性は様々ながら、1幕や2幕にて、星の妖精コール・ドとの猛スピードで絡む展開も誰1人音に遅れることなく機敏に踊りこなしていた点にも仰天!
もう1つ嬉しい演出が、馬車が何周もしてくれる点。パレードのようで、馬車
(Kの場合は雄鹿が引っ張るため鹿車でございます。シンデレラ変身の時間確保のため踊り見せ場もたっぷりあります)に乗って
希望に溢れるシンデレラの表情もじっくりと、また馬車が豪華な作りなため観察たっぷりできるのは喜びも増幅させます。
加えて到着場面も重視され、お城のシルエットや門が現れると背を向けて堂々と入城するシンデレラで1幕が下りるのも胸躍らせる演出です。
オレンジマンとオレンジガールの黒塗りや舞踏会男性達のグレー色の鬘は改善したほうが良い気がしており、
特にオレンジマンとオレンジガールは黒がかなり効いていて令和の時代にびっくり。
オレンジ大玉送りな振付を生き生きと踊るダンサーの姿で十分オレンジ隊の魅力は伝わるでしょう。
(当方太古の昔に通っていた教室での発表会にてシンデレラを上演しましたが、
オレンジ運搬の踊りの役の人達、素肌でございました。オレンジ持っていればそれで十分かと思います)

一部意見も申し上げましたが、めくるめく魔法が織りなす壮大なおとぎ話なプロダクションであるのは間違いなく、だから今回の再演にも参りました次第でございます。
シンデレラが舞踏会で思い切り踊れるよう心を砕きながら支え、盤石な揃いっぷりで弾けつつも出しゃばらず、
されど会を盛り立てる仕事をこなす吉田さんと栗原さんによる2人の道化師の舞台捌きも気持ち良いものでした。
ロイヤル時代にアシュトン版の道化は思い入れがお強い熊川さんでしょうから高度な技の連続で、
身体に染み渡ってナチュラルに揃えて踊りこなすのは並々ならぬ技術不可欠でしょう。
ガラスの靴の持ち主探しにて世界のお国探訪記は描かれないものの、本来はアラビアにて流れる
ゆったりした音楽を用いて靴職人達の奮闘を描いていたのもユニークに思えました。

それにしてもバレエは長年観ておりますが、1幕バラの妖精とトンボの妖精ソロあたりで謎の館内放送が流れてしまい、観客ソワソワ。
1階で何かトラブル発生したと思いきや、やんわりと人の声が聞こえて館内放送ならば災害か、
舞台監督や指揮者にも伝達不可能なほどの緊急事態かとヒヤリといたしました。
しかし一瞬音楽が静かになるタイミングで「グッズ販売を〜」との文言が聞き取れ、放送の予行演習をうっかり大ホール客席に流してしまったのか、真相は謎です。

それはさておき、舞踏会でシンデレラが履いているガラスの靴に見立てたラインストーンで彩られたポワントが夢を一層きらっと瞬かせ、
最後の最後、結婚式でめでたしめでたしと言わんばかりに流れ星が夜空を走る景色がまた、夢見心地な気分を引き伸ばしてくれる演出です。
ホールの事情なのか日程が短期でキャストが多彩なキャストを組めなかったのは惜しく、再演があればまた観た作品でございます。




ポスター色々



展示の海賊衣装、間近で見ると何ともゴージャス!! 涼しげなメドーラ。



ラジャ達も装飾が細かい



メドーラ正面から。トロワのときはチュチュ派ですが、水面が輝く海を思わすこの涼やかなブルー衣装は美しや。膝丈スカートも歓迎です。



メドーラ斜めから。水色に輝く凝った作りの頭飾りもずっと観ていたくなります。



被り物も豪華。



アリ。こんなに宝石が精巧に鎖に付いているとは驚き。選ばれし奴隷だからか。



終演後に電車で2駅移動して、2023年の英国ロイヤル・バレエ団のミックスプログラム帰りに徒歩で向かった
ブリティッシュパブTHE R.C. ARMS 秋葉原店です。当ブログレギュラーの我が大学の美女後輩も一緒です!
後輩はバラの花が飾られたローズノンアルコールカクテル、私はヴィクトリアンアルトビール。シンデレラ家の一輪挿しのバラは妖精に変身!



クリスピーチキン。カリッとしていてガーリックが少し効いたクリームがかかっています。マッシュポテトは滑らか。



ローズハイボール。私に似合わぬ名称で普段まず飲みませんが、ハッピーアワーでした。



一口キッシュ。後輩はKもよく観に行っていますが、私とはキャスト違いの日や別日程が殆どでしたが今回は珍しく同日鑑賞。
飯島さんが大好きだそうで、2回観に来たそう。大満足な様子でした!



デザート。キャロットケーキとレモンケーキ。後輩はケーキかよく似合う可愛らしさです。
キャロットケーキは一昨年私がロイヤル帰りに食べまして、クリームたっぷりでにんじんもぎっしり。
おすすめです。 予約制でアフタヌーンティーセットのメニューもあります。

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