2025年1月17日金曜日

鑑賞で支援 震災から1年が過ぎた今できること  石川県復興支援公演『ロミオとジュリエット』  1月10日(金)




順番前後いたしますが1月10日(金)、大田区民ホール・アプリコにて石川県復興支援公演『ロミオとジュリエット』を観て参りました。
https://event.lartgroup.co.jp/


主催・企画はハンガリー国立バレエ団やKバレエカンパニー(現K-BALLET TOKYO)で活躍されてきた高橋裕哉さんが代表を務める株式会社LART GROUP。
挨拶文によれば高橋さんは被災地を訪問されて未だ厳しさが続く状況を目にして芸術を通しての復興支援を決意され、振付家も出演者も錚々たる方々が集結。
そしてオーケストラ演奏付きでの公演を実現させ、その行動力企画力には頭が下がるばかりです。


振付:ジョバンニ・ディ・パルマ 

 指揮者:稲垣 宏樹
ジュリエット:マイヤ・マッカテリ
ロミオ:高橋裕哉
神父:塩谷瞬
乳母:鷹栖千香
ベンヴォーリオ:今井智也
ティボルト:浅田良和
マキューシオ:益子倭
ロザライン:ジェシカ・マカン
パリス:中野吉章
キャピュレット:高橋斐乃
ピーター:小笠原征諭

織山万梨子  清瀧千晴  池本祥真  渡辺恭子  阿部裕恵  高谷遼  冨岡玲美  林田翔平  
中沢恵理子  生方隆之介  吉留諒  新里茉莉絵  渡辺与布  三船元維  鳥海創    平木菜子
刑部星矢  渡辺栞菜   土橋冬夢  石井日奈子


高橋さんのロミオは純朴で優しげな青年で、決して大柄ではない身体であっても伸びやかに踊る姿で舞台を牽引。
しかしマキューシオの死を目の当たりにしてカッと血が上ると煮えたぎる怒りが瞬く間に沸き上がり
ジュリエットへは後悔の念を切々を語りかける様子が哀れでならず。高橋さんの舞台の鑑賞は
ひょっとしたらKバレエ時代2022年1月のシンプル・シンフォニーのみかもしれませんが
石川県への現地入りからの企画発案、キャスティングに主演までこなすお力に脱帽です。

2006年の世界バレエフェスティバル以来に鑑賞が叶ったマッカテリは身体のラインの変わらぬ美しさに加え
肉体で自在に物語る力も雄弁で乳母との戯れはそれはそれは可愛らしくあどけなく、
心を許している存在だからこその無防備な愛らしさが刻一刻と迫っている悲劇を把握しているだけに胸にくる魅力です。
先述の通りマッカテリを観るのは久々で、18年前はお人形のような可愛らしさでお兄様のデヴィッド・マッカテリとロミジュリバルコニー披露していたかと記憶。
兄妹で踊る瑞々しい情熱溢れるカップルに、踊りづらくないのか要らぬ心配もいたしましたがそれはそうと
滅多に来日されす、この先日本で鑑賞する機会はもうないかと思っておりましたので全幕のヒロイン役で鑑賞できたのは大きな喜びでした。
マッカテリと高橋さんのペアは観る前は未知数ながら、しっとりと感情を歌い上げる表現の相性が宜しく、
バルコニーの歓喜もあからさまではなく感情を丁寧に紡ぎ上げるように表したりと方向性がしっかり一致。
最後は2人が互いに息絶える前に触れ合う瞬間が描かれ、だからこそ計画のすれ違いが恨めしく運命の残酷さを、
そして僅かであっても命ある状態での再会が叶った喜びが沁み入る物語る幕切れでした。

そしてあちこちで沸いている共通事項な感想でしょう。ソリストもコールドも国内のメジャーカンパニーにおける主要役経験者揃いで私も言わせてもらいます。
何処観たら良いか分からない笑。実はこの日うっかり双眼鏡を忘れてしまったにも拘らず、舞台姿から放つオーラが皆さん強くあるせいか
シータと違って決して視力が良好な数値ではない私の裸眼でも問題なし。
殊に、ティボルトの手下としてダークな色で舞台を覆い尽くしながら踊りは達者で職人芸が光りに光る、清瀧さん池本さんの悪党コンビのエネルギーたるや。
悪さする人間の役のイメージがないだけに(特に清瀧さん)、鮮烈な風で吹き荒らす2人組でした。

やまちゃんこと益子さんは一昨年夏の札幌市での小泉のり子バレエ公演『真夏の夜の夢』オベロン以来ですが、意外と申したら失礼だが
キビキビとしたテクニックで物語を刻むムードメーカーで、プロコフィエフの音楽にもよく乗っていて技術もしっかりとしていたのは驚き。
よく研いだ刃の如くシャープに縦横無尽に駆け回る浅田さんティボルトとの対峙も堂々たるもので
一歩引いた場所から冷静に見据えて仲間達を静かに見守る今井さんベンヴォーリオの配置もバランス良き造形でした。

最も心を掻き乱されたのが、2幕ジュリエットと乳母とのやり取り。愛するロミオをの結婚を主張するジュリエットの想いを受け止めたいのは山々だが
家の厳格なしきたりが許さぬ事情との板挟みになり、ジュリエットの叫びを泣く泣く拒絶するも遂には手を上げてしまう苦しみを鷹栖さんが痛切に表現。
やがてジュリエットも乳母に心を寄せ、互いに悲しみ合う様子が心に刺さりました。
それから俳優の塩谷さんの出演も話題に。戦隊物のテレビ番組への出演で人気を博した旨はお恥ずかしい話今回初めて知り、
バレエの舞台は初出演とのことですが、歩き姿や振る舞いを観る限りバレエの舞台にもよく馴染んでいた印象です。

衣装は和の趣がありロミオとジュリエット以外は着物風のデザインが多し。街や舞踏会の女性達は新国立劇場バレエ団『パゴダの王子』さくら姫を思わす着物とワンピースの合体型なデザインで
キャピュレットの高橋さんは長い髪を下のほうで1つ結びにして赤紫色の和服な衣装であったせいか、
『るろうに剣心』の何かのキャラクターに見えなくもなかったが(作品の詳細はよく存じません。失礼)

舞踏会帰りの古典交響曲を始め所々カットしながらも2時間弱に上手く纏められた構成で、何よりオーケストラ演奏付きであったのは喜ばしいこと。
せっかくのプロコフィエフ音楽を、しかも『ロミオとジュリエット』を生で聴きながら全幕バレエ鑑賞でき、再度高橋さんの企画力に頭が下がります。
冒頭に何本もの剣が天井から落下して床に散らばる演出も悲劇へ走る物語への没入を駆り立て
装置はシンプルであっても隅から隅まで主要役経験者揃いな出演者構成でしたから、舞台の躍動感を巧みに見せる手腕に長けた強者ばかりで物足りなさは皆無でした。

会場では輪島塗の販売もあり、見ているだけでも人の手で大切に作られたからこそ滲む艶と温もりが伝わり、暫しじっと眺めておりました。
10年以上前ですが一度だけ真冬に輪島市を訪問しており、しかしこれといって計画も立てずに滞在していたため午前中に朝市通りを何回も往復。
入りやすそうな広々とした輪島塗のお店にてお箸を購入するだけで精一杯でしたが、
大きなストーブがあるから暖まってお茶飲んでいって、またいつでも休憩にでも来てね、とご主人が優しく接してくださったことは今も忘れられません。
店名も詳細な場所も記憶に留めていないことを悔やむばかりですが、永井豪記念館の近くにあり、
あの辺り一帯は震災でぼぼ全焼していたはず。お店もご家族、店員さん達の安否も把握できぬまま1年が過ぎてしまいました。
今回の公演は当初はいったいどんな中身か不安も感じておりましたがとんだ失礼で、
鑑賞が支援に繋がる明確な目的を掲げての企画で出演者も所属団体の垣根を越えて実力者達が大集結。
震災から1年が経っても未だ爪痕が生々しく残っている地域もあり、復興への弾みになればと願ってやみません。

本日は阪神淡路大震災から30年。20代の方々は生まれておらず、月日の流れの早さを痛感いたします。
当時父方の親戚一族が神戸市灘区に住んでいたため気が気でない日が続きましたが奇跡的に家屋は倒壊せず全員怪我もなく無事でおりました。
しかし周囲の家々はほぼ全て倒壊し、横倒しになった高速道路や壊滅状態になった街並みや大火災、凍えるような寒さの中での避難所生活の報道に、
遠方に住んでいても心が塞がるような衝撃を受けていた記憶があります。
南海トラフの確率予想も高まっており、今するべきこと、準備しておきべきこと、
今回の公演を機に今一度考えながら過ごして参りたいと思っております。




出演者サイン掲示



帰り。もうビールの残りが少ない状態ですが、蒲田駅前の中華料理店歓迎へ。1人でしたが回転円卓にて相席が何とも嬉しく
辣油やお醤油は声掛けあって仲良く利用するのもまた楽しい。



蒲田の名物羽根つき餃子。羽根部分は薄くパリッと、中身は肉汁いっぱい。後味はさっぱり。
そしてつい誘惑に負け、海老炒飯も。パラパラと油っこさがなく、まん丸い海老たっぷり。炒飯好きでございます。
そして蒲田行進曲が脳裏に焼きつく蒲田駅の列車発着音楽です。



炒飯拡大!



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