2023年9月24日日曜日

グラン・パ・クラシックの惨事と奇跡





※以下、特に前半は明るい前向きな内容は薄めでございます。閲覧注意願います。

3週間程前に触れました、私が12歳のときに引き起こしたグラン・パ・クラシックの惨事の話でございます。
太古の昔、やる気や情熱はさておきまだバレエを習う子供であった小学校6年の後半から初夏に行う勉強会の練習が始まりました。
5人か6人であったか、同年代の女子数名が集められての振り写しのとき、先生が題名を『グラン・パ・クラシック』と仰りすぐさま開始。
題名の響きからして、過去に発表会で取り入れた作品でもあるため『ライモンダ』3幕を改変したものをやるかと思いきや
冒頭の部分からして躍動しながら登場してくる振付と違うのは明らかで、これは『ライモンダ』ではないとまず確信。
続いて先生、皆が登場して位置についたところから始まる部分、つまりはアダージオの部分を歌って説明なさろうとするも「うう歌えない」と本音がポロリ。
いざ音楽をかけてみると、こりゃ先生でも歌えないほどなのだから私達にも分かるわけがないと、ホルンの主旋律に口あんぐりだったのでした。
バレエナウさん、修子バレエさんでも触れたように歌えない上にカウントが取りにくいと綴ったこの旋律、
12歳の時点で私の中では「ポーポーパーポー」の擬態語で片付ける宿命となったのは皮肉なものです。
またもう1つ引っ掛かったのは「ホルン」であった点。何じゃそりゃと思われる方が大半でしょうが
登場時はシャンデリアに光が一気に灯されるかの如く瞬時に宮廷を思わすゴージャスで重厚な曲調ながら、
登場して以降は一変してホルンのポーポーパーポーに悩まされたのです。
当時の私の中のホルンの曲やイメージといえば牧歌的な風景で、『サウンド・オブ・ミュージック』冒頭の霧に包まれた山々の中から現れるマリア先生や
『ジゼル』での狩猟の角笛、奈良の鹿寄せ等、どう考えても宮廷には結び付かず
アントレとアダージオ部分の落差があり過ぎると考えた挙句グランパにおいては居場所不明な状態に陥ったわけです。
加えて当時の世相も反映して、その頃雲を題材にしたある曲が流行しており、具体的に申し上げると世代がばれますので伏せますが笑、黛ジュンさんの『雲にのりたい』ではありません。
それはさておきマリア先生の影響もあってホルンの曲調から流れ行く雲が益々浮かんでは消えず、
おまけに後にも述べますが、バレエである以上避けられない容姿の晒しは現在よりも体重も重く肥えていた上にやる気もない、見苦しい醜い姿であった私には
苦痛極まりなくいよいよ頂点に達し、風に吹かれて消えていきたいのは自身であると度々ぼやいていたものです。

それはそうとアダージオの部分が終わると次の曲、グラン・パ・ド・ドゥにおいては男性ヴァリエーションが始まりますが
その場で私含めて確か2人残り、他の生徒達は一旦退散し開始。そうです、私はグランパ男性ヴァリエーションの「曲」で踊ったことがあるのです。
今思えば、女性、女子ではだいぶ稀な例でしょう。勿論振付は全く異なり、されど音楽に耳を傾けつつ本来の振付はここはヒュルヒュル浮遊しながらの回転であろう等と
巡っていた想像は概ね当たっていたと後年になって判明するも、当時は振り写しにおいて違和感を募らせていたのは事実でございます。
先生の指導を素直に受け止めれば良いものを、本来の振付と擦り合わせようと試みてしまう捻くれた12歳でございました。
話が前後いたしますが、物語性がなくグラン・パ・ド・ドゥ形式で1本の作品として成立している『グラン・パ・クラシック』の存在は
作品案内書籍を通して当時から把握はしておりました。音楽からしてアントレ、アダージオ、ヴァリエーション、コーダそれぞれの位置づけはすぐさま分かったものの
しかし振付を知らずにいたのは幸いで、もし知っていたら、ガラ等生の舞台で既に鑑賞していたら
本来の振付が延々と脳裏を過っていたでしょうし特に男性ヴァリエーション部分においては本来とは異なる性別者が踊ることになったわけですから
一層混乱していたに違いありません。また振付、曲調からしてもスター級のスターが踊るに相応しい作品ですから
いくら改変したとはいえ私のような者には不似合いであろうと辞退を申し出ていた可能性も大。
このときばかりは無知であったのは幸いな方向に働いていたかもしれません。
そうでした、全然違うとは言っても男性ヴァリエーションのある一部分 のみ本来の振付をやや踏襲した箇所もあり
終盤の垂直にアントルシャをたくさん行う寸前のピルエット辺りはよく似たことを私もやっていたかと記憶。
但し出来栄えについては永久に聞かんといてください。抹消したい汗。
女性ヴァリエーション部分は私は出番なく、2人バージョンに変わり、振付は片脚でスパスパと突き進む箇所始め本来のものと似たところ多かったかと思います。

さてお次はコーダ。本来は男性がヒュンヒュンと飛翔する鳥の如く跳びながら進んで行くところを
私は現在以上にズンドコズンドコアラベスクのまま斜めに前進し、男性がふわっと跳び上がって開脚回転しながら上手前に出てくるところは
四角形フォーメーションでパ・ド・ブレか何かしていたか。そして女性がフェッテするところで人数加わり(確か女性ヴァリエーション踊った2人)全員で前進しながら回転していたはず。
つまりは私は、出来損ないにも拘らず本来のパ・ド・ドゥ形式のグランパを踊るお2人よりも出番が多く
原振付者からしたら烈火な怒りを食らっていたのは容易に想像できます。ああ記憶から抹消したい。

衣装は教室の中ではネタ世代に属し(やる気ない、醜い、レベル最下層とマイナス要素3点盛りな私でしたから納得はしておりました。巻き添えになった同級生達、許しておくれい)
先生が振り付けたやや変わった作品においてドリフもびっくりな衣装も時には着用していた私にしては随分と珍しい類な、
クラシック・チュチュが回ってきましてヌレエフ版ドン・キホーテのようなはっきりとした縁取りでピンクを基調にしたお洒落なデザイン。
余りの珍しさにもしやこれで餞別つまりは退会催促かとも思いつつ、現在よりも肥えた重たい身体でもどうにか着用し、見苦しくも時間は自然と過ぎましたから無事終了。
幕末以降の時代にも拘らず幸いにして写真や映像が一切残っておらず、そもそも発表後に生徒同士や観に来てくれた友人と撮る習慣が全くなかったのは良かったのか
私の場合は衣装や舞台メイク施した容姿に一段と嫌気が差しておりましたから、早う着替えて帰宅したい気持ちが前に出ていたせいもあるとは思いますが
現代のようにスマートフォンで手軽に撮影してSNS投稿、拡散の時代に子供時代を迎えていなかったのは今にして思えば幸運でございました。
もし写真や映像を発掘したら、共演者の中には某有名音楽劇にて主演を射止めた人もいましたから焼却処分まではいかずとも、自身の部分はぼかし処理は必須。
犯罪者のように見えるでしょうが、犯罪級にバレエを冒涜していたと当時は思っておりましたからちょうど良いか。

時代は大不況となり(オイルショックではないが)、学業もだいぶ危うかった私が公立に進学しないと家計も非常に傾きそう云々な様子な親の会話を小耳にも挟み
そもそも習い始めた頃から鑑賞や関連書籍閲覧を好んでおりましたから退会催促の有無問わず
バレエを習うのはグランパでお終いするつもりでおりましたので、教室はあっさり退会。
親も何処か安堵しており、ただ妹がまだ習っており、親同伴では行かず先生への挨拶も1人で伺うと
先生はちょびっと残念そうでいらっしゃいましたがやる気のない生徒を引き留めても仕方ないと思われたでしょうし
先生からも以前皆の前で、昔はもっと続けてみないかとも声をかけたりしていたが今はそうはしない方針とも仰っていましたからその通りでした。
現在のことはさておき12歳後半にして晴れて鑑賞専門となった管理人。習っていた子供の頃としてはグランパが最後に踊ったクラシック・バレエの作品となりました。

切り替えは早く、衣装返却や挨拶を済ませたところで、自転車に乗って早々に帰途へ。さあ念願の鑑賞専門となったからには
習っていたときに出来なかったことをしようと考えが巡り、直近に踊った作品であったためかすぐさまグランパについて知りたいと欲が募りました。
特に男性ヴァリエーションと思わしき部分はいったい本来はどんな振付か、気になって仕方なかったものの当時は動画サイトなんぞ存在せず、
生で観る以外はパドドゥ舞台映像集或いはガラでの舞台写真から想像を膨らますしかなかったのです。
ただ持ち得ていた知識や音楽、目にした僅かな舞台写真からして、ここぞとばかりに華麗な技巧を繰り出し、物語がないため誤魔化しは一切許されない格式ある作品で
踊れるのは特別な地位にいる人達に限られるのであろうと想像はできました。
世界初演地域や音楽からしてロシア圏の方々よりもヨーロッパ圏特にパリ・オペラ座のダンサーが華々しく披露していそうな予想も脳内を駆け
殊に音楽だけなら自身も踊った男性ヴァリエーションは、観るならこの人!と思える方で、
フランスの流派が身体に染み込んでいる且つ高貴な雰囲気備えた美しい人で観たいなあと
ちゃらちゃら系は論外で、派手過ぎずされど上品な華が香るお人で観たいなあとそんな細かな条件が奇跡的に揃っている人現れるんか?と半ば信じずにいたわけですが
長年生きていると人生何が起こるか分からないものです笑。12歳当時の管理人は自転車を漕ぎながらの自宅への道中、理想や憧れ、欲求が止まらずにおりました。
そのとき歴史が動くまで、まだ◯◯年かかる頃でございました笑。
結局グランパを生で初めて観たのはいつの舞台であったか記憶は定かではありませんが、
2023年以前の舞台で強烈な印象にあるのはボリショイ&マリインスキー合同ガラにおけるマリインスキーのヴィクトリア・テリョーシキナ。
貫禄と気風の良さ、曇りないポーズの数々に痺れ、惚れ惚れした記憶がございます。

さて男性はと言うと、12歳から◯◯年後、更に◯◯年後と合わせて私の中では現在地球上二大貴公子状態にある誠に幸せな日々を過ごしておりますが
残念ながら山本隆之さんで生で拝見する機会がこれまでなく、新国立入団前頃の
関西を拠点に活動されていた時期の舞台ではアダージオ写真は書籍で目にしたことはございます。
そしてそのとき歴史が動くまであともう少し、次に現れた渡邊さんは12歳当時の私が思い描いたグランパ男性の理想の結晶で
身勝手に並べていた細かな我儘条件を全て満たしていらっしゃり、いつか披露される舞台にお目にかかりたいと期待を向けてきたのでした。
また時間軸戻って今から25年前の頃、日本のバレエ黎明期についての連載や書籍発行が相次ぎ目を通す中で、グランパの日本初演男性は関直人さんと知り
関さんといえば福島県白河市で映画館を営むご両親のもとで育ち、地元から東京へ白鳥の湖を観に行って大感激してバレエの道へ進むと決意した経緯や
学徒動員で神奈川での日々や引き揚げのときの様子など大変詳しいインタビューも掲載され、その記事の中にグランパ初演での跳躍の1枚がありました。
ですから尚のこと、我が細かな条件を全部網羅且つ同地域ご出身の渡邊さんで生きているうちに必ずや観たいと、かれこれここ6年は願望を強めていたわけです。
2018年には新国立劇場バレエ団ニューイヤー・バレエで初上演の機会があったものの残念ながら配役されず。外部のガラか発表会か、望みは持ち続けておりました。

そして年月が過ぎ、ついにその時歴史が動く瞬間がやって参りました。2023年8月23日、東府中で開催されたバレエナウさん発表会にてお目にかかる機会が到来したのです。
12歳での我がグランパ大惨事からかれこれ◯◯年が過ぎておりました。
いざ始まると、バレエナウさん発表会感想でも述べたように高難度な振付であっても技術強調大会にならず
アダージオでもコーダでも品位ある語り合いが伝わってくる2人で1つな一体感や、ポーズの僅かなタイミング、余韻までもが自然と合って調和にもニンマリ。
特にアダージョのホルン主旋律の部分はホワホワした曲調でカウントが取りにくく
されどその中で呼吸の合ったポーズやステップを繰り出して音が余る或いは足りない事態にもならずしかるべき箇所でストンと着陸する心地良さをも感じさせました。
またもう1点驚かされたのは、物語がない分、加えて音楽が重厚華麗で技術や品格がよほど十二分に備わってしないと成立困難な作品ながら
コンクール入賞歴からするとまだ中学生くらいのご年齢、つまりはあの当時の私とそう変わらぬ年齢の生徒さんが
品良く美しく格式高く、新国プリンシパルの渡邊さんとの釣り合いもぴったりに踊っていたこと。本当に天晴れでございました。
渡邊さんでずっと拝見したいと思っていた作品の1つにようやく居合わせたことに加え
偶々ではあっても共演者の生徒さんが、グランパ大惨事をやらかした当時の私と同世代なご年齢であったため、喜び一辺倒のみならず不思議な感情が沸いてきたのも事実。
そして遂にあの男性ヴァリエーション。跳躍の方向転換や滞空ふわりな軌跡を拝んで崇めて眺められて、ようやく願いが叶った気分でおりました。
男性が1人で行う箇所を女子である私が何故だかやる羽目になってしまい、中途半端な作品知識を持っていたゆえに違和感を覚えながら踊っていた当時の自分に、
長い年月を要したがやっとこの人!と思える人で、教室を退会したその日の帰り道につらつらと並べた
我儘な理想、条件を全て満たすダンサーで鑑賞できた吉報を伝えたいと思ったものです。

そしてグランパの奇跡は立て続けに起こり、再び歴史が動いた今度は2023年9月3日、東京都小平市にて修子バレエアカデミーさんの1stスタディガラにて再び渡邊さんで拝見。
今度のパートナーは主宰の田山修子さんで美しい長身ペアなグランパでございました。
スタジオの主宰者、舞台の主催者として舞台の企画構成や生徒さん達の指導に本番直前まで膨大なエネルギーを注がれ
本番中も神経をすり減らしながら見守っていらしていたであろう田山さんが前半やや強張った表情をなさっていた中
女王に恭しくにこやかにお仕えする渡邊さんの忠臣なお姿で尽くすお力によって田山さんも自然と柔らかさが見えてきて、
それはそれは格調あるパ・ド・ドゥと化した印象を抱いております。
男性ヴァリエーションもより一層厚みや勢い、王者な風格も増していらして技巧で語り尽くす美に感嘆。
本来はこういう地位にあるお方にこそ似つかわしい音楽であると再確認いたしました。
加えてプロフィールによれば田山さんは私の親族の大学の後輩にあたり、その親族は学生時代は小平市内在住で世代は全く違えど嬉しさも一段と上昇。
トンジョの会報、今もよく郵送物として届いており、実は修子バレエさんの感想が書き上がった日も、会報到着日だったのです。
とにもかくにも、2ヶ月連続で渡邊さんによるグランパを拝見できた歓喜は今も心に残り続けております。

また時間軸戻って、私が教室退会から数ヶ月後に女子生徒のみグランパは再演があり、今度は客席から鑑賞する立場になったとき。
妙に整っていて綺麗に纏まっている印象を持ち、決定的理由は何か探ってみるとこれ1つ。

「私が不在だからだ」

少々ハプニングはあれど、そう歳月も経過していない再演の出来栄えに拍手を送ると同時に
その数ヶ月前に1人、やる気もなければ醜く見苦しい12歳の管理人が鑑賞専門となるために去ったお稽古バレエ界に輝くような未来、希望の光が見えた瞬間でした。
更にはこれまた偶然なのか、遡れば大久保利通や伊藤博文の提唱が構想着手起点のきっかけとの記述もある西洋舞台芸術専用の大きな劇場が紆余曲折を経てようやく開場。
東京文化会館か否かはご想像にお任せいたしますが、帝国劇場ではございません。念のため。
それそうと、その劇場開場は退会の時期や私が去ることで光り輝く未来が見えたお稽古バレエ界の現実を客席で感じたときと同年の出来事でしたから、
鑑賞専門移行者ようこそといずれは導かれる劇場であろうと意識が働いたのは、必然であったのかもしれません。

現在はと申しますと、何年か前からは鑑賞専門から鑑賞中心に変わっておりますが、このまま年老いるまで(もう老いているか汗)この生活様式を貫いていくであろうと思っております。
全身晒しての美しさを求められる芸術の実技なんぞ本当は自身には似合うはずもないとは昔も今も感じているものの、
年齢を重ねた現在のほうがレッスン回数運動回数は激減しているにも拘らず疲れぬ身体となり、開き直った部分もあるのかもしれません。あとは、講師マジックでしょう。


※上の画像、好きなコーヒーの種類の1つ、猿田彦クラシック。パ・ド・ドゥと記された コーヒーカップは昔から愛用しております。




ついでにこちらの写真も。東京駅で夜行バスを待つ間に見つけた静岡銘菓こっこちゃんのパリ仕様版。エレガントで粋な、芸術家こっこちゃんです。



白河と言えば今年も行って参りました。初めて平日に到着。
昨年現地で購入し、今年は予めトリコロールリボン(昨年京都バレエ団鑑賞帰りに購入したお土産に巻かれていた)を付けた
しらかわんとホームにて、宿泊先に向かって記念撮影。鑑賞感想は後日綴って参ります。
そういえば、その時歴史が動いたのナレーションを務めていらした松平定知アナウンサーはご名字からして松平定信公に所縁あるお方なのか、気になりました。

2023年9月17日日曜日

魂息づくおまじない Kバレエスタジオ 37th Concert 9月10日(日)《東大阪市》




9月10日(日)、東大阪市文化創造館では初開催のKバレエスタジオ37thコンサートへ行って参りました。2007年から足を運んでおり、今年で創立40年を迎え
新国立劇場バレエ団やスターダンサーズ・バレエ団、NBAバレエ団等プロとして活躍するダンサーを多数輩出している名門スタジオです。
出身者でいらっしゃる山本隆之さん、福岡雄大さん、福田圭吾さんが今年も出演され
ゲストにはスターダンサーズ・バレエ団の渡辺恭子さん、EYA Ballet Sutudioの惠谷彰さん、地主薫バレエ団の徳彩也子さん、佐々木美智子バレエ団の佐々木嶺さんを招き
古典からコンテンポラリーまで多彩なプログラムで楽しませてくださいました。
http://www.k-ballet-studio.com/



Kバレエスタジオさんのインスタグラム。舞台の様子や裏側写真、たくさん載せてくださっています!




Part1の幕開けは子供の生徒さんが大勢登場する、ゴットシャルクの曲に振り付けられた『タランテラ』。
以前にも上演したことがあり、最初のうちは懐かしく思い出しながら観ておりましたが気づいたのが子供の生徒さんがかなり増えたこと。
少子社会においては珍しい現象で、しかもプレバレエのかなり小さい子から中高生くらいの生徒さんまで
次々と入れ替わりながら駆け抜けて行く作品ながら纏まりもしっかりあり、女の子の村娘風のチュチュも可愛らしく
男の子の白シャツと黒ズボン、赤バンダナもきりっと決まっていて、観ていて気持ちがほっと解れる楽しい作品でした。

続いてヴァリエーションやパ・ド・ドゥ集。コッペリア3幕のグラン・パ・ド・ドゥにて長谷川梨央さん福田さんが
全幕の流れを継いでいるようにほわほわと優しい空気を醸しながら披露され、平和な癒し時間。
『ジゼル』は渡辺さんと福岡さんが恐らくは初共演。ウィリとして、すっと遠い存在になって許しと拒絶の双方が入り混じるように感じ取れた渡辺さんのジゼルと
包み込みながら許しを訴える福岡さんの組み合わせがとても新鮮で、またアルブレヒトに対し尚優しく接するだけではない
精霊として生きる運命を受け入れた意思をも感じさせた渡辺さんのジゼル像に説得力があった印象です。

そして特別プログラムとして今年のジャクソンUSA国際バレエコンクールでの準決勝で踊られた矢上恵子さん振付「FROZEN EYES 凍りついた眼」を
金賞、ベストカップル賞を受賞された徳さんと佐々木さんが披露。作品自体は生では2020年にKスタの舞台で
配信では2022年にGGGガチョーク賛歌プロジェクトにて視聴しており、再びお目にかかりたい作品の1本でしたので嬉しい限り。
ウェーバー『舞踏への勧誘』にのせ、冒頭のパリン!と鋭く響く硝子音と同時に
抜け殻と化していく徳さんの少女と、追い求める少年であろう佐々木さんの葛藤の呼応が高らかで身体同士が弾けたり反発しあったり、凄まじいものがありました。
ご自身の振付作品をも踊ってのジャクソンの大舞台で入賞したお2人に、恵子先生の豪快な歓喜の声が聞こえてきそうな大拍手で讃えられた凱旋披露。
徳さんは初めて拝見、堂々とした大胆さと孤独な寂しい内側を捲るように露わにしていく繊細さ双方を持ち合わせ、
脱力と引き上げのジェットコースターな振付をいとも易々とこなしてしまう身体能力にも天晴れでした。

Part2はレ・パティヌール(スケートをする人々)、恐らくは2009年以来と思われます。
同名の作品もありますが大勢の子供も活躍する久留美先生振付版、黒瀬美紀さん振付部分も追加され
冬のヨーロッパの森の中に現れたスケート場が目に浮かぶ心躍る作品です。
白いファーで縁取られた衣装が冬らしいお洒落な装いで、床を押しつつ滑らせながら移動するスケートらしい振付もバレエに上手く溶け込ませて
微笑ましく戯れるように子供達が踊る場面もあれば佐々木さんや惠谷さん、福田さんを筆頭に高難度テクニックを駆使していく場面もあり
季節外れな暑さが和らぐ氷上の世界を堪能するひとときとなりました。この舞台後の3連休も真夏日が続き
阪神のリーグ優勝で暑気払いも効かなそうである大阪の熱き空気、少々心配です笑。
中盤のパ・ド・ドゥには長谷川さんと、お待ちしておりました山本さんご登場。
山本さんの実年齢を考えたらお似合いなのが不思議であるスケート青年な格好や、クッション手に取るような肩乗せリフトの
神業としか言いようがないサラリ感にも脱帽で、願わくはもっと長く観続けていたかったのでした。

Part3は恵子先生振付のコンテンポラリーダンスToi Toi。2014年、2016年に続いて私は恐らく3回目の鑑賞です。
冒頭は暗闇の中で福岡さんが静かに切り裂くようなポーズからして空気をガラリと引き締め
石川真理子さんと福岡さんによる嵐の連鎖の如きデュエットに続いて打楽器の激しいリズムやケルト風に絡む音楽が響き渡る中で
四方八方から続々と出現。ある集団がかたまりながら横へ移動している間に別集団が現れて踊り、河川の急流のように流れのパワー止まらず。
また数秒の中に身体の捻りや回転、上下の動きが緻密に詰め込まれた振付を20名超で踊られ
照明が時折暗めの演出もあり、つまり場面によっては顔が見え辛く表情による誤魔化しも一切できず身体そのもので客席に訴えかける力量が問われながらも
計算し尽くされた振付が落とし込まれた肉体の叫びが舞台中で整然と生じ合う光景は圧巻でした。
ベテランの域のご年齢であろう福田さんが若手陣と張り合いながら舞台を率いる姿が年齢不詳な味わいを突き出し恐れ入るばかり。
後方に設置された3枚だったか壁も生かしてひょっこり現れては中に消えて行く掛け合いもチャーミングに映り、しかも誰も音楽の流れから崩れぬ乱れぬレベルの高さに驚嘆。
最後は集合してきらきらと紙吹雪が舞い散る中で両手を掲げ、何もかもを結集し希望を昇華させていく幕切れにただただ胸が高鳴り、暫くは余韻から抜け出せずにおりました。

久留美先生の挨拶文によれば、大人数を要する作品のため佐々木美智子バレエ団と京都バレエ団から6名賛助出演してくださり今回実現とのことでしたが
両団ともに恵子先生がコンテンポラリーの指導を長年行ってこられたバレエ団であり、所属は異なっても
出演者が一心同体となって自身の大作が再演される運びとなったことは恵子先生も喜びの声をあげていらっしゃるに違いありません。
またケイスタの生徒さんの中にも恵子先生から直接指導を受けた経験のない方が増えているであろう状況下
直弟子でいらっしゃる石川さんが非常に細かい指導で引っ張り、再び完成度の高いToi Toiのお披露目に至ったこと、心から賛辞を送りたい思いでおります。
作品上演が途絶えないようこれからも恵子先生の魂息づく作品上演が続きますように。

カーテンコールでは久留美先生が登場されると更に大きな拍手で包まれ、そして福岡さんと福田さんが香織先生、恵子先生の遺影を掲げて登場してくださいました。
香織先生も恵子先生も舞台袖にいらっしゃる気がしてなりませんが、昭和の頃から古典とコンテンポラリー両方に力を入れてきたスタジオらしく、
次回も誇り高く見応え十二分な舞台をきっと届けてくださることでしょう。楽しみにしております。

Kスタさんの舞台を観始めてから今年で16年。大阪特有の会場の熱気や親しくさせていただいているKスタ大人クラスの方々や東大阪会の方々を始め
浪速パワーにこの度も平伏し帰りの近鉄奈良線も賑やか笑、鑑賞遠征の原点ここにありと思い耽けながら梅田へと向かいました。


※今回の舞台へは著名な評論家の方々やバレエイベントの企画関係者の方々を何名も目にし、Kスタ及び矢上恵子先生作品への変わらぬ注目度の高さが窺えました。
2021年に恵子先生作品大特集と愛弟子達集結インタビュー企画を開催してくださったバレエチャンネルの方もお見えになっていて
私も現地参加したこの企画、恵子先生の作品や魅力を東京から発信してくださって内容も大充実、今も忘れられない企画でした。
私が綴った長い纏まりないレポートで記憶違いば部分あるかもしれませんが、ご参考までにこちらに掲載いたします。

踊れ、その身体がドラマになるまで~振付家・矢上恵子 作品上映会&メモリアルトーク~
https://endehors2.blogspot.com/2021/04/blog-post_30.html




御堂筋線のホーム。モダンレトロな趣きがあります。



大阪メトロマナー広告。豹柄のおばちゃんは鉄板らしい笑。ラガーマンがいるのは、東大阪市内も走っている土地柄でしょうか。



開店と同時に心斎橋パルコへ。どんぐり共和国にカオナシが静かに佇んでいます。何を考えているのでしょう。



大中小トトロ。ドンドコ踊りの真っ最中です。



毎度の道頓堀。9月は3年連続、西と東で観たい舞台が重なる珍事。せっかくですので、今回も滞在地名所で撮影。
北海道組、楽しんでおくれやすと道頓堀ドン・キホーテ観覧車前から応援です。
2021年は福島県白河市の小峰城、2022年は大阪の通天閣、今年2023年は大阪の道頓堀で同様な撮影いたしました。来年はどうなりますかな。
それよりもこの日はまだ穏やかであった道頓堀、現在は阪神タイガースの「あれ」で大賑わいかと存じます。歓喜なお気持ちはよう分かりますが、
私が関西圏でバレエ鑑賞を始める前年且つ山本さんを初めて拝見した2005年以来のリーグ優勝とのことで
六甲おろし一緒に歌いたいおめでたい気分は私も募りますが、騒ぎはほどほどに。
よく考えると、つまり私は山本さんのファンになって再来年で20年ということでございます。



2週間位前であったか、NHKのサンドイッチマンの番組にて東大阪をテーマにした内容が放送され、紹介されていた近鉄奈良線布施駅あじろーど内の鉄板焼き店よしひろ。
日本と米国にルーツを持つご一族が営むお店のようで、アメリカンな木目調の内装の中に鉄板テーブル席が並ぶ面白い空間です。1人でも利用しやすい。
まずはこの日も暑い気候でございましたので、中生ビールで乾杯。泡がふわふわです。チケットに描かれたToi Toiのこのデュエットポーズ、痺れます。



スパイシーケイジャン枝豆も注文。本当は2人か3人で分け合ってちょうど良い量かもしれませんが
胃袋は食べ盛りの子供並みに大きく、身体年齢は昨年6月の測定結果によれば18歳である管理人(肝臓は20歳に達してしていることにしてください)、
手が止まりません笑。そしてビールが進んで仕方ありません。



お好み焼きはミックスを選択。海老イカ豚肉だったか。ふわっとした焼き上がりと豚肉のカリカリがたまりません。
お店の方が厨房で焼いたものを持ってきてくださいます。
ソースは自家製で2種から選べ、甘口を選択。コクのあるソースで美味しうございました。
足りなくなったら追加も可能とのことで、追加時は辛口を。ぐっと濃いめで、
今回は1人で行って1枚お好み焼きを丸々いただいたためか、またケイジャン枝豆も注文していたせいか
バランスからすると最初に甘口を全体にかけていただいたのは正解だったかと思っております。
勿論どちらもそれぞれ美味しさがありますので、可能ならば2種ともお召し上がりください。



食後はもう1品、食べてみたいメニュー求めて谷町四丁目のドギャンへ。(まだバレエ鑑賞前です笑)
そういえばKスタさんの本部も谷町四丁目です。



来ました、カオナシかき氷。管理人、かき氷を食すのは2011年の徳島での清水洋子バレエスクールさん鑑賞前に鳴門の渦潮見物に友人2人と訪れたとき以来かと思います。
カオナシは黒胡麻味で、サクッと繊細な舌触り。尚、氷山と同じ原理で氷が溶け出すとラスクが急落下しますのでご注意ください。
中には大学芋も入っていて、口直し用には小さなおかきもついています。
1人で行きましたが、注文すると愉快な仲間達が来てくれました。



私のカオナシが先に到着したことがきっかけで隣席のお2人組と仲良くなり、お互いの注文品を撮影。
お隣の方は『もののけ姫』コダマかき氷。恐らく抹茶味。見守るヤックルがフカフカ過ぎて、アシタカのせて凛然と疾走しているイメージがここでは沸かず笑。
店内は宮崎駿さんのアニメな世界で溢れています。流れる音楽もジブリ祭り。
ちなみにお隣の方はコダマを選びつつもラピュタ派だそうで、私もカオナシ頼みながら同じくラピュタ派でございます。
但し鑑賞を通して観光等に出かけると、Kスタ1週間前の東京都小平市で開催された修子バレエさんと同様
千と千尋の世界へ踏み込む機会が多い気がいたします。



7月末の佐々木美智子バレエ団『ドン・キホーテ』以来、すぐ戻ってきました東大阪市文化創造館。



入口付近。広々としています。



そして花園ラグビー場がある東大阪のマスコットキャラクターはトライくん。
確か市役所の封筒にも描かれていると聞いた記憶あり。
まさにこの日はW杯フランス大会における日本の初戦日で、日本代表のキャンプ地であり初戦の会場トゥールーズも大いに盛り上がっていたことでしょう。
私はキャンプ地情報や関連放送が聞こえるたびに、訳あって街中の風景も映して欲しいとテレビに釘付けになっております。
ちなみに日本での開催であった前回大会初戦は東京都調布市の飛田給で、京王線沿線、調布駅付近もお祭り但し健全な雰囲気で盛り上がっておりました。
(初日はパブリックビューイング会場や出場国の料理屋台が並ぶ光景をぶらりと眺めに行っておりました)



ロビー



昼とおやつがボリュームたっぷりでしたので、帰りはさっぱりと日本酒とお刺身。久々に大阪の海鮮酒場。
前は有酸素運動後にこの手のお店に行って一杯やって帰っておりました。懐かしい。



イ◯◯ンの言葉を好まぬ私からすると、この店名はなかなか宜しい。そう考えつつお店をあとにいたしました。
さらば大阪、きっとまた年内!!


2023年9月11日月曜日

大人バレエのあり方と新時代の混在型舞台  修子バレエアカデミー The 1st Study Gala  9月3日(日)《東京都小平市》




9月3日(日)東京都小平市のルネこだいらにて修子バレエアカデミー The 1st Study Galaを観て参りました。
ロシア国立バレエ団、エジプトのカイロ国立オペラ劇場バレエ団、NBAバレエ団を経て現在は谷桃子バレエ団で活躍されている田山修子さん主宰のスタジオです。
ルネこだいらへは15年前に一度バレエの発表会を観に来ており、また亡き祖母が長年小平市内に住んでおりましたので、嬉しい懐かしい小平訪問となりました。
加えて田山さんのプロフィールを拝読したところ同じ大学出身者が親族におり、ルネこだいら完成より遥か昔でしょうが小平市在住時に通っていたそうで
毎年4月末に開催される春の園遊会に私もノコノコとついて行ったことや(トンジョのバザーでの購入品、我が家には相当な数がありそうである)、
14年前に開催された酒井はなさん山本隆之さんを迎えて『白鳥の湖』について学ぶ佐々木涼子さんの公開講座を受講したこともございます。
https://shukoballetacademy.com/2023/05/29/the1st-studygala/


エチュードの音楽を使用した、ゲストと講師陣が繰り出すテクニックの刺激満載なフィナーレ。振付は元Kバレエカンパニーの西口直弥さんです。



プログラムに綴られた田山さんの挨拶文を拝読すると、大人生徒さん達主体のパ・ド・ドゥやアンサンブル、ヴァリエーションがコンセプト。
ただ修子バレエでは発表会は別枠で時期によっては年に2回以上開催され、今回は発表会ではなくスタジオパフォーマンスやコンサートの記載もなく
「ガラ」と題されている上にポスターやプログラム表側は田山さんライモンダのポーズ写真のみ。
全席自由で入場料は「3000円」で決して安くはなく、発表会とはまた違う時代に即した新しい形の舞台かもしれず、期待を持ち楽しみにしながら鑑賞に臨みました。
尚、発表会へは昨年3月に新国立劇場から根岸祐衣さんが『ラ・バヤデール』婚礼の場への客演を目当てに足を運ばれた方より
数日後のシュツットガルト・バレエ団会場にて話を聞き、大人の方々が 何名もパ・ド・ドゥに挑戦されていた旨は耳に入っておりました。

舞台は全3部構成。まだ新しいスタジオであるため生徒さんは小学生くらいの年齢のお子さん達と大人が占め、
第1部最初は『眠れる森の美女』よりパ・ド・シスの中のリラ、勇気、カナリア、優しさの妖精達を子供の生徒さん達が
宝石、グラン・パ・ド・ドゥのオーロラ姫は大人が担当。子供の生徒さん達が皆、シンプルにアレンジされた振付をとても丁寧に踊っていました。
ズンドコドッスンな私からすればポワント履けるだけでも拍手、舞台に立ちたいと思う意志があるだけでも拍手ですから
大人の方々が息を合わせてきちんと踊っていらっしゃるお姿も目に残っております。
スターダンサーズ・バレエ団の加地暢文さんがそれはそれは優しくサポートなさっていたデジレ王子も好印象でした。

ゲストでは最多の3作品、海賊のグランパ・ド・ドゥ、タランテラ、バジルと友人たちのパ・ド・トロワを全作品200%であろう力を発揮されながら踊られた
NBAバレエ団の高橋真之さんは大功労賞ものな活躍で、パ・ド・ドゥ初挑戦の方と組まれた海賊でのサポートのみならず
静かに緻密にうねるハイパーテクニックに客席驚嘆。どれだけ跳んでも回っても体操にならず、枠組みを守りながら美しくムラなく駆使される姿勢に再度驚かされました。
またタランテラでの自在に鮮やかに音楽を操って場を盛り上げてパートナーを更にのせていく術、
子供たちの速度に合わせながらもスピード感を見せるところでは見せていらしたドンキトロワも見事でした。
牧野富太郎以上に、と申すと言い過ぎかもしれませんが、関東へ出てのご活躍が眩しい土佐の偉人と私は思います。
(新国立の宇賀さんもですが高知の同じバレエ教室ご出身で、お2人のコッペリア戦いの踊り等、当時高校生くらいのご年齢の頃の舞台姿も高知で観ております)
タランテラではバンダナが海賊風な付け方でしたが、偶に調理実習やペンションオーナーな付け方をしている人も見かけ、結局どれが正しいかは分かりかねます。
それはそうと7年くらい前に国内のバレエ団としては初めてNBAバレエ団が全編上演したスターズアンドストライプスも高橋さん主演で観ており、
ポップでエネルギッシュなカラーがお似合いなのでしょう。再演お待ちしております。

第1部最後は講師であるフリーの表谷美紗子さん、谷桃子バレエ団の若松祐花さん、井藤七菜さんによる『海賊』よりオダリスク。
三者揃って技術が非常に高く、生徒さん主体のスタディガラであってもこのお三方を目にしたら、
しかも各々の強みが活きる振付で知らずのうちに目の保養となって、有料でも少しずつ納得の方向へと転換しつつある私で、作品選びも良き結果へ繋がったのでしょう。
生のお腹が見える白地に薄いブルーで彩られたチュチュもお似合いで、年中太鼓腹な管理人、反省でございます汗。

2部の1作品目『ダイアナとアクティオン』ではアクティオン初見の新国立の木下嘉人さんがしなやかな瞬発力と視線の強さで魅せ、
全幕では本来余興の場での唐突な披露作品であっても身体全体でパートナーの方と語り合いながら呼吸もよく合ってのパ・ド・ドゥでございました。
珍しい白地にきらきらとした模様が描かれていた衣装で、ソロでは上手側手前に向かって矢を射る仕草も大胆且つ端正。
近くに着席なさっていた木下さんファンのお方、失神間違いないと心配になったほどです笑。そして木下さんに不可能な役は存在するのか最近知りたいくらいでございます。

演目多しでしたのでいくつかは割愛して失礼、講師で東京シティの浦山英恵さんとNBA三船元維さんのチャイコフスキー・パ・ド・ドゥの軽やかな音楽の乗り方が爽快で、
浦山さんの包み込むような大らかな踊りも柔らかな幸せを運んでくださり、三船さんは1部白鳥の湖パ・ド・トロワでは生徒さんを優しく導く姿も好感を持ちましたが
チャイコフスキーにおいても浦山さんとの優雅でパワーもあるパートナーシップが魅力的に映った次第です。
Kバレエトウキョウ石橋奨也さんの、衣装が謎な半分マンデザインながら(これ毎回疑問である)風を切るようにシャープなタリスマンも好印象でした。

開演から4時間を迎える頃に、やっとこさ大トリのグラン・パ・クラシックで主宰の田山さんと新国立の渡邊峻郁さんがご登場。
田山さんは高身長である上に腰位置も非常に高く、手脚のコントロールが難しい体型である上に粗が見えやすい振付であっても
止める箇所やポーズの連なりがダイナミックに華やぎ、表情はだいぶ強張ってしまっていた印象はあったものの
そこはパートナーが妙ににこやかにお仕えしていましたので、心が徐々に解されている過程が覗き見えた気がいたします。
白と紫のグラデーションや金色の模様がきらりと輝く衣装姿もさまになっていました。
カイロ国立オペラバレエ時代に初演の『クレオパトラ』で主演されたのは最近知り、考えてみれば世界三大美女の1人であり、しかも地元エジプトの国立バレエで主演とは大変な偉業。
日本で言うなら、国内のバレエ団による『小野小町』があったとして、日本からだいぶ離れた国にルーツのある外国人ダンサーが主演するような大抜擢かと存じます。

渡邊さんは8月23日の東府中に引き続きグランパ拝見。(思わずサインはV!状態でニンマリ。お若い方々はご自身でお調べください)
東府中のときよりも精度上昇で技の1つ1つが大きく映り、また流れ行く雲の如きホルンのポーポーパーポーとカウントが取りにくい曲調の中で
サポートのあるポーズから次に移る段階に至るまでぎこちなさや間延び感も皆無で滑らか。またソロやコーダでの華麗な技巧も冴えに冴え渡り、
ここまで約4時間主宰者、主催者として出演者を見守りエネルギーをだいぶ吸い取られてしまっていたかもしれない田山さんに対し
心身が解れるよう満面の笑みでお仕えなさっていました。グランパはこれといった話はないはずですが、
孤高の女王と礼を尽くす忠臣(実は王族)のストーリーにも見えかけ、これはこれでありと関心を引き寄せたのは確かです。

田山さんと渡邊さんは昨年の田北志のぶさんオープンクラス発表会での『海賊』にて、キム・セジョンさんが直前休演による代役でペアが実現。
お2人ほどの長身同士の海賊は少なくとも日本のダンサー同士では目にしたことがなく、舞台が頗る狭く思えるほどの縦長に華やぐ存在感に圧倒されたものです。
(写真で見た中ではアニエス・ルテステュとジョゼ・マルティネスが27年ほど前のルグリと輝ける仲間たち公演が最長身『海賊』パ・ド・ドゥであったかと記憶)

渡邊さんのスタディガラ出演を知った日、どなたと何を踊られるのか、その時点でスタジオのSNSに挙がっていた各ペアの練習動画と
上演予定演目を照らし合わせながら『パリの炎』や『タランテラ』では恐らくないだろう(仮に実現したらそれはそれで楽しみだが)
そうなればチャイコフスキーかグランパか、と赤鉛筆片手に予想を巡らせつつー内心ドキドキはしておりましたが
当日になって田山さんとグランパ1本と知り、大トリに相応しいお2人と納得いたしました。

フィナーレは生徒さん組は『パキータ』のコーダで、ゲストと講師組は『エチュード』の終曲にのせての西口さん振付で
冒頭にも紹介した通り、ゲストも講師もお得意のテクニック炸裂でしかもぶつ切りにならず繋ぎや流れもよく練られ、非常に締まりのある仕上がりであった印象です。
いつの日か渡邊さんの『エチュード』も拝見したいと願っておりましたので嬉しい選曲でございました。
願わくは『エチュード』名物の連続ザンレール、ご披露いただける日を心待ちにしております。
今回ランダーの振付を少し踏襲した部分もあり、軸が寸分もぶれない高橋さんがビュンビュンと鋭く回転と垂直跳躍を見せてくださいました。(土佐の偉人だ)

鑑賞前の修子バレエアカデミーの当初の印象は、発表会回数が妙に多い点や、パ・ド・ドゥの基礎のみならず
主役級ダンサー含む講師迎えての作品の中の振付を学ぶパ・ド・ドゥクラス開講の多さ
しかもゲスト講師の顔写真を大々的に掲載しての強調や誰でも予約歓迎(違っていたらすみません)な門戸開放の広さといい
大変良いイメージを持っていたかと聞かれたら失礼ながら首をすぐさま縦には振れずにおりました。
少し前までは発表会のパ・ド・ドゥといえばスタジオの講師やコンクール入賞レベルや子供の頃から長く続けている上級者な生徒に限られるケースが大半で
今もスタジオによっては、技術や筋力もしっかりと備え、踊れそうな生徒がわんさかいても講師しか踊らせてもらえないところもあると聞きます。
少なくとも大人クラスの生徒が挑戦するのはここ最近になって急増してきたかと思われます。

ただ一方で今回も大人がパ・ド・ドゥに挑戦する難しさ、楽しさ、リスクなど考えさせられ
出演者によってはまだポワントで立つのも不安定な状態での挑戦や更には高難度なテクニックも取り入れていた部分はだいぶ冷や汗を掻きましたが
ジョイントではなくバレエ教室の中で、主宰者が責任を持って指導しながらの舞台でしたので、そこは安心ではありました。
かつて観たとあるジョイント舞台にて、互いに庇い合いながら変な力が生じ益々危うくなってのソフト落下や
リフトではなく引っ越し運搬と化していた等、危険度大仰天パ・ド・ドゥ連発に加え、安っぽい(失礼)フィナーレな全編無法地帯にはならず、
入口で男性ダンサーの顔写真がアルファベットのファーストネーム記載でずらりと掲載された、
パ・ド・ドゥの夢叶えたい人募集チラシ配布もなく(何年も前の舞台でしたが、私は鑑賞前から腰が抜けかけました涙)まとまりや全体の演出は工夫され、万全であった印象です。
※念のため、現在増加中のジョイントの中でも主催者がしっかり目を届かせて管理している舞台もあるようですので、一括りには言い切れませんが。
あと近年バランシンはもう古典扱いなのでしょうか。

それより、パ・ド・ドゥ初心者よりも男性ゲストが大変であろうと思うのは、年老いても尚自分は踊れる踊りたい願望のお強いご年配の先生の相手役かもしれません。
その手の出演者が揃った舞台を観たとき、助言や注意もしづらい心境、立場であろうと察するばかりでした。

修子バレエに話を戻します。スタディ・ガラと名付けつつも、生徒とゲスト、講師色々混ぜながらの構成で、
最終的にはハイレベルな印象で場を浚う新しいバレエ様式であろうと考察しております。
思うところはあったものの、企画構想の段階から演目選定、指導や日々発生するトラブルに向き合い、本番に向けての生徒さん達がぶつかる壁や悩みも一身に受け止めたり
本番当日は生徒たちを3時間半は見守り、疲労困憊であろう状態から勢いでの誤魔化しも一切許されない粗も出やすい
『グラン・パ・クラシック』を渡邊さんと踊られた田山さんの執念には脱帽いたしました。
紅白ならば、企画の段階からあらゆる手配や演出の組み立て等全体統括を石川さゆりさんが神経すり減らしながら行い、
長時間の生放送の中でのトラブル対応をもこなしつつ3時間半を越えた辺りにてようやく大トリとして『天城越え』と『まつり』を
自身の出番を今か今かとエネルギー満タンにして3時間半以上待ち侘びていたサブちゃんと一緒に歌うのと変わりない大変さかと思います。
(例えが良いのか分かりませんが)
スタディ・ガラは今回が初回でまだまだ模索中であることでしょう。プログラムの田山さんの挨拶文に目を通すと
実に強い使命感で大人の指導に当たっていることが伝わり、パ・ド・ドゥも決して誰でも踊りたい作品をやらせるようなことはなく
じっくり熟慮を重ねながら実行に移していらっしゃると推察。並々ならぬ覚悟で臨まれ、特にパ・ド・ドゥはきっと指導も厳しいと思われます。

また子供と違って大人はバレエ歴が様々で、大人になってから習い始めた方もいれば、
稀にブランクなく子供の頃から継続している人や嘗てはプロを目指しコンクール入賞や留学経験を持つ人もいるでしょうし
子供の頃長くはやっていてもあまりやる気なく淡々と続けていた人もいれば(私はこれに当て嵌まります汗)、
数年の短期間ではあっても全力を注いで熱心に学んでいた人ではまたレベルも大きく違ってくることでしょう。
背景が全員バラバラな大人生徒を主宰者として取りまとめ、舞台出演が叶うように、人によってはパ・ド・ドゥに挑戦させる、どれだけエネルギーを消費される職務であることか。
子供のみならず人口全体が減少し続けている日本において、学校にしても習い事にしても大人の生徒をいかにして呼び込むか、分野を問わぬ課題でしょうから
大人バレエのあり方についても一層考えさせられた小平の午後でした。



※9月10日(日)に放送されたKバレエトウキョウ新制作眠れる森の美女特番に、恐らく東京文化会館にて田山さんと、今回のスタディガラにてタリスマンに出演された田山さんのお姉様が
インタビューを受ける様子がちらりと映っていらっしゃいました。残念ながらインタビューはなぜかカットされていましたが、お美しいお2人でした。



※鑑賞前には隣駅の花小金井からバスで小金井公園内の江戸東京たてもの園へ。千と千尋な建物等を見学して参りました。
冒頭に述べた通り小平市に祖母が住んでおりましたので小平に所縁がある、かと思いきや思い出したら遊びに行った場所で記憶によく残っているのは
西武遊園地。小平市内ではなく東京都でもない汗。小平の名所名物について知ったのはごく最近で
『出没アド街ック天国』にて遂に小平へ初上陸となったときでございます。
日本国内のブルーベリー栽培発祥の地であるとはそれまで知りませんでした。
そんなわけで、小平見直しをテーマに公園の一部の敷地が小平市にも跨っている立地であるらしい小金井公園へ建造物見学に行って参りました。暑かったが汗。



西武新宿駅にて乗り換え。ラッコの車掌さんに久々の再会。



花小金井駅からバスで小金井公園、中をしばらく歩いて江戸東京たてもの園へ。
暑かったため、全ては回らず目当ての場所に絞って見学。まずは子宝湯。古めかしい外観が目を惹きます。足立区千住元町にあったらしい。



暖簾をくぐると番頭さんがいそうです。



手前側が花市生花店。千代田区神田淡路町にあった昭和初期の建物で、入口は植物模様で彩られています。



子宝湯の内部。千尋はいなかったが、風情にゆったり。



銭湯といえば富士山!仕切り壁の右側に飾られているのは義経と弁慶?



石原裕次郎さんに力道山のポスター。街頭テレビでのスポーツ応援や銀幕のスターの呼び名が
映画界を飛び交っていたこの頃の時代に生活していたと疑惑をしばしば持たれる私です。
(近年の芸能人が分からずにいたとき、私にだけ話題対象を変えて石原さん、菅原文太さん、高倉健さんの中での好みは誰かと問われたこともある。数年前の話である)



台東区下谷にあった鍵屋。居酒屋店舗で、安政3年に建てられたもよう。



使い込まれた感のあるカウンターや調味料、お品書きの札。千尋の両親が豚になってしまった場面を想起させます。



千代田区神田須田町にあった武居三省堂(たけいさんしょうどう)。創業は明治初期の文房具店です。建物は関東大震災後に建築されたデザインとのこと。
釜爺がひょっこり現れそうです。



大正時代に江戸川区に建てられた和傘問屋の川野商店。渋い色合いの和傘がお行儀良く並べられています。
奥から着物着た若旦那が出てきて丁寧に接客していそうです。5年半前の雑誌きものサロンでの古式ゆかしいグラビアを思い出します。
和装洋装両方絵になるお方はそうそういません。



この手の看板に弱い。



アド街でも紹介されていた武蔵野うどん。麺は決して太くはありませんがコシはかなり強めです。



都電7500形と昭和初期の流行だったのか看板建築と呼ばれる特徴がある植村邸。



新宿区信濃町に建っていた、デ・ラランデ邸。平屋建て洋館をドイツ人建築家のゲオルグ・デ・ラランデのよって3階建てに増築。
紅白のコントラストが遠くからでもよく見える色味です。



クラシックな息遣いがする階段。



落ち着いた調度品で整えられた洋間。



品川区上大崎にあった前川國男邸。カチッと支える窓の格子の線も素敵でございます。



つい、こう言った場所に来てしまいます。小平市にオリジナルビール存在とは今回知りました。
小平南口ヴァイツェン。暑い日中でしたので爽やかな喉越しが嬉しうございます。



江戸東京たてもの園のマスコットキャラクターえどまるの絵は宮崎駿さん制作です。お散歩が好きそうな虫さんです。



小平名物日本一丸ポスト。(これもアド街で知った)通常通り使用可能らしい。投函口は上下2カ所。
上側に手が届いて容易に投函できそうな人は限られそうであるとバスケットボールW杯報道視聴しながら思っておりました。
あとはバレーボール選手か、ジャンプがお得意なバレエダンサーの皆様、挑戦どうぞ!



ルネこだいらは30周年。



ジョイントではなくバレエスタジオの舞台で、されど発表会とはまた違う、生徒さん主体にパ・ド・ドゥチャレンジやレベルアップを図りつつ
実力者な講師陣やゲストも加わって全体の格を上げ、ガラな趣きも取り入れ有料(繰り返すが3000円!)でも納得がいく新時代の混在型舞台と捉えたら良いのでしょうか。
何れにしても、男性版日本バレエフェスティバル開催可能であろう第一線で活躍中の主役級含むゲストを何名も迎え
経歴は様々であろう大人の生徒さん達とじっくり向き合いながらパ・ド・ドゥを何組も舞台上で実現させる
田山さんの人脈、手腕、プロデュース力には誠に恐れ入りました。

2023年9月7日木曜日

日本舞台写真家協会創立35周年記念写真展 「私の一枚」








先週土曜日、新宿のエステック情報ビルにて開催中の日本舞台写真家協会創立35周年記念写真展 「私の一枚」 に行って参りました。
https://www.jsps.info/topics/372





バレエやオペラ、コンサート等あらゆる分野の舞台写真が展示されています。落ち着いたシックな空間で心がシャキッと冴え渡る空気に包まれていました。
バレエの写真は鹿摩隆司さん撮影の新国立劇場バレエ団フォーキン版『火の鳥』における
小野絢子さんタイトルロールと山本隆之さんイワン王子が腕を捻じりながら顔を近づけドラマの火花が生じる鮮烈な1枚も展示。
舞台写真は2010年撮影で、再演の2013年ストラヴィンスキー・イブニング公演ではポスターやチラシにも採用されました。今観ても吸い寄せられます。
それから今回の展示のメインポスターにもなっているエイフマン・バレエの『ロダン』。
彫刻の完成までの過程描写では生身の人間そのものが彫刻と化していき、音楽が確かこの場面あたりでサン=サーンス『死の舞踏』が流れ
製作にのめり込むロダンの狂気じみた姿やおどろおどろしい展開に鳥肌を立てながら眺めていたものです。
そしてマリインスキー・バレエ『白鳥の湖』はロパートキナのオデット写真があり、牧阿佐美バレヱ団『白鳥の湖』白鳥群舞を俯瞰的に撮影した写真等色々ございます。
撮影のエピソードを紹介した解説文を読むと、更に興味を高めての鑑賞に繋がっていきました。お時間許しましたら是非ご来場ください。
尚、大阪、名古屋でも開催予定とのことです。
別室には舞台写真以外のカテゴリーの写真もいくつも展示されていて、つい帰りに眺めておりました。

ところで以下は大余談ですが。管理人は当ブログ移転前の2017年第1弾の記事として、
先に挙げた新国立劇場バレエ団の2013年ストラヴィンスキー・イブニング公演チラシを飾った写真を採用。
なぜならば酉年の幕開けで、まだ年賀状も数枚は書いていたその頃、アナログ人間ですので
前年の2016年末は大忙ぎでフォーキン版『火の鳥』を参考に絵を描いていたのです。
小野さん火の鳥の絵を描きつつ山本さんイワン王子を眺めながらの作業でしたので喜びも倍で満悦だったわけですが、
一方で12年続く一筋応援な体制ではなくなりそうな気配が募っており、そして年が明けて2017年酉年開幕とほぼ同時に一途体制は終了。
しかも偶然か必然か、心を奪われたのは鳥をテーマにした作品の練習映像でした。
そんなわけで、どうにか両版の火の鳥を組み合わせた酉年一発目記事にできないかと乏しい且つ正月ボケな脳みそを稼働させ、両版が繋がる記事が完成。我ながら頑張った。
それにしても山本さんの虜になった西暦ときっかけ作品は2005年1月の『白鳥の湖』。そうです、酉年の1月でございます。周期があるのでしょう。
さて、今週末はお二方の舞台が重なり、ああ約1200km離れた地域同士で同時に開催。どちらへ出向いたかは後日当ブログにて綴って参ります。



帰り、昼食を摂ろうと散策していたところ新宿郵便局すぐ近くで発見。



暑いので、またこの日は写真展以外予定無しであったため昼からビール。陶芸家が捏ねて完成させたようなカップにビールです。



東京では初、1人焼肉。札幌滞在時限定の趣味となるかと思いきや、都内でも習慣になりそうな予感。



焼き開始。和牛カルビです。そもそも管理人、東京では焼肉にこれまでの人生において2回しか行っていない。
進んで行こうと思いつかなかったのか、年老いた今の方が欲が出ております。



そろそろ食べ頃、肉汁と香ばしさが迫り、美味しうございました!ふっくら炊き上がったご飯やナムル、大根キムチはビールにもよく合いました。