2023年9月1日金曜日

ぶらり京王線 東京西部における夏の癒しの風物詩 BALLET NOW(バレエナウ)第16回発表会 8月23日(水) 《東京都府中市》




8月23日(水)、東府中のふるさとホールにて、BALLET NOW(バレエナウ)第16回発表会を観て参りました。
川崎浩美さん主宰で貝川鐵夫さんも指導や作品振付を手がけていらっしゃるスタジオです。今回のゲストは昨年に続き新国立劇場バレエ団の渡邊峻郁さん、速水渉悟さん。
私の中では毎年恒例ぶらり京王線東京西部における夏の癒しの風物詩で、2019年、2021年、2022年に続いて4回目。今回は東府中での開催でございます。
https://ballet-now.com/

バレエナウさんのインスタグラムより。1枚目が『王宮の花火』です。

 




第1部、第2部は小品やグラン・パ・ド・ドゥ構成で昨年『アルレキナーダ』を渡邊さんと踊られた生徒さんが同じく渡邊さんとグラン・パ・クラシックを披露。
これといったあらすじのない、技巧を格調高く華麗に見せていくのが非常に高難度な振付と思われますが
テクニック見せつけ大会にならず、品位ある語らいが伝わってくる2人で1つな一体感や、ポーズの僅かなタイミング、余韻までもが自然と合って調和にもニンマリ。
特にアダージョのホルン主旋律の部分はホワホワした曲調でカウントが取りにくく
(管理人一応グラン・パ経験者。勿論パ・ド・ドゥではないが12歳のとき男性ヴァリエーション曲も女子2人で丸々踊りました)、
されどその中で呼吸の合ったポーズやステップを繰り出して音が余る或いは足りない事態にもならずしかるべき箇所でぴたりと着陸する心地良さをも感じさせました。
物語がない分、加えて音楽が重厚華麗で技術や品格がよほど十二分に備わってしないと成立困難な作品ながら
コンクール入賞歴からするとまだ中学生くらいのご年齢の生徒さんが品良く美しく格式高く踊っていて天晴れでございました。
また渡邊さんでずっと拝見したいと思っていた作品の1つで、(その経緯については小学生時代の私の惨事な話に遡り、語ると長くなるためまたいずれ)
特にヴァリエーションやコーダの冒頭部分の跳躍の方向転換や滞空ふわりな軌跡を眺められてようやく願いがまた1つ叶った気分でおります。
副題に今春の大型連休の初台を夢世界にいざなったシェイクスピアの戯曲と同名が含まれた、
ふるさとホールからも程近い東京競馬場にて7月に開催された大会以上に胸が充満する花火がグランパにて打ち上がりました。

グラン・パ・ド・ドゥもう1本はパ・ド・ドゥ初挑戦の生徒さんが『海賊』で速水さんと組み、
堂々と伸びやか、きりっとした踊りでハッとさせられる瞬間も多く、速水さんの見守り方もにこやかで安心して踊っていた印象。
強いバネの持ち主で上品でありつつも底からパワーが湧き上がって決めるポーズの格好良さも魅力に映り、淡いマリンブルーの膝丈の衣装もとってもお似合いでした。
速水さんはテレビ放送もされた2020年の新国立ニューイヤーのときより好調そうで、とても気持ち良さそうに踊っていた印象。
生徒さんを大事に大事にサポートされ、目線で何度も心を解していた光景も好印象でした。
それにしても、グランパと海賊の生徒さんお2人は2年前に速水さんと『海と真珠』を踊ったときはまだとてもあどけなかったはずが、
背も伸びて今ではすっかり美しくなった印象。新国立のプリンシパル相手でも臆する様子もなく
一方通行にならず一緒に作り上げる(これ大事)パ・ド・ドゥの喜びや素直でまっすぐな心も伝わり、お2人の今後が益々楽しみです。

バレエナウさん名物のキャラクターダンスも毎度の楽しみなプログラムで、小学生くらいの生徒さん達がまず可愛らしくブルガリア辺り?(把握できず失礼)の踊りを
女の子は赤い村娘な衣装で、男の子は紺色っぽいハーフズボンと白いシャツで不思議な魔力に吸い込まれそうな音楽にのって披露。
続いて上級者達が『白鳥の湖』よりマズルカ。踵の打ち鳴らし方や腕の掲げ方、身体の向きの変え方までメリハリが効いていて、訓練の行き届きが窺えました。
コーダは全員集合で再びフォークダンスな速度のある曲での大団円で、勢いのままに舞台袖へ。幼児さんであろう年齢から大人の生徒さんまで息を合わせて楽しんで踊る様子に
観客も更に心がぱっと明るくなって舞台と客席が楽しさを共有しながら終了。
キャラクターダンスを子供の頃から経験し舞台で踊る機会は他の教室ではなかなかないと思われ、
しかも観客側も心から弾むような喜びで応える一体感は格別。バレエナウさん名物としてこれからも続けて欲しいと願います。

第3部は全員出演作品で貝川さん振付『王宮の花火』。4年ぶりの上演で前回は第1部の作品として披露されましたが今回は改訂も入り、
ゲストや保護者の方々の出演も加わってより華やぐ作風になっていた印象です。
ドガの絵に出てきそうなふわっとしたチュチュに提灯袖が可愛らしい衣装でグループごとに色違いで着用したり
男子はエチュードの男性な上下白系、ゲスト陣は一般非公開となった2020年発表会での『エチュード』と似た、上が白シャツで下が黒。
荘厳な旋律が響く中で生徒さん達の折り目正しさや様々なテクニックを堪能すると同時に
第1部2部でのグラン・パ・ド・ドゥと同じ組み合わせのペアで優雅に踊る箇所もあれば
子供達がはしゃぎ回る演出もあり、次々と変化を見せて行く展開で飽きさせず。晴れやかな祝福感と端正な趣きが混ざり合った作品でした。
異彩を放っていたのが、渡邊さんと速水さんによるムーディーな男同士パ・ド・ドゥもあり、暗がりな照明空間に現れて対になったりリフトまで披露。
発表会ですし純クラシックな作品ですから決して妖しい艶かしいわけではないものの、端正な中からふと仄かな情熱が発せられ、
特に渡邊さんの色気を漂わせながら残る余韻が肌をも伝って吸い寄せられるばかりでした。
渡邊さん速水さんのお2人が並ぶと、どうしても2年前の6月『ライモンダ』全幕金曜日公演における
火花どころか炎を猛々しく盛り放つ2幕終盤の対決を思い出してしまいますが
今回は舞台上で2人きりのときも節度を保ちつつも仲睦まじくほんのり熱を帯びたペアと化していました。初台ではまずお目にかかれないパフォーマンスでしょう。
出演者全員作品であるため挨拶に川崎さんと貝川さんもご登場。貝川さんのエスコートや
お2人とも端から生徒さん達を讃え観客に挨拶をなさるお姿がまた素敵でございました。

そして今回初の試みとして第4部をチャレンジセクションとして設け、生徒さん達がソロを踊る機会持たせる企画が登場。
司会進行は川崎さんご自身で、コンクールまでは踏み込めなくても舞台で、お客様の前で、ソロを踊ってみたいとの要望が多く今回実現したそうです。
とても良い案と思え、そもそもバレエは芸術で上級者や初級者の差はあっても本来点数を付けたり他人と競い合うものではありませんから
レベルアップやスカラシップ等はっきりとした目標があるならともかく、
ただ賞や肩書きが欲しいからとやみくもにコンクールに挑戦するのは如何なものかと思う私でございます。
また近年コンクールが増え過ぎていてプロを目指すか否か問わず出場しやすくなり、随分と低年齢から出場可能な部門も多々あって
バレエ習う=コンクール出場必須は決して良いことではないと前々から思っております。(踊れぬズンドコドッスン素人がとやかく言うなとお叱り受けそうですが)
またバレエナウさんではまず皆で1つの作品を作り上げる舞台は以前から力を入れていらっしゃり、
アンサンブルにもきちんと取り組みつつソロを踊る機会を持つのは尚のこと興味を持たせ大歓迎。
発表会にてソロの披露を望む生徒さん達のチャレンジ精神やその気持ちを汲み取り実現させた先生達の行動力にもまず拍手でございます。
踊った後には先生からの紹介や質問、一言挨拶等、生徒さん1人1人の個性が伝わって笑いあり、時には悔しがる様子や感激の涙あり。 皆さん素直で頑張りさんな生徒さん達で何度心が洗われたことか。各々が選び、勿論先生からの助言やレベルや年齢に即して振付のアレンジもあったかと思いますが
丁寧にしっかりと踊っていて、仮に振りをシンプルにしたところで簡単になるわけでなく寧ろ粗が目立つ恐れも出てくる中
止めるべきところでしっかり止めたり、次のポーズへ移るときも滑らかな印象を残すよう意識を行き届かせたりと忠実な姿勢で臨んでいる生徒さんばかりでした。
お1人、社会人になった今もバレエ衣装のお仕事と両立 して続けている生徒さんがいらっしゃり、
いつも様々な作品でのリード役としても活躍されているお姿を毎回目にしておりましたので
生徒さん達にとって、頼もしい心の拠り所な存在と想像いたします。
今後はアシスタントも務められるそうで、心のこもった謙虚そうなご挨拶が心に響きました。

例年より1時間弱上演時間が長くなったものの、食い入るように観てしまい、時間は瞬く間に過ぎていった気すらいたします。
毎年恒例東京西部での夏の癒しの風物詩、来年も今から心待ちにしております。





開催日が平日のため毎回早退して向かっておりましたが、今回は午後半休にしたため時間にも余裕があり、会場近くでのんびりコーヒー時間。



お店お手製のチーズケーキがさっぱりツヤツヤ上品な爽やかさ。グラスやコーヒーカップも、ランプ型の灯りもクラシックな美しさでございます。
いつもは八王子珈琲で天国と地獄を脳内で流しながらケーキセットをいただいておりました。



ぶらり京王線の旅、帰りはまずはビールで乾杯。



食べてみたかった、豆乳担々麺。具沢山で、麺はコシ強め。良い具合で豆乳がまろやかな辛さを演出しています。



2023年の新国立劇場のカレンダー。8月には2021年秋のDance to the Futureのナット・キング・コール組曲を踊る貝川さんが写っていらっしゃいます。
再演のこのとき、ひょっとして一番沸いたのは本島美和さんと貝川さんが手を取り合いながら登場された瞬間であったかもしれません。
年齢を重ねるたびにスタイリッシュ且つ円熟した魅力を増しているベテランペアの美しさに見入りっぱなしであった私です。


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