2022年5月20日金曜日

合唱も踊る壮大空間   O.F.C. 合唱舞踊劇『カルミナ・ブラーナ』5月14日(土)





佐多達枝さん振付O.F.C. 合唱舞踊劇『カルミナ・ブラーナ』を観て参りました。
https://www.choraldancetheatre-ofc.com/

佐多さんの作品は初鑑賞。カルミナは身体中の細胞が騒ぎ出すほど心から好きな音楽で、佐多さん版は過去にも何度も上演を重ねていながら
機会を逃して行けずにおり、舞踊と合唱の構成も気になっておりましたが序盤から驚愕の連続でした。
まず独唱歌手も舞台中央に登場したり合唱も踊る群舞兼任な大掛かり演出に驚嘆。実のところ、壮大で1時間以上はある音楽に対し
ダンサーの人数が少なめな気もしておりましたが心配は無用で、青空時には星空にも変化する円形照明の下に実力者が次々登場。
捻りやユーモアも散りばめられた振付を全員が音楽を身体で目一杯奏でていて、透けた素材のシンプルな衣装であっても物足りなさは皆無でした。
春を謳歌する前半が遂には天体讃美かと見紛う宇宙なる空間への変貌も目に響き、スケール感を満喫です。

そして最たる驚きは舞台の左右に大勢のコロスが立ち、群舞の役割も果たす演出。例えばゴスペルのような、手拍子や少しリズムを取る風ではなく
身体の曲げ伸ばしを行ったり、方向転換や前進後進もこなしながら歌い続け、舞台全体が作り出す舞踊と合唱一心同体な空気にひたすら圧倒されました。
舞台両脇の出っ張り?ような場所の合唱団と舞台上のコロスともにマスクを着用。約1時間強、壮大と言う他ない作品を全曲歌うと考えただけでも
息切れしてしまいそうですが、好条件とは言い難い中であっても堂々とした立ち姿或いは
大人数で息を合わせながら踊り歌う合唱の方々に今一度拍手を送りたい思いでおります。

そして独唱歌手の方々も舞台中央まで登場しダンサーと向き合って呼応しながら歌ったりと、舞踊、独唱、合唱、演奏全てが主役とも見て取れる演出。
声楽界については大変疎くあれこれ感想を綴るべきではないかもしれませんが中江早希さんの、頂点に達したかと思えば更に膨らみを帯びて響き渡る声量は
天まで届きそうな迫力と艶で、東京文化会館の5階末端席で鑑賞していても今にも声に引っ張られる感覚を呼び起こされました。
各地から複数の団体が集結して臨んだ子供達の合唱も、ピュアな中に陰が落ちていくような孤独感を秘めた歌声で会場を包み、耳がぞわっと反応。

ダンサーの中ではとりわけ酒井はなさんと島地保武さんが印象に残り、 大所帯の中であっても埋もれず、音楽を身体でくっきりと描き出しながら舞う酒井さんと
長身を持て余さずしなやかな軌跡を残して行く島地さんのパ・ド・ドゥを目にできたのは大きな喜びです。

カーテンコールに佐多さんも登場され、残念ながら当方の席からは殆ど見えずでしたが車椅子に乗っていらしたとのこと。
日本のバレエ創成期から続々と作品を生み出してこられたエネルギーに平伏し、プログラムに掲載された
作品の記録を眺めているともっと前から観ておくべきであったと後悔すら募ります。
中でもベートーヴェンの『交響曲第9番』は約20年前のバレエ雑誌にてリハーサル記事を読み、坂本登喜彦さんや高部尚子さん、安達悦子さんや柳瀬真澄さんといった
所属の垣根を越えての稽古写真を目にし、何が飛び出すかわからない面白さがあって大好きとの高部さんから見た佐多さん作品の魅力についてのご発言や
日本では1回きりの公演が多いため作品もなかなか残らず振付家も観客も育たないと思う、と
佐多さんご自身が日本のバレエ公演事情の難しさについて語る内容にも関心を持っていたはずが行けず終いであったのは悔やまれます。

カルミナのバレエは3人の神学生が踊り繋ぐ展開を見せる、刺激度の強い衣装が大半を占める演出に大変な衝撃が走った新国立劇場でのビントレー版、
京都では女神に気まぐれで神出鬼没な性格を加味して描いた石井潤さん版を鑑賞しておりますが佐多さん版鑑賞ができた今回は誠に幸運。
ダンサーからソリストの歌手、合唱まで舞台を埋め尽くす壮大な合唱舞踊劇を堪能いたしました。これからも踊り継いでいって欲しい作品です。





鑑賞前、東京文化会館目の前の国立西洋美術館の常設展へ。いくつもの部屋に跨って展示作品多数。
常設展は初めて訪れ、作品数や製作時代の幅広さにも今更ながら驚かされました。個人の使用においては写真撮影も可能とのこと。
特に目にしたかったのが中世時代の詩集で、昔から教会史料や色づかい、文字の形に興味もあり。カルミナ・ブラーナ鑑賞前で好タイミングでした。



金色の文字と抑えた青色の組み合わせが美しい歌集。5線譜ではなく4線譜です。



鳥と植物の渋めな色彩模様にも魅せられ、綴られている内容をいつの日か読み解きたい。



こちらも感激、テオドール・シャセリオー作『アクタイオンに驚くディアナ』。37歳で生涯を終えた画家であったらしい。
まさにアクタイオンが水浴び中のディアナに見つかり、鹿に姿を変えられた瞬間を描いています。ディアナの頭に三日月あり。
少し前までならば、この絵の鑑賞中はギリシャ神話の中で3本の指に数える好きな物語であり、絵について、話について再度本で調べようと思う或いは
グラン・パ・ド・ドゥ抜粋なら晴れ晴れ爽快な作品に思えるが全幕の中の余興に入れるのは無理矢理感が拭えずであった云々
バレエにおける鑑賞時の記憶掘り起こしにとどまったのでしょうが、今回は生活習慣の変化の兆しが表れつつあった今年3月中旬を思い出し
アクティオンコーダのジャンプもう1回やってみたいと某日の有酸素運動終盤が脳裏にて再生。
何しろ突如ふわっと勇ましく舞う目の前のお手本に眼福でございました。音楽も爽快で宜しい。



帰りは当ブログレギュラーの後輩と、後輩と同い年でバレエの歴史や作品について学ぶ講座を検索するうちに当ブログに辿り着いてくれた方と食事へ。
ひとまずビールで乾杯。
今年3月の管理人2年2ヶ月ぶりのレッスン受講において、都内一等地での移転オープニング記念であるからズンドコ人間ではなく踊れるお綺麗な方々が行くべきと
断固不参加を明言していた私に対し、是非受講するよう約1日がかりで説得してくれたお2人です。
踊れる女子なこの2人は酒井はなさん指導クラスで知り合って以来の仲だそうで、私も1度6年前にクラスを受講。2人の存在が心強かったものです。
2人とも見るからに「バレエ女子」な風貌容姿で、例えるならば大輪の薔薇と涼やかな菫といった雰囲気を持ち
カルミナの第1部春の一節にある花いっぱいの気高き森、花は咲きほころび、の歌詞がそのまま当て嵌まります。
私と違い、レッスン後に大衆酒場へはまず行きそうにない、子供時代から現在に至るまでブランク無しのバレエ歴を誇る2人組でございます。
私の良き理解者でもあり、鑑賞やバレエ史等の座学講座受講が中心である我が習慣を尊重及び
レッスン回数が極端に少ない割にはクラス選択や受講時の格好が大胆にもほどがある点⁉も優しい反応を示してくれています。



鎌倉ハムフェア中。鎌倉は酒井さん所縁の地域で2人も嬉しそうな笑みを浮かべていました。
ピザはチーズ控えめでハムが前面に出た味わい。リエットも旨味があり、ビールに合う料理ばかりです。



ベーコンフリットは肉汁が溢れました。衣はサクサク軽い。ハムカツはレギュラーメニューで、ゆで卵も挟まっていてまろみもあり。



お店名物のロースビーフもいただきました。豪快なボリュームです。
スタジオは広いところがいい、床はリノリウムがいい、音楽は生伴奏がいい、と踊れぬ素人にも拘らず
レッスン環境の理想を八代亜紀さんの代表曲『舟唄』風につらつら並べても耳を傾けてくれる優しきお2人です。


デザート、春らしいパフェが似合う2人。私はプリンと赤ワインで締め括りです。

それにしても新国立劇場で久々に観たい、ビントレー版。特に性欲に溺れる神学生3は名演者が、そしてこれから観たい人も脳裏を過って止まらず。
我が目が黒いうちに実現しますように。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

大好きなカルミナ、観たかったです!
演出が面白そうで、楽しそう。
はなちゃんと言えば、りゅーちゃんの神学生が浮かびました。

管理人 さんのコメント...

こんばんは。お読みいただきありがとうございました!
カルミナ、音楽を聴くだけでも全身が昂ってしまうほどで、お好きなお気持ちよく分かります!

山本さんの神学生3、官能的で美しかったですよね。第3部の箇所は何度も山本さんの姿が過りました!特に忘れられない役の一つです。

照明からダンサー、合唱の配置まで工夫に富んだ演出で、大変面白い舞台でした!