2022年5月25日水曜日

清泉ラファエラ・アカデミア   バレエへの招待  2022年春期

2022年度も開講した清泉女子大学の生涯学習講座ラファエラ・アカデミア バレエへの招待を受講して参りました。講師はバレエ評論家でいらっしゃる守山実花先生です。
初受講が2013年の春でしたので、五反田に通い始めて今年で10年目。当たり前ですが我が齢の年代も変わり
還暦を迎えたばかりかと思いきやまもなく古希へ向かいつつあるのは真実か否かはさておき、受講の度に鑑賞知識が益々深まる発見の連続です。
https://www.seisen-u.ac.jp/rafaela/

https://rafaela.seisen-u.ac.jp/lecture/detail.php?lecturecd=20221601,20221603


春期のテーマは『オネーギン』。クランコ版はシュツットガルト・バレエ団の看板とも呼べる作品で、来日上演も多数。
私も何度か鑑賞しており、好きなバレエ作品上位13本に入るほど、初鑑賞時から魅力に取り憑かれました。
そう多冊は読んでおりませんが『バフチサライの泉』と並び、ロシア文学の中でも最も好きな小説の1本でもあります。

初回はまず原作について、作者プーシキンや作品の背景といった概要を聞き、そしてクランコ版の第1幕を中心に学んでいきました。
中でも重きを置いて教えてくださったのは音楽構成について。初鑑賞時、振付や出演者よりもチャイコフスキーの楽曲の寄せ集めとは到底考えられぬ、
オペラのエフゲニー・オネーギンの曲は使わずして全体の纏まりや登場人物の感情の襞に至るまで物語る、
この作品のために書き下ろされたとしか思えぬ音楽の構成に度肝を抜かれたあの日は今も覚えております。
劇中で使用されている曲のピアノ版やオペラのロミオとジュリエットの中の二重唱を聴いたあとに
オネーギン用の編曲を聴くとだいぶ違った曲調にも聴こえ、編曲者の手腕に唸るばかりでした。
特に幕開けの序曲から1幕中盤あたりが私は好きで、賑やかに鳴り響きつつもタチヤーナの夢想と憂鬱、
鈴が転がるかの如くオルガの浮き立つ心や翳りあるオネーギンの登場まで一気に語る展開に耳はたいそう衝撃を受けておりました。

それから群舞の振付の面白さについても説明があり、古典バレエな格式ある趣きと主人公が後方にいながら
群舞は快活に、時に哀愁を含みながら進行していく自由度のある趣き双方の合体に今更ながら気づかされクランコの構想力に脱帽です。
そしてダンサーによるオネーギン役の造形解釈の違いのポイントも今後より鑑賞が面白くなりそうで
タチヤーナの本を手に取ったときのオネーギンの表情や反応はじっくり観察してみたいと思います。

それからガラでもすっかりお馴染みである鏡のパ・ド・ドゥ。不穏な曲調が覆う中、憧れの男性が鏡から出てくる何ともロマンティックな場面と思いがちですが
先生の解説付きでよくよく振付を見てみると、タチヤーナはオネーギンから首筋に口づけされていると初めて知り
ただの綺麗な夢ではなく、夢は夢でもパステル画のような淡い美しさではなく何処か黒味も帯びた、妖しく官能的な夢であると考察。
別世界に住む憧れの男性を背後から眺めたり、腕を組むだけでも心臓が破裂しそうな高鳴りを秘めていたであろう初心なタチヤーナからすれば
現実世界ではあり得ぬ事態なわけで、振り上げるようなリフトもてんこ盛り。内気なタチヤーナが瞬く間に大胆奔放になる変わりように再度驚きを覚えた次第です。
人間関係に歪みが生じていく2幕や帝政ロシアの栄華が彩りオネーギンの後悔と懇願が強く刻まれる3幕についても、学ぶ日が今から待ち遠しく感じております。


※原作は同じで、題名を『タチヤーナ』としたバレエシャンブルウエストの公演が今週末の土曜日に開催されます。16年前に1度観て以来鑑賞に参ります。
オペラのポロネーズも使用されているなど音楽構成にも興味津々であった記憶があり、この16年の間に
チャイコフスキーのバレエ音楽でない曲で構成されたバレエも何本も触れてきた経緯から一層堪能できそうです。
2004年にはウクライナとロシアでの上演も成功を収め、音楽は現地の管弦楽団が演奏。選曲者江藤勝己さんが書かれた、キエフのシェフチェンコ劇場管弦楽団による『タチヤーナ』演奏時の裏話の紹介ページを2006年公演プログラムにて目を通し
今の現地の状況を思うと、募るのは週末の上演の楽しみだけではありません。
http://www.chambreouest.com/performance_info/第93回定期公演「タチヤーナ」




地元の図書館で借りた2冊のオネーギン、記念に清泉女子大学本館前で撮影。ロシア語本は翻訳と照らし合わせながら読み進められるかと思ったが
タチヤーナ達の恋愛と同様に甘くはなく、何処に何が書かれているかさっぱり分からず。
中国語の本の場合は漢字に助けられ翻訳と同時進行で少しは理解ができるのだが、キリル文字は読解不可能。
1本の三つ編みして庭で読書に耽っていたらオネーギンが現れる云々といった夢なんぞ砕け散ってお終いでございます。



大学地下の清泉カフェにて。甘酸っぱく口溶け軽いレモンメレンゲタルトに、大葉とシラスのピザ。お値段お手頃で(全部で500円以内であったはず)
この後に友人が注文したスコーンも半分いただき、学びに来ているのか食欲を満たしに来ているのか。目的に疑念を持たれても仕方ありません。

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