2021年11月22日月曜日

小牧正英さんの得意役を辿る構成 国際バレエアカデミア  バレエ・リュス・プログラム 11月14日(日)





11月14日(日)、国際バレエアカデミア(旧東京小牧バレエ団)  バレエ・リュス・プログラムを観て参りました。
『火の鳥』には新国立劇場の木村優里さん、奥村康祐さんが客演。国際バレエアカデミアの公演は
2018年10月のモンゴルとの共同制作ボストンバレエ版『くるみ割り人形』以来の鑑賞でございます。
http://www.academia-ballet.jp/



『牧神の午後』

アルタンフラグ・ドゥガラーさんがコロナの状況下にて入国不可能となり、ビャンバ・バットボルトさんが代役。
この作品自体鑑賞が久々で、恐らくは2006年の東京バレエ団による上演以来。バットボルトさんからのムンムンと漂う官能的な色合いは抑えめでしたが
悠然とした横向きの動きで紡いでいく振付は今観てもよく思いついたものであると考えさせられます。


『薔薇の精』
NBAバレエ団の高橋真之さんがタイトルロール、少女を蛭川騰子さんが踊り、序盤はお2人の身長差がやや気になったものの
高橋さんのふわっと舞い上がる跳躍や妖精らしい浮遊感、ねっとりとなり過ぎず湿度低めな雰囲気もちょうど良く
蛭川さんは夢の中での不思議な出来事に戸惑ったり妖精に惹かれていったりと心の移り変わりもしっかり表現し、後半には気にかからなくなりました。
この作品観て毎度思うのは、猫脚のソファーやらクッションやら、装置小道具に力が入っている点で
例え手に取ったり腰掛けたりはしない場合でも配置必須なのか、フォーキンに聞いてみたいところです。


『火の鳥』

フォーキン版を上演かと思いきや、チラシの解説によれば小牧バレエ団で出身でアントニー・チューダー薫陶を受け米国にて活躍した佐々保樹さん版とのこと。
幕開けから茶色と灰色系の総タイツな衣装姿をしたカッチェイの手下?達が舞台を覆い
その中の1組の男女が(男性は新国立の山田悠貴さん)中央にて漢字「命」なるポーズで立ち、不気味さを放っていきました。
火の鳥の木村優里さんは鋭く威厳ある鳥で、濃い朱色の衣装も似合い羽ばたく仕草だけでも吸い寄せられる摩訶不思議な美を明示。
対角線上を大きく跳躍しながら飛び込んでからのポーズもふんだんにありながらここ最近の軸や体幹強化の成果がこの役でも見られ
静止に至るまでの過程も盤石且つ腕が翼と化したかの如く指先までしなやかに野性味も香らせながら躍動していました。
登場しただけで空気がぴりりと締まる貫禄も眩しく、女王のように君臨。

奥村のさんイワン王子は冒険心一杯で、思えばメラメラに燃え盛る火の鳥を興味本位で捕まえようとする行動がまず変わり者なわけですが笑(火傷しないのやろうか)
民話であるとは言え無理な設定をも忘れさせるほどいとも楽しそうに、火の鳥に怪訝な表情で拒絶されてもめげずに嬉々として接する姿に微笑ましさまで募らす王子でした。
また離れて飛び立とうとする火の鳥と追いかけ抱き止める王子の切迫感あるやりとりも音楽の珍妙な起伏をもしっかり掴みながら披露。
木村さん、奥村さんそれぞれが持つ技術の高さが窺えるひと幕でした。 金子綾さんによる愛らしく気位の高いツァレブナには恋心をすぐさま持ちつつもひたすら礼を尽くし
意気揚々と恋する若者らしさと王族としての品の両方が垣間見えた気がいたします。
フォーキン版よりは踊る箇所が多く用意され、カッチェイや手下達から追い詰められるときには広々と跳び回ったりと意外にも見せ場豊富。
小牧バレエ時代からバレエ団で受け継がれている伝統の衣装でしょうから注文まではいかずとも、王子の赤い帽子が水泳帽に見えてしまったのは致し方ない笑。
新国立劇場でのフォーキン版ではサンタクロースの呼び名が付いておりました。帽子の形状の調整、なかなか難しいようです。

火の鳥の出番が中盤は少なく、曲調が一変する箇所辺りからはカッチェイの手下達が次々と登場しては縦横無尽に駆けていく振付。
フォーキン版のイメージ先行も一因でしょうが、舞台を埋め尽くすほどの大所帯を鼓舞していく展開を予想してしまった為
主人公であり対決を率いる火の鳥が不在であったのや寂しい印象が拭えずでした。
フィナーレはフォーキン版と同様火の鳥不在で王子とツァレヴナの結婚式。音楽も壮観ながら守り神な活躍をした火の鳥が
この場に居合わせない点は新国立劇場でのフォーキン版上演時も違和感を毎度覚えておりましたが
2007年にスターダンサーズバレエ団での太刀川瑠璃子さんバースデー公演にて鑑賞した遠藤善久さん(遠藤康行さんのお父様)版は
終幕火の鳥が中央後方部で見守る演出で、めでたさや荘厳さがひときわ強まって好印象でした。
そしてだいぶ設定、描かれ方は異なりますが、ベジャール版も最後火の鳥が中央にて身体を反り上げて君臨する生命力溢れる幕切れで、いつか生で観てみたい版でございます。
そういえば、来年1月には東京シティ・バレエ団が今回と同じ新国立劇場中劇場にて山本康介さん版を上演。
恐らくはクラシック路線かと想像できますが、フィナーレでの火の鳥の出番含め、鑑賞を大変心待ちにしているところです。

バレエ・リュス作品に絞ったトリプル・ビルが上演される機会は今は少なく
上海バレエ・リュス時代の小牧正英さん得意役を辿る、バレエ団の強みが生かされた構成を堪能できました。




バレエ・リュス作品、しかもロシア民話を題材にした作品でストラヴィンスキーの音楽を聴くと、欲するのはウォッカ。
メニューを眺めているとクランベリー入りの赤色ウォッカドリンクを発見。
甘みはあれど、ウォッカが十分効いております。次は久々にロックでいただいてみます。
それにしても『火の鳥』の音楽、何度聴いても、特に訳あって2017年のお正月以降は一層魂を揺さぶられっぱなしでおります。
火の鳥聴きたさにプロアマ問わず演奏会にも何回か出向き、ロシア国立管弦楽団が来日しストラヴィンスキーの遠戚にあたる指揮者がオペラシティで振ったときも行きましたが
3年前の3月半ばの季節外れな大雪の日に聴きに行った、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団の来日演奏は
演奏会不慣れな私にも拘らず色々込み上げ、未だ忘れられぬ1日でございます。

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