2021年11月15日月曜日

完成版を楽しみに 東京バレエ団『かぐや姫』第1幕『中国の不思議な役人』 『ドリーム・タイム』11月6日(土) 




11月6日(土)東京バレエ団『かぐや姫』第1幕、『中国の不思議な役人』 、『ドリーム・タイム』を観て参りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2021/kaguyahime/cast.html



※キャスト等はNBSホームページより


「中国の不思議な役人」
振付:モーリス・ベジャール
音楽:ベラ・バルトーク

無頼漢の首領:鳥海 創
第二の無頼漢―娘:宮川新大
ジークフリート:ブラウリオ・アルバレス
若い男:伝田陽美
中国の役人:大塚 卓


東京バレエ団で再演を重ねていながら初見作品で音楽を事前に聴いた限り、暗黒の中で繰り広げられる不気味そうな展開の曲調からして
好みそうな作品を想像。筋運びは一見難解でありつつも 主軸を踊る役人大塚さんの、周囲の騒動にも動じぬ謎めいた魅力を放つ存在感や
どっしりと構えたポーズも決まっていて、惹きつけられるものがありました。
鳥海さんの無来頼の首領がドスの効いたおっかなさで舞台を覆い、追い詰める群舞は序盤はやや小綺麗でさらりとした印象もあったものの徐々に毒味を帯びていき
2回、3回と観続けてようやく魅力を体感できそうに思いますので、再演時にはまた鑑賞したい作品です。


「ドリーム・タイム」
振付・演出 :イリ・キリアン
振付助手:エルケ・シェパース
音楽:武満徹 オーケストラのための「夢の時」(1981)
装置・衣裳デザイン:ジョン・F. マクファーレン
照明デザイン:イリ・キリアン(コンセプト)、ヨープ・カボルト(製作)
技術監督、装置・照明改訂:ケース・チェッベス

沖香菜子 三雲友里加 金子仁美
宮川新大 岡崎隼也

こちらも初鑑賞。ゆったりと不思議な旋律が続く中、夢遊に浸っている間に終わってしまった感があり
それだけ静謐な作風に魔力が溶け合うような美しさを描き表していた証でしょう。時々催眠術にかけられそうな曲調に危うく自身が夢の中状態にもなりかけましたが
(興味本位で図書館で借りた、脳のα波活性化なるCDの音楽に通ずるかと記憶) 沖さんの腕のしなるような表情、
金子さんのしなやかな身体の語りが特に訴えかけ、静かな中に宿る詩情の豊かさが沁み入りました。


「かぐや姫」第1幕 世界初演
演出振付:金森穣
音楽:クロード・ドビュッシー
衣裳デザイン:廣川玉枝(SOMA DESIGN)
美術:近藤正樹
映像:遠藤龍
照明:伊藤雅一(RYU)、金森穣
演出助手:井関佐和子
衣裳制作:武田園子(Veronique)
テクニカル・コーディネーター:夏目雅也

かぐや姫:秋山 瑛
道児:柄本 弾
翁:飯田宗孝
緑の精:伝田陽美、二瓶加奈子、三雲友里加、政本絵美、金子仁美、中川美雪
    加藤くるみ、髙浦由美子、榊優美枝、中沢恵理子、上田実歩、中島理子、最上奈々、鈴木理央、菊池彩美、
    瓜生遥花、長谷川琴音、大坪優花、花形悠月、松永千里、平木菜子、長岡佑奈、中島映理子、相澤 圭
童たち:工 桃子、安西くるみ
    岡崎隼也、井福俊太郎
村人たち:加藤くるみ、榊優美枝、上田実歩、長谷川琴音、平木菜子、中島映理子
     樋口祐輝、生方隆之介、大塚 卓、和田康佑、玉川貴博、鳥海 創、山田眞央、海田一成
秋見:伝田陽美
従者:生方隆之介、大塚 卓、和田康佑、玉川貴博
黒衣:岡崎隼也、海田一成


金森穣さん演出振付による全幕作品世界初演として話題沸騰な中、初日の幕開け。まだ第1幕のみの披露ですのでざっくりと綴って参ります。
かぐや姫の秋山さんは活発なあどけなさ、雅やかな淑やかさ両面を体現。特に姫のお転婆な面は絵本等でも馴染みがなく
竹から生まれた後は箸より重い物は持たされず大切に大切に育てられているイメージが先行しているためか
突如桃太郎のように飛び出して現れ、はしゃいでいく姿に違和感すら覚えたものですが
道児と出会った後のしっとり大人びた踊りや、やがて竹を模したであろう淡い緑色の着物を纏い雅な趣きで去って行く流れを見せ
早く第2幕そして完成版を観てみたい心持ちとなりました。貞淑に仕えていた秋見の伝田さんも良い味を出して活躍。

緑の精達の衣装の色味が濃過ぎる気が否めず、実際の竹の色からは離れるとは言えどももう少し抑えた色彩であれば
妖精らしい柔らかさやそよぐような浮遊感も出たかと想像。また上階から観る限り、振付が平坦な印象も拭えず。
『白鳥の湖』の湖畔や『くるみ割り人形』の雪ほどの変化に富む振付は求めませんが、もう一工夫あればとも思えました。

ドビュッシーの音楽はどの場面にも自然と嵌り、題名そのものと言えばそれまでですが月の光に優しく照らされる場面にて流れる「月の光」、
童達との溌剌とした戯れでの「子供の領分」も納得の選曲です。 ただ場面それぞれに合っていただけにぶつ切りな印象を与えられてしまったのは惜しく
切り貼りした感もあり。曲の余韻が次の曲に被さるように、場面展開や曲と曲の間隔等が噛み合えばより滑らかな進行になると思わせます。
全くの個人の趣味趣向ですが、ドビュッシーの中で私が最も好きな、何もかもが溶けて浄化されるような曲調の
「神聖な舞曲 世俗的な舞曲」は2、3幕で用いられるのか注目もしております。

伝統美とモダンな要素を上手く合わせながらもどっちつかずに感じる点もあり、今後全幕版完成に向けて手直しもなされることでしょう。
2幕か3幕で恐らくは描かれるであろう、求婚者達が集まり、姫から無理難題が出される場面は
眠りの「ローズ・アダージオ」ならぬ「バンブー・アダージオ」なる華麗な演出となるのか
それともより面白味ある構想が既に練られているのか、全幕版の完成を待ち侘びております。




日本の古典を題材にした作品を目にし、熱燗で乾杯。梅ささみでさっぱりと。このお店は4年ぶりに来店、その間に酒場放浪記でも紹介されたそうです。

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