2021年8月16日月曜日

城と廃墟で恐怖体験 NBAバレエ団DRACULA 8月9日(土)夜




8月7日(土)、NBAバレエ団DRACULA夜公演を観て参りました。第1幕は2020年2月のホラーナイトにて上演されましたが全幕版は2014年の初演以来、7年ぶりの上演です。
https://www.nbaballet.org/official/official-3788/


ドラキュラ:宝満 直也
ミーナ:竹内 碧
ジョナサン・ハーカー:大森 康正
ルーシー:竹田 仁美
ヴァン・ヘルシング:刑部星矢
レン・フィールド:佐藤史哉
クインシー:新井悠汰
アーサー:三船元維
3人の女ヴァンパイア:猪嶋沙織 阪本絵利奈  須谷まきこ


宝満さんのタイトルロールは2020年2月のホラーナイトに続き鑑賞。恐怖感を前面には出さずすっと背筋に凍る冷たさが走る感覚をもたらすドラキュラで
真っ直ぐな姿勢で静かに歩く登場から不気味さを包む冷気を放出。命からがら逃れようと地を這うハーカーと
追い詰めるドラキュラのパ・ド・ドゥの手に汗を握る展開がその後ドラキュラが次々と人々を脅やかしていく筋運びを彷彿させました。
生きた心地がしないであろうミーナのパニックぶり、どうにか冷静さを保ち夫を助けようと懸命な妻を竹内さんが好演です。

濃度抜群であったのは竹田さんのルーシー。ホテルでのパーティーに登場し、階段を下りてくる姿からして全身から星が瞬いているような華やぐ美女で
色とりどりな衣装を着けた人々の中にいても埋もれず。持ち前の卓越したテクニックも光り、身体の表情の付け方にも引き込まれるばかりでした。
ドラキュラと会い、ルーシーにだけは見える不可思議な状況をスポットライトを浴びて強調する演出効果もあって
徐々に呑まれ狂わせられていく様子を空虚な眼差しで表現。そしていよいよヴァンパイアと化すと、
身体の底側からおどろおどろしい感情を沸騰させ、酷薄な顔つきも恐ろしや。身体能力と女優魂共存な圧倒する舞台姿でした。

儀式に臨みながら踊る村人達が暗闇から発する魔力も沸々と奇怪な空気を作り出し、廃墟のアンデッド達によるホラー映画のハイライトのような踊り狂いも恐怖度の頂点。
十字を手に取り囲む打倒ドラキュラな構図も押し迫る命の危険を分かりやすく演出で
城や廃墟(恐らく)の堅固な装置に不穏な音響、煙の仕掛けも多数で、ホテルの洒落た内装もまた凝った作り。パーティーに相応しいデザインでした。

序盤でハーカーを襲う3人の女ヴァンパイア達の危うい艶かしさも強烈で、大きめのティアラに白いタイトなドレス、襷のような装飾もあって
一見帝政ロシアの皇帝一家の女性を思わせる品を備えた衣装。しかし本性はヴァンパイア。赤い薔薇の棘よりも恐ろしいのは言うまでもありません。

初演はゆうぽうとで鑑賞し、今回は新国立の中劇場でしかも舞台に近い席から鑑賞でき、ハーカーと共にドラキュラの城へ足を踏み入れ
身の毛もよだつ体験をし生還した気分でおります。ホラーな物語バレエはそうそう無く、NBAのレパートリーとして上演を多く重ねて欲しい作品です。




鑑賞前に訪問したドイツ料理店にて、アルコール提供が不可の代わりとして帰りにお土産にいただいたビールを帰宅後に開けて乾杯。

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