2021年8月8日日曜日

世界発信願う海のユーモアと四季折々の美  新国立劇場こどものためのバレエ劇場2021 「竜宮 りゅうぐう~亀の姫と季の庭~」 7月25日(日)昼27日(火)昼夕


新国立劇場バレエ団竜宮をこの夏も観て参りました。今回は2キャストを計3回鑑賞です。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/turtle-princess/

※キャストはそのままホームページより抜粋
7月25日(日)昼
プリンセス 亀の姫:木村優里
浦島太郎:渡邊峻郁
時の案内人:中家正博
フグ接待魚:五月女遥/飯野萌子
サメ用心棒:井澤 諒/福田圭吾
タイ女将:本島美和
イカす3兄弟:原 健太/小柴富久修/趙 載範
織姫と彦星:五月女遥/福田圭吾
竜田姫:細田千晶


7月27日(火)昼
プリンセス 亀の姫:柴山紗帆
浦島太郎:速水渉悟
時の案内人:中島駿野
フグ接待魚:奥田花純/渡辺与布
サメ用心棒:木下嘉人/小野寺雄
タイ女将 :本島美和
イカす3兄弟:清水裕三郎/福田紘也/山田悠貴
織姫と彦星:奥田花純/木下嘉人
竜田姫:細田千晶


7月27日(火)夕方
プリンセス 亀の姫:木村優里
浦島太郎:渡邊峻郁
時の案内人:中家正博
フグ接待魚:五月女遥/飯野萌子
サメ用心棒:井澤 諒/福田圭吾
タイ女将 :本島美和
イカす3兄弟:原 健太/小柴富久修/趙 載範
織姫と彦星:五月女遥/福田圭吾
竜田姫:細田千晶


※産経新聞にて美しい写真と共に記事が掲載されています。渡邊さんの違和感皆無な髷姿をどうぞご覧ください。
https://www.sankei.com/article/20210729-SYMJZJPFOZKJTEHZN64SXISKU4/

上記記事は当然ですがプロによる優れた内容ですので、そちらで満足された方は、ご訪問ありがとうございました。次回更新をお待ちください。
現在の猛暑酷暑における生活以上に、或いはIOC会長スピーチの聞き取り以上に辛抱に自信のある方は以下どうぞ。初演時の反省をふまえ、短めにしてはおります。


木村さんは摩訶不思議な質感に満ち、太郎の目の前に出現時は目線から手の向け方、首のゆったりとした曲げ伸ばしまで亀さん。太郎が目をパチクリさせ戸惑うのも納得です。
特に初演時よりぐっと良さが増していたのが竜宮城連れてきた太郎の前で披露する奉納の舞と2幕での別れで
前者は太郎を慕う心がより入っていただけでなく城を司る誇り高さも込められていた印象。
後者では引きちぎれそうな悲観が胸に迫り、ただやみくもに感情的になるのではなく慈しむような四肢の使い方も雄弁でした。
その後の幸福な結末は分かっていても、切なさを帯びたやりとりが目に残ります。最後、眩むような麗しい輝きも満点。

※長くなります。早速ですが小休止をどうぞ。
渡邊さんの浦島太郎は心優しさ広がる登場のソロから魅せられ、童謡『うらしまたろう』編曲にのせた、
さりげなくバランスの取り方が難しいふわふわと流れてしまいそうな振付であっても
伸びやかさと静止の対比がはっきりとした出来栄え。浜辺での亀さんへの慰めも丁寧で、心配そうに語りかけながら甲羅の砂を払い落とす仕草や
いじめられている亀をぎゅっと抱き止めて他人に渡すまいとわっぱ兄弟達へと視線で訴える箇所もツボでした。
再度驚きを覚えたのは、観客に対して後ろ向きで立っている場面が多々ありながら呆然と突っ立っている感がなく、背中からも感情が滲み出ていること。
夢か現実か不思議な感情に駆られる亀の姫の出現や、後にも述べますが2幕での四季折々の美に触れ懐かしんでいく郷愁感と言い
先日8月6日(金)神奈川県大和市での発表会でも感じ入った点の1つですが、佇まいや歩く姿で語れる人は稀で、僅かな所作や視線の向け方による状況描写が上手いと再確認。
ましてやこの作品において太郎は舞台にいる時間が長く、時の案内人と同様に場面展開の繋ぎや牽引も重要な任務で
作品の中身を鮮やかに引き出していらしたと思っております。

1幕、寝床についてから起き上がって障子越しに映し出す鶴になっての影の美は驚嘆もので、すっと伸びた首筋や長い手脚から繰り出す羽ばたきが
シルエットのみでもまさに鶴。某大手航空会社の機体に描かれていても何ら不自然ではありません。
2幕での四季の庭に足を踏み入れていく中で募らせていく望郷の念の体現も見事で、うららかな春でのうっとりと見入る喜びから
七夕での星空の瞬きや織姫と彦星の逢瀬に後方にて静かに心を寄せる姿、取り囲む祭り男達との交遊での興奮ぶりや、
どんぐりの速度についていけず少々不貞腐れて諦めが早いのはご愛嬌か笑。竜田姫とは禁断の密会とも思える脆く危うい絡みで
細田さんの儚さもあって背筋を摩られるような身震いする思いがいたしました。
移ろいと共に最初は浮き浮きと眺めていた様子から次第に寂しさのほうがまさっていく様子が見て取れる展開で、亀の姫に別れを切り出す葛藤に繋がる説得力大です。
鶴への変身では内側に火が灯ったか更には眼の奥から矢を放っているかの如き凛々しい豹変が打ち震わせ、額赤塗の横顔や立ち姿が厳粛な儀式を彷彿。
純朴で優しい漁師と同一人物には到底思えぬ変わり様でした。
さて、子どもバレエでもやります髪型観察今回は嗚呼花丸。何しろ髷が似合うを超越してその時代(江戸かもっと昔か定かではないが)での
生活者やタイムスリップしてきた人物にしか見えず、或いは太秦撮影所にいても何らおかしくない風貌でございました。
ああ、これで袴と刀もあれば完璧。友人の名言が今宵も脳裏を過ぎります、「渡邊さんは武士にも騎士にもなれる」。

柴山さんに亀の姫はゆかしい鷹揚な所作が目を惹き、おっとり優雅なお姫様。生来のお顔立ちが和風でたおやかな雰囲気を湛えている分、
風貌はそのままに小舟を懸命に引こうと頑張る姿がいたく健気に映り、太郎が不安そうに落ち着かぬ表情で見守るのも無理はありません。
羽織を着た姿も絵になって踊りながら裾が靡く形も随分と綺麗に見えました。

速水さんは天真爛漫な太郎で、金魚舞妓の扇や鮫にも好奇心一杯。(この辺りの表現は各々に任されているのか、渡邊さんは一緒に舞妓達の扇を真似ていた)
もっと大衆演劇俳優のような太郎、或いは軽い太郎になるかと思いきや(毎度失礼)、『ライモンダ』に続いて意外にも純情派。
亀の可愛がり方も言葉が聞こえてきそうで、亀の姫に関心を持ち手を差し伸べようとする際や
寄りかかったエイボン越しに姫と見つめ合う場面も心臓音が響いていそうな、ピュアな青年でした。
チャラ島太郎になりそうなんぞ言うておりました当初を悔いており、申し訳ございません(一礼)。

話は少しずれますが、昨年の初演時終演後。もしこどもバレエで他にも日本物を作るなら何が良いかあれやこれや話題となり、桃太郎の案が浮上。
鉢巻締めた正義感の強い桃太郎は渡邊さんで、鬼の頭は速水さん、鬼の人数を多めにしてパワフルな群舞にすれば面白くなりそうと桃太郎での対決妄想が懐かしい。
役増やしも兼ねて途中で森で動物達に会う設定にして、『しらゆき姫』から借りる案もあり。それより先に対決は『ライモンダ』で実現したのでした。

話を戻します。中島さんの時の案内人の場面の橋渡しの安定感が増し、前回よりも見せ方が大きくなった印象で身体の動かし方はすっと滑らか。
対する初挑戦の中家さんはどっしりとした貫禄ある存在感で、例えば腰の落とし方はぐっと深く、力強く物語を引っ張る案内人でした。千秋楽序盤釣り糸ヒヤリはご愛嬌。

本島さん鯛の女将は実質竜宮城の支配人であろう威厳もあり、幕が開いて竜宮城が出現し、中央で正座しての一礼は大奥を思わす迫力。
着物とドレスを融合させた、ピンクに近い赤地に目玉を彩る衣装もお似合いです。
キビキビ且つはんなりな金魚舞妓の扇使いもはっとさせ、丈の短い着物衣装も粋。イカす三兄弟の巨大な頭をゆらゆら動かしつつ
大真面目にキレキレに踊るタンゴは今年も笑いを誘い、後方で金魚舞妓達が音頭を取っている光景も面白く太郎の浮き浮き感も宜し。
涼やかに流れる床照明も秀逸で、寄せては返す穏やかな波から、太郎がいよいよ海底へと向かう箇所では鳴門海峡並の渦潮を描いて一緒に潜っていく気分を演出。
四季の部屋での祭り終盤での花火や竜田姫の登場に合わせた紅葉絨毯の広がりも毎度息を呑みます。
順番前後して、海底での大団円は何度観ても胸躍る展開で、音楽の盛り上がりに合わせて太郎、イカす三兄弟、と徐々に加わって増えて一斉に舞台を1周する流れがいたく壮大。
海底世界の序盤から様々な個性の海の生き物達が次々と登場しても混沌とした印象はなく、
整理されながら隙なく登場して太郎と何かしら絡んでいくため、切り貼りした感も皆無な点も交換を持てます。
渡邊太郎はタコへの可愛がりが半端なく、頭を渾身のなでなでクシュクシュをしてあげていました。
太郎へのお酌係のサザエとウニのアシスタントとしても活躍していたタコさん達。盃をささっと片付けていて、脚多く長いながら器用な立ち振る舞い笑。

涼しげなボディータイツにゴーグルを付けたスタイリッシュで変幻自在に太郎を導いて行く波達の活躍も忘れられず。
幕開けに漣のように現れたかと思えば、亀との出会いでもちょこっと手助けしたり、亀とうさぎの競争では亀側の応援にまわり、
そして竜宮城へ向かう亀の姫と太郎を大波と化して後押しし、エイボンやウニ、サザエ、マンボウ始め波のダンサーが衣装はそのままで被り物等で変身し踊る役も多数です。

音楽もこの度も聴き惚れ、海の神秘をスケール感ある曲調で、一方和楽器もふんだんに取り入れて日本の美を繊細に表現したりと飽きさせぬ曲の連続。
ほんの僅かではありますが、太郎が海底を訪れた際にマンボウの横切りで流れる荘厳で重厚な旋律もいたく気に入っております。
冬の庭での雪の花嫁花婿達の物哀しさを含ませた重々しい曲調も耳に残り、太郎の故郷への恋しさを一段と募らせ亀の姫への元へ一旦戻る心の内とも重なる場面です。

そして、森山さんのセンスには舌を巻くばかりで、西洋発祥の芸術に能、歌舞伎、鳥獣戯画、祭り、七夕、等々と多種の日本文化の要素や
プロジェクションマッピングといった現代のテクノロジーも盛り込んでいながらカオスとはならぬどころかすっきり整頓、洗練された舞台を演出しています。

昨年も今年も状況が状況だっただけに来年も是非再演を。昨年夏は都内にて唯一訪問可能な接待を含む飲食店なんぞ皮肉を込めてしまった覚えがございますが
今回はマンボウの出迎えに都内ながら宣言ではなく「まん防」が脳裏通過。
状況脱出までは当分時間を要しそうですがそれはさておき、日本文化の要素が適度なユーモアと溶け合って舞台に現れて
海の神秘と四季折々の美が次々と展開するこの作品は子どもバレエの枠を超え、世界のためのバレエ劇場としてもっと多くの方にご覧いただきたいと願ってやみません。
先程の五輪閉会式にて披露ないしはそのまま映像上映して欲しかったほどで、願はくは毎夏の風物詩化を。


※9月には大阪フェスティバルホールでも上演がございます。関西近郊の皆様、どうぞご来場ください。観て損はありません!!!
https://www.festivalhall.jp/program_information.html?id=2537



オペラシティ内にて、人生節目後最初の鑑賞を前に、まずは1人乾杯。



昼から竜宮城の太郎気分。但し『竜宮』とは異なり、サザエさんとウニさんからのお酌はございません。手酌でいただきます。
ノンアルコールでも呑んだ気分にはなります。



今回は写真撮影タイムもありました。まずは7月25日(日)昼、斜め上の角度から。



続いて7月27日(火)昼、全体写真。



千秋楽7月27日(火)夕方、同じキャストのドアップばかりやん、とのご指摘は受け流します点ご了承を。
太秦映画村にいそうです、こちらの太郎さん。「拙者は」との話し出しでも違和感ありません。



手を合わせて


恥じらい亀の姫


手を腰に


手を広げ


また会いましょう!


ホワイエにて浦島伝説ゆかりの地域を特集展示。


2014年4月に大阪での舞台鑑賞前日に日本酒ナビゲーターの資格取得も兼ねて天橋立を訪れ、徒歩で横断している途中に撮影した浜辺。
浦島太郎伝説についてはさほど意識することなく歩いており偶然な撮影場所でしたが
左に松の木、右には寄せては返す穏やかな波で、今思えば幕開けの太郎の登場場面を彷彿する構図。
訪問当時はまさか、6年後と7年後に新国立劇場にて浦島太郎のバレエを鑑賞する日々が到来するとは
そもそも2人目の男性ダンサー出現日の到来も、しかも髷や着物が似合い過ぎまさにこの風景が絵になる
何かと和物に当て嵌めたくダンサーであろうとは、このときは知る由も無かったわけで人生分からぬものです。
前ブログの容量確保のため一部削除した写真もございますが、天橋立散策日記はこちらをどうぞ。地酒や魚介類を中心とした食事も美味しうございました。
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2014/04/4-0288.html



次回はライト版白鳥。



最新号のダンスマガジンでの特集「日本の美しい男たち」に渡邊さんが掲載されています。ファッション誌から飛び出したような
お洒落なグラビア、では決してなく(そこが魅力)実直そうなお人柄が写真とインタビュー双方から伝わる記事です。
嘗てダンスマガジンでは男性ダンサーに焦点を当てた連載があり、1993年前後辺りに花と男たち、
その後2003年から2005年頃までは新藤弘子さん執筆で「踊る男たち」の
見出しであったかと記憶。後者は単行本でも出版されています。(他の時期にも折々似た特集が組まれていたかもしれませんが)
ただ日本のダンサーで取り上げられた方は少なく、熊川哲也さん、首藤康之さん、小林十市さんのお三方のみであったかと思います。
当時はマラーホフやウヴァーロフ、ルグリにル・リッシュにカレーニョと海外のスターダンサー隆盛期及び来日公演も多数開催できた事情もあるでしょうが、
日本のダンサーが少人数しか入っておらず寂しい気もしておりましたので今回の特集は嬉しうございます。
4年前にはあるファッション雑誌で同様の特集があり渡邊さんも掲載されていましたので購入もいたしましたが、顔と筋肉美の話が中心で首を傾げる内容でしたので
ダンスマガジンですから当然ではあるものの外見だけでなく踊り方にもきちんと触れている記事ですから喜びもひとしおです。

カフェラテは内容には関係ございません。
マウントレーニエ、昔シアトルへ行った際にこの目で見たと思い出しつつ鳥羽水族館のラッコのメイちゃんの写真に惹かれ入手。

2 件のコメント:

ひふみ さんのコメント...

素敵なご感想をありがとうございました。
本当に素晴らしい公演でしたよね。
私は3キャストを鑑賞しましたが、渡邊さんの浦島太郎が一番お似合いだと思いました。
第一幕での、太郎の夢の中での鶴の羽ばたきのシルエットは、本当に息を吞む美しさでした。
その昔、バレエ・フェスティヴァルで、ジョルジュ・ドンが踊った『瀕死の白鳥』を思い出しました(笑)。
そして、太郎の時の人の良い若者から、鶴大明神に変身してからの研ぎ澄まされた美しさが圧巻でした。
本来、東京2020の文化行事の一環として創られた作品ですから、来年以降も上演を続けて欲しいと心から祈念いたします。(ひふみ)

管理人 さんのコメント...

ひふみ様

こんばんは。お読みいただきありがとうございました!
幕開けから最後まで、日本文化の要素が隙なく違和感なく溶け合った、楽しく美しい作品ですよね。
渡邊さんの太郎、着物姿からしてぴったりお似合いでしたが、シルエットの鶴は瞬きも惜しいほどな美しさでした!
仰る通り、優しく素朴な若者であったとは思えぬ崇高な鶴大明神となり、拝んでしまいたくなりましたよね。
ドンの瀕死の白鳥!さぞしなやかで官能的であったかと想像いたします。

はい、本来ならば東京2020と合わせての制作でしたから、昨年今年ともに集客が難しくなってしまった事情を思うと一層来年以降も上演して欲しいと願います!