2020年12月27日日曜日

4年連続上演の意義が見えた熟成感 新国立劇場バレエ団ウエイン・イーグリング版『くるみ割り人形』 12月12日(土)~20日(日)



クリスマスも過ぎ世間はお正月準備真っ只中に遅ればせながらの大雑把投稿で失礼。12月12日(土)〜20日(日)、新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』を計7回観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/nutcracker/


※ひとまずホームページより主要キャストのみ掲載いたします。

2020年12月12日(土)13:00
クララ/こんぺい糖の精:小野絢子
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:福岡雄大
ドロッセルマイヤー貝川鐵夫
ねずみの王様:奥村康祐
ルイーズ池田理沙子
雪の結晶:柴山紗帆、渡辺与布
花のワルツ:柴山紗帆、飯野萌子、井澤 諒、原 健太

2020年12月12日(土)18:00
クララ/こんぺい糖の精:米沢 唯
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子井澤 駿
ドロッセルマイヤー:中家正博
ねずみの王様渡邊峻郁
ルイーズ:柴山紗帆
雪の結晶寺田亜沙子、飯野萌子
花のワルツ:寺田亜沙子、細田千晶、速水渉悟、浜崎恵二朗

2020年12月13日(日)13:00
クララ/こんぺい糖の精:池田理沙子
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:奥村康祐
ドロッセルマイヤー:中家正博
ねずみの王様:木下嘉人
ルイーズ:奥田花純
雪の結晶:柴山紗帆、飯野萌子
花のワルツ:寺田亜沙子、細田千晶、速水渉悟、浜崎恵二朗

2020年12月13日(日)18:00
クララ/こんぺい糖の精:木村優里
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:渡邊峻郁
ドロッセルマイヤー:貝川鐵夫
ねずみの王様:井澤 駿
ルイーズ:池田理沙子
雪の結晶:柴山紗帆、渡辺与布
花のワルツ:柴山紗帆、飯野萌子、井澤 諒、原 健太

2020年12月18日(金)19:00
クララ/こんぺい糖の精:米沢 唯
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子井澤 駿
ドロッセルマイヤー:中家正博
ねずみの王様:渡邊峻郁
ルイーズ:柴山紗帆
雪の結晶寺田亜沙子、飯野萌子
花のワルツ:寺田亜沙子、細田千晶、速水渉悟、浜崎恵二朗

2020年12月19日(土)18:00
クララ/こんぺい糖の精:木村優里
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:渡邊峻郁
ドロッセルマイヤー:貝川鐵夫
ねずみの王様:井澤 駿
ルイーズ:奥田花純
雪の結晶柴山紗帆、渡辺与布
花のワルツ:柴山紗帆、飯野萌子、井澤 諒、原 健太

2020年12月20日(日)18:00
クララ/こんぺい糖の精:小野絢子
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子:福岡雄大
ドロッセルマイヤー:貝川鐵夫
ねずみの王様:奥村康祐
ルイーズ:池田理沙子
雪の結晶:柴山紗帆、渡辺与布
花のワルツ柴山紗帆、飯野萌子、井澤 諒、原 健太


小野さんのクララは少女からレディへと成長する感情が迸る踊りに魅入り、登場時はまだまだあどけない子供で実のところ子役と入れ替わっても
少しお姉さんになったように見えるぐらい(褒め言葉) しかし戦闘場面に入ると怯えながらも
凛としたお姉さんぶりを発揮し、王子との出会いではすっかり大人びた女性に。刻一刻と少しずつ大人への階段を上って行った印象です。
グラン・パ・ド・ドゥでは眩い輝きを放つ女性として君臨。複雑なステップ1つ1つから歌が聴こえてきそうな余裕をも感じさせました。

技術と表現双方が益々練り上げて臨んでいらしたのは米沢さん。2幕後半、寸分の隙も粗も無い煌々としたラインには息を呑み
内側からシャンパンゴールド色の上を行く更なる光を放っていたように見えて別次元の美しさを放散。
綺麗に敷き詰められた宝石箱を彷彿です。

今シーズンに入りめきめきと変化を遂げている池田さんの、1幕登場や2幕ヴァリエーションで広々空間でも大きな存在感を見せながら披露する姿に
『ドン・キホーテ』に続き感激を覚えました。1幕怯えながらも小刻みに走るステップは、小柄な体躯を思わせずしかも恐怖感に襲われている感情が
プロジェクションマッピングの余韻や大掛かり装置にも負けず全体に広がっていたのは明らか。以前は気にかかっていた縮こまった印象がすっかり無くなり、
4階から観ていても舞台のスッカラカン具合を気にさせぬ見せ方に拍手です。

木村優里さんは光を纏うような麗しさをネグリジェ姿でも醸し、優美さにくらり。
戦闘場面でのどこか楽しそうな度胸も満点なクララでチャーミングな面も発揮していました。
チュチュ姿においても四肢の操りが一層すっきりと美しくなり、柔らかな弧を描くような踊り方にも魅せられるばかりです。

男性主役3回で最たる過酷日程であっただろう福岡さんは貴公子を超えて王者の風格。中でも千秋楽での精度の高いテクニック、サポートは
後に述べますが9回公演の締め且つ生配信に相応しくあっと唸らせました。

全身の表情が格段と多彩になった井澤さん王子は難技山盛り舞台を頼もしく牽引。特に出会いの場面は4階席から双眼鏡無しでも
迫りくるものが強く、目が覚めるような視線の通わせ、リフトにも驚きでした。
奥村さんは甥っ子のソフトな雰囲気と1幕後半から2幕にかけてひときわパワー増強な印象に対比を持たせ、安心感のある王子。
お面を着けていても清爽な空気がふわっと広がりを見せるのは奥村さんならではかもしれません。

※以下、ちょいと長めです。お茶で小休止をどうぞ。

渡邊さんは甥っ子、戦闘での人形、シャンパンゴールドの王子、の色分けとそれぞれの濃縮度が見事。甥っ子では子クララのみならず
男の子達にもさっと手を差し伸べ並ぶ手伝いを率先し子供にも端然と接し、抜き打ち風紀検査も一発合格しそうな士官学校卒の鑑なる軍服姿が似合うのみならず
保育士にもなれそうな青年。優しい眼差しを向ける表情と言い憧れるお兄さんの要素が凝縮です。
全キャスト4名の甥っ子を観ていると1人1人客間にいる時間の長さや周囲との絡み方も異なり興味深く観察(もはや監視の域だが笑)しておりましたが
渡邊さんが断トツでやりとりが豊富。特に、1人プレゼントをなかなか貰えないクララを遠くから案ずる様子で、
接待に忙しい両親から一時放置状態にあるクララを代わりに面倒を見ていた渡邊拓朗さんお父さんと目を合わせては心配を募らせる芝居も見所の1つでした。
ねずみ軍達や大量のスモークも入り乱れる中でも斬り込み勇ましい人形姿はクララでなくても怯えを超越して助けに駆け付けたヒーローに見え、お面装着であっても我が目は心臓印。
御伽噺世界を描きつつも芯太く堂々締まりある踊りで背中からも強さが光って惹き付ける王子で
連続リフトにも昂る感情が溶け入る出会いや幸福が昇華するグラン・パ・ド・ドゥと3役の変化満喫。これで安心ゆく年くる年です。

パ・ド・ドゥにも無駄に難しい技巧が詰められているイーグリング版は、パートナーシップの盤石性を肝試しさせられるような厄介物作品ですが、
初演から4年連続上演なだけあり全ペアに賛辞を送らずにはいられず。
ポスターにもある、恐ろしいほどにダイナミックなリフトを高々と披露の小野さん福岡さん、リフトしてから回転して下ろす危険で素早い箇所でも
するすると滑らかな調和に目を見張った池田さん、奥村さん。 先にも述べましたが互いの遠慮がなく視線の交差がぐっと迫るようになった米沢さん井澤さんに、
華をもたらしドラマの塗り重ねが濃い木村さん渡邊さん、とそれぞれ強みが年々開花し魅了し続けています。

イーグリング版名物、ねずみの王様も個性様々。十八番と言っても良いであろう奥村康祐さんは、怖さとお茶目度のバランスを半々に備え
おどろおどろしい序盤から一転、初日は今年話題縄跳びダンス披露。千秋楽は久々に元の振付に忠実であったかもしれません。

初演の頃は豪胆な王の印象があった渡邊さんはひたすらお茶目で、上背は一番あるねずみ王にも拘らずちょこまか小動物系路線。
大砲出動の閃き時にはピカッとマイムで示し、成し遂げたと思いきや時々方向を誤る笑、慌てん坊ぶり。
再び王子が呪縛されるときにはクララを美しいと全身をなぞって褒めちぎる様子も憎めず愛すべき性格が炸裂し舞台を席巻していました。
1回目はよく分からずであったが2回目はサタデーナイトフィーバーも披露と推測。ミラーボールが見えかけるほどにキレキレのポーズでございました。
気球での降下時は吊し装飾を1体1体数えたりと指先も雄弁に語り、挙げ始めたら夜通しになりそうですが
最後は王子と笑みで和解し手を握り合い2人揃って平和主義と想像。本当はクララ達と仲良くしたかったのかもしれません。
12年前のリーマンショックに続き今回はそれ以上に地球大厄年の年女な私ですが、ねずみ年で良かったと思えた2020年です。

クララの寝室侵入時から身体の使い方に特徴があったのは木下さん。重心を下にしてすばしっこく動く姿から、仮にキャストを把握していなくても木下さんと分かる登場場面でした。
中盤にはパプリカ、そして私が未見の2回目は2000年代を代表する芸を複数盛り込んで高速披露なさっていたとか。身体能力が高い木下さんしかできそうにありません笑。

井澤さんは被り物をすると人格が180度転換するのか、ワンマン強引な王様ぶり。(褒め言葉)部下達の指図も戦国大名並みに手慣れた様子であると観続けているところで
初演時からの伝統持ち芸、変なおじさんを披露なさり上階客も大笑い。腰の入り方は1回目のほうが力が込められていましたが、
志村さんの追悼番組も多く放送され目にする機会も多かった年なだけに、被り物びらびら装飾衣装であっても見劣りせずであったのは見事です。

初役で印象付けたのは関晶帆さんのアラビア。細く長い肢体を生かし、視線や顔の向け方にもクールな色気と威厳ある踊りに引き込まれました。
4人の男性をかしずかせる姿も絵になり、次回も踊って欲しいと願います。
赤井綾乃さんの中国がまた可愛らしく、これと言ってステップの見せ場が無い振付であっても終盤のにこやか柔らか回転にも見入りました。
盤石と殿堂が似つかわしい福田圭吾さんの1役目酒豪な亭主関白爺さんは、家にはいて欲しくないが(失礼笑)舞台にはいて欲しい楽しい存在。
聖ニコラスから子供達へのプレゼント配りに我もと立ち上がる元気なお爺さんです。
そしてロシアはただ爆発力があるにとどまらず客席をもぱっと照らし出す明るさも最強級で、背景の奥から姿がちょこっと見えるだけでも毎回ワクワクさせられます。

それから新国立の宝であるコール・ドの底力にも感嘆。大人数で指先から雪とダイヤモンドダストを散らせるように見せ雪の大きな結晶を描く雪の精達は勿論のこと
世界随一な高難度花のワルツも何度観ても感激し特に男性はサポートして跳躍もしたりと踊って
またサポートして、の繰り返しで途中にはパートナー替えの箇所もあり。更には男性のみで勇壮に踊る場も設けられ
優雅のみではない、パワフルな魅力を増幅しています。世界に類を見ない難しいワルツでしょう。
初演から気に入っている、フィナーレでの斜め対角線上に並んだ状態から徐々に跳んで離れて三角形のような隊形を作り出すフォーメーションも胸が躍る箇所の1つです。

改善はされたが紗幕そして魔法が解けては戻るを繰り返すようだが煩わしさばかりが前面に出ている2幕冒頭王子のお面装着は諦めたましたが笑
眠っていても踊れそうなほどに熟れた雪の精達や花のワルツ、クローゼットが巨大化したお城の門に移動して嵌め込まれ
おもちゃの兵隊達の登場の流れを始め大掛かりな装置転換に大ねずみ子ねずみ達の
統制の取れた畳み掛けや立体感ある戦闘スペクタクル感等、4年連続上演意義も見えかけました。
長野、滋賀、札幌含む約30回鑑賞してようやくイーグリング版に愛着が沸き(遅い笑)、無事9公演完走に祝杯です。
この状況下にオーケストラ演奏付きで観客も入れて計9回予定通り開催は喜ばしく、東バ、NBA、牧、シティなど関東圏のバレエ団冬公演も予定通り開催できたもよう。
安堵と同時に団体問わず、出演者スタッフの方々の徹底した感染防止対策の実践に頭が下がりました。
5年連続は恐らくは無いでしょうが仮にそうであるとしてもまだまだ舞台開催が困難な年となるであろう2021年、新鮮味あるキャストも交えてならば歓迎いたします。

※12月19日(土)夜公演には、母も参りました。忖度無し、NHKバレエの饗宴放送で観ただけの先入観で鑑賞に臨んだ感想は当ブログ恒例のお正月ぐうたら日記にて紹介予定でおります。



この日は帰り、大学の後輩と食事へ。2017年のイーグリング版くるみ新国立初演時にムンタ先輩が見つけてくださったお店です。店員さんもとても親切で素敵なお料理が揃う、作品の世界にそのまま浸れる雰囲気です。



大好きなダンサーによるねずみ王を観た後に食すチーズの美味しいことよ。



白ワインはドイツ産。そしてチーズの地図(駄洒落ではない笑)お皿が可愛らしい。店員さんがフランスにて購入されたとのこと。
フランスの地図を目にすると真っ先に見つけるのはトゥールーズ周辺です。今宵のねずみ王に敬意を。



くるみ割り人形鑑賞後に行く旨を予約時に伝えていたためか赤ワインもドイツ産を出してくださり、後輩はお洒落な葡萄ジュース。


自家製ソーセージ。ボリュームたっぷりで敷かれたマッシュポテトが非常に滑らか。



お店入口のツリー。



オーナメントには青いくるみ割り人形も。



後半日程、夜公演前にマエストロへ。くるみ割り人形がお出迎え



スパークリングワインの黄金色、グラスの形も1幕パーティーを彷彿。



降り積もる雪に重なるシュレッドチーズが乗った牡蠣パスタ。クリームソースに牡蠣の出汁が行き渡っていていくらでも口に入りそうです。チーズがふわりと溶けていき、そして管理人はこの日(後半土曜日)の夜の王子に蕩けるのであった。



後半日程土曜日夜公演の王子、和顔でいらっしゃるためか日本酒スパークリングワインでのお祝いも合い、余韻に浸れます笑。


後輩がくれた、ホットワイン。シナモンやクローブが入っていて温まります。
スパイスイープラスにて、渡邊さんによるトゥールーズのキャピトル・バレエ在籍時の劇場前クリスマスマーケットの思い出をインタビューにては拝読したばかりでしたので
カップの柄もタイムリー!自宅にてマーケット気分です。
年の瀬はしばしば大阪の川上恵子バレエスクール発表会に出向き 、梅田スカイビル前のクリスマスマーケットに行っておりましたため懐かしさも込み上げます。



締め括りはこちらで。今年も大変お世話になったお店にて9公演無事完走に祝杯。新国立劇場の皆様、2020年もありがとうございました。


※次回は2020年バレエ総括。今年は大晦日よりみ早めにできるか、いや、管理人仕事おさめは30日のため
また慌ただしい有り様になるかもしれませんがオンライン配信も含め綴って参ります。

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