2020年6月14日日曜日

【お茶の間観劇】1984年6月11日収録 アメリカンバレエシアター アットザメット ミックス・ビル




1984年6月11日に収録された、メトロポリタンオペラハウスでのアメリカンバレエシアターミックス・ビルを紹介いたします。
動画サイトにも作品ごとに経緯不明なるアップがされていますが、DVDもまだ何処かでは入手できそうなため少しでもご興味を持たれましたら購入して損はありません。
かれこれ30年ほど前から繰り返し観ているやや古めながらも今観ても色褪せない魅力が凝縮した映像で、どこかの機会で綴りたいと思ってはおりましたが
劇場での鑑賞や講座受講など日々充実していたため市販化された映像の紹介にまでは手が回らず。
この機会に、また開催が36年前の3日前でしたのでこじ付け感がある点は目を瞑んでいただけますと幸いでございます。
是非ご覧いただきたいお勧めの映像ですので紹介は簡潔に済ませますが悪しからず。但しいつも以上に独断と偏見が多いかもしれません。





『レ・シルフィード』
振付:ミハイル・フォーキン
音楽:フレデリック・ショパン

マリアーナ・チェルカスキー
シンシア・ハーヴェイ
シェリル・イエガー
ミハイル・バリシニコフ

シルフィードたちが巧者集団で、妖精らしい軽やかさがありつつも凛然として揃っているクールな雰囲気。
1978年のガラとは衣装が変わり独立提灯袖となったため、肩から腕の部分が見えるようになった点も
華奢なフォルムの一層の引き立ちに効果をもたらしたと思えます。
微笑みを湛えて大らかに舞い、パステル画を彷彿させるマリインスキーの『ショピニアーナ』と比較するといたく面白く
音楽構成と振付は同じであってもあたかも全然違う作品を観ている心持ちにさせられ、
どちらが良いか否かではなく各カンパニーの持ち味や表現はそれぞれで、双方甲乙付けがたい魅力があると感じ入ります。
チュチュのたなびきと連動しての柔らかに弧を描く腕運びが見事なチェルカスキー
派手な技巧は無しでも、音楽と溶け合うようなロマンティックな趣きも似合うバリシニコフにも引き込まれます。
恐らくは3、40年前のABT得意演目で節目やミックスプログラム時には頻繁に上演されていたのか完成度が実に高く、私の中では『レ・シルフィード』の決定版。
ー 演奏が澄み切った空気の中を流れるように細やかで清々しく、誠に上品な点も気に入っております。
冒頭では夜のメトロポリタンオペラハウス前のライトアップされた噴水や内部の煌々と輝くシャンデリアも映し出され、METに入場した気持ちで鑑賞できる点も嬉しい。


シルヴィアーパ・ド・ドゥー
振付:ジョージ・バランシン
音楽:レオ・ドリーブ

マーティン・ヴァン・ハメル
パトリック・ビッセル

派手な要素を求めず振付、音楽に忠実に踊るハメルの折り目正しさが目に胸にじわりと響き、お手本を眺めているかのよう。
ビッセルは『ドン・キホーテ』におけるバリシニコフのバジルとガンを飛ばし合いながら笑、火花を散らしていたエスパーダの印象しかありませんでしたが
やや前のめりな音取りが一瞬気にはなるものの気づけば演奏とぴたりと合い、ダイナミック且つさらりと端正。
パートナーシップも頗る良く、特にアダージオ後半にてハメルが斜めに身体を傾けながらの回転では
遠心力までもが音楽がぴたりと噛み合いビッセルのサポートの上手さが光るところの1つ。
ブルーを基調にピンクの小花や銀色模様に彩られたゴージャスで煌びやかな衣装も必見です。
何度も観ているパ・ド・ドゥですが、ダンサー、踊り、衣装、音楽すべてが調和していてこれまた私の中の決定版でございます。
1996年の第1回マラーホフの贈り物にて、アマンダ・マッケローとマラーホフが踊っていますが、すっきりしたデザインの衣装を着用していました。
後に劇場で鑑賞したアシュトン版やビントレー版、ノイマイヤー版も良作であるとは思いますが、
轟いていた雷鳴がおさまり打って変わって寄せては返す漣を思わせる曲調へと変化したところでクラシカルな装いの2人が登場する
独立したグラン・パ・ド・ドゥ形式が管理人、この映像を初めて観たときから好みでございます。


トライアド
振付:ケネス・マクミラン
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

ロバート・ラ・フォス
ヨハン・レンヴァル
アマンダ・マッケロー

2人の双子の青年と1人の女性の三角関係と取り巻く青年たちを描いているらしいがすぐさま明確には分からず。
しかしプロコフィエフの劈くヴァイオリンの音色が渦巻く思惑や良からぬ関係性を暗示していると窺え
身体を思い切り傾けたり、手を真っ直ぐに繋いだ青年の腕に干された布団の如くパタリと身体を折り曲げた状態で引き摺られたり
人体綾取りと名付けたくなる複雑に絡みながらの造形といったマクミラン特有の振付が散りばめられ、陰鬱な作品であっても気づけば堪能。
衣装はシンプルで、マッケローはピンク色のレオタードに切り込みの多いスカート、男性陣は赤系マーブル模様の総タイツです。
気まぐれなのか鬱っぽさがあるのか掴みどころのない女性をマッケローが好演。


パキータ
改訂振付:ナタリア・マカロワ
音楽:ルートヴィヒ・ミンクス

シンシア・グレゴリー
フェルナンド・ブフォネス

レスリー・ブラウン、スーザン・ジャフィ、シンシア・ハーヴェイ、ディードラ・カーベリー

タイトルロールのグレゴリーの型を厳守した踊りにこれまた恍惚と魅了され、とにかく肩から腕にかけてのラインが崩れず
また余計なことはせずとも深紅のバラがぱっと花咲くような舞台姿、経過年月問わず記憶に残り続けると確信。
ブラウンの軽やか達者で抜群のコントロール力に、間延びを一切思わせぬ音楽を全身でたっぷり魅せるジャフィも唸らせ
ハーヴェイの優雅さを持たせつつ豪快な跳躍や軸のぶれぬ安定感から繰り出す職人級の連続回転も圧巻でした。
カーベリーの伸びやかで音楽にぴたりと嵌る踊りも心躍らせ、凄腕揃いであった1978年の『テーマとヴァリエーション』に比較すると
群舞はばらつきが目立ってはいたものの舞台を華々しく盛り立てていた印象。
対角線上に女性陣が勢揃いした中を堂々ゆったり登場するブフォネスも場に相応しい華や品、躍動感とエレガント魅力を備え
当たり前であるとは重々承知していてもグラン・パのリュシアンは相当な人物でないと務まらないと再確認。
来年2021年1月に新国立劇場バレエ団が18年ぶりに再演を予定しており、配役が今から気になるところです。

※ケース記載の順番と異なり、私が観る限りヴァリエーションの順序は1ブラウン、2ジャフィー、3ハーヴェイ、4カーベリーに見えましたが
違っていたら申し訳ございません。


いつも以上に勝手な気ままに綴りまして失礼いたしました。同時期の1980年代から1990年頃にかけて鑑賞した
テレビ放送録画を含む映像も当時から紹介したいものは山々ございますが、いかんせんその頃はインターネットも無く
またちょうど就労もせず学校へも行かずな時期でしたので鑑賞の感想を語り合う知り合いもおらず、30年の時を超えて現在に至ってしまいました。
当ブログでもまだ触れていないながら何処かでの紹介を考えている映像としては、ベスメルトノワやヴァシュチェンコの『レ・シルフィード』や
ムハメドフの『スパルタクス』抜粋上演したボリショイのロンドン公演や、キエフバレエのアンナ・クシネリョーワ主演『眠れる森の美女』
ガリーナ・メゼンツェワとコンスタンチン・ザクリンスキー主演レニングラードバレエ(当時)『白鳥の湖』など色々ございます。
ただそうこう言っているうちに管理人の劇場鑑賞復帰(但し映画)も近づいて参りましたので、タイミングを見つつ紹介して参りたいと思っております。

2 件のコメント:

ひふみ さんのコメント...

70年代の後半から90年代の初めまで、海外バレエ団の来日公演は片っ端から観ていましたので、
懐かしいダンサーの名前が沢山で出てきまして、感慨深さを抱きました。
レーザーディスクも懐かしいですね。
こういうブログも楽しませて頂いております。
また、楽しみにしております。

管理人 さんのコメント...

ひふみ様

こんにちは。お読みいただきありがとうございます。
綺羅星の如くスター達が続々と来日した時期ですね。
さぞかし上質な、選ばれしダンサーたちの舞台が心に刻まれていることと思います。

近年は記者会見も金屏風の前では行わなくなったり、時代の変遷を感じますね。
レーザーディスク、大きくジャケットも立派で2枚組はかなりの重量感がありました笑。
昔は出回る映像が少ない分、良作の中の良作が選ばれ私たちは目にしていましたよね。

40年近く前の話が続き反応が気になっておりましたが
少しでも前向きなお答えをいただき励みになりました。

来週からは2020年の映像にも触れる予定でおります!