2020年6月17日水曜日

【お茶の間観劇】ペルミ・バレエ団 ミロシニチェンコ版『ラ・バヤデール』

ペルミ・バレエ団が配信していたアレクセイ・ミロシニチェンコ版『ラ・バヤデール』を鑑賞いたしました。
バレエ学校のドキュメンタリーは見たことはありましたが(リュドミラ・サハロワ先生が恐ろしかった印象ぐらいしかないが)初めて鑑賞するバレエ団です。
ミロシニチェンコは映画『マチルダ』での振付も担当していたバレエ団首席振付家とのこと。



メイキングドキュメンタリー。主演者へのインタビューやインド人エキストラを交えたリハーサルの様子も映されています。


ニキヤ:ナタリア・オシポワ
ソロル:ウラディスラフ・ラントラートフ
ガムザッティ:マリーヤ・アレクサンドロワ


オシポワは失礼ながらニキヤのイメージが当初は沸かず、半ば恐る恐る鑑賞いたしましたが(失礼)
抑えてはいても反骨心露わな表情が前面に出ていてこれはこれで魅力ある強者舞姫。かえって大僧正の心をくすぐってしまうのでろうと推察です。
しかしガムザッティとの修羅場では身分財力全てにおいて勝ち目がないと俯きなら悟り、瞬時にして悲哀感に包まれた姿に祈る思いで見入ってしまったほど。
花籠は随分とブンブン振り回していた印象ですが、とにもかくにもパワフルで四肢の可動の激しさがそのまま執念の滲みに繋がっていたもよう。
影となったあとも儚さは無く、弾むように鋭く踊り熱や体温を感じさせ続けていた姿は寧ろソロルを引っ張っていた何処までも頼もしいニキヤでした。
順番前後して登場時、被っていたベールが頭から外れてしまい冷や冷やしましたが肩に乗せたまま維持。
顔が見えぬよう真下に折り曲げ、状況を察した大僧正も肩から力を込めて取り外し、ニキヤが顔を上げるのを今か今かと待ち侘びる心も伝わり見事な咄嗟の判断でした。

ラントラートフのソロルは登場時からお人好しそうな雰囲気でもう少し見るからに戦士らしさがある方が好みですが
強気過ぎる女性2人の板挟みになる姿が絵になるのも説得力があると言い聞かせた次第。
記憶が正しければガムザッティとに対面時に剥ぎ取った虎の皮らしきものを肩から掛けていましたが
米国アニメ版の熊の物語のキャラクターな色合いで思わず笑いが込み上げ、
その後ニキヤが舞を披露する1幕後半では隅っこの壁に隠れて項垂れている有り様で、情けなさに更なる拍車をかける効果がありました。(笑)
白っぽい衣装であった点も猛々しい戦士ではなくすっきり品のある人物に見せていたのかもしれません。

大きな見どころであったのがアレクサンドロワのガムザッティ。ただ怖い、意地悪ではなく将来は藩をしっかり治め繁栄させるであろう
知性や政治能力にも長けていそうな女性で、登場での美しさを見せびらかそうとせず落ち着いた足取り、表情で現れる姿から明らかでした。
赤い模様を彩った衣装や蝶を模した金色の髪飾りも似合い、最前列からでも見え辛い画廊に展示されているサイズ館の小さ過ぎるソロルの肖像画を目にしても
いかに魅了される男性であるかと全身で表現。観客に伝えてくださいました。
2幕冒頭ではピンク色の長い裾のある衣装でメイクも濃いめでまさに『ムトゥ 踊るマハラジャ』あたりに登場するインド映画の王女様。
その後はチュチュに着替え、久々に大作にてクラシック・バレエを踊るアレクサンドロワを目にでき
嘗ては天を突き刺すような潔い脚先に驚愕したイタリアンフェッテを始め技術は少々衰えは否めなかったものの
場の支配力や絢爛な空間にて祝福されるに相応しい王女っぷりは健在。感激もひとしおでした。
ニキヤのソロではガムザッティは姿勢崩さずじっと見据え、ソロルは下げたままの顔を上げられず笑。2人の力関係が明確過ぎます。

立ち役の従者やニキヤのお付きにインド人エキストラを採用した点も話題になったようですが、
映像のせいかさほど気に留まらず。ただ生で劇場で鑑賞したら壮観であったかもしれません。それよりも、インド人の視点からこの作品の感じ方を知りたいのだが笑。
(2006年のボリショイ来日公演では近くにインド系のご家族の観客がいらしていたが、時々笑いながら鑑賞していました)

気にかかったのはパ・ダクションと影たちの衣装がよく似た形状、色合いでもう少し違いがあれば尚良かった印象。
チュチュは全体が大きく膝にかかりそうな丈でプティパ作品の世界初演時代を彷彿させ、ボリュームがあり過ぎる気もいたしました。
影の群舞は手に汗を握らせるダンサーやばらつきもかなりありましたが、チュチュの雲海と化した光景はなかなかの迫力。

2006年のボリショイ来日公演におけるガムザッティ役でアレクサンドロワの虜となり早14年。好きな海外の女性ダンサーと聞かれたら最初に名を挙げ
プロフィールにも明記しているほどの存在になるきっかけとなった役柄を2014年以来久々に鑑賞でき、幸運でございました。
またオシポワのニキヤに対抗できるダンサーは恐らくは数少なく笑、アレクサンドロワとマリアネラ・ヌニェスぐらいでしょう。
そして先述の2006年におけるアレクサンドロワのガムザッティ日本初お披露目当時はコール・ド・バレエに属しながらも
影のヴァリエーションで頭角を現していたオシポワ(他にも影トリオにはニクーリナやクリサノワ、コバヒーゼと宝庫状態であった)が
火花を超えて火山級の対決の実現映像の鑑賞にも喜びに浸った次第です。


インドの踊り(太鼓の踊り)ソリストをエンジン全開で務めていた宮原詩音さんのブログより、衣装の作りがよく分かる写真を載せてくださっています。
くす玉の例えに思わず納得。
https://ameblo.jp/miyahara-shion/entry-12430065365.html

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