2023年5月30日火曜日

チャコット代官山スタジオ特別講座初級レッスン




5月22日(月)、チャコット代官山にて特別講座初級を受講して参りました。講師は新国立劇場バレエ団プリンシパルの渡邊峻郁さんです。
チャコット代官山での受講は昨年のオープニング企画レッスン以来1年2ヶ月ぶり、
レッスン自体は2ヶ月ぶりで今年2回目。この度もズンドコドッスンと受講して参りました。
https://www.chacott-jp.com/lesson/studio/daikanyama/schedule/detail031388.html

前回は移転開店直後であった事情もあり、スタッフ含め全員がそわそわ様子を窺い合うように緊張している状況でしたが
あれから1年以上が経過し、通い慣れている方も多くいらしたのでしょう。前回と比較すると終始全体がだいぶリラックスした雰囲気であったように思えます。
渡邊さんは毎回どのレッスンでも優しく教えてくださるのは変わりなく(萎縮させる指導でしたら私は受講もしておりません笑)
受講者のレベルをよく見て内容をすぐ調整してくださったり、お手本も繰り返し何度も示してくださった上に
同じアンシェヌマンを何度か行ってから少し難しいものを取り入れてバージョンアップさせて楽しく次段階へ向かえるよう進めてくださるなど
相変わらず順番覚えられぬコンクールなら全国1位になるであろうレベルな私も安心し、信頼を寄せてこの度も受講できました。

教えてくださる踊る上でのポイントでは、はっとさせられることの連続でしたが特にバーのときに腕を伸ばし過ぎず
サークルを綺麗に描くようにとのお話は(恐らくこういう内容であったかと記憶)
手脚の短い典型的なずんぐり俵体型であるが故に何処もかしこも思い切り伸ばしたくなってしまい
少しでも長く見えるようにせねばと焦りがちな私の脳に心に瞬時に浸透いたしました。

そして今回私の中では珍しい体験であった点が2つ、まずCD使用のレッスンであったこと。
誠に贅沢人間と思われるのを承知で申し上げますと、私は10年前の再開以降レッスン回数は現在約25回で
(つまり年に2回目程度、年間鑑賞回数のおよそ40分の1。ほんまに習っているんかとのご指摘はよく受けますがあくまでバレエは鑑賞中心で生きとります汗)
うちCD利用レッスンは2回。つまり大半がピアノ伴奏つきでのレッスン受講なのです。
子供の頃は当然ピアノ伴奏なんぞ夢のまた夢でCD使用もなく、私の時代ですから蓄音機でレコードか否かはご想像にお任せするとして
CD使用時のレッスンがどんなものであるか、想像しづらかったのでございます。
結果、CDならではの魅力も発見。選曲が伴奏者に任され、大概は教師も次に流れる曲が分からないピアノ伴奏レッスンと異なり、
CDの場合手元に曲目が明記或いはざっとかけながらの確認もできますから
開始前に音楽の特徴やこだわり部分⁉の解説が付き、よりイメージしやすくなったのです。
以前受講時のCD利用レッスンでの先生はそういった解説は無く、勿論先生によりきりではあると思いますが
プロコフィエフの『ロミオとジュリエット』や『シンデレラ』といった2年前のダンスマガジンにおける好きなバレエ音楽のインタビューで
渡邊さんが挙げていらした作品の曲が何曲も収録され、つい解説にも力をお入れになっていたのかもしれません。聞き入ってしまいました。

ちなみに他にも我がツボを押し続ける好みな曲揃いで、気になって終了後に確認したところ
今夏大阪と東京でコンサートを開催されるウィーン国立バレエピアニストの滝澤志野さんのCDであったようです。
写真では清楚な印象のあるお姿からは良い意味で想像がつかぬ力強いタッチな演奏で、特に興奮を抑えるのが困難になってしまうほど驚きを覚えたのが
エイフマン版『アンナ・カレーニナ』第2幕でのアンナがいよいよ追い詰められて行く群舞の見せ場の悲愴、そして『ライモンダ』第2幕帰還のヴァリエーション。
ともに大変思い入れがあり、前者を聴くともう渡邊さんが例えTシャツをお召しになっていても
実現はしていなくてもヴロンスキーにしか見えずもうグランバットマンどころではありません。(我が夢配役を再び描画してしまった、すみません)
後者は関東では1人いるかいないかであろう一番好きなヴァリエーションで、当たり前ですが踊ったことはございませんが
例えバーでもこの曲でできたのは何だか夢が1つ叶った気分。公演でも発表会でも抜粋でこの部分のみ踊られることは滅多になくだいぶマイナーな曲かもしれません。
ただ鑑賞中心者及び講師の舞台見過ぎているバレエ愛好者あるあるで、この曲を聴いていると
そろそろジャンは舞台袖でマントの装着をなさっている頃合いかと2年前の6月へ記憶が飛んでまたもや想像が脳内大旋回。
今は先生です。要集中とは分かってはいても、思い出してしまってああ。
そうでした、カウント取りつつお手本見せつつ更にはこの曲を音程しっかりと歌っていらした渡邊さんの歌唱力にも恐れ入った次第です。
この曲、教師でも歌える方はそういらっしゃらないかと思っております。それにしても、我が最たるお気に入りヴァリエーション曲しかも知名度は高くはなさそうな曲を
渡邊さんが歌いながらバーにて教えてくださるとは、今月の運を使い果たしたとしか思えません。
他にも『ライモンダ』夢の場のワルツ、『オネーギン』、『白鳥の湖』幕開け等、CD購入を考えてしまうほど耳をずっと澄ませていたくなる曲目ばかりでした。

それから珍しい体験の2つめ、平日の退勤後のレッスンであったこと。人生2度目でございました。
何しろ私にとってレッスンは年間大行事な位置づけで、行く1ヶ月以上前から大騒ぎ。
特に3年前までは昼頃からの開始であっても始発の電車に乗り、特急に乗り換え、
下車すればエスカレーターの立ち位置は右側になる文化へ足を踏み入れておりましたので(どこまで行ってんねんとお思いになるでしょうが)
レッスンといえば休日必須であったのです。ですから仕事帰りにレッスンなんて可能なのか、
日頃NHKの首都圏ニュース845を自宅でのんびりと脳みそも眠りつつ視聴している真っ只中な時間帯にセンターレッスンなんぞできるのかな些か不安もあったのでした。
そこで、せめてもの安心材料として急遽当日は出勤用鞄をレッスン時に愛用の鞄に変えて従業員証や定期券等も入れ替えて出勤。
また渡邊さんのレッスン受講も7ヶ月ぶりで怯えさせるような教え方は決してなさらないと分かってはいても
午後3時を過ぎると緊張が襲い、4時を過ぎると、閻魔大王のような怒らせ方したらどうしようかと
『夏の夜の夢』におけるパックにお仕置きする強面のオーベロンが他室への書類届け帰りの廊下でふと過ぎり
退勤時には心配そうな顔で警備員さんに挨拶してしまい、勤務中に何かあったかと誤解を招いていたでしょうが
(勤務先、コンプライアンス等かなりきちんとしていますのでご心配なく汗。それより昨今の出来事から芸術界芸能界の心配が尽きませんが)
和やか優しい教え方でホッと一安心でございました。
センターにて、高い背丈でのふわり跳躍を真後ろで拝見すると4回のオーベロン思い出し再びニンマリが止まらず。
前日にもジュエルズストーリー『ラフマニノフの旋律』があった中、月曜日夜にありがとうございました。
2ヶ月ぶりの有酸素運動ながら筋肉痛にも全くならず、疲れることも一切無く、楽しく気持ち良いレッスンでした。
この日の渋谷駅は東横線側もマークシティ方面もアイドルのグループの写真ポスターなるものが通路沿いに何点も登場し、撮影者も多数。
世間の方々の趣味は様々であると感じつつ、レッスンでの幸溢れる時間を刻んだ胸を張って、乗り換えへ向かった人生2度目の仕事帰りレッスンでございました。




アートオブジェな外観。



帰り、乗り換え駅にてふと思い出し、以前仕事帰りに立ち寄ったお店へ。レッスン後はビールに限る。
後日何名かの方とレッスンウェアの話題になり、歩くコンクリ、動く暗幕、可動式土壁と言わんばかりの地味目の色合い中心の私服着用者な私が選ぶとは思えない
パステルカラーなウェアの着用に驚いたとのこと。レッスンが非日常なもので、例え膨張色でも普段とはがらりと変えたことをやってみたい気持ちに駆られるのかもしれません。
着用物も最小限で所謂大人バレエらしくなく、年甲斐もなく小学生の頃とほぼ変わらん格好でやっております。
いかんせん重たいズンドコドッスンな身体なもので、可能な限り嵩増しをしたくない切実な事情がございます。



客足絶えぬお店でビールとまろやか担々麺!スープとともに幸せが沁み渡ります。ああ。

2023年5月26日金曜日

予想よりもバレエシーン大充実   Jewels Story ラフマニノフの旋律 5月21日(日)









5月21日(日)、渋谷の大和田さくらホールでJewels Story ラフマニノフの旋律を観て参りました。
https://jewels1000toeshoes.com/performance/


ラフマニノフ:陳内将
ナターリヤ:伶美うらら
チャイコフスキー:佐賀龍彦(LE VELVETS)
ボルコフ:北村健人 

バレエシーン
木村優里(新国立劇場バレエ団 プリンシパル)
渡邊峻郁(新国立劇場バレエ団 プリンシパル)
池田理沙子(新国立劇場バレエ団 ファースト・ソリスト)
奥田花純(新国立劇場バレエ団 ソリスト)
広瀬 碧(新国立劇場バレエ団 ファースト・アーティスト)
益田裕子(新国立劇場バレエ団 ファースト・アーティスト)

語り
さひがしジュンペイ
吉田智美



詳しくは把握し切れてはおりませんが、牧阿佐美バレヱ団とKバレエカンパニーでも活躍された篠宮佑一さんが代表を務めていらっしゃる団体で
宝石の企画販売やコンクールにワークショップ、レッスン、そして多分野を融合させた舞台制作も行っているもようです。
Jewels Storyシリーズもテーマを変え、回数を重ねているとのこと。LE VELVETSは牧バレヱとの共演舞台もありましたから、繋がりが続いて今の形にもなっているのかもしれません。
今回はラフマニノフの生涯を描いた作品で、果たしてどんなものになるのか、
朗読や歌の入り方、お目当てのバレエシーンの割合まで全く見当つかぬまま鑑賞に臨んだわけですが
単刀直入に申すと予想よりも見応えある内容且つバレエシーンのボリュームの多さにも嬉しい悲鳴でございました。

まず語りも用いて時系列でラフマニノフの生涯を辿り、子供時代のラフマニノフの様子や語りのさひがしさんと吉田さんがラフマニノフの両親も兼任。
ノヴゴロドで過ごした子供時代に音楽に目覚めるまでの経緯やチャイコフスキーとの出会い、音楽院への入学、挫折、また成長したラフマニノフの陣内さんの
子供時代の回想シーンでも度々子供ラフマニノフも登場して語り合う場面も挿入され、子供時代に抱いた瑞々しい感情を再度抱いていきます。
変わりゆく国家に翻弄されながらも試練を乗り越えていきながらの名曲完成への道のりも分かりやすい構成でした。
1幕の中盤にラフマニノフとチャイコフスキーが星空を眺めながら語らう場面にて
歌い出したのが『見上げてごらん夜の星を』であったのは最大の衝撃でしたが汗(時代の先取り或いは時空の超越か)
ロシア史やソ連史も同時に学べ、その辺りの時代や内容に興味津々な私にとっては惹きつけるテーマと思えた次第です。

バレエシーンは全部で3箇所であったかと記憶しており、1幕にて、ラフマニノフがチャイコフスキーの音楽に耳を傾ける場にて
ジュエルズ主催のコンクールで入賞されたジュニア年代の方々が葦笛の踊りを披露。
クラシックにコンテンポラリーな振付も盛り込まれ、なかなかユニークな演出でした。
そして1幕の最後に大作『ピアノ協奏曲第2番』を書き上げましたとの紹介後に曲が流れる中で新国立劇場バレエ団の面々がやっとこさ登場。
木村さん、渡邊さんの2人を中心に置き、周囲を池田さん、奥田さん、益田さん、広瀬さんの4人がアンサンブルとして固めた構成で
パ・ド・ドゥではあっても木村さんに負担が極力かからないようとにかく渡邊さんが1人で踊りまくる振付でございます。
加えてバレエにおけるラフマニノフという役設定もあったのか、第一楽章を丸まる使って繊細で内向的なラフマニノフの心情をつむじ風か
場合によっては竜巻の如き回転も含むハイテクニックなダンスで披露されました。
衣装は木村さんが黒いノースリーブのワンピース、アンサンブルが紺色系だったか、
渡邊さんは光沢のあるコバルトブルーを濃いめにしたようなお色のシャツに黒いパンツスタイルで至ってシンプル。
しかし、一時は渡邊さんの座長公演と化したともいえる壮大な音楽に負けぬスケールのある踊りで魅せ、バレエ目当ては少数であった客席も沸き立ち喝采に包まれ幕間へ。

それから2幕では『パガニーニの主題による狂詩曲』が完成しましたとの紹介後に曲が流れる中にチーム新国が再登場。
ピアノ協奏曲のときと似た配置で、アンサンブルのキビキビした踊りが気持ち良く、髪型もハーフアップからまとめ髪に変わっていて雰囲気も一変。
そしてここでも木村さん渡邊さんのパ・ド・ドゥが主軸となるも、ダイナミックなリフトもこなしつつ再びとにかく渡邊さんが1人で踊りまくる振付。
何もかもを洗い流すような大河を思わす旋律にのせて溶け合う美しい渡邊さんを誠に観やすいど真ん中なお席から拝見でき、至福なひとときでございました。
お正月の『くるみ割り人形』以来久々に目にした木村さんの変わらぬ麗しさ、オーラも健在で
少し身体つきが変わった印象もあれど、オペラパレス公演での復帰も待ち侘びております。

最初はどんな舞台になるのか、ジュエルズさんのコンセプトも未だよくは把握できておらぬ状態ですが
バレエシーンの取り入れ方に不自然さがなかったのは好印象。
公演名が『ラフマニノフの旋律』ですから何処かしらに代表曲をたっぷり聴かせる場面挿入が必須であり
しかし音楽そのものをたっぷり聴かせるには朗読や歌は入れられず、されどただ音楽流すだけでは舞台としての成立は難しい。
そうなるとバレエが最適な表現手段であると気づかされた次第です。また両曲ともクラシック通ではなくてもよく知られた曲であり
特にピアノ協奏曲第2番はフィギュアスケートやテレビドラマでも知名度の高さは一気に加速。生半可な演出では観客もしらけてしまう危険性もあったことでしょう。
新国立の面々でしたら安心ですし、中でも音楽を聴かせながらも起伏に富んだ曲調を自在に体現し、更に場面のスケールをぐっと膨らませ
品性を高めてくださった中心位置担当の渡邊さんは計り知れない貢献をされ、大活躍でいらっしゃいました。

恐らくは『ピアノ協奏曲第2番』をバレエで観るのは初、『パガニーニの主題による狂詩曲』はアシュトンの『ラプソディー』や
昨年Kバレエのオプトで上演された森優貴さん振付Petite Maison(プティ・メゾン)"小さな家"、
それから2012年に出演者全員が男性ダンサーで構成された大阪でのPDA(Professional Dancer's Association)での
篠原聖一さん振付XXIV(読み方分からず汗)にて鑑賞しておりますが、少人数でほぼ全編まではいかずとも聴き応えある抜粋で踊り切る演出の鑑賞は初。
いくら広くはない舞台とはいえ、 音楽をリードするくらいの勢いや迫力で場面を成立させた振付者、出演者の手腕に驚かされました。

最後はミュージカル路線な終わり方なのか、一部出演者が挨拶。渡邊さん、木村さんもバレエシーン出演者の代表としてマイクを持って挨拶され
基本舞台上では声を出さない芸術分野に従事されていながらもスピーチされました。
木村さんは久々に舞台に立てた喜びを語り才能の意味合いについて力説され(確か)、渡邊さんは出演者の方々を引き立てる内容を一生懸命お話しになり、
ついさっきまで上演中は無言であった(バレエですから当然ですが)お2人の声が発せられるとびっくりした観客もいらしたかもしれませんが大きな拍手で称えられていました。
お2人が観衆の前でお話しになる姿を目にすると5年前の『眠れる森の美女』初日終演後の着物トークショーにゲストでいらしたときの日も思い出し、
あの日も筋金入りの新国立好きは圧倒的少数であった状況下においてもにこやかに真摯な姿勢で
バレエの魅力を語ってくださったお2人の話術に恐れ入った記憶がすぐさま脳裏を通過。懐かしい出来事でございます。

背景は映像を駆使し、ノブゴロドののどかな自然風景や赤の広場、血の日曜日事件など名所や歴史に残る事件を映し出しながらの演出。
赤の広場は遠方に聖ワシリー寺院が聳え石畳が続く映し方で、ちょうどボルコフが立っていた辺りに私も立っての記念撮影やら
ナターリアの家の調度品が赤の広場やボリショイ劇場からも徒歩圏内にあった
19世紀の建物を改装した宿泊先かのホテルの内装に似ていた等、我がモスクワ滞在記憶が思い起こされました。




予想よりはバレエシーンたっぷりで楽しく鑑賞した余韻に浸る。



帰りはロシアの思い出シリーズ、お寿司。モスクワで食しました。イクラが宝石の如くキラキラ。本物の宝石には手が届かぬ私ですが。



世界3大珍味っぽい3貫セット。渡航前、キャビアの押し売りに気をつけるようガイドブックに明記されていて、サンクトペテルブルクの空港では遭遇した人がいたらしい。
ひやひやしながら渡航するもモスクワでは遭わずに済んだが、現在はどんな状況なのでしょうか。シェレメチェボ第2空港のプレハブのような通路も今は綺麗になったでしょうか。

2023年5月23日火曜日

バーに新たなお客さん ロックバレエ2023 ROCK BALLET with QUEEN 5月17日(水)





5月17日(水)、ロックバレエ2023「ROCK BALLET with QUEEN」を観て参りました。
https://www.dancersweb.net/event


振付・出演:福田圭吾 出演:
井澤駿
今井智也
菊地研
長瀬直義
二山治雄
米沢唯
ピアノ:壺阪健登


2021年7月の初演に続き鑑賞。私のようなクイーン不精通者でも楽しめるお馴染みな曲にのせて
バーの客に扮したダンサー達が大競演。メンバーも変わり、また新鮮な味が注入されての再演です。
特に新加入の二山さんが以前は柔軟性が目立っていた姿から抑制力も出て見せ場を作り、筋力の強さにもびっくり。
ソロパートが続くかと思いきや他のダンサー達との絡みもあってもしかしたら女性とのデュエットは私は初めて目にしたかもしれません。
息がぴったりでノリも良く、愉しい気分に浸りました。

紅一点の米沢さんはKiller Queenでの闊歩から女王然としたオーラ、シャープでパワーのある踊りで瞬時に魅せ
意外と言ったら失礼だが切れ味たっぷりに見せてくださったのは今井さんで、久々に舞台姿を拝見。
身体を自在に操って一度の移動距離も長く、気づけば遠方に着地していた感すら募らせたほどです。
井澤さんは『マクベス』バンクフォーで示した存在感の記憶新しく、正統派王子様系よりも人間らしさのある役のほうが舞台に生かされるのか
男同士でガヤガヤと賑やかにつるんだり争い合いながら踊り競う場面におけるくっきりとした見せ方に自然と目が行きました。

福田さんによる舞台の束ね方も工夫が行き届いていると感じさせ、バーの店長として登場し
客達が踊る活躍を見守ったり、シェイカーでカクテルらしきものを作って提供するナチュラルな仕草や、時にはカウンターまで占拠する客をあしらったりと
店長大忙し。閉店後は売上計算をきっちりとしているに違いありません笑。
カウンターには多種なお酒が並びスパークリングワインもあったと思われ、アルコール好きの観察欲への刺激が止まりませんでした。
Bicycle Raceにのせてガラリと行う舞台転換でのスタッフへの指示も、福田さんご自身の自転車走行やソロも笑いを誘い
時間稼ぎでは全くない、寧ろ転換時間を最大限に生かしての場面遷移演出でした。
ただこの曲を聴くとどうしても思い出してしまうのは、クイーンの直訳替え歌を披露していた歌手の女王様による日本語歌詞。
Bicycle Raceはじーてんしゃ、Bohemian Rhapsodyは母さんー、と歌いたくなる私でございます。

壺阪さんによるピアノ演奏も自然と溶け込んでバーのスタイリッシュな様子を後押し。
ソロもあれば、RADIO GAGAで繰り出す全員集合の強力なの一斉のうねりまで、途切れを思わせぬ世界観が続き、
最後はほぼ総立ちなI Was Born To Love Youで終演。楽しさが止まらぬ休憩無しの1時間弱でした。




帰りは私もバーで一杯、ロックバレエのあとのロックのウイスキー。中野駅北側にて見つけたお店です。

2023年5月21日日曜日

コンサートは今回も雨だった スターダンサーズ・バレエ団『スコッチ・シンフォニー』『牧神の午後』『コンサート』5月13日(土)





5月13日(土)、スターダンサーズ・バレエ団『スコッチ・シンフォニー』『牧神の午後』『コンサート』を観て参りました。
https://www.sdballet.com/performances/2305_theconcert/


スコッチ・シンフォニー
振付:ジョージ・バランシン
音楽:F.メンデルスゾーン 交響曲第3番”スコットランド”

塩谷さんスコッチガールの余裕ある軽やかさ、中でも跳躍を繰り返しながら対角線上をどんどん進んでいく体幹の強さや技術の高さにこの度も驚愕。
身体で音楽を奏で響かせるような歯切れ良い踊りで赤いキルト衣装もキュートでございました。
機敏に揃うコール・ドにわくわくさせられ、背丈始め体型は皆様々であってもきちんと見せる、
手脚の角度を保つといった要素1つ1つが統一されていてアンサンブルの精度も申し分ない仕上がりでした。
アダージオでの渡辺恭子さんのすっと流れるような優雅さ、手脚が優しい余韻を残す踊りにもうっとり。
フィナーレでの一斉にあちこちから闊達に飛び出してはステップを刻んでいく展開も気分が昂ぶってゾクゾク。
素朴で牧歌的な幕開けから急速に重厚さを増していく終盤まで、音楽もまた何度も耳に触れたい構成です。


牧神の午後
振付:ジェローム・ロビンス
音楽:C.ドビュッシー”牧神の午後への前奏曲”

幕が開くと昼下がりの稽古場が現れ、シンプルだからこそ人物がくっきりと浮かび上がる光景にはっと惹かれます。
東真帆さんの光を浴びる歩き姿から不思議な稽古場に迷い込んだ心持ちとなり、
腰位置が高く真っ直ぐに伸びた脚が空間を優美に切っていくフォルムにも釘付け。少女な面影がまた魅力です。
林田翔平さんのねっとりとした動きから繰り出す熱さとの交差から2人の火照りが次第に表出され、その過程から目が離せずにいるうち瞬く間に終了。
2階席で鑑賞した前回と異なり席が1階舞台正面であったため、ドアを開けたら現れたこのお2人を茫然としながら眺めてしまったような感覚ももたらされました。


コンサート

振付:ジェローム・ロビンス
音楽:フレデリック・ショパン

軍隊ポロネーズで華々しく開幕。ジャンッジャジャン!な冒頭、心が躍らずにいられません。
劇場客席空間を描いた美術が現れ、絵には同じ方向に腰掛ける客席がずらり。
先述の通り今回は1階席であったため絵の観客達の延長線上に私も着席している気分となっての鑑賞です。
前回の初演時の緊迫感がぎりぎりのところでせめぎ合って一気に発火する笑いの連続に
間のタイミングや締まりある舞台展開にあっと驚かされたわけですが今回は更に上昇。
ピアニストの小池ちとせさんが登場し、ピアノについた埃を大量にはたく箇所からじわじわと笑い声が生じたままコンサート開始です。
中でもふてぶてしい林田翔平さん夫と喜入依里さんに妻よる、着席した状態での大胆な掛け合いはお腹が捩れそうになり、
ばしっと新聞を引っ叩いたりと攻撃性のある表現であっても嫌味に映らないのは振付や音楽との調和も厳守して臨んでいたからこそでしょう。
他の客も着席間違いや音の出るものでの迷惑行為を注意する仕草等、少しのズレが大コケの一因となる
恐ろしい作品であろうと思いますが、糸を張りに張ってパンッと弾かせるような身のこなしで皆さん見事。
本来のお姿は清楚を絵に描いたような渡辺恭子さんが小池さんのいるピアノに迫り、着席するも椅子だけ持ち出され、
空気椅子のままピアノに両腕をついて居眠りする不格好な姿も目に笑いの文字が刻まれました。下の部分を引き抜かれても宙に浮くだるま落としといったところ。

客席に目を向けるとリードしていたのは子供達の反応。とにかく躊躇することなく面白いと思えば正直に笑い、パフォーマンスの上質ぶりは上階席にも届いていたのか
上から笑いの雨が降り続いていた印象。子供は正直ですし、義理で笑ったり拍手もしたりしないはず。
子供向けプログラムでもなくどちらかといえば大人なプログラムかもしれませんが、上質な舞台は子供の心にもしっかり届くと再度思わせました。
特に、ミステイクワルツのメンバーが男性達とペアになって運ばれる間までが絶妙な仕上がりで笑いの雨がやまず。
布団のようにだらんと被さっている人もいれば、全身をパタンと折り曲げた格好の人もいたりと従来の美しいバレエではあり得ぬ、
重心や引き上げを無視しているであろうおかしなポーズとサポートのオンパレードですから
リフトする側もされる側も双方非常に危険を伴う運搬作業であろうと観察。しかしするすると横切り往復したと思いきや
終いにはワルツメンバーを並ばせて配置させ、しかし最後の最後とどめに顔の向きを変えたりとやる方も観るほうも気が抜けぬスリルな展開に天晴れです。
やがて始まるワルツにおける誰かが堂々と間違えては何時の間にか軌道修正もこなしていくずっこけ展開もいよいよ笑い声が最高潮へ。
そして皆で傘を持って集合するしっとり潤うレインの場面に移り、 そういえば前回の初演時も今回の再演時も両日ともに雨模様で
コンサートは今日も雨だった、な天候でございました。(外はこの頃止んでいたかも笑)
終盤、皆が蝶々となって飛び交う春らしい光景に最後は小池さんが巨大な虫取り網を両手に舞台中央へ走り込み、捕獲に奮闘しているうちに終演。
ピンと張り詰めた緊張感と思わず脱力してしまう笑いの両極端が上手く混ざり合う、お洒落でユーモア一杯な作品です。

3作品とも昨年秋と同じプログラムで、1年未満での随分と早い再演ながらどれもレベルの底上げが感じられ、
音楽もメンデルスゾーン、ドビュッシー、ピアノとオーケストラ混在なショパン、と耳でも楽しく
スタダン色の濃い公演を大満喫。『コンサート』は是非また近年中の再演をお待ちしております。




帰りは少し早い夕食のため新百合ケ丘駅前のお店へ。まずは白ワインで乾杯。



プログラム表紙は蝶々として浮遊するお2人。



春の季節メニュー、桜海老としらすの菜花ジェノベーゼスパゲッティレモンクリームソース。蝶々が飛んできそうな春らしい色合いです。
歯応えのあるパスタに、見本の写真よりもジェノベーゼソースたっぷり。
粘度のあるレモンバターソースをかけるとより味が濃いまろやかさとなり、ワインが進みました。

2023年5月18日木曜日

夢だけど夢じゃなかった 新国立劇場バレエ団シェイクスピア・ダブルビル『マクベス』『夏の夜の夢』4月29日(土祝)〜5月6日(土)





4月29日(土祝)〜5月6日(土)、新国立劇場バレエ団シェイクスピア・ダブルビル『マクベス』『夏の夜の夢』を計7回観て参りました。
今度は『夏の夜の夢』編です。(速報とかぶっている箇所もございます)
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/shakespeare-double-bill/



霧から現れたオーベロン。凛とした美しい妖精王です。








【振付】フレデリック・アシュトン
【音楽】フェリックス・メンデルスゾーン
【編曲】ジョン・ランチベリー
【美術・衣裳】デヴィッド・ウォーカー
【照明】ジョン・B・リード

【ティターニア】柴山紗帆(29, 2, 4, 6)、池田理沙子(30, 3, 5)
【オーベロン】渡邊峻郁(29, 2, 4, 6)、速水渉悟(30, 3, 5)
【パック】山田悠貴(29, 2, 4, 6)、石山 蓮(30, 3)、佐野和輝(5)
【ボトム】木下嘉人(29, 2, 4, 6)、福田圭吾(30, 3, 5)

豆の花の精:広瀬碧
蜘蛛の巣の精:朝枝尚子
芥子の種の精:直塚美穂
蛾の精:赤井綾乃 (29, 2, 4, 6)   廣川みくり(30, 3, 5)


柴山さんのティターニアは子供を連れて奥の階段からの登場から堂々たる女王な姿。やがてオーベロンと向かい合っての対峙でも
女王としてのプライドを滲ませて君臨し、こりゃ夫婦喧嘩でも負けそうにない気の強そう且つ高貴な立ち姿でした。
実は昨年12月のキャスト発表時、柴山さんのティターニアがどうも想像がつかず、
妖精達に埋もれてしまう心配や金髪の鬘不似合いの不安も持っていたものの大変失礼な予想を大反省。
前半のSongsにおいて、妖精達に囲まれても埋もれぬどころか率いる背筋や内側から放つ誇り高さの頼もしいこと。
ティターニアよりも4人のソリスト妖精達のほうが装飾や色も華やぐデザインであるにも関わらずです。
持ち前の美しい技術が一層磨かれた上に色気もたっぷりで、パキパキと角度の転換も素早いステップ後にソフトな香りが残り
ぎゅうぎゅう詰めな感じが全くせず身体で自然に、色めき立ちながら語っているように見えた点も驚きでした。そして金髪鬘も違和感なし。
ロバになったボトムとの掛け合いの弾ける喜びや互いに脚を差し出しながらの駆け引きも脚から色気たっぷりで
いよいよ恋心が頂点に達したときのロバ耳を胸にぎゅっと当てる仕草が何ともエロティック。しかし品もあり、女王様の気まぐれな性分も憎めずです。

渡邊さんのオーベロンは威厳を備え、深い森の木々に囲まれても王として君臨する存在感の大きなこと。
月夜を背景に客席に背を向けて両腕を掲げ広げていくさまのスケールに圧倒され、気高い凛然とした妖精王のお出ましでございます。
広大な森の主であるのは明らかで空気が瞬時に変わり、神秘的な光を舞台に、会場に照らしてくださいました。
ティターニアとの夫婦喧嘩では妖精達にも味方してもらえずに不機嫌になってしまう我儘な部分も、
都合よくパックを呼び出して妻への仕返し計画を発案するずる賢さも憎めぬチャーミングな王で
ティターニアがSongsを踊る様子を木陰からひっそり覗き見しつつ用意した花を持っていよいよ仕返し計画開始と言わんばかりにシメシメと企む表情といい
よからぬことを考える張り込み刑事或いは探偵に見え、妖精王な面の裏に潜むダメ夫の典型な一面と分かってはいても可笑しく笑いが込み上げて止まらずでした。
木陰からの覗き見は至るところに設定され、「オーベロンはミタ」なる佇まいを毎度楽しませてくださった夢のひとときでございます。

後半の見せ場スケルツォは王らしいパワーと妖精らしいふわふわ感兼備な妙技で魅了。2回目以降は更に規模が大きくなって
上階席から見るとコンパスの尺度が長くなるも強靭な軸を維持し、ギリギリまで拡張しつつ品位崩さぬ踊りで気高く舞台を支配なさっていた印象です。
そういえばスケルツォの中にて、ふわふわと木々を飛び交う妖精であるはずが重心を下にしながら深いプリエを繰り返す移動の振付があり
アシュトンの意図が知りたい箇所の1つ。映像を観てもダンサーによってプリエの深さも
さらりと或いはじっくりと行うか否かもまちまちでどれが正解かは分かりかねますが、
渡邊さんは深いプリエでじっくりポーズを取りつつ音に遅れずすぐさまふわりと立ち上がる踊り方を繰り返しなさっていて
上下の浮遊が一段とダイナミックに見え、ふわふわ感だけでないオーベロンの持つ自然現象をも操り突き動かす力強い面も覗けました。
私が直前に兵庫県赤穂市を訪れていた影響か、『ザ・カブキ』の由良之助にも見えたのは気のせいか笑。(鉢巻に和装、間違いなく似合うでしょう)

オーベロンのアプローチも日によって変わっていた点も一層惹きつけ、茶目っ気やいたずらな笑みでパックの呼び出しや絡みを展開させていた初日に比較し
2回目はお茶目度を薄めてどしっと構えて一段と神聖崇高な王となり、 背中の使い方も格段に大きく、後ろ姿の佇まいも支配者で
怒ると閻魔大王の如くおっかない。パックへのお仕置き蹴り上げや(体当たりや生々しい痛々しいものではないので念のため)
人差し指を立てて対角線上に進み出てパックに迫りながらの怒りっぷりはそのまま天候を変え雷を引き起こしそうな凄みで
火のついた矢を目から飛ばしていました。パックからしたら鬼上司以外何者でもないでしょう汗。それでも慕い続けているのは、
ダメ夫でもあり笑、都合の良い面や憎らしい面はあっても、そういう欠点も含めても、森を束ねる王としての魅力が上回るのでしょう。
騒動解決のため霧を起こした後の超絶技巧はパックのほうが賑やかな躍動があるかもしれませんが
霧起こしにおける、霧もびびって発生せざるを得ないほどの森全体が揺らぐような全身を低い位置から引き起こしながらの重厚感のあるマイムと言い
森を支配し締めているのはオーベロンであると一層納得できたひと幕です。

それから柴山さんの大化けと同様に驚かされたのは柴山さん渡邊さんペアの相性、パートナーシップ。
元々このお2人の並びは折り目正しい品があって好きな一方、初回2016年の『シンデレラ』や2021年『ライモンダ』、2022年『テーマとヴァリエーション』と
全幕や大作クラシックでの主演で組むと、何処かしら手に汗を握る場が面が出てきてしまっていたのです。
初回『シンデレラ』では柴山さんが終始大緊張してしまって渡邊さんがひたすら励まし祭りを行い(約6年半が経った今も忘れられず懐かしい)
『ライモンダ』は夢の場、『テーマとヴァリエーション』ではアダージオ部分で揃ってぎこちない様子となってしまい
淑やかな姫と凛然たる騎士、クラシカルな白が絵になる格式高さ、と両作品での並んだ立ち姿が
貴く品性ある眩さであっただけにリベンジの機会を待っているところでございます。
ですからキャスト発表時、嬉しい一方で夫婦喧嘩や騒動を経ての和解まで、2人の息の合い方がどう映るかだいぶ心配があったのは事実です。
ところがどっこい、最初の意地っ張りな夫婦喧嘩からは王族ではあっても現代社会で言うならば電気やガスの消し漏れを巡って言い争う夫婦にも当てはまりそうな
些細な事から鬱憤が蓄積した夫婦そのもので、思わず近所にこういう夫婦いそうと笑ってしまいそうな自然な2人にびっくり。
また踊りながらの喧嘩であり、2人が車のワイパーのように急斜に身体を交互に傾けたり、
背中合わせで回転しながらの子供の取り合いも4階席の隅から観ても迫力ある構図でお互いが一歩も引かない強気対決でした。誰も仲裁に入れないでしょう。
最後、和解するパ・ド・ドゥでは慈しみ合い互いに吸い付くような色気を出し今迄で一番息合う2人に大驚愕で
2人で音楽と溶け合い周りの妖精たちとの調和がまさに夢世界。魔法が解けて我に返りロバに恋した自身を恥じるティターニアに対して
優しく頷き受け止めるオーベロンの確固たる関係にときめきがまたもや急上昇。(仕掛けは夫の責任だがもう良いか笑)
オーベロンの力強くも優しい包容力でティターニアの身も心も解し、 するとティターニアは少し恥ずかしがりながらでも幸せそうに艶かしさまでもを漂わせ
突如入る繰り返される速いリフトでは無邪気な愛らしさも体現。
夫婦喧嘩や意見の食い違いはあれど、オーベロンはちょこっと意地悪な面もあれど笑
ティターニアは愛おしく守りたい妻であると伝わって2人して色気とほのかな官能美もあり、清らかに流れるような美しさで満たされました。

諸外国にはよりゴージャスで華々しいティターニアとオーベロンのペアはいるかもしれません。
されど柴山さん渡邊さんともに2人ともまずは王族らしい品格があり、そこから香り立つ色気があるのも共通。
だからこそ、騒動や喧嘩がめまぐるしく発生する森の中であっても格調高い世界の描画に成功し、
神秘的な絵で綴られた本を捲っていく心持ちにさせてくださったのでしょう。
取り合い喧嘩も、和解のパ・ド・ドゥも、姫と王子ではなく森を司る女王と王の風格十二分な気高い妖精夫婦でした。

渡邊さんについては2月の件もあり、当日キャスト表が出るまではヒヤヒヤで
客席に着いてふと舞台が目に留まると山本隆之さんとの並びを観たかったとは思い出してしまいましたが
180㎝の身体で王様な威厳に加えて俊敏なふわふわ妖精感もあり、妻に見放される間抜けな部分もあり、
オーベロンはミタなる木陰からの覗き見場面もさまになっていて妖精王の多面性を観察できた気分。そして初めてポスターメインモデルにもなりました涙。
渡邊オーベロンを4回観てこんな楽しい作品だったかと幸福に浸った春の大型連休2023でございます。

※まだ2人分しか綴っておらず、鈍行列車状態になってしまいました。新幹線とまではいかずとも、京王ライナーの速度を目指して以下急ぎます。

池田さんはティターニアにしては女王らしさが今一つ不足している印象が残ってしまい森の姫に見えてしまいましたが、きっと即位して間も無い女王と捉えております。
ただロバボトムとのじゃれ合いや奔放な魅力がいたく可愛らしく、ロバがトロトロとしてしまうのも納得。
Songsは初回は小さくまとまってしまった感もありましたが日毎に滑らかさや振り幅も効いていた印象です。
速水さんは初回は王族の長には見えず、こじんまりしてしまった感がありましたが3回目は身体の動きがより躍動してようやく王様に見えた次第。
月夜の晩に現れるところでの両腕の開き方も肩からしっかりと出していたと見て取れます。
またスケルツォにおける回転からの余裕ある止まり方、さらりと伸びるアラベスクも綺麗なポーズで決めていました。
パックに対しては怒り具合もそこまで怖くはなく、話はし易いであろうと森の日常生活を想像させます。
佇まいでの語りかけや森を支配する王族らしさは、きっと経験重ねていくうちに出てくることでしょう。
セカンド主役2人にはちょいと辛口になってしまいましたが、恐らく初日キャストの完成度の高さにたまげてしまった私が
勝手にハードルを高くしてしまい、鑑賞眼が鈍ってしまったのも一因です。

途中でキャスト追加になったパックは三者三様。山田さんは足腰が強靭でしかも背もかなりあるので
どの部分もガシッと力漲る残像を描いていた印象。怒ると閻魔大王並みにおっかないご主人様にも懲りない自信満々な愛嬌も印象に残っております。
ただ渡邊さんオーベロンと山田さんパックを観ていると、主と家来な関係と戦友同士な関係両面をはっきりと描いていて
先述の通りオーベロンの怒りはとことんおっかないが笑、いざ霧呼び起こしでは
オーベロンの呼びかけにリードされ、パックも懸命についていく強固な一体化でパワーは倍に。
時間軸戻って最初にパックを呼び出したときは2人してティターニア懲らしめにウハウハと浮かれている様子も見せ、
時と場合によって変化する関係性を存分に堪能できました。不変であるのはお互いの信頼感でしょう。
オペラパレス本公演では初の大役抜擢であろう石山さんは物怖じしないどころか輪郭くっきりとした踊りでみるみる楽しい方向へ導き物語描画。
石山さんの回は両日上階後方席で鑑賞していながら双眼鏡要らずな存在感で、音楽の盛り上がりの更に上を浮遊するように戯れ、
恋人達への仕掛けや客席への問いかけ、反応の受け取りも堂々なもの。踊るたびに太字の吹き出しが表れたように思えるほど、交通整理しつつも
騒動を大きくしてしまったり、失敗して落ち込んでしまったりと情景描写や牽引力も見事でした。
少々粗削りな部分はあれど、気にならないほどに楽しませてくださったパックです。
途中から追加キャストとして登場した佐野さんは最もワイルドな趣きで、着地でひやっとする場面は時折あれど
嬉々とした感情がそのままテクニックに乗っかって爆発する弾けっぷりが気持ち良く映りました。
スケルツォでの鋭い切り込みジャンプや竜巻な連続回転移動、恐れを知らぬ度胸の据わりっぷりも再度びっくりです。

ボトム2人も全く異なる造形で楽しませてくださり、木下さんは飄々と軽やか。ポワントで踊る冒頭、良い意味で履き慣れた女性ダンサーのエシャッペ?にしか見えず
ロバが愉快にギャロップしている様子が伝わってきました。ティターニアに対してはだいぶエロティックな迫りでお耳を胸元にスリスリ。
顔の傾げ方からして可愛らしく、されど危険な匂いもするロバさんでした。背中を樹木に摩らせる仕草も愛くるしい。
人間の姿に戻るもロバ時代の長い耳や樹木スリスリを振り返りながらまだロバが抜けきれないとぼけぶりも笑いを誘いました。
福田さんはエネルギッシュなボトムで、床からぐっと押し上げられるように爪先立ちして駆ける様子からそう見て取れたのかもしれません。
ティターニアを突如背中に乗せて走り出す箇所では掛け声が聞こえてきそうな力のこもった走り方でティターニアもさぞ満足であったことでしょう。
ちょこっとアダルトな柴山さんティターニアと木下さんボトム、パワー一杯な池田さんティターニアと福田さんボトム、組み合わせの相性も好ましかったと思えます。
それにしても、元はと言えばオーベロンの身勝手な仕業によってティターニアと愛を育んでしまい
魔法が解けフィナーレで再び1人で闊達に踊り出すといっときであれ妻と熱々な関係を結んでいたことにオーベロンから嫉妬され
つんと澄まされぶっきらぼうな表情でしか見つめてもらえないボトム、哀れです涙。
この後は元通り、個性豊か過ぎる職人仲間達と質素ながら睦まじい生活を送っていくことでしょう。
ちなみに私は西川慶さん扮する職人お爺さんが遠方席からは妖怪学者等肩書き多しの荒俣宏さんに見えたときもあり。
ロバに変身した職人仲間に仰天したときも愛用のメガネにくいっと触れながら案山子歩きで去っていく様子は毎度笑いの沼でした。
菊岡さんの出っ歯や西さんの旅人のような格好も忘れ難いお姿で、全員が恥を捨て切っていたであろう力演であったと思います。

騒動を彩る2組の恋人達両キャスト見応えがあり、下手すれば誰が誰に恋しているのか、どう誤解が生じているのか混乱しがちな状況も
騒動の展開が掴み易く、全員が達者であったからこそでしょう。加えて瀟洒な衣装や鬘もさまになっていて好印象でした。
度々起こる争いも踊りながらしかも大移動しながらの歯切れ良いテンポでの振付も豊富でつまりは芝居センスもテクニックも、
よく動く身体も揃っていなければ大崩れと化してしまう可能性もあり。それらの難所を両キャスト全員がクリアしていたと見受けております。
連日響き渡っていた子供の観客からの笑い声も、舞台進行の面白さの証でしょう。
中でも渡邊拓朗さんディミートリアス、中島さんライサンダーが寺田さんヘレナを巡って交互にリフトしては益々大騒ぎになっていく箇所の
スパスパっと整理されつつも顔の傾けや拒絶の僅かな間に至るまでピタリと音楽にも自然な騒がしさにも嵌っていた様子や
寺田さんと渡辺さんハーミアが爪先立ちでアチチュードを繰り返しながら対角線上を大胆に移動しビンタ大会を繰り広げるところも
2人の脚力や身のこなしの俊敏さに驚かされ、争っているはずが最後は足並み揃え
スタコラサッサと両腕をぶんぶん振りながら走り去っていく箇所も毎度ツボでございました。
ソロの役では恐らく初見の小川さんライサンダー登場時のいかにも良家の子息らしい優雅な振る舞い方や
ちょびっと勝気そうな中島さんハーミアとの駆け引きも甘酸っぱい香りが立つフレッシュな魅力が詰まり
舞台の上手側脇と下手側脇にてお互いに眠る寸前まで、糸で引っ張り合うような目線の通わせも宜しうございました。

それはそうと、日によっては峻郁さんオーベロンが、眠る拓朗さんディミートリアスに魔法をかけてあげたりと
舞台上にたった2人きりになる場面もあり。長身のお2人ですが何だかとても微笑ましい時間に思えた次第です。

アシュトン版を生では12年ぶりとなる久々の鑑賞で、音楽と振付の噛み合わせの妙にもこのたび驚嘆。音楽の末端までもがキャラクター達の踊りの機微に生かされ
オーベロン初演者アンソニー・ダウエルさんへのインタビュー記事で読んだ、アシュトンが音楽をよく理解して振付作業を進めていたかが窺えます。
一段と唸らせたのはスケルツォの部分で、当初はオーベロンとパックのみの踊りリレーな構成かと思いきや、4人の妖精達も絡む展開で息を呑む構成。
すると更に驚きに拍車をかけ、スケルツォの最中に2箇所あったか、低音でじわっとエコーのような響きを聴かせる箇所にて
穴の中でティターニアと過ごしているはずのロバボトムが穴のカーテンから顔を出して歌い叫ぶようにアピール。
踊っているオーベロン、パック、妖精達の6人のみならず穴の中のロバボトムまで心を配って参加させ、暫し歌声お披露目
そしてお次に繋げてオーベロンが颯爽と登場。音楽との呼応がいよいよ森全体に染み渡っていくような感覚を与え、ゾクゾクと息つく暇もない展開構成でした。
干支一回りして記憶が妖精の如く飛び去っていた点でもう1つ、『シンデレラ』と同様に4人の名前付き妖精がアシュトン版においても存在すると今回初めて知り
ピンク色の花びらで覆われたような豆の花、紫がかったチュチュに蜘蛛の巣の形が銀色で描かれ、頭にも蜘蛛の巣の形状な冠が乗っかる蜘蛛の巣の精、
小さな種がいっぱいに散りばめられた黄色い芥子の種の精、頭に触覚チュチュには羽根が付けられた蛾の精、と
美術と同様に衣装も1着1着が繊細且つ深みや奥行きのある色彩美で、思わず凝視。
ティターニアへのお仕えカトルなのか、子供を眠らせにいく係は芥子の種の精で(子供、劇中の大半寝ている!しかも苔に覆われたと見える森の枕あり)
ロバボトムにすっかり恋い焦がれたティターニアがまず呼び寄せ花冠をロバボトムに被せてあげるお役目もこの4人で、
妖精のテーマ曲にのせてまず出てきた蜘蛛の巣の精による、片手の手のひらを口に当てて驚きの「まっ」の振りも毎度笑いが客席から起こる場の1つでした。

メンデルスゾーンの月明かりや星々に包まれるような優美で煌めく音楽は聴けば聴くほど胸がキュッと吸い上げられる気持ちにならずにいられず。
冒頭、飛び交う妖精達の幻想美から、オーベロンが顔を覗かせる伸びのある音色、交際順調なときも仲違いしてしまったときも恋人達の会話がそのまま音楽としてやり取りが雄弁で
最後仲直りするティターニアとオーベロンを包み込む叙情性豊かな曲調も、何処を切り取っても耳を澄ませて聴き入ってしまいます。
そして東京少年少女合唱団の歌声が不浄物全て洗い流すような清らかさを与え、よく見ると皆マスクをした状態での合唱で決して歌いやすくはなかったはず。
それでも歌声が優しく響き、包まれると温もりがふわっと広がっていったのは明らかで物語全体がより幻想的な光やあたたかさを帯びていった気がいたします。

アシュトン版夏の夜の夢はバーミンガムロイヤルの来日では全編を、抜粋では何度か観ている作品ですがこうにも楽しめる作品であるとは鮮烈な驚きで
心がたっぷりと満たされました。既に日本の他の団も取り入れており目新しさはさほどないかと思いきや、振付、音楽、衣装、どの要素も隙なく溶け合った作品と再確認。
何より先にも述べましたが、渡邊さんオーベロンを4回鑑賞でき、加えて柴山さんティターニアや他のキャスト全てが美しく楽しく噛み合った
ファーストキャスト陣による森の世界を描画した絵本は静かに閉じ、宝箱に入れて施錠し、
いつまでも大切に心にしまっておきたい今も思い出しては胸が夢見心地にときめく舞台でした。
時節柄旬だからではないが、5月の名を冠する日本を代表する姉妹の言葉を拝借。夢だけど夢じゃなかった!であった『夏の夜の夢』鑑賞2023でございました。



※2016年12月、柴山さん渡邊さんが主演にて初めて組まれたときのアシュトン版『シンデレラ』。
とても初々しい柴山さんと、当時は入団からまだ半年未満ながらリハーサルでもインタビューでも頼もしいリード力のある渡邊さんによる、微笑ましい練習風景記事です。
この頃の約2年間4階末端席の常連で毎公演通ってはいなかった管理人、(一時新国から離れがちな時期が2年ほどあったのです)
偶々この記事を目にして、こんな素敵な男性ダンサー今の新国にいただろうかと
シンデレラとのポーズやら、マントが似合うぞこの人!!、あのラーメン屋さんでの入団自己紹介記事を書いていた純朴な青年と同一人物か??と
目が暫し心臓印になりかけた、最初のきっかけの記事でもございました。
実際の本番舞台は柴山さんが大緊張してしまい、渡邊さんがひたすら励まし祭りを行った2016年のクリスマスイブだったわけですが、
終演後の握手会を初めて見物し、観終わってから何だか気になって更に経歴調べて移籍前の映像や仏語記事も探し続けては目を通して、現在に至ります汗。
https://okepi.net/kangeki/1018




※5月2日(火)にはクラスレッスン見学会があり行って参りました。オペラパレスでの開催は2019年の『ラ・バヤデール』以来かと思います。
2020年11月の『眠れる森の美女』札幌公演では予約有料指定席制で開催され、2階での着席見学でした。時間限定で札幌青い鳥の会の会員と化した管理人でございます。
今回は予約不要で開場の随分前から長蛇の列。モナリザの絵やパンダのランランとカンカンの来日、ウィンドウズ95の発売日を思い出しました。
(せめて新作のiPhone発売と言わんかいとのご指摘は流します)
プリンシパル、ファーストソリスト以外はほぼ全員参加と思われ、1階席の通路から後方席にて見学。入り切れなかった方は2階席へ入り着席されたようです。
指導はミストレスの遠藤睦子さん。ピアノの蛭崎あゆみさんです。バーからセンターまで一通り目一杯行われ、本番直前であっても運動量の多さに驚かされます。
ぱっと目を惹いたのは樋口響さんでより大きく踊ろうと意識なさっているのでしょう。バーのときから伸びやかさに注目しておりました。
あっ樋口さん、多分スラムダンクTシャツ(宮城リョータが描かれ、恐らく今も公開中の新作かと思われる)をお召しになっていた点も1つ挙げておきますが、
我が家族が皆この作品が好きで、新作の映画も鑑賞済み。時期によって来場者が貰えるグッズが異なるらしく
安西先生(湘北高校バスケットボール部の監督)のシールもらってきて欲しいからと鑑賞を勧められましたが行かず終い。家族よ、すまぬ。
ただ作品自体は痛快で面白みがあると思っており、私がこれまでの人生で全巻読んだ漫画のたった2作品のうちの1本です。
1994年に公開された津久武高校戦を描いた映画は劇場で鑑賞しておりますが
ボリショイのマクベス映像を見た年より現代寄りのはずが内容はよく覚えておらず
スピードが武器なチームとの対戦であったことぐらいしか思い出せず失礼。ちなみに妹は湘北の三井寿が好きだそうです。
私からすると、ぐれていた頃の髪型がフランツ・リストに似ている印象もございます。話が逸れました。

つい観察してしまうのは女性ダンサーのウェアで、いかんせん管理人、年数回の趣味の大人バレエレッスンながら着用物が極端に少ないと周囲に言われたことが度々あり
ただでさえ重たい我が重量をこれ以上増やしたくないため極力物は身に付けずにいる切実な事情があるとは言え
プロでもリハーサルはともかくレッスン特にバーではもう少しTシャツなりレッグウォーマーなり着用しているはずとの話を聞いておりました。
そんなわけで、自身と似た格好をなさっている方がいらっしゃるか暫し観察。そしてセンターレッスン時に発見、岸谷沙七優さんでした。
バーのときの格好は未確認ですがセンターでは短い半袖レオタードにピンクタイツ、タイトなショートパンツをお召しになりいたくシンプル。
何だか嬉しい気分であるのも束の間、岸谷さんは研修所出身で2020年入団の若手。
素人である我がぼってりな自身を考えたら、この日も昭和な趣の写真が話題になったときすぐさま青春ドラマと言えば『青い山脈』と口走った世代の私が
似た格好をしているのは如何なものかと疑問が過る大型連休合間の平日でございました。




クラスレッスン見学後、初台駅のオアシスで落ち合った3人。
大阪からいらしたKバレエスタジオ関係者の方と当ブログレギュラーの後輩が初対面でございました。
2月にも劇場でお目にかかって会話を交わし、例の件については急遽同郷同門コンビ復活を最も喜んでおかしくない立場でいらっしゃるKスタのその方は
私を見つけるなりずっと慰め励ましてくださったお優しいお人柄な大阪人です。この後ご覧になる渡邊さんオーベロンも楽しみにしてくださっていました。
ブログを通して後輩のことは把握してくださっていてすぐ打ち解け、2人とも仕事と週に2回なり3回なりレッスンを両立させている共通項もあり
『パキータ』のアンサンブルや音楽の胸躍る感覚など話が弾んでいる様子に管理人嬉しうございました。



キウイ入り飲むチーズケーキ。色彩感が夏の夜の夢。今宵は春の夜の夢!



ワイルドなモヒート。ミントの葉が豪快に入って野性味のある香り。ライムの果汁が爽やかさを加えています。森の茂みやオーベロンの衣装を彷彿させます。
さてファーストオーベロンが調合したと思っていただきます。あくまで想像ですが、もし調合に勤しむときには実に真剣な顔つきで行っていそうです笑。



月が出た、本物の月夜。袋入りのままで失礼。夢に現れ、続きが何度でも観たいオーベロンです。



劇場1階のショップにて、ポストカード写真も登場。大判と葉書サイズがあり勿論購入。
『白鳥の湖』はアラベスク写真、『ライモンダ』はジャンの大ジャンプです。
(ダイの大冒険か笑。ちなみに私はこのゲームもアニメの視聴経験もございません。
自宅にゲーム機があったこともなく、しかしなぜか題名及びアニメ版の主題歌の勇者よ急げ!!は頭に入っております)
大判は眠りアポテオーズ場面でございます。



劇場レストランマエストロ、後半日にも訪れ違うコースを注文。前菜3種の盛り合わせ。



大山鶏のソテー山葵のバニェット。表面がカリカリな焼き上がりでナイフもスッと入り、山葵のバニェットのピリッとした味と相性良く、ワインが進みます。



デザートはファーブルトン。フランスのブルターニュ地方で親しまれてきた郷土菓子らしい。ファーブル昆虫記しか想像できずにいた私をお許しください。
ほっくりとした食感で、アイスとクリームも溶かしながらいただきました。



ダンスマガジン2005年6月号に、東京バレエ団のアシュトン版『夏の夜の夢』 初演における指導者の1人で世界初演時のオーベロンである
アンソニー・ダウエルへのインタビュー掲載を思い出し熟読。アシュトンはダウエルの踊り方を見つつ行う共同作業のような振付であったことや、
趣味で絵を描いていたダウエルの一面にも理解を示し衣装画を描いてみるよう勧められたことなど、情景が浮かび上がるような詳しさで綴られています。



千秋楽、再びモヒート!



この日の夜、英国では戴冠式。英国王室、穏やかな幕開けとなりますように。

2023年5月11日木曜日

60分に収まった相関図 新国立劇場バレエ団シェイクスピア・ダブルビル『マクベス』 4月29日(土祝)〜5月6日(土)




4月29日(土祝)〜5月6日(土)、新国立劇場バレエ団シェイクスピア・ダブルビル『マクベス』『夏の夜の夢』を観て参りました。
https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/shakespeare-double-bill/

タケット振付『マクベス』は世界初演、アシュトン振付『夏の夜の夢』はバレエ団としては初演。
シェイクスピア作品を2本立てで行うのはバレエ団では初の企画でどんなダブルビルになるか期待あり不安もありつつ初台へと参りましたが
悲劇と喜劇を組み合わせた鮮烈で心持ちもガラリと変容し、刺激ある公演でした。




ポスター撮影の様子。マクベス福岡さん、マクベス夫人米沢さん、ティターニア柴山さん、オーベロン渡邊さん。
悲劇と喜劇で全然違う作品であっても、夫婦生活を描いた点は共通です。前者は破綻、後者は和解。



※またもや管理人自身と同様脂肪分過多な文字数になりましたため、分割して載せます。ひとまずマクベスから。


『マクベス』

【振付】ウィル・タケット
【音楽】ジェラルディン・ミュシャ
【編曲】マーティン・イェーツ
【美術・衣裳】コリン・リッチモンド
【照明】佐藤 啓


【マクベス】福岡雄大(29, 2, 4, 6)、奥村康祐(30, 3, 5)
【マクベス夫人】米沢 唯(29, 2, 4, 6)、小野絢子(30, 3, 5)
【バンクォー】井澤 駿(全日)
【3人の魔女】
  奥田花純、五月女遥、廣川みくり(29, 2, 4, 6)
  原田舞子、赤井綾乃、根岸祐衣(30, 3, 5)


泥沼複雑な多数の人間模様をあたかも旅行用スーツケースに整理整頓して敷き詰めて展開していく面白き新作で
話がややこしそう、開演前に人物相関図読んだもののあらすじが頭に入らず心配が更に募った私でも食い入るように観てしまう演出でした。
愛憎渦巻く状況展開を1幕に収め、人物が絡む関係性を示したタケットの手腕に驚かされた次第です。
しかし7回観ても管理人の脳みそ咀嚼力が欠乏しており、隅々までの理解には至らずでございます。

福岡さんのマクベスは見るからに戦闘能力に長けていそうな武将で、あくまでリアルな騎士らしい衣服ではなくても誇り高さや自信がみなぎる姿。
しかしマクベス夫人からの誘惑にそそのかされダンカン殺人を促される場でみるみると苦悩し、遂にダンカンを刺殺してしまった直後は目が虚ろに変貌。
一度犯罪に手を染めると歯止めが効かなくなるのかダンカンの遺体発見現場における、自身の罪隠しのための濡れ衣着せての殺人も何の躊躇いもなく実行に移していて
歯車が狂うといとも簡単に理性が喪失した上に苦悩しつつであったはずの野望も色濃いものへと変わり、突進してしまう恐ろしさや内面の弱さを体現していました。
バンクフォーの亡霊を目にしたときの弱りっぷりは別人のような変貌で、王冠を被せてもらっても最早野望も何もない縋るような足取り。
奥村さんは一見誉れ高い武将には思えなかったもののタケットさんがプレトークで仰っていた、マクベスの弱い内面をいたく露わに表現していたと推察。
帰還のパ・ド・ドゥでも明らかにマクベス夫人がクールされど上から押さえつけるような
冷たく強気な部分を見せていた分、瞬く間に妻の欲に吸引されていったと思えました。
ダンカン刺殺後は顔が青ざめ、王位が近づいたとはいえ大きな過ちを犯してしまった後悔を示すも
そんな暇もなくマクベス夫人からの実行した賛辞を表すのであろう力のこもった口づけに抗えず、凄まじい呼応を展開。
凍りつくが如く緊迫な関係を明示していた印象です。

米沢さんのマクベス夫人は初日は野心と欲望に満ちた猛烈な恐怖感で目も常にギラリとさせて夫に言い寄り、夫人に頭が上がらぬ福岡さんマクベスの苦しみに納得。
2日目は毒々しさを少し抑えてマクベスに対して懇願するように近寄ったりとアプローチが変わっていた印象です。
ただ息絶えたダンカンの血を手に取り、狂おしさを全身から発しながら静かに夫を背後から抱きかかえていく様子は全日程背筋に戦慄が走りました。
小野さんは冷ややかに黒い光を発しながらすうっと夫を手のひらで転がしダンカン殺しへと繋げていたと思え、愛情よりも野望や名声欲に駆られた夫人。
ただ歩いてくる姿だけでも、夫の出世のためなら手段を選ばぬ欲望の塊が宿る視線に上階席からでも恐れを感じずにいられず
だからこそ、終盤亡霊に取り憑かれ夢遊病になったときのマクベスの手にも負えぬ発狂ぶりの落差は衝撃でした。

特に作品に厚みを加えていたと思わせたのはマクダフの中家さん。中世の史劇に登場しそうな豪胆そうな容姿で、妻子との再会は優しさで包み
お腹に新しい命がある妻を気遣う穏やかさも印象に残ります。マクダフ夫人の飯野さんがほんわかとした母性に溢れ、睦まじい家族であったはずが
その命が残り僅かであったとは知る由も無く妻子殺害が知らされたときの嘆きを叫ぶような重々しいソロは痛烈極まりなく映りました。
後にも述べますが、最後マクベスとの対決で重たい剣を自在に操り倒すのも頷けます。

それからバンクフォーの井澤さん。最初はマクベスの戦友として2人揃って登場したものの
マクベスから殺害されたあとに亡霊として出てきたときのインパクトが強烈。血で覆われた顔と衣服のまま歩み出し
呪いをかける勢いでマクベスに近づいていく憎悪を抱いた様子が実におどろおどろしく、悪夢に魘されそうな不気味ぶり。
繰り返しになりますが、マクベスは最早武勲の誉れ高い戦士には見えず、
弱り慌てふためく姿は幼さまで生じて王冠を被っていたからか誕生日を迎えた心配性な子供のように見えたほどです。

注意書きにも記されていた流血シーンの演出方法はいかにして行われるか注目していたところの1つ。
ダンカン刺殺のときはベッドで就寝中のダンカンの寝間着が血で覆われのち、音楽の劇的変化に合わせて何箇所かの装置に真っ赤な灯りが灯され血飛沫を演出し
踊るにあたって危険ですから床には飛ばぬよう、2時間サスペンスドラマ状態にはならぬよう工夫がなされていました。
それよりも、亡霊血塗れバンクフォーのインパクトが強し。7回鑑賞且つ日頃の行いが良いとは言い難い私は悪夢に魘される予感がしております。
夢見るならファーストオーベロンを望みたいがこうった身勝手な欲をお天道様は見逃していませんので次行きます。
マクベスといえば魔女も重要役の1つで、マクベスが歩む道のりを運命付ける存在でしょう。
白い布を頭まですっぽり被り、白いスカート状の衣装でマクベスとバンクフォーの周りを妖しく漂い王冠を見せ、序盤から先行き不安な展開を予期させていました。

初めて聴くミュシャの音楽は薄暗い霧がかった天候を思わす不穏な響きや陰謀の闇をねっとり描写したかと思えば
ふと明快な曲調にも変化したりと、聴けば聴くほど身体がざわつく魅力があると捉えております。
管理人の脳内は、前半の祝宴における変拍子な賑やかな曲がメンデルスゾーンと交互に脳内旋回が止まらずです。
ただ思えばミュシャ自身の曲は非常に短く、マーティン・イエーツやタケットの案を合わせながら作られていったと思うと
短い原曲から1時間弱まで違和感なく膨らましていく作業は実に困難を極めたことと想像いたします。

衣装は中世の鎖帷子のようなデザイン等の要素を取り入れつつなかなかスタイリッシュで、
史実に基づき過ぎると踊りにくくなってしまうでしょうから丁度良い塩梅であったと思います。
ダンカンの息子マルカムが銀色のぺたりとした太めのヘアバンドで思わず『ダイの大冒険』が過ってしまいましたが
考えてみれば先はマクベス側であり、ゲームやアニメの作者も中世の歴史書からデザインのアイディアを得ているからこそでしょう。
マクベスの衣装が赤いのは意外でしたが他との違いを引き立てる効果あり。
ただ殆んどの男性の足が素足?にバレエシューズでスコットランドの霧深い地域性が表れずリゾート感が否めず。
ひょっとしたら、演劇風の展開であってもバレエですから踊る場を多く設けたためであろうと思いきやそうでもなく
終盤の歩きながらの整列場面も含めもう少し踊りの見せ場も欲しかったのは心残りです。
また人によっては掛け持ち役が多いのは仕方ないと思うものの、死後すぐに他の役で登場すると混乱。前半日程中は亡霊が多々発生かと勘違いした私でございます。

装置はベッドや椅子を始めシンプルなもので、長いテーブルを出演者が動かして装置転換していく過程も演出に組み込まれていた点は面白く
前半日程は皆恐る恐るな様子で動かしていたのち徐々にスピードも上がって後半には上階席から観ると強豪マーチングバンドを思わす隊形変化。
テーブルで作り出す亡霊バンクフォーが歩く花道も(亡霊ランウェイ?)出演者が用意するため話の流れが止まぬ効果をもたらしていました。

1点どうしても首を傾げる突っ込みどころであったのは最後の戦闘場面で、マクベスが苦しみ抜いた末に意を決してマクダフらと対峙する息を呑む場面のはずが
まずマクダフ側の戦士達が片手に持つ長く白い棒が、遠方席から観ると洗濯物を干す突っ張り棒
或いは蛍光灯の交換作業にしか見えず。もう片方の腕に脚立が見えたのは気のせいか笑。
上階後方席からは白棒隊が横並びに前進する光景が『風の谷のナウシカ』巨神兵を想起させました。
せっかくマクベス、マクダフ、マルカムは3人とも大きく重たそうな、当時出回っていたと思わしき叩き割るに近い戦法で用いたであろう剣を用いていただけに
マクベスの時代に白い棒による戦闘方法があったならまだしも結果として白棒隊に追い詰められるのもどこか間抜けに映ってしまった次第。
それからマクベス、マクダフ、マルカムの剣の交わりもスローモーション風にもっさりしてしまい、
決死の覚悟も伝わりにくく振付が望ましくなかったと推察。これが本当の「打ち合わせ」か。
勿論、当時の戦闘と同じ方法を用いたらそれこそ本物の流血騒ぎになり新国立サスペンス劇場となってしまいますから不可能であるのは承知しているものの
せっかく振付も音楽も新しく生み出せる好条件下にあっただけに臨場感が出るような演出はできなかったのか、疑問が残ります。

思い起こせば一昨年バレエ団としては12年ぶりに全幕上演した『ライモンダ』2幕決闘において、最初から音楽ありきな振付であっても
全キャスト立ち回りや今回とよく似た作りの大きな剣の使い方も上手く
避難訓練及びアクション映画のカメラテスト状態になっていなかったのは記憶に新しいところ。
中でも今回も実現した福岡さんジャン対中家さんアブデラクマンの対決は体当たりに近い豪快な迫力があったのはよく覚えております。
他日には目から火を放ち、王が仲介に入り宣言合図の前から手袋を外し始めてしまい異様にやるき満々たる気迫な人も平日にいましたがそれはそうと
再演時には終盤の臨場感を持たせる工夫を願いたいものです。

それから事前に吉田都監督のラジオにて少し安心感を持ったのは子役への配慮。結果として殺される場はだいぶ凄惨なひと幕になってしまいましたが
映画やテレビドラマ、演劇でもバレエでも例え劇中の行為であっても未成年や子供にとっては心に深い傷を負ってしまうことになりかねない場面があるにあたり
本人達や親御さんにもだったか説明を重ねてお互いに不安材料がないよう心掛けながら作っていった話があったかと思います。
実際マクダフの息子は刺殺、娘は絞殺されいずれも大柄な男性が馬乗りになっての殺人。
短い場面とはいえ、またバレエの中であるとはいえただ言われるがままにがむしゃらに熱演しているだけでは精神が重たくなってしまうと想像いたします。
襲う側のダンサーともよく話し合い、子役に極力負担がないようケアも十分にされていたと願いたい。
近年は性描写や暴力や殺戮描写の演出においての無理強いが問題視されつつある報道も見聞きし
名画とも呼ばれている1968年公開の映画『ロミオとジュリエット』が実は事前の話とは違い未成年の主演者2人が
裸体での寝台場面を強要され50年以上も精神の苦痛を抱え続けていたとの報道は非常にショックでしたし、まだ氷山の一角であろうと思います。

話が逸れました。最後の生首は賛否両論飛び交いまして、私としてはあそこまで血みどろにする必要性は疑問でございました。
ラトマンスキー版『パリの炎』終幕に出てくる処刑者の顔は確か白っぽい色に覆われ、
極度な生々しさはなくても命の犠牲の残酷さを前面に出す効果はあったと記憶しております。

後半日程は福岡雄大さん米沢唯さん、奥村康祐さん小野絢子さんが登場するアフタートークもありました。
夏の夜の夢の森の美しい装置はそのまま、他のシェイクスピアの話を拝聴です。両ペアのお話から制作過程覗けてより興味持たす内容で
パ・ド・ドゥでの目と目での会話指導や、稽古場で曲が足されていく様子に初めて居合わせたリハーサルや、オーケストラリハーサルを見学したときの掻き立てる衝撃等驚きなお話が続々飛び出しました。
久々のバレエ団オリジナル作品上演でしたから改訂も加えつつ、せっかくのオリジナル全幕ながら2007年の初演以来一度も再演されていない
『オルフェオとエウリディーチェ』の二の舞にならぬよう、御蔵入りは回避して欲しいと願っております。

ところで皆様はタケット版以外のマクベスのバレエはご覧になったことはありますか。私は33年前にボリショイだったか、映像を鑑賞してみたものの記憶が遥か彼方。
(1984年収録のワシリエフ振付、主演はファジェーチェフだったらしい)
あらすじも頭に入らず、とにかく暗かった印象しかなく魔女の描き方を今となっては知りたいものです。
とても全編通してなんぞ見ることはできず、飛ばしながら3回鑑賞に挑戦したものの結局脱落。
3回とも鑑賞後は暗がりな話から脱却したい衝動に駆られ、毎度口直しならぬ目直しに走ったのが『となりのトトロ』でした。
黒が色濃いマクベスに対して5月の新緑の季節から始まり、森の木々が爽やか繊細、奥深いタッチで描かれた作風は
マクベス直後のどんよりとした我が目も心も癒しが注入されたものです。
そして管理人も老いた33年後、生で観る新作のバレエ『マクベス』との組み合わせは『夏の夜の夢』。
そうです、緑が重なる美しい森、月夜の晩を舞台に妖精が登場し人間も絡む、騒動を乗り越えハッピーエンドなあらすじはトトロと共通しているではありませんか。
(トトロはお化けでしょうが、精霊とも言えるでしょう)
勝手に行っていたマクベストトロ・ダブルビルから33年後、通ずるプログラムが再び巡ってきたとしか思えぬ管理人でございます。
トトロのオープニング主題歌のさんぽには「蜘蛛の巣」の歌詞も出てきますし、日本の戦国時代に置き換えたマクベスは映画『蜘蛛巣城』。
アシュトン版『夏の夜の夢』で管理人がとりわけ好んだ妖精衣装は蜘蛛の巣の精。
そんなわけで『マクベス』を終えましたので次回は『夏の夜の夢』やクラスレッスン見学等綴って参ります。






注意書きあり



マクベスカクテル。濃厚な赤いアルコールが刺激を誘います。この悲喜劇混雑な初期チラシ、両極端な物語が揃い、シェイクスピアの創作の幅を感じる並びです。



初日にいただいたマエストロのコースの前菜。トマトの赤とモッツアレラの白。マクベスカラーな前菜。



後半日程にも訪問、トマトソースパスタ。果肉たっぷりで唐辛子の刺激が気持ち良い。ハーフボトルの赤ワインが渋めの味で、マクベスで攻めてみた。


※写真は一部です。次回も多数載せて参ります。忍耐力に自信のある方、鍛えたい方はどうぞお待ちください。

2023年5月3日水曜日

あとは3幕にかかっている  上野の森バレエホリデイ2023  東京バレエ団『かぐや姫』第2幕  『イン・ザ・ナイト』『スプリング・アンド・フォール』4月28日(金)





4月28日(金)、東京バレエ団『かぐや姫』第2幕  『イン・ザ・ナイト』『スプリング・アンド・フォール』を観て参りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2023/kaguyahime/


※キャスト等はNBSホームページより

「スプリング・アンド・フォール」
振付:ジョン・ノイマイヤー  音楽:アントニン・ドヴォルザーク

第1楽章 モデラート
秋元康臣
池本祥真、樋口祐輝

第2楽章 テンポ・ディ・ヴァルス
秋山 瑛
三雲友里加、工 桃子、二瓶加奈子、中川美雪 髙浦由美子、長岡佑奈 池本祥真、岡崎隼也、樋口祐輝、岡﨑 司

第3楽章 スケルツォ:ヴィヴァーチェ
秋元康臣
池本祥真、岡崎隼也、樋口祐輝、海田一成、岡﨑 司、後藤健太朗、加古貴也、山下湧吾、宮村啓斗

第4楽章 ラルゲット
秋山 瑛 - 秋元康臣

第5楽章 フィナーレ、アレグロ・ヴィヴァーチェ
全員


2018年の20世紀の傑作バレエⅡ以来の鑑賞。ドヴォルザークの曲が耳を優しく覆い、柔かな膜が広がるように展開する絶え間なく伝う清流を思わす音楽、振付構成です。
中でも第2楽章 テンポ・ディ・ヴァルスでの秋山さんが音楽に身を任せつつも軸を万全な状態で保ちながら自由に舞う無垢な魅力が満開でした。
秋元さんのメッシュは気になるも笑、音楽をさっと掬い上げるような身のこなしや
緩急の変化を緻密に体現していたアンサンブルの出来も宜しく、前回観た新国立劇場中劇場とは舞台面積も全く異なる東京文化会館においても
面積を持て余した感はなく、夕焼けに照らされたような光を浴びる場も癒しを与えてくれる箇所の1つでした。


「イン・ザ・ナイト」
振付:ジェローム・ロビンズ 音楽:フレデリック・ショパン

中島映理子 ― 宮川新大
金子仁美 ― 安村圭太
上野水香 ― 柄本 弾

ピアノ:松木慶子


こちらも2018年以来の鑑賞。星々が瞬く夜空が現れてピアノが奏でられ、ロマンを誘う幕開けです。
最たる驚きは金子さん安村さん組で、しばらくは歩いて登場する姿からしてはっと目を惹く大人な洗練度。
曲調がゆったりしているため下手すると場が持たない難しさがある中でも振る舞いに見入り
手の差し出し方や受け止めるやり取りからして余裕な所作で魅せ、優雅に描き出すポーズ1つ1つも隙が無し。成熟した魅力を静かに品良く表していてお見事でした。
これまで金子さんは古典のお姫様な役はあまり好みには合わず終いでおりましたが
しっとりと踊る大人の夜会な作品では別人かと感じるほど、落ち着いた美しさが引き立っていた印象です。
安村さんと共に、オレンジとチャイルドを帯びた渋めの衣装もお似合いでした。
中島さんが着用の、ブルーグレーな淡さが重なる衣装もお洒落な色味です。


「かぐや姫」第2幕 世界初演
演出振付:金森穣
音楽:クロード・ドビュッシー
衣裳デザイン:廣川玉枝(SOMA DESIGN) 
美術:近藤正樹
映像:遠藤龍
照明:伊藤雅一(RYU)、金森穣
演出助手:井関佐和子
衣裳製作:武田園子(Veronique)

かぐや姫:秋山 瑛
道児: 柄本 弾
翁:木村和夫
秋見:伝田陽美
影姫:沖香菜子
帝:大塚 卓
大臣たち:宮川新大、池本祥真、樋口祐輝、安村圭太
側室たち:二瓶加奈子、三雲友里加、政本絵美、中川美雪


2021年秋に第1幕の初演を鑑賞。かぐや姫のお転婆、無邪気に戯れる様子が描写され、
ただ大事にされた女の子ではないキャラクターとして確立していたのはなかなか面白いと思えておりました。
宮廷へと向かった先が描かれた2幕は予想よりモダン寄りで、群舞は男女それぞれ1幕より規模増強。
今回より復帰された沖さんによる影姫の存在が実質主役な印象をも持たせ、何人もの側室達を率いながら全体を絞り上げる冷ややかな支配感を漂わせて君臨していました。
まだあどけない秋山さんかぐや姫が戸惑う様子と、黒い光とちらつかせる影姫との並びが好対照。
ただ衣装が非常にモダンな風味が濃く、着物な羽織り物は良いとしてかぐや姫も影姫も側室達もボディタイツ仕様で
男性陣は風邪薬の宣伝に登場しそうなメタル戦士風のテカリ系。価値観にとらわれた我が感性に問題ありきであろうとは思うものの
宮廷らしい絵巻物なデザインがあっても良かったかと思えました。 影姫や側室達は深みのある赤を多用し、4年前に観た中国国立バレエ団『赤いランタン』を彷彿。

振付は群舞はまずまず迫力に満ちていて上階から観ても動きの変化が見渡せましたが
全体を通して起伏に欠け、1本調子のまま終了してしまった印象が拭えずでした。
突如文字幕と外国語によるナレーションが入った演出も果たして必要であったのか疑問が残りますが
3幕が待っていますのでこの時点でどうこう申すのは避け、全幕披露を待ちたいと思います。





衣装も数点展示、パキータ。




※上野の森バレエホリデイ2023のイベントも翌々日に楽しみました。
まず、 8バレエ団ダンサーズトーク。
https://balletholiday.com/2023/venue/tokyobunka/recital/event-ct-8.html
井上バレエ団の阿部碧さん、小林紀子バレエ・シアターの望月一真さん、貞松・浜田バレエ団の名村空さん、スターダンサーズ・バレエ団:西澤優希さん、
東京バレエ団の伝田陽美さん、東京シティ・バレエ団の植田穂乃香さん、法村友井バレエ団:法村圭緒さん、牧阿佐美バレヱ団の菊地研さんが登場され
最初は自己紹介も兼ねて所属バレエ団の特徴や魅力、入団のきっかけから開始。法村友井と貞松浜田以外の団は東京都内にあり、
都内にはバレエ団が多過ぎるとも言われがちなものの、これといった特徴をどの団も持っていて(勿論関西の法村友井も貞松浜田も個性はっきり)
都内の公演だけでも日程の被りを気にしなければならないほどにあちこちで公演が開催されているのは幸運なのかもしれません。

その後はこの文化うちの団だけでしょうかクイズもあって会場も益々盛り上がり時間を少しオーバーして終了。
司会進行の阿部さや子さんは大変申し訳なさそうな口調で最後締め括っていらっしゃいましたが
たくさんの楽しいお話が飛び出していたからこその超過ですからお気になさること、ございません。
終盤時間が押し迫ると、紹介しきれないダンサーからの質問事項の中でマルバツで回答できる質問を即座に絞って配布していた札を挙げてもらうなど
可能な限り参加者が楽しめるようぎりぎりまで工夫を重ねながら進行してくださいました。

登壇のダンサーの皆さんは誠に個性が様々で、中でも伝田さんは座長な取り仕切りぶりで姉御肌な一面をご披露。
憧れのダンサーと語る上野水香さんの話題になると、最近放送された『情熱大陸』にて上野さんと一緒にざっくばらんに話し込んでいる場面は
カットされるとばかり思っていらしたようで、ちょっぴり恥ずかしそうに裏側を語ってくださいました。
井上バレエの阿部さんはハードなブルノンヴィルスタイルがセンターレッスンで組み込まれるエピソードを
おっとりほわほわな雰囲気なままでお話しになり、その落差に観客驚いていたもよう。
望月さんはトーク終了後そのままゴールデンウィーク行楽地の混雑状況について報道なさっていても何ら違和感なさそうな
語り口がアナウンサーのような滑舌の良さで、されど内容が男性ダンサー同士で食べ物分けっこといったほのぼの系話であったり
西澤さんは鈴木稔さん作品では舞台上で着替える演出が時々あり、頭飾りが曲がったままになっていないか
気になってしまうこともあるようで、レポーターのようなハキハキとした口調でいらっしゃいました。

伝田さんは東バのコール・ド・バレエ反省会の厳しさを語られ、細かく名指し或いは立ち位置の番号での注意を受ける様子の厳格な空気感伝わる再現に
観客思わず拍手。『ラ・バヤデール』始め、緊迫感あるコール・ドの日々の積み重ねが今一度窺えた瞬間でした。
女性ダンサー同士でレオタード貸し借りの話や落ち込んだときだったか、ハグで愛情を交わすなどほんわか関西弁で披露なさる名村さんや
植田さんの、地方公演(学校公演)で一層高まるスタッフとの連携プレー演出話にも癒されました。
法村さんは、バレエ団の建物の構造上だったか、『白鳥の湖』や『ジゼル』の静かな場面の練習時であっても電話の音が大きくピンポーン!!と響き渡ってくることや
コロナ前は男性ダンサー全員で旅行へ出かけたり、キャリアの中で必ずと言って良いほどに出てくる
10代でいきなりプティさんの新作『デューク・エリントン・バレエ』に抜擢されるまでの経緯や精神が擦り減っていった様子が
これでもかと伝わってきた菊地さんのお話も、大変面白く拝聴いたしました。
そういえば、昔は四大バレエ競演なる公演もありましたが、8つもの異なるバレエ団のダンサーが並び
お話を聞ける機会は実に貴重で、来年も開催を心待ちにしております。



それから昨年も買い物した大阪府堺市のアンデオールさんのコンフィチュールも購入。バレエのキャラクター名が付いているものも多数あり、
今回はメドーラにいたしました。オリーブ味が効いている、お酒にも合いそうなお味です。クラッカーも購入。




お昼は会場そばの上野バンブーガーデンにある音音へ。竹に覆われた作りです。雨後の月で乾杯。雨も上がり、傘要らずでした。



サーモンイクラ丼。カウンターは広めな作りで落ち着いていました。



海賊衣装。全幕のときではなくバレエ祭りで着用されているものかと思われます。涼やか!




メドーラとビスケット。白ワインに合いそうです。



そして昨年もお世話になった武蔵野ルネさんの似顔絵イラストも描いていただきました。半分は別店舗のパンフレットで隠しております。
https://balletholiday.com/2023/venue/tokyobunka/main-foyer/event-lune.html

今回もバレエの舞台写真を見せて、もしありとあらゆるバレエ衣装の中で1着だけ着用できるならこれと決めております世界で一番好きな衣装を指定いたしましたところ
衣装は特徴捉えてほぼ忠実に、顔は管理人の実物の1兆倍綺麗に描いてくださいました。グラズノフ作曲の大作第2幕で、最近NBSとは対話路線に転換した某団の衣装でございます。
豪華で緻密な模様や青と金の色彩の組み合わせに、武蔵野さんも息を呑んでいらっしゃいました。
マントに剣携えて、ジャン助けに来てくれるかな。いいとも!そんな軽い人間の話ではない汗。
遺影にしたいくらいですが、実物からかけ離れ過ぎと家族から指摘を受けるのは目に見えております。
武蔵野さん、ありがとうございました。