2022年4月22日金曜日

播州で極上アルブレヒト グラッシオバレエスクール第41回発表会『ジゼル』『リトルマーメイド』ほか《兵庫県姫路市》





4月17日(日)、兵庫県姫路市にてグラッシオバレエスクール第41回発表会を観て参りました。
2017年、2018年、2019年に続き3年ぶり4回目の鑑賞、(紅白歌合戦のような数え方でございます)
バレエコンサートを極力行わず、毎回古典や創作の幕物を同時上演して1つの作品を皆でじっく作り上げることを大切にしているスタジオです。
http://www.grazio.jp/news/#entry-153

第1部は子供の生徒さん大集合なウエスタンカーニバル。千葉県浦安市の夢の国の音楽も多数使用した、可愛らしい幕開けです。
ウエスタンの文字から、縄を持って茶色いテンガロンハットを被り、両側に開くスイングドアも配置された(子供作品で酒場はないか笑)
西部劇の子供版かと思いきや、ピンクやオレンジ系のクラシカルな衣装で明るい配色の作品でした。
音楽も夢の国のウエスタンランドで流れている風の曲のみならず、幅を広げて『カリブの海賊』や『不思議の国のアリス』も用いて、華やいだカーニバルでございます。
生徒さんの人数はとても多く、それでもきちんと並んで踊ってポーズを取る一連の振付を和を保ちながらこなす生徒さん達の姿から
少人数教室で育ち且つ協調性皆無であった私からすると学ぶこと、この度も多々ありました。
大規模教室に通っていたならば、衣装の取り間違いもやらかしそうな管理人でございます。

続いては海洋系作品が2本。1本目は今回は珍しくバレエ・コンサートが上演され、『海と真珠』のみ披露。
女性の衣装が教室によって頭飾りが真珠の輪であったりティアラであったり、衣装も白もあれば淡いピンクがかったスカートの場合もあり衣装観察もまた毎度面白く
今回は長めの白いふわりとエレガントな装いで、2人のヴァリエーションにおける息の合い方や後半部分でのそよそよと靡くさまも目に優しく留まりました。
このトロワ曲は所謂ズンチャッチャバレエ音楽に属するとは思いますが、アダージオの部分からして
深海の神秘を大らかに、そして真珠の転がるような軽やかさを同時に歌っていると思える曲調で昔から好んでおります。
特に今回は前日まさに「海と真珠」題名そのものな地域に立ち寄っておりましたので鑑賞の喜びもひとしおでした。

お次は赤松優さんの原振付による、1幕物ながら大作『リトル・マーメイド』。船が座礁し、乗っていたエリック王子と
彼を助けたアリエルが試練を乗り越え結ばれるまでを海底のカラフルな仲間達の大団円やアースラの奇襲も交え、アリエル複数名体制で描かれていました。
幕が開くと王子(弓場亮太さん)と男性の船乗り達が冒険心を膨らませながら航海する様子が現れ、2人の男の子の生徒さんが男性ゲストの方々と
楽しそうに絡んでいてこちらまで嬉しい気分。中央で少し踊る箇所もゲスト陣が優しく送り出して見守っていて
男の子にとってはプロの男性ダンサー達との共演が、男性ゲスト陣にとってもバレエを習う男の子の存在は
お互いに幸せで仕方ないのであろうそんな微笑ましいやりとりが窺えました。
今でこそバレエを習う男の子は珍しくないもののまだ少数であるのが現状で、長く続けてくれたらと願っております。
題名はどうあれバレエにおいて「人魚姫」のキャラクターを衣装でいかに表現するか、踊りやすいデザインであるのは不可欠で
まさか鯉のぼりを履くわけにはいかないでしょうし笑、毎度気になるところですが、
シャギーの入った膝丈のスカートに上はほんのりお腹出しの色っぽい光沢を帯びた衣装で、アリエルから姉妹達まで色とりどりの装いで海底を彩っていました。
これまでバレエの人魚姫はいくつかの版を観ておりますが水色のきらりとした長いパンツであったり、
白いワンピースに段状に襞が付いていたりと各々工夫が凝らされていると毎度思います。
役柄は盛りだくさんで、カラフルな海の生き物達が大活躍。アリエルのお供な存在である蟹のセバスチャンとお魚のフランダーがリードしつつ
中盤にはアンダー・ザ・シーにのせた海底の大団円が用意され、魚達や真珠達も登場して目にも色鮮やかな世界が覆い尽くしていきました。
大団円の前にはそれぞれのキャラクター達の見せ場もあり、ドリーブ『シルヴィア』やショスタコーヴィチ『バレエ組曲』等、興味を誘う選曲です。

場面急展開の要所アースラの登場は私の中では姫路の女役の帝王と呼んでいる金兌潤さん。
うっすら冷たく不気味な笑みを浮かべる、蛸足スカートも似合う美魔女でございました。
その後は結婚式にもひっそり現れ、アリエルと王子がスポットライトを浴びて暗転したかと思いきや次に明るくなると
アリエルと同じポーズで王子の腕に掴まっているのは扮装したアースラで、金さんが今度は白い婚礼衣装姿で満面の笑みを湛えて登場。
あちこちから笑い声が聞こえ、王子もあたふた。勿論騙されず無事本物のアリエルと結ばれ、めでたしめでたしです。

1幕物にしては大作大容量な作品でしたが、難破船に始まりカラフルな海底の賑やかさ、そして結婚式の宮廷まで場面転換が分かりやすいため飽きさせず。
幕開けからであったか記憶が定かでないものの天井から海藻が吊るされ、海の泡が次々と上昇していく照明を背景に投影していた点も
客席にいながら海底にいる心持ちにさせる効果をもたらし好印象。許されるものならば、旧海の日に生まれる予定で蟹座であり、
グラッシオさんの発表会前日には風光明媚な海景色及び海洋生物を三重県鳥羽市で堪能し海尽くしであった私も
タニシの殻かサザエの壺にでも扮して舞台の隅っこに居座っていたかったほどでございます。

最後は高岸直樹さん再振付の『ジゼル』全幕。久々の再演のようで、1幕と2幕のジゼルとアルブヒトを交代制で上演する珍しい配役でした。
1幕のジゼルはいつも主演されている振付指導の先生で、今回出産を経ての舞台とのこと。実にまろやかで上品な、村の中では異質な存在感で
母親からそれはそれは大事に育てられた過程が自然と見えてくる可憐な少女でした。
ブランクは全く感じさせず、それどころか例えば周囲に目を向けるときも脚をそっと差し出すときも全てに対して心から愛おしむような仕草で魅せてくださり
踊る喜びがそのままジゼルの初恋の幸福感に重なり、何度も頬が緩んでしまったほどです。
そして1幕アルブレヒトには山本隆之さん。当初1幕のみのご出演と知って、2幕の百合マントまでは拝見できたらと
あたかもミルタに命乞いをするアルブレヒトと同様に何度も懇願してしまいましたが、1幕のみでも拝見できああ感激。
村娘に恋する、扮装しても農民には無理がある(賞賛の意味)高貴な青年に今も違和感が無く
花占いで落ち込んだり、目を合わせるだけでも恥ずかしく精一杯状態なジゼルに対する接し方の優しいことよ。
身分偽っていたとしても多重婚約であったとしても、与えてくれた幸せ をジゼルは忘れられず憎悪の感情なんぞ持てない
寧ろミルタから守って許すのも心から頷けるアルブレヒトでございました。

東京バレエ団で長らく踊ってこられた高岸さんの再振付のためかペザントは東京バレエ団と同じく男女8人構成で迫力あり。
最後対角線状にリフト、身体傾け体勢、と立体的に並ぶ箇所も踏襲されていて嬉しくなりました。
全体の衣装が黄色を始めからっとした色味で整えられ、愉しい村祭りな空気感も丸。意見は割れるでしょうが
いくら中世ドイツの当時の装いのリアリティに欠けているであろう色見本の如き配色であっても、ジゼル1幕が茶色一辺倒であるは苦手でして
祭り且つ2幕は寒々しい色彩ですから1幕は花々を想起させる色で揃えて欲しいと思う派です。
ジゼルの衣装が淡い水色であった点も私としては好みで、ジゼルは青が理想と掲げているわけではなく
汚れ無き心の持ち主で透明感のあるヒロイン像及び着こなしが自然な助教師の方の容姿や雰囲気双方にいたくぴったりであったと捉えております。

2幕のジゼルがもう1人の教師の方で、小柄で技術盤石な美しさも兼備。特にウィリとしての登場における歩き姿の
首筋から顔にかけての横向き佇まいがそれはそれは惚れ惚れするライン。
ここで2幕の印象がまず決まるといっても過言ではない場面にてはっとさせられる美が目に飛び込みました。
2幕のアルブレヒトは宗近匠さん。名演者山本さんのアルブレヒトから引き継ぐのは相当の重圧であったと察しますが
意外と申したら失礼ですが後悔の念を静かに引き摺る様子がさまになっていて気品も十分。無駄な力のない、すっきりと上品な踊り方も好印象で
貴公子系の役では初めてお目にかかりましたが、山本アルブレヒトをしっかり引き継いでいらした印象です。
まだ温もりと愛情が強く残り、アルブレヒトを励ますように接するジゼルと、悲嘆に暮れ懺悔状況にあるアルブレヒトが
僅かではあっても少しずつ心に晴れ間を取り戻して行く感情の通わせがパ・ド・ドゥからも伝わりました。
見るからに恐怖感を押し出しているよりも、全員のひたむきな姿勢が自ずと統制の取れた
加えてヒラリオンやアルブレヒトに対する冷ややかな追い詰めに繋がっていると見受けた生徒さん達のウィリにも拍手を送りたい思いでおります。
熱く命乞いをするヒラリオンの金さんを取り囲んで踊らせる非情な場もおどろおどろしい展開に震え上がった次第です。

尚お墓は廃れ倒れたものではなく、名前を彫られたどっしりとした十字架で、村娘のお墓にしては完成が早過ぎる、
或いは立派過ぎるとのご意見もあるでしょうが私の考えでは理想な重厚感。舞台機構によっては、ウィリとして登場退場に用いる
エレベーター付きハイテクお墓も歓迎。管理人、ロシア系の版のジゼルが好みでございます。

基本バレエ・コンサートや小品ではなく大作の創作と古典全幕、更には子供達中心の大きな作品を組み込んだ構成で
大人数で1つの作品に取り組み披露する過程を大切にした方針を、グラッシオさんの舞台初鑑賞時から毎回讃えたい思いでおります。
特に昨年や今年はこの状況下、大勢が集まってのじっくり時間をかけた練習は困難であったと想像でき、本番当日までに間に合うよう形にして仕上げ
新しいアクリエの大ホールにて観客の前で披露した集中力や妥協しない姿勢に今一度拍手を送ります。
次回再び姫路にてお目にかかる機会を今から心待ちにしております。

※2009年の発表会で同じく『ジゼル』『リトルマーメイド』を上演、舞台写真が掲載されています。
  このときにも上演された『白の組曲』は2017年のグラッシオさん初鑑賞時に目にでき、ラロの曲も用いつつ衣装は似ていてもリファールの振付や音楽とは異なる構成で
中でも東洋の濃厚な香り漂う「モロッコ舞曲」が含まれていたことに管理人、まさかの姫路でこの曲に耳を傾けるとは想像もせず。
当時DVD購入から3ヶ月も経過していなかった、及び繰り返し鑑賞していたカデル・ベラルビさん版『海賊』のテーマ曲として作品中で流れていましたので
ひっそり購入鑑賞していたはずが誰かに見透かされているように思え、大衝撃であったのは今もよく覚えております。
http://www.grazio.jp/gallery/contents000046.html



※以外写真多数。辛抱強さに自信のある方はどうぞ。大型連休前にそんな暇は無いとの方は恐れ入ります。
次回更新予定の管理人ズンドコドッスン日記まで今暫くお待ちください。




鑑賞前日に訪れた三重県鳥羽市。ミキモト真珠島を背景に真珠を掲げるラッコ。まさに海と真珠。



姫路には前日の夜到着。姫路駅北口を出ると、視界良好な大通りから姫路城が見え、今年も出迎えてくれました。
2017年、2018年、2019年に続き3年ぶり4回目の訪問です。駅を出てこの景色が目に入ると、姫路に来た感が沸き上がってきます。
尚、宿泊したホテル上階の展望大浴場からはライトアップされた姫路城が眺められ、大変お手頃なビジネスホテルであっても大満足。
しかもお風呂、貸切状態でございました。(サウナも併設)
泳いではおりません、誤解無きように。



おはようございます。今回も姫路、快晴でございます。4度連続雲1つない青空に恵まれております。
(2018年か2019年は発表会当日は雲がかった空のときもありましたが前日入りしたときは快晴)
グラッシオさんの関係者に、晴れ女か晴れ男がいらっしゃるとしか思えません。
姫路市中心部は自転車が便利、西松屋さんが提供している?ミミちゃん号は初見。あちこちに貸出返却場所があります。
道路が広く自転車用の道も整備され、中心部は坂も少ないため快適にスイスイ。



葡萄屋外観。ホテルから自転車で約10分であったかと思います。
曲がり角が1箇所しかなく、ほぼ直進。曲がる交差点の名称さえ頭にいれておけば迷子の心配もありませんでした。
帰りは脳内にてヒラリオンの暴き出し修羅場直前までの1幕ギャロップを再生しながら貸出返却場所へ。



これがなくては管理人の姫路の朝が始まりません、姫路名物アーモンドトースト。アーモンドバターを塗ったトーストでございます。
香ばしい甘さでパンも大きくふっくら。しかも店名が葡萄屋!朝から葡萄祭りです。石造りな内装もジゼルの時代、地域と重なります。
姫路にてジゼルを鑑賞する日に葡萄屋で地元の名物アーモンドを食する、これ以上の朝があるでしょうか。お箸袋の狐さんが葡萄を抱いていて可愛らしい。
お店によってはスライスアーモンドを用いているところもあり(みゆき通りに位置するはまもと。3年前に行き、こちらもお勧めです)食べ比べも楽しいものです。



一旦返却し、(1時間を超えると追加料金が発生。1時間以内の返却ならば現金では100円のみでした。クレジットカードやICカードでは異なるのかその辺りは把握できず)
再度借りて姫路城へ。武士の格好をなさった方々が城門にて出迎えてくださいます。
青空に白いお城がよく映え、押し歩きであれば姫路城内部への入口までは自転車も入って問題ないようです。せっかくですのでミミちゃん号と撮影。
ところでこれまでの鑑賞旅にて何度も自転車を現地で借りておりますが、
(姫路では3年前はホテルで無料サービスあり。前日にラピュタな風景を見たいと竹田城へ登ったため翌日は歩きづらく、自転車大助かり)
また初の姫路訪問時の安田敬子バレエスクールさんの舞台鑑賞2009年、その他京都市、福島県白河市、しまなみ海道、と
各地で借りるたび利用する自転車には勝手に「チャリ子」と名付け、リラが聞いたらセンスの無さに
危機一髪時も魔法すらかけずに飛び去っていくのは目に見えておりますが
今回はミミちゃん号と名が付いておりますためリラも一安心でしょう。



毎度の撮影場所、藤の花と姫路城。両方を1枚に収めたくなるのです。



武士は決して、ソーシャルディスタンスとは口走りません。そういえば、4年前の上野の森バレエホリデイ(今年も開催)にて
バレエの登場人物をイメージするワインの1種として紹介されていた「ジゼル」ワインの味の特徴として、「武士のように折り目正しい」と記されていました。
それにしてもシルエットのみとはいえ、この横顔に当て嵌めたいお人が1名。ちょうど今月の新国立劇場カレンダーにも横顔映っていますが、和洋どちらもお似合い。
今は姫路の話ですので次行きます。



こちらも4回連続姫路城を眺める同じテラス席にて播州の地酒。つまりは4回連続一度も降雨にあたったことがない。



ボリュームのある蒸し牡蠣。そのままでも十二分にまろやかな旨味があり、レモン汁をかけるといたく爽やか。



会場は姫路駅から徒歩約10分のアクリエ姫路。駅からバスで向かっていた姫路市立文化センターが閉館し、まだ開館したばかりのホールです。
大ホールは約2000人収容、綺麗でロビーも広い作りでした。



帰りは会場に向かう道中で見つけた播州の酒場へ。これまで終演後は3回連続駅前のフェスタビル内にあった
播州の素材をたっぷり使ったイタリア料理店に行っておりましたが残念ながら閉店。
次を探していたところでしたがこちらの酒場が大当たりで、まず生ビールからして心から美味しいと思える味。
サーバーの手入れが行き届いていると思われます。
そしていくら播州の名物でもこれまで敬遠してきた穴子の美味しさに感激し、ふっくらとした身に焼き加減はかりっと。タレも甘過ぎず。



姫路の北に位置する市川町の卵のだし巻もつややかで上品。そしてお酒が進むおばんざいばかりです。



葡萄祭りはまだ続き、姫路でジゼルを堪能した夜に傾けるワイン。姫路おでんは生姜醤油に、私は1幕アルブレヒトの余韻に浸っておりました。
それはさておき、舞台も料理も作品も存分に味わい、再び訪れる機会がありますように。
さらば姫路、また会う日まで!!



※おまけ
2018年のゴールデンウィークでの上野の森バレエホリデイ(今年も開催)にて引いたバレエみくじ。結果はジゼルでございました。
姫は勿論、純情可憐なヒロインなんぞ私に最も合わぬキャラクターであるのは承知しているものの、
また1人ではなく2人のアルブレヒトが即座に浮かんだ時点で一途な性格ではないのでしょうが笑
結果は結果ですので、喜ばしく捉えておりました。心臓よりも肝臓要注意な管理人でございます。葡萄酒も吉とのことで、飲んだジゼルワインで乾杯です。
待人、花を抱いて来たるとの文字に、可能ならば私が墓に入る前にお越しくださることを願いたい。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

さえちゃん こんにちは
身内が入院してバタバタしていたため この公演の日を失念してしまいました
詳しく様子が伝わって来ました。さすがの記事に とても楽しませて頂きました
姫路の良さも堪能出来ました
来年はきっと足を運ばせて頂きたいと 思いました
ありがとう。お身体大切に  

管理人 さんのコメント...

こんばんは、お読みいただきありがとうございました!
ご親族の方の入院で、心身が大変でいらしたかと察します。
慌ただしい最中、目を通してくださり私も嬉しく、ありがとうございます。
長いばかりで姫路市内の観光飲食日記も多くを占めてしまいましたが、少しでも訪問した気分に浸っていただけたならば幸いです。
グラッシオさんの全幕作品上演に取り組む姿勢に今回も感激いたしました!