2022年4月10日日曜日

【今となっては懐かしい近年の来日公演写真も多数】『物語とみどころがよくわかる名作バレエ70鑑賞入門』




渡辺真弓さんの著書『物語とみどころがよくわかる名作バレエ70鑑賞入門』を読みました。
https://www.sekaibunka.com/book/exec/cs/20210.html

70本の作品を細かく12の部門別に紹介し、チャイコフスキー三大バレエに始まり、
後半にはマクレガーの『ウルフ・ワークス』やエイフマンの『アンナ・カレーニナ』も登場。
作品紹介ではまず解説、次にみどころ、の2つの分けて書かれていて、読みやすく頭に入りやすい構成です。
その他解説コラムにはバレエ史や地域ごとの潮流や展望まで、要点を挙げて分かりやすく綴られています。
『ダイアナとアクティオン』や『アレルキナーダ』等ガラで馴染みあるパ・ド・ドゥや小品についても成り立ちの背景が紹介され、
今後しばらくは来日公演においてはガラの上演機会が増えそうな状況下(本来はバレエ団公演として全幕物或いは
トリプル・ビルのような構成で持ってきたいのでしょうが)知っておきたい内容がたっぷりと詰まっています。

発行が2020年8月で、写真ごとに具体的な年月日は書かれてはいませんが掲載写真は比較的最近と思われる公演が大半を占め
海外のバレエ団写真は殆どが来日公演時のものを採用。(記憶媒体弱小な私でも写真1点1点を目にしてすぐさまいつの来日公演か思い出せましたので
来日公演にも足繁く通っていらっしゃる方や精通者の方々は舞台内容や発生したハプニングに至るまで脳内を急速に巡ることと存じます)
鑑賞した公演もあれば鑑賞日とは異なるキャスト、またダンスマガジン等で見覚えのある公演や友人知人から感想を耳にした公演が集結し
そう昔の公演写真ではなくてもバレエ団としての来日が困難状態にある今となっては懐かしさすら募ってしまいます。
綺麗なカラー舞台写真ばかりで心華やぐ気分となりつつ、すらすらと読み進める書籍です。是非お手に取ってご覧ください。
私としては、2006年『ロパートキナのすべて』でのロパートキナのパキータ、同年ボリショイ『ファラオの娘』での
アレクサンドロワ主演写真の掲載がまことに嬉しく、上野に通い詰めた日々を思い出しております。

ロシアバレエ界の展望のページにおける、2017年にパリ・オペラ座のローラン・イレールがモスクワ音楽劇場バレエ団芸術監督就任の箇所が視界に入ると
イレールがウクライナ侵攻に対して厳しい批判を表し今年辞職した報道が脳裏をよぎり、
『白鳥の湖』写真のボリショイ・バレエ団デニス・ロヂキンと『パリの炎』写真のミハイロフスキー・バレエ団アンジェリーナ・ヴォロンツォーワの2人は
予定していた今年の牧阿佐美バレヱ団6月公演『ノートルダム・ド・パリ』への客演が叶わなくなり
バレエ団単位どころか単独での客演も難しい状況と化。ボリショイ・シネマも再開可能かすらも分からず
ロシアバレエ界が閉ざされつつある気がしてなりません。今後の動向をより注視していきたいと思っております。


※表紙は新国立劇場バレエ団『ライモンダ』客演時のスヴェトラーナ・ザハーロワ。第1幕、大きな百合の紋章が美しい白い衣装です。

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