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2022年4月27日水曜日
ハリコフ産の壮麗なバヤデール装置と何十年ぶりに目にした恩師 東京インターナショナルバレエカンパニー Bright Ballet Performance Peace for Ukraine ウクライナに平和を 4月23日(土)
4月23日(土)、めぐろパーシモンホールにて東京インターナショナルバレエカンパニーによる
Bright Ballet Performance Peace for Ukraine ウクライナに平和を 公演を観て参りました。
http://tokyointernationalballetcompany.com/
団体そのものは存じていながら詳しく知らずにおりましたが、目黒区に本部を置く、ウクライナを始め国際交流も盛んに行っているカンパニーで
系列には国際高等バレエ学校や小さな子供から通える、カリキュラムも充実したスクールもあるようです。
第1部はグラン・パ・ド・ドゥ3本。ほんわかと可愛らしく、それだけにとどまらずアダージオにて
音楽がやや寂しげに転調する箇所も細やかに踊っていた『アレルキナーダ』、随分とゆったりテンポに驚きながらもきちんと美しく、癖のない踊りで魅せていた黒鳥、
そして晴れやかにカラッと締め括った『ドン・キホーテ』をいずれも伸び盛りのダンサーの方々が披露。
尚プログラムには役名も明記されていた点も好感を持ち、全幕のあらすじを再度思い出す効果もあったように思います。
アレルキナーダはそういえば全幕では滅多に上演されず、一昨年は映画『ミッドナイト・スワン』にて
主人公のコンクール挑戦時の曲としても随所に流れ、妙に耳に残ったものです。
第1部は『ラ・バヤデール』より第2幕ガムザッティ結婚の場と第3幕影の王国。スクールの小さな生徒さんから東京シティバレエ団やNBAからのゲストまで
大所帯の総出演で衣装もパ・ダクションのくっきりとした赤からオウム隊の天女のごときエメラルドグリーンとピンクを帯びたスカート、
扇隊の抑えた水色で彩ったオリエンタルな装い、と衣装も予想以上にゴージャス。舞台全体が華やぐ宮殿と化していました。
大人数構成の太鼓の踊りがあった点も喜ばしく、ニコライ・ヴィユウジャーニンさんの衣装が
どう見てもアリであったのはさておき、大張り切りで舞台を牽引されていて見応えがございました。
ガムザッティはミストレスも務められたNBAバレエ団の阪本絵利奈さんで、テクニックも押しも強く(この役において両方大事!)
登場からして女王然とした歩き方で場を支配。衣装が白地に金色の組み合わせでオーロラ姫にも見えるデザインであっても
ソロルへの勝ち誇った視線やダイナミック且つ隙のないヴァリエーション、色鮮やかな群舞に囲まれても
後にも述べますが壮麗な装置にも埋もれぬ存在感も目を惹くフィナーレ、と身体全体で役を語っていたためか気にならず。
花籠を持つニキヤに対する冷たい目が美しくも恐ろしく、ソロルの心が引き裂かれるのも無理ありません。
ワディム・ソロマハさんがお人好しそうなソロルで、ガムザッティに怯え、ニキヤから目を逸らそうとする板挟みな表現も説得力がありました。
ニキヤは国際高等バレエ学校出身で東京バレエ団団員の池内絢音さん。清純そうな容貌に魅入るも、
痛切に訴えるように内側から悲しみを滲ませていく奉納を披露。ソロルが涙しそうになるのも仕方ありません。
大僧正からの解毒剤拒否は確固たる意思、ソロルへの尽きぬ想いを感じさせる仕草で
仮に上演されていたら1幕での逢瀬からの展開が繋がっていると思わす最期を示していらした印象です。
ラジャは留学斡旋IMPRESSARIO代表取締役、日本ワガノワ協会代表理事のアンドレイ・オルロフさん、
大僧正は元ベラルーシ国立バレエ団のマクシム・グジェレフさん。裾の長い、重たいカーテンの如き衣装で古代インドの宮殿を両脇から支えてくださっていました。
そして先にも述べましたが、幕開けから圧倒されたのは舞台装置。2015年に上演した夏休み親子芸術劇場『ラ・バヤデール』全幕のために
ウクライナ人デザイナーのナディア・シェヴェツさんが手掛け、ウクライナ国立ハリコフバレエ・オペラ劇場で製作されたとのこと。
太い曲線を生かした大胆なタッチで、彫刻の立体感の再現も十二分。樹木から長く伸びる枝の絡み具合が
お国は異なりますがカンボジアのアンコールワット遺跡や天空の城ラピュタを想起させ、圧巻のスケールでした。
現在のハリコフの状況を思うと報道を目にするのも辛く言葉も出ませんが、日本のしかも夏休みの子供向け公演のために
寧ろ本公演でこそもっと多くの登場を願いたい壮麗な装置製作が行われていたとは初めて知りました。
影の王国は32人コール・ド編成で、坂は無しであっても次々と幽玄に現れる影達の連なりに息を呑んだ次第。
白い満月が中央上部に描かれうっすらと山の稜線が見える
青みがかった水墨画のような山並みの背景との調和も見事でございました。
団体名称は見聞きしていながら活動内容や国際交流歴のついても知らずにおりましたが
ウクライナとの交流の深さに驚き、抜粋であっても壮麗豪華なバヤデールを堪能いたしました。
※ラ・バヤデール舞台装置について、写真も紹介されています。
http://tokyointernationalballetcompany.com/rental/
さて、公演内容は気になり足を運んだわけですが舞台と同様に着目していたのはカンパニーの代表であり公演のミストレスも務められた大串千恵子さん。
コンクール入賞者として参加したパリ研修に大串さんが引率してくださり、大変親切でとても良くしていただいたと
これまでの旅路で知り合った方からも聞き、(お嬢様が研修に参加されたそうです)我が事のようにも喜んだものです。
実は大串さん、私が子供の頃に通った教室の先生で子供時代の恩師の1人なのです。卒園した幼稚園の園長先生のご令嬢で、
放課後の幼稚園にて教室を開き指導を始められ、私も通い始めたと記憶しております。
ただ習い始めた頃、千恵子先生は既にヨーロッパに行かれていたため主として他の先生にお世話になり接点はさほどありませんでした。
しかし、当ブログでも度々綴っております、我が唯一の全幕経験こそが大串さん版『シンデレラ』で
私が『シンデレラ』の作品そしてこの春、更には今週末からも都内にて立て続けに開幕する『シンデレラ』及び『ロミオとジュリエット』始め
プロコフィエフの音楽にどっぷり惚れ込んでしまったがゆえにチャイコフスキー三大バレエが面白くないとまで口走ってしまう事態に至るほど
プロコフィエフ好きになるきっかけとなったのは、作品を振付指導してくださった、紛れもなく千恵子先生の影響なのです。
これ以降は千恵子先生と書かせていただきますが、千恵子先生版『シンデレラ』は乳母と愉しく遊び、乳母による絵本の読み聞かせに耽るうちに
子供達がシンデレラのお話の世界に迷い込み、シンデレラを救出したり舞踏会の見送りを手伝ったりと活躍する大胆な解釈、台本でした。
つまり、アシュトン版は微塵もかすっておりません。生徒数30人弱で様々な役を各自2役か3役兼任しながら全幕実現でした。
当時から鑑賞を好む身であった私でしたが同世代の生徒の中では背が高く、なぜだか子供のリーダー役となってしまい(実力はゼロでしたが)
千恵子先生版シンデレラの詳細や発表会における我が珍騒動及び私が即座の教室退会を回避できたのも千恵子先生のおかげであった話はまた別の機会に持つとして
プロコフィエフ作曲のバレエ作品上演が相次ぐ年の春に、しかも奇しくもプロコフィエフの誕生日であった4月23日に
あの日の発表会以来何十年ぶりであろう久々に恩師千恵子先生のお姿を拝見できたのは、単なる偶然とは思えず。年月を経ても当時の面影ははっきりと残り、変わらず品格を備えた先生がパーシモンの舞台上にいらっしゃいました。
ロビーにて展示されていたハリコフの様子。綺麗な街が崩れ去り、多数の犠牲者が出ている現実に、言葉が簡単には出てきません。
帰り、乗り換え駅にてビールと東京ボルシチ。ビーフシチューのようなコクと、サワークリームとレモン効果で爽やかさもあり。平和を願いながら乾杯です。
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