2022年2月24日木曜日

コンパクト構成ながら多彩で見応えあるガラ  Kyoto Ballet Gala Special  2月19日(土)《京都市》




2月19日(土)、ロームシアター京都にてKyoto Ballet Gala Special を観て参りました。
http://www.kyoto-ballet-academy.com/a_ballet.php

http://www.kyoto-ballet-academy.com/upload/a_ballet/1638416121_1.pdf

京都バレエ団のダンサー、そして京都バレエ団と所縁の深い方々集結しコンパクトな構成ながら趣き様々な作品で楽しませてくださいました。
幕開けはショパンの軍隊ポロネーズで全員が登場。『ショピニアーナ』の序奏として演奏される、景気付けにも良さそうな勇壮な曲調でございます。
トップバッターはゼンツァーノの花祭り。京都バレエ公演での『くるみ割り人形』での気高く馨しい金平糖の女王が今も尚印象に焼き付いている
北野優香さん(京都バレエ団)の村娘役を初めて拝見。おっとり柔らかく丁寧な踊り方で魅せ、振り返るときのふわりと香る余韻に至るまでも美しや。
長谷川元志さんとも波長が合っていて、無背景であってもお花畑が見えたのは(これ大事)お2人が互いを思いやるように優しく物語を紡いでいたからこそでしょう。

『ライモンダ』よりパ・ド・ドゥは鷲尾佳凛さん(有馬バレエでバレエを習い始めジョージア国立バレエにて活躍後2020年より京都バレエ団に拠点を移されたとのこと)と
佐々木夢奈さん。演目柄どうしても目を光らせてどころか抜粋であってもジャンのマント姿が絵になるか
生死のかかった大試練を乗り越えた2人に見えるか、と爛々として観てしまうのですが
佐々木さんはきりっとゴージャスな華を広げるようなダイナミックな踊りに引き込まれ、衣装が少々ガムザッティ寄りにも見えた気はしたものの
(頭飾りは冠に豪華なヘッドドレスで中世ヨーロッパの姫らしい風味あり) 仮にグラン・パ・クラシックの面々を従えていても頭一つ抜けた存在感で牽引なさると想像できます。
鷲尾さんは昨夏東京の新国立劇場におけるバレエ・アステラス2021での初日、研修生演目3本カットである旨の開演直前告知によって
まだ観客も動揺が隠せない重たい空気の最中、登場が急遽最初になりながらも優しい雰囲気を湛えて『コッペリア』を披露し
観客をリラックスさせてくださったお姿が忘れられず。またアステラス2日目のランゲデムが観客を市場に来た人々に見立てて賑わいへと雄弁に誘い込み
カーテンコールやフィナーレにおいても全幕を観ているような気持ちになった記憶も新しいところです。
貴公子系の役は初見で、アステラスでのインパクトに比較すると手堅く抑えめだった印象もありましたが
しなやかな技巧を散りばめながら佐々木さんと力強く盛り上げていらっしゃいました。

第1部最後はブルノンヴィル版『ラ・シルフィード』より、コール・ド付きでのパ・ド・ドゥ。
シルフィード役の前澤芽依さん(京都バレエ団)が優美で脚捌きも軽やか。意思をはっきりと示す仕草もいじらしく映って妖精達を率いるリーダー格もあり。
ひょっとしたら1番の話題であったかもしれないジェームズには二山治雄さん。ローザンヌ入賞直後の2014年春のPDA東京公演以来の鑑賞ですから約8年ぶり。
細い身体の中に強靭なバネが宿っているのでしょう。一見華奢ですが跳び上がると繰り出されるパワーに驚かされました。

なかなか観る機会のない『ラ・ヴィヴァンディエール』を鑑賞できたことも嬉しく、主軸を踊られた梅本悠羽さん
(京都バレエ専門学校を首席で卒業後スターダンサーズバレエ団ジュニアカンパニーに入団)の
ゆったりめの曲調であってもぐらつかず安定感のある技術、村娘な衣装の可愛らしい着こなしにも和みました。
京都バレエ団、京都バレエ専門学校生からなる4人の女性ダンサー達の息もよく合い、中盤の全員で脚を各々高さを変えて上げる千手観音風のポーズも綺麗に静止。

『海賊』第1幕より奴隷市場のパ・ド・ドゥは牧阿佐美バレヱ団の光永百花さん(京都バレエ専門学校出身)と石田亮一さん。
光永さんは楚々とした悲しみ漂うグルナーラで淡い紫や青を重ねたチュチュもよく似合い
石田さんは奴隷商人にしては随分と品がありましたがすらりとした上背で光永さんとのバランスも良い印象です。

大トリは藤川雅子さん(京都バレエ団)と山本隆之さんによるTHE MAN I LOVE。照明が一転して満天の星々が瞬く夜空へと変わり
リフトからの降下の僅かな箇所に至るまで絡み合ったものがするりと解かれるかの如く滑らかさが宿って
手を取り合って見つめ合いながら佇む場は下手すれば時間を持て余してしまうわけですが、いつまでも浸っていたくなる静けさに溶け込む余韻にもうっとり。
大人の芳醇な色気と香りが広がっていたのは明らかです。女性はピンク色の膝上くらいの丈のワンピース風衣装で男性は上下黒で
シンプルながらいたくスタイリッシュ。この数分のみ、摩天楼が光り輝くニューヨークのブルックリン辺りに身を置いた気分で鑑賞いたしました。

フィナーレは『威風堂々』にのせて出演者総登場。演目数は少なかったものの多彩な作品や近年はお目にかかる機会が滅多にない作品も揃い、見応え十二分。
特に今回は東京にて鑑賞予定であった公演の突如の中止告知が前日になされた翌日でもあり、出演者の皆様が心の隙間を優しく埋めてくださった気がいたします。
最後に登場された代表の有馬えり子さんの嬉しそうな笑みからも、観客の前で披露開催ができて良かったと心底思えたのでした。

ロームシアターは京都会館時代も含めれば3度目の来館ですがサウスホールは初めて着席。
2階席で鑑賞したところ段差が急で階段は慎重な歩き方が求められますが、その分どの席からも見易そうな印象を持ちました。木目調の座席も腰掛け易く綺麗な内装です。それから京都弁、全く話せぬ東京人による呟きをこの場ではお許しください。

やはり舞台は生が良いどすえ。


※今回はガラでしたが京都バレエ公演の中でひときわ印象に刻まれているのは2018年『京の四季』と『屏風』の2本立て公演。
生け花との共演で着物とチュチュ両方を取り入れても繊細な美しさが彩る四季の移ろいに魅せられた前者、
冷徹さや恐怖を一層引き立てるサティの音楽が見事なまでに怪談に嵌っていた後者、と衝撃の2本でございました。
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2018/11/httpwwwkyoto-ba.html

以下、ひとまず写真何点か。その他の写真等はまた後日、ワクチン3回目接種日までには少しずつ掲載予定。



さて、今回の京都滞在は当初は2月19日(土)、20日(日)の1泊を予定しておりましたが、
2月18日(金)に行われる東京での新国立劇場バレエ団吉田都セレクション舞台稽古見学会に当選。
それならば金曜日休暇を取り、見学会終了後そのまま京都入りして美味しい夕食を味わっておこうと2泊3日に変更。
但し、1月末の新国立枚方公演の本番2日前に中止告知の例や、1月半ばのニューイヤーバレエにおいては本番は無事開催できましたが
見学会は前日の15時か16時頃に非公開の連絡が対象者に渡っていた例もありましたので直前まで待とうと様子をうかがい
枚方とは異なりセレクションは本拠地公演ともあって本番1週間前から直前にかけてメディア掲載情報更新や
なぜだかアラジン財宝の洞窟場面のルビー限定(私は歓喜したが)リハーサル映像アップと
順調に準備が進んでいると捉えておりました。
そして見学会の2日前の夜にまずはホテルを2泊3日で予約。新幹線は時間の融通がきくよう自由席にし、見学会前日に購入。
見学会前日の18時、19時と連絡は無くさあ予定通り公開、本番も開催と安心しきっていた矢先の20時30分過ぎに着信。予感は的中し、見学会は非公開に。
ホテルは2泊分決済済み予約でしたがこれはもう仕方ないと思い、予定を早めて白昼から東京を出発。
本番はどうか開催をと願いましたがそれも束の間。13時過ぎた頃、中止の発表を新幹線の車内で読んだ次第。
そんな経緯から、いつもは切り替えが早い管理人も今回ばかりは気持ちが沈んだままの京都入りとなり
到着時は晴天にも恵まれていながら行動にも至らず、まだ日が昇っている最中での夕食後はチェックイン時刻すぐにホテル入りし大浴場でしんみりでございました。
しかし翌日以降は救い、励ましにもなる滞在でございました。
諸々長くなりましたが以下写真多数ございます。忍耐力がまだ持ちこたえそうな方はどうぞご覧ください。




ホテルから徒歩10分程度のところにあるコーヒー店アストレア。苺とクリームチーズのホットサンドがまろやかさと甘酸っぱさの比率が良く、美味しい。
抹茶が濃く苦味も強い抹茶ラテも味わい深し。



清水寺。宿泊先から徒歩約30分、雨予報は出ていましたが午前中は雲間から光が射す、歩きやすい気候でした。午前9時過ぎでも人通りがまばら。
10年ほど前に、拝観時間開始直後の朝の6時に訪問したときと同じくらいかと思います。



このご時世ですので、朝10時過ぎ頃でも空いていました。時代劇のセットを見学或いはタイムスリップした心持ちとなり
お侍さんが颯爽と歩いているまたは悪党退治のため全速力で突っ切っていく姿を想像。
お店の方曰く、以前は写真を撮っても人の頭しか写らなかったほど賑わっていたようです。



ジブリグッズを扱うどんぐり共和国、京都にもございました。町家風の建築で街に溶け込んでいます。
トトロのぬいぐるみを購入し、マイバッグ、ならぬマイ風呂敷に包んで愛おしそうに手に持って歩くお侍さんが目に浮かびます。
裏側の入口には、トトロに登場する井戸やバス停もございます。



何度か京都を訪れていながら湯豆腐をいただいたことがなく、歴史ある総本家ゆどうふ 奥丹清水へ。



おきまり一通りをいただきました。澄み切った熱さが身に沁み渡ります。庭を見渡し、時折鳥のさえずりが音楽として耳に入ってくる静かな空間でした。



12時頃ホテルに戻り、その後暫くすると予報通り降雨。会場へ向けて出発する16時頃までは室内のテレビで動画鑑賞しておりました。
最近できたホテルでテレビ画面が大きく、画質も綺麗。複数の動画サイトも視聴可能。
京都に来てまで何をしているんだか、と思われるのは重々承知しておりますが、前日に発表された新国立劇場バレエ団2月19日(土)、20日(日)、23日(水祝)の
吉田都セレクション全日程中止のショックをこのときはまだ引き摺っており、新国立バレエやオペレッタ『こうもり』演奏会映像を視聴せずにはいられませんでした。
五輪のフィギュアペアやカーリングもこの画面で視聴できたのは嬉しいことで、インテリアの和風なランプも素敵でございます。(ああ、アラジン涙)
ちなみにお風呂はバスとサウナの2種あり、男女日替わり制。バスは所謂大浴場で、浴槽の上からほんのり神秘的な水色の照明が射し込む作り。
何かで見た記憶が過ぎり、そうです。こちら京都府ご出身で現在新国立劇場バレエ団ファーストソリストとして活躍中の木下嘉人さん振付『人魚姫』の照明を彷彿。
この作品は昨秋の中劇場公演にて初演され、そしてファン投票で選ばれ吉田都セレクションにてオペラパレスでも上演予定でした。(ああ、人魚姫)
大浴槽の中央に浸かって揺らめく水色の光を浴びていると、気持ちだけは人魚姫。しかしのぼせないよう気をつけましょう。
フラリとしても、王子はおろか誰も支えに来てはくれません。これが現実。



終演後、ホテルに戻り、1階にてハイボールで乾杯。



   
ホテルでの朝。勝手に名付けた、京都でニューヨークな朝食。朝食つきプランではなかったため別料金を支払い帰りの朝、いただきました。
サーモンベーグルとアボカドマフィン。自家製レモネードがきりっと酸っぱさがあり目覚めにぴったり。
サーモンベーグルは写真で目にしたときから食してみたかった一品でございます。
そういえば、Who care's?は関西の発表会であったか、一度しか観たことがなく(似通った作品は各地で観ているが)本家の舞台でも観てみたい。



ポークとチーズを挟んだホットサンドと卵サンド。サンドイッチとレモネード、美山産ソフトクリームは注文制。
サラダやスープ、デザート、コーヒー紅茶はセルフサービス。どれもおかわり自由です。種類こそ多くはありませんが、全部制覇。
(中高年のいずれかに達しても我が胃袋はよく働いてくれております)



パッケージも艶やかな和の美、京(みやこ)紅茶。ああ、セレクション涙。
アイスティーの香り高さ、味の濃さが誠に好みで、茶葉の種類が気になるところ。



帰り道、京都タワーを眺めながら徒歩で京都駅へ。このあと新幹線でそのまま東京の初台へ直行、の予定を変更し墨田区のスカイツリー周辺へ。
東京での公演中止の悲しみを引き摺ってしまった感もあり、またゆっくり観光はせずの帰京となりましたが、西の都の滞在に救われた思いでおります。
さらば京都、また会う日まで!!

2022年2月18日金曜日

新国立劇場バレエ団全面協力書籍『楽しいバレエ図鑑』






なかなか気分が上がりませんが(詳細は後半にて)、いつまでもそう言っていられませんので遅ればせながら素敵な書籍の紹介でございます。
昨年12月、小学館より『楽しいバレエ図鑑』が発売されました。
監修はバレエチャンネルでのインタビューや企画でお馴染みの阿部さや子さん、そして新国立劇場バレエ団が全面協力しています。 https://www.shogakukan.co.jp/books/09388750

色鮮やかな写真が多数掲載され、装丁も立派な書籍。バレエの成り立ちから三大バレエや古典全幕、
『不思議の国のアリス』や『アラジン』といった作品紹介もあれば衣装の秘密にも触れています。
ふりがな付きですので子供にも読みやすい文体ですが、イーグリング版『くるみ割り人形』舞台装置の仕組みや裏側に
『ライモンダ』(2006年のニューイヤーでの3幕上演かも)衣装合わせの様子や頭飾りの保管、
そして指揮者アレクセイ・バクランさんへのインタビュー等、メイクが出来上がるまでの過程等バレエ精通者の方々にとっても興味が尽きぬ内容満載です。
新国立劇場バレエ団の比較的新しい舞台写真も掲載され、直近では配信のみになってしまった2021年のローラン・プティ版『コッペリア』。
この書籍購入の決め手となった、千秋楽のフランツとコッペリウスによるグラス掲げてシャンパン乾杯の写真もございますので(そこかい)是非お手に取ってご覧ください。
管理人、透明人間になったら何をしたいですかとの質問があれば、このパーティーに紛れ込みたいと申すことでしょう笑。
(何時の間にかコッペリウスのストックシャンパンまでもが減り続ける現象が発生しそうですが)
話を戻します。決して大規模ではない書店でも取り扱いがありましたので、入手はしやすい書籍かと思います。ただ気になったのが私の地元書店における売り場の位置で
音楽演劇系書籍でもなくスポーツでもなく何とか坂のアイドル写真集の隣りに置かれていたのは謎でございます。






それから、本来ならば2月19日(土)、20日(日)、23日(水祝)に予定されていた新国立劇場バレエ団吉田都セレクションが中止となってしまいました。
実は2月18日(金)に予定されていたゲネプロ(舞台稽古見学会)に当選。前日17日(木)の19時時点では何も連絡がなかったため公開実施するものとどこか安堵しておりました。
今年のニューイヤーバレエではゲネプロ前日に非公開の連絡があったそうですが日中の連絡であったようで、また本番は無事全日程開催できた経緯から
今回ゲネプロ前日の19時時点で何もない、つまりは公開実施及び本番も開催と信じて疑わず。
しかし20時半過ぎ頃に着信。ちょうど五輪のフィギュア女子シングルフリーを視聴していたため気づくのが少し遅れてしまったのですが
気づけば10分間に着信が何本かあったもよう。電話番号からして渋谷区周辺であるのは想像がつき、折り返すと案の定新国立劇場でございました。
まずはゲネプロ見学予定者と連絡がつくことが第一だったのでしょう。書類の音や飛び交う声も電話越しに聞こえ、相当慌ただしい様子であったと窺えます。
『マノン』からまもなく2年、スタッフの方々の労苦がこうも長く続いていることに苦しさを覚えずにはいられませんでした。

そして翌日昼頃に公演中止が発表。ただ誰のせいでもない事態ですし解決策も未だ見つからず、関係者の方々の心境を察すると辛さで出る言葉もありません。
今回は延期演目がまたもや上演不可能となり、一度は撮影し掲示したポスターや配布したチラシも幻となり
演目を変えてのチラシやポスターも作り直していただけに、また1月末の大阪府枚方公演に続く中止となってしまい吉田監督の心身も心配です。
全て再演演目とはいえ、観客投票で選ばれたダンサー振付作品の中劇場を飛び出してのお披露目企画や
『こうもり』初役木村さんのベラ、年齢を重ねた今だからこそ再度観てみたいと思う井澤さんのヨハン、
ベラ&ヨハンでは初めて組む小野さん福岡さんペアやカンカン娘トリオ、よく見ると店長、中堅、新人と序列がありそうなギャルソントリオの配役、と
面白味の連続となりそうで楽しみでございました。シュトラウスの軽快な音楽もこのご時世、一層の幸せを降らせてくれたと思います。
『アラジン』財宝も奇抜でゴージャスな宝石達のめくるめく連鎖はいつ観ても心が昂ぶり、
大抜擢横山さんのダイヤモンドにワクワクとしておりましたし昨年夏の井脇バレエガラでは珍しくも呼吸合う味わいコンビを発揮され、
本拠地初台では初めて組むルビーの奥田さん渡邊さんペアも関心が膨らむばかりでございました。リハーサル映像が公開されたのはせめてもの救いです涙。
そうは言っても渡邊さんの半裸及び茹で卵並みにツルッとしたフォルムも美しい坊主の官能ルビー、観とうございます。
残念であるのは山々ですが一番苦しいのは神経を擦り減らしながら感染対策を取りつつ練習に励み準備を重ねていたにもかかわらず
直前に中止を告知されたダンサーやスタッフの皆様でしょう。上演と関係者、会場に集まる人々の安全確保の同時遂行の難しさを再び思い知らされました。
次公演は無事開催できますように。

2022年2月13日日曜日

【家族が鑑賞】【おすすめとのこと】ミュージカル『雨に唄えば』





私の鑑賞記ではございませんが、鑑賞した家族の1人が感激しておりましたので紹介いたします。ミュージカル『雨に唄えば』、大変おすすめとのことです。
https://singinintherain.jp/

私の知人の何名かが鑑賞予定であると話したところ突如観たくなったようで、公演日直前にチケットを購入。
テーマ曲以外は予備知識無しで足を運んだそうですが、最初から最後まで楽しくも華やぐショーが次々と表れ、照明や装置、衣装も奇抜になり過ぎずお洒落なセンスで
何より、アダム・クーパーの歌の上手さの仰天したとのこと。マシュー・ボーン版『白鳥の湖』での印象が強く
まさか吹き替え無しで張りのある歌声を披露し続けているとは驚愕であったようです。
また傘を用いて大勢で披露するワクワクと心浮き立つダンスや、大量の降雨量演出も興奮へと誘われたとのこと。
傘の裏がそれぞれ異なる色で、覗く度にカラフルな色彩が舞台いっぱいに広がる光景にも見入ったようです。

そして幸運なことにその日は数日前に急遽決定したアダム・クーパーによるアフタートークショー開催日。同日に鑑賞なさる方から聞いたため公演前日にその旨を伝えると
プレイガイド等に掲載が無く、高額席購入者或いは限定イベントであろうと半信半疑な様子でしたが(本当に直前決定のため大々的掲載が間に合わなかったのかもしれません)
いざ当日会場に着くと告知の貼り紙があり、ようやく信じたもよう。終演後暫くすると公演オフィシャル?パーカーに着替えたクーパーが登場し、
司会進行のプロデューサーと通訳さん、そして観客と一緒に心からトークタイムを楽しんでいる様子で、語りたいこと山積みであったのであろうと思ったようです。
昔から歌を学んでいたことや1月公演が中止となり緊迫した中やっと開幕できた喜びが
プロデューサーの方とクーパーのやり取りが弾むように伝わり、聞き入ってしまったとのことでした。

東京公演は本日で千秋楽を迎えますが、今週金曜日からは大阪公演が開始。残席にまだ余裕があるそうで、お値段も座席によっては東京より低めの設定だとか。
関西圏の皆様、この期間大阪周辺に御用のある方、是非足を運んで欲しいと勧めておりましたのでここに記した次第です。
https://kyodo-osaka.co.jp/search/detail/3660







ふと思いましたが、雨を題材にした歌でこの作品のテーマ曲ほど明るさに満ちた曲は珍しいと思え
状況と矛盾いたしますが心に光がふわっと射し込んでくる、そんな気持ちが上向きになる歌であると思っております。
雨を歌った曲として私が即座に浮かぶのは欧陽菲菲さんの『雨の御堂筋』、内山田洋さんとクール・ファイブの『長崎は今日も雨だった』(前川清さんの印象強し)、
八代亜紀さんの『雨の慕情』、森高千里さんの『雨』の4曲で発表の時代は各々違えども悲哀や失恋、哀愁がじっとりと滴る作風でございます。
そういえば、アルベールビル五輪のフィギュアスケートエキシビションにて、女子シングルで銀メダルを獲得された伊藤みどりさんが
レインコート衣装で傘を手に『雨に唄えば』に合わせてにこやかな表情でチャーミングに滑っていらした姿が今も記憶にあり、
雨の曲ながら何て希望が広がるような曲調であろうかとじっと耳を傾けてしまった30年前の冬が今も思い起こされます。

2022年2月11日金曜日

スティーヴン・スピルバーグ版 映画『ウエスト・サイド・ストーリー』





スティーヴン・スピルバーグ監督が手掛けた映画『ウエスト・サイド・ストーリー』を観て参りました。
記憶の限り、ミュージカル映画を全編鑑賞したのはサウンドオブミュージック以来かもしれません。
https://www.20thcenturystudios.jp/movies/westsidestory

見所が詳しく紹介されています。1961年版にアニータ役で出演していたリタ・モレノがスピルバーグ版のオリジナルキャラクターとして登場。
過去の経緯から、対立するジェット団シャーク団の間に立つことができる唯一の人物であったかもしれません。
https://www.gqjapan.jp/culture/article/20220208-west-side-story






まだ公開初日を迎えたばかりですので控えめに綴って参ります。(そう申しながらも毎度終わりが見えぬ展開になるのは
北京五輪開会式での予定時間大幅延長の要因となったIOC会長スピーチと変わりなく、反省の日々でございますが)

音楽は聴く機会が多くよく知りながらも1961年のリチャード・ベイマーとナタリー・ウッド主演版を含め作品を全編通して観るのは初で
名曲の数々の登場順序やどの場面にどう入るのかやっとこさ把握。また『ロミオとジュリエット』を土台にしている点についてもようやく納得し
ロミジュリで言えばティボルトやパリスに当て嵌まるであろう役柄を見つけては時代設定は全く異なる作品であっても
2つのグループの抗争や対立を超えた恋以外の接点の気づきに嬉しさを妙に覚え
ミュージカルど素人な管理人もどっぷり鑑賞できた次第です。現代の技術ならではの
繊細な光の当て方や映像美、また鑑賞した映画館がTCX対応のスクリーンで上から横からも音が響き渡る
立体的な構造であった点や上空、時には通行人目線のカメラワークも面白さを押し上げました。

ちなみに管理人、映画館のIMAXやTCXの位置づけがよう分からず料金が通常よりも高い設定であるとこの度初めて知った、映画鑑賞もまたド素人でございます。
実は午前の回の時間に合わせて映画館へ向かいチケットを購入しようとしたところIMAX対応のため料金がだいぶ高めで驚き
ならばTCXを選んだところ200円増しでしたので後者にしたわけでございます。

話を戻します。先にも述べた通り音楽は大変馴染みがあり演奏会のほか、後輩が通う教室の発表会でも何曲かを組み合わせた中に
テクニックがふんだんに盛り込まれた作品を鑑賞。また2013年のニューヨーク・シティ・バレエ団による公演にて
ジェローム・ロビンズ振付の組曲構成作品を鑑賞したこともございます。
それから吹奏楽の演奏会でもメドレー構成の演奏は大定番で、私は残念ながら吹く機会はなかったものの
入学する少し前の演奏会では披露したようで、のちに先輩が無理矢理直訳して「横っ腹物語」と口にしていたことが忘れられません笑。
そしてフィギュアスケートでも使用する選手は多く、抜粋した複数の曲を繋げての演技は何度か見ているかと思います。
ただ今思えば、フィギュアにおける全幕のバレエ音楽使用時も気にかかっていた物語の順序通りにはなっていなかった構成もあり
最後の盛り上がりステップのために劇中では前半、トニーとマリアが出会うパーティーで流れる弾ける曲を持ってきていたりと
ミュージカル精通者愛好者の中には首を傾げる方もいらしたかもしれません。

バーンスタインが作曲した疾走感と迫力に満ちた音楽の印象先行から作品ももっとノリが良く娯楽性に富んでいると勝手な想像を巡らしておりましたところ
丸々覆されまして、街中での躍動感ある舞踊場面のみならず今のニューヨークの華々しい劇場街建設裏にあった強制退去、
根深い人種差別社会に生きる若者達がすぐさま争いに投じてしまう苦しみやまた台詞が並ぶことによって抗争場面を中心に罵詈雑言の連発が目や耳を痛烈に刺激。
映像で迫るからこそ伝わる目を背けたくなる生々しい決闘を始め最後の最後まで続く憎悪の連鎖が後を引き、予想以上に重たいものがのしかかる作品と捉えております。

それにしてもマンボ~!の叫びはこのご時世の世間の状況表現にも感じたのは皮肉なのか汗
トニーがマリア宅への侵入場面はきっと地域の懸垂選手権優勝者或いは出初式を思わせる登りっぷりには笑ってしまいましたが、若い情熱には何も抗えないのでしょう。
その辺りは横に置き、マリア役レイチェル・ゼグラーの強いの意思と透明感の両方が宿る歌声も美しく
一見改心したように生真面目青年に見えるトニーも憎悪のスイッチが入ると衝動に駆られ誰も止められない行動へと発展してしまう性分も簡単には恨めず。
複雑な感情があちこちで絡みながらの展開に目が離せませんでした。実写映画であるが故に歌と台詞混在に違和感が生じぬか
久々のミュージカル映画鑑賞で心配もありましたが最初のうちは慣れず、例えばお忍び密会で高らかに歌っていたら即座にばれるでしょうにと
他人事ながら思わず慌て気味になったものの展開と共にごく自然に思えてきました。どうぞ劇場でご覧ください。





帰り道、東京クラフトペールエールで乾杯。北米産カスケードホップをたっぷり使用しているらしい。
クーポンが手元にあったため偶々の来店であったが、マリアの家の壁色と似た内装でございます。



自家製プルドポーク バーボンBBQソース。よく味が染み込んだ塊肉を切り分けソースをかけながらいただきます。辛くも少々甘さもあり、ビールが進みます。



苺のセミフレッド塩キャラメルソース。苺の果肉もしっかりと入っています。塩キャラメルソースの苦味が濃く、アイスと溶け合ってうう美味しい。
このご時世ですので空いてはいましたが1人でも入り易く料理2品とビールも気に入り、
店員さんの応対も穏やかで良く、常連さんもいらしたようでほんわかした空気が流れる店内でした。

2022年2月6日日曜日

【お茶の間観劇】【大変おすすめ】宝満直也さん振付  大和シティーバレエ『美女と野獣』

遅ればせながら、2020年末に上演された宝満直也さん振付の世界初演  大和シティーバレエ『美女と野獣』有料配信を視聴いたしました。
https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=61707&


ダイジェスト動画




※カンフェティホームページより
ベル: 小野絢子 / 野獣: 福岡雄大 / ベルの父親: 八幡顕光 / 3人の求婚者達: 中家正博、木下嘉人、池田武志 / 猿(近衛隊長ベローシファカ): 福田圭吾 / 猿(近衛兵): 森田維央、飛永喜尉 / 猿の妻: 刀袮平美咲、牧祥子 / 猿の子供達: 金粋璃、宮崎二悠子 / 孔雀(給仕長): 相原舞 / 3羽の小鳥(メイド): 奥田花純、五月女遥、野久保奈央 / 小鳥たち(メイド): 河村美来、中村春奈、成田遥、萩原ゆうき、橋本侑佳、古尾谷莉奈、細井佑季、盆子原美奈 / バラの化身: 森田維央、飛永喜尉、安藤沙綾、窪田夏朋、萩原ゆうき、橋本侑佳、古尾谷莉奈、牧祥子 / 村人たち: 安藤沙綾、河村美来、窪田夏朋、刀袮平美咲、萩原ゆうき、古尾谷莉奈、牧祥子、小形さくら、加納美咲、山本萌葉、大野彩花、田丸琳々花

スタッフ
振付: 宝満直也 / 曲: D.Shostakovich / プロデューサー: 佐々木三夏 / 舞台美術: 長谷川匠 / プログラム・タイトルデザイン: 長谷川匠((株)アトリエ長谷川匠) / 舞台監督: 千葉翔太郎((株)スカイウオーカー) / 照明: 辻井太郎((有)舞台照明劇光社) / 音響: 中村蓉子 / 映像制作: 林裕人 / 制作: 今村佳奈 / イラスト: 照喜名降充 / 衣装: 吉倉節子、秦智美、小野りか、ソライロヤ、仲村祐妃、大滝広美、Chacott Design M、SBA衣装部 / ヘアメイクチーフ: 中山夏子 / 協力: 資生堂ビューティークリエイション研究センター / 写真: 塚田・長川写真事務所、大洞博靖 / ビデオ: japan digital arts / 後援: 大和市、大和市教育委員会、YCBクラブ、SBA母の会


ご覧になった方々より評判を度々耳にし、再演時は足を運ぶようしきりに勧めてくださっていましたが視聴して納得。
変化に富んだ振付と言い音楽の使い方と言い、舞台転換も工夫が行き届きそして適材適所な配役。これは劇場で鑑賞するべきであったと今更ながら感じております。
2022年7月17日まで配信されていますので、さっぱりとした感想のみ記して参ります。まだご覧になっていない方、是非ご視聴ください。

ベルの小野さんは冒頭の読書姿から可愛らしさと理知的な雰囲気を醸し、優しさ一杯な人柄に気弱そうな父親も毎日救われる日々であったことでしょう。
最初は接し方に戸惑い怯えていた野獣との心の通わせの過程は時に物哀しく、時にはユーモアも含めたやりとりが胸に響き、
次々と襲いかかる試練にもめげず乗り越える様子は少しずつ大人へと近づいているようにも見え、成熟していく姿から目が離せず。
ベルが抱く感情の1粒1粒が四肢から伝わり、映像でも心を鷲掴みにされましたからもし生で観ていたら、と思うと益々興味が沸いてくる役柄です。
目が覚めたら隣に猿がいた衝撃には一緒になってびっくりしてしまい、小鳥さんや子猿さんたちとの戯れもほのぼのと映りました。
小野さんは新国立に入団された頃から観ておりますが、実は私の中でここ約1年で一段と注目熱が上昇中。
殊にシェイクスピア・ソネットで見せた魔物のような姿や『コッペリア』での喜劇センス抜群なスワニルダ、
神様仏様小野絢子様と平伏してしまうほど劇場を完成支配していた『ライモンダ』や魔力全開なライト版『白鳥の湖』オディールに
4階末端席着席者をも強力に吸い込むようであった『くるみ割り人形』クララの引き寄せ力、と強烈な印象を刻み続けてくださっています。

福岡さんの野獣は粗暴な恐怖感もさることながら、パーティー?でずっと俯いている寂しがり屋な一面や、ベルと少しずつ打ち解けての風変わりなリフトでも沸かせ
野獣の持つ多彩な面を表現。ほぼ全編通してマスクを装着した状態で表情での誤魔化しが不可能な条件下であっても心の移ろいを全身で表していてお見事でした。
喜劇な要素は抑えめかと思いきや宴を楽しく取り仕切り観客に問いかけ笑いの反応を引き出していたのは福田さんの猿で
野獣とは仲睦まじいのかそうでもないのか笑、テンポ良く交流したり、ピンチのベルを導いたりとあちこちで活躍。
そして求婚者のトリオのリーダー格、中家さんの悪代官も仰天であろう黒い魅力を広げながらの牽引力にも驚嘆。
しかも技術も盤石で、背が高く体格もしっかりしていながら急速な曲調でも遅れが微塵もなく
終盤には野獣を肩に担いで歩く場もあり。力が無尽蔵なのかただただ驚きを覚えた次第で、豪快に踊りながらの野獣との攻防戦も大迫力でございました。

衣装がどれもお洒落でベルのピンクのワンピースや御召し替えでの水色にきらりと光る装飾で薄く彩ったドレスも美しや。
小鳥達の繊細な羽を模したようなチュチュの切り込みや求婚者達の光沢のある、戦士にも見える黒い衣装もシックで素敵でした。

振付はどの役にも高難度テクニックが散りばめられ、余程の音感とテクニックを備えていなければとても踊りこなせぬ要素が盛りだくさん。
中でもベルの軽やかなソロや小鳥たち特に奥田さん五月女さんの緻密なステップ、求婚者達の豪胆且つスピード感のある見せ場が印象に残っております。

そして音楽構成も秀逸で、ショスタコーヴィチの中でも耳に入りやすい、馴染みある曲を多数組み合わせていて、しかもぶつ切り感が皆無。
振付と場面や舞台転換のタイミングがしっかりと噛み合っているからこそでしょう。
ショスタコーヴィチの音楽は一部複雑で難解と捉えつつも『明るい小川』や『黄金時代』、『じゃじゃ馬ならし』といった全幕バレエで使用されている曲はどれも好きで
この宝満さん版『美女と野獣』には私が好む曲の数々がほぼ網羅されていた気がいたし、音楽の面でも聴き惚れてしまったのかと思います。

長谷川さんのシンプルで洗練された美術や装置も作品をお洒落に盛り立て、装置の裏表両方を用いて
ぐるっと転換後すぐ次の場面に遷移できるよう作られたデザインも唸らせました。
昨年3月の日本バレエ協会公演コンテンポラリーの『いばら姫』においても美術装置を手掛けられた長谷川さんによる公演当日に開催されたギャラリートークに参加して
2018年に新国立劇場で鑑賞した『夏の夜の夢』そして宝満さん版『美女と野獣』の模型も展示され
また大変和やかな空気の中で長谷川さんに直接お話を伺った経緯もあり作品にどっぷりと浸かる楽しみに繋がったのかもしれません。

かれこれ5年前から我が携帯電話のロック画面に設定しているほど南仏で制作された全くの別版『美女と野獣』への思い入れが非常に強いがために
(つまりこの5年間、別版の野獣の画像を見ない日はないのだ)
違う演出振付とは分かっていても同名作品ですから楽しめるか多少の心配もあったものの振付から配役、音楽構成、衣装装置に至るまで大満喫。
公演の1ヶ月ほど前に行われたDancers Webさん主催のズームトークにて宝満さん司会で出演者達と繰り広げるお話から
(そういえば福田圭吾さんは客演した舞台の関係で愛媛県内の滞在先ホテルからご出演。その舞台を観に私も伊予の国へ行っておりましたので思わず笑ってしまった)
面白い作品になりそうとは思っておりましたが予想以上の楽しさで満たされました。新作で全幕を振り付ける手腕に再度拍手を送りたい思いでおります。






振り返ると管理人、13年前には1人でショスタコーヴィチのお墓参りをしております。
赤やピンクのお花で彩られていました。チャイコフスキーが白鳥の湖構想を練った修道院のお庭のすぐ隣です。
国に翻弄されながらも闇が深そうな曲から可愛らしい曲まで発表した作品は多岐に渡り、再度手を合わたい気持ちでおります。



ダンサー、振付家双方で大活躍の宝満さん。テレビアニメの振付も手掛けていらっしゃり、つい先日公開されました。
漫画と疎遠な管理人ですが、妹がこの作品に精通していたかと記憶。詳しく聞いてみようと思います。

2022年2月4日金曜日

【恵方巻ではなくてもかぶり付いて読み耽た】東京大学音楽部管弦楽団の定期演奏会プログラム






昨日は節分。ご自宅で豆撒きを楽しみ、恵方巻を味わった方もいらっしゃることと存じます。
管理人は関東育ちであるためかどうも恵方巻にかぶり付いて食す文化に馴染めずにいるものの
寿司店に陳列する商品が通りすがりに目に留まり美味しそうには思えた次第です。仮に購入したとしても、通常の太巻きと同じように切って食すかと思います。

代わりに豆菓子は食し、年齢と同数の粒を口に入れるとなると、蓄音機で音楽を聴いていた世代疑惑まで持たれておりますため
途端にお腹が膨張するであろう数字ですので真偽のほどはさておき、本日は思わずかぶり付いて読み耽てしまった定期演奏会プログラムの話です。

管理人の家族の1人が友人に誘われ、先日東京大学音楽部管弦楽団の定期演奏会へ行きました。
曲目がこれまた私好みな構成でチャイコフスキー 幻想序曲『ロミオとジュリエット』、グラズノフ『四季』より秋、ショスタコーヴィチ『交響曲第5番』。
3曲目のショスタコーヴィチ作品は少々難解そうな曲である印象を抱いておりますが、1、2曲目における前者は重厚な起伏に心が揺さぶられ
後者は煌びやかな風が吹き誘う心から好きな曲でございます。何しろ前者はエイフマン版『アンナ・カレーニナ』の2幕終盤
アンナの葛藤が最高潮へと達しいよいよ決意を固める場面にて、後者は深川秀夫さん振付『ソワレ・ドゥ・バレエ』にて
近年は抜粋で踊られる機会が増えたパ・ド・ドゥでも使用されている共に馴染みある曲。2曲とも落ち着いて聴ける心境にはならないのは目に見えております。
前日に鑑賞予定であった大阪府枚方市で開催の新国立劇場バレエ団によるクラシック・バレエハイライト公演が中止となってしまい
実のところ当日券購入が可能であれば鑑賞も検討いたしましたが、奇しくも枚方市でも披露予定であった
深川さん振付『ソワレ・ドゥ・バレエ』で使用曲が含まれるグラズノフ曲を聴くと今回ばかりは喜びよりも寂しさがまさってしまうであろうと思い
(中止は残念でしたがこれだけ拡大している状況下、誰も落ち度はありません。)今回は家族の感想を待つ側といたしました。

東京大学音楽部管弦楽団は創部100年を超える伝統ある楽団で団員も大変多く、曲ごとの座席表が細い線と小さな文字で詰めるように作成されていたほどで職場の座席表彷彿。
団員の名前もずらりと記載され、東大ですから当然ながら所属学部が理Ⅰや文Ⅲ等といった表記で
演奏活動にも精を出す全国から集まったエリート達であると思うといたく壮観。名前、学部、出身地も明記されていました。

そして本題、帰宅した家族から借りたプログラムを開き驚愕。曲目、作曲家についての学術書かと見紛う
事細かな解説が視界を覆い尽くし、思わずかぶり付いて読み耽けてしまいました。
中でも着目したのはグラズノフ『四季』より秋で、最初からバレエ音楽として作られている曲ですからバレエについては如何ほどの解説であろうかと
興味津々に目を通してみるといやはや仰天。グラズノフの生い立ちや曲のフレーズの特徴は勿論のこと、バレエの成り立ちにも触れたりプティパについて
そしてグラズノフとプティパの関係、テクニック名やグラン・パ・ド・ドゥの定義に至るまで
膨大に綴られている紙面にひたすら圧倒されるばかり。学生の方が執筆なさったのか詳細は分かりかねますが
参考文献もしっかりと紹介され、バレエ関連の書籍も相当読み込んで書かれた解説かと見受けます。
しかも、ややこしい言い回しは避けあくまで簡潔さっぱりとした言葉遣いであるため、読み進めるのが楽しい。
開演前にここだけは読んで欲しい箇所として短く纏めた箇所もあり、読み手に配慮した文体、構成の解説でした。
終わり無き記事に捉えられても仕方ない、以下長くなります宣言も時折行っている管理人と大違いでございます。
大学の演奏会には足を運んだ経験は無く、もしどの学校でもこういった詳細な膨大解説を綴っているのでしたら知識不足で申し訳ございません。
偶々誘われた家族から見せてもらったプログラムにて、情報量が多くも整理された解説に目を見張った出来事でございました。

東京大学と言えば名門中の名門難関大学であり、思い出すのは中学校の同級生で進学した2年生時の級友。
国立の高校を目指していると話し、そういえば5段階評価であった学業成績は9教科中殆どが5。
しかし鼻にかけることは一切なく、それどころかテレビはNHKか学習或いは世界遺産系の番組しか視聴していないと思いきや
音楽番組やドラマもよく見ていて、家族とカラオケに行ったりと会話を交わす限りよくいる女子中学生と変わらず。
今思えば、本当は数学の定理等について語り合いたかったものの9教科の5段階評価の並びが四羽の白鳥状態にあった我がレベルに引き下げて話をしてくれていたのかもしれぬが
(我が学業成績は今も親族間でも触れてはならぬ話題の1つで低迷ぶりは中学生の頃は定着し、既にこれといって驚かれず。
それよりも本日行われた北京五輪開会式選手団登場にて流れた四羽の白鳥、及び名曲アルバム或いは小中学校のお昼の校内放送を思わせる曲構成の方が衝撃は強いことでしょう)
しかし決定的な違いが1つあり、その同級生は勉強を心から愛し喜びを感じながら勉学に励んでいたこと。
帰宅してからの一番の楽しみな時間であると嬉々として語っていた姿が忘れられず、私も嘘でも良いから勉強が好きと一度でも口にしてみたいと憧れたものです。
その同級生とは成人式にて偶然再会。在住地域は人口が多いため出身小学校ごとに区分けされての3部制でしたが用事があった関係で午前中の第1部に参加したところ
姿を見つけ、声をかけると覚えていてくれた様子。近況を尋ねると東大に進学し建築を学んでいると充実した表情で語り
中学生の頃の記憶が巡って私も嬉しくなったと同時に、ご利益と言わんばかりにその同級生の振袖を摩り続けていた行為はどうかお許しください。

さて定期演奏会に話を戻します。プログラムを読み進めて行くと一挙に3人の作曲家作品が堪能できる今回の3作品構成に一層関心が高まり
バレエ観劇にとどまらず演奏会にももっと足を運びたくなりました。
そしてショスタコーヴィチと言えば配信で視聴したいバレエがあり、今週末やっとこさ視聴予定でおります。

  3作品構成といえば、バレエにおけるトリプル・ビルは全幕と同様好んで観たいプログラムで、先日はKバレエカンパニー公演にて堪能。
2時間半でブリテン、ベートーヴェン、ショパンを鑑賞でき目も耳も幸が凝縮でございました。
残念ながら中止となってしまった東京シティ・バレエ団のトリプル・ビルもチャイコフスキー、メンデルスゾーン、ストラヴィンスキーと
これまた1公演で音楽の面でも宴の如き構成。音楽ファンも気分高まるプログラムでしたのでしたので延期公演をどうかと願っておりましたが
3月10日(木)に東京文化会館にて開催と本日発表、これは嬉しい。 そしてトリプル・ビルとは異なる形ですが
新国立劇場での2月公演ももしかしたら一足先に!?お目にかかれるかもしれずひときわ嬉しい鑑賞となりそうです。
ただまだまだ不安な時期が暫くは続きます。以前と変わらず気をつけながら過ごして参りたいと思います。

かぶり付きといえば、今では一部の現代作品では間近で息遣いも感じられる座席構造で観客を出迎える公演もありますが
数年前までは舞台でもイベントでも目の前に憧れのダンサーが出現、なんてこともございました。
本日我が家に届いた新国立劇場からの寄付のお礼としての『不思議の国のアリス』クリアファイルを手に取り
今年のアリスの無事上演そして気にかかる2020年もし上演していたならば実施されていた
2018年の『眠れる森の美女』に続いてのバレエ観劇着物とダンサートークショー付きイベント。
眠りのときに参加し、最終日に主演その他は青い鳥や求婚者を踊られたお方による、オーロラへの求愛をリラに訴えるデジレ王子の実演を
それはそれは手が届きそうな距離にて拝見したあの時間がいかに尊いものであったか、今一段と身に沁みて感じております。