2022年2月6日日曜日

【お茶の間観劇】【大変おすすめ】宝満直也さん振付  大和シティーバレエ『美女と野獣』

遅ればせながら、2020年末に上演された宝満直也さん振付の世界初演  大和シティーバレエ『美女と野獣』有料配信を視聴いたしました。
https://www.confetti-web.com/detail.php?tid=61707&


ダイジェスト動画




※カンフェティホームページより
ベル: 小野絢子 / 野獣: 福岡雄大 / ベルの父親: 八幡顕光 / 3人の求婚者達: 中家正博、木下嘉人、池田武志 / 猿(近衛隊長ベローシファカ): 福田圭吾 / 猿(近衛兵): 森田維央、飛永喜尉 / 猿の妻: 刀袮平美咲、牧祥子 / 猿の子供達: 金粋璃、宮崎二悠子 / 孔雀(給仕長): 相原舞 / 3羽の小鳥(メイド): 奥田花純、五月女遥、野久保奈央 / 小鳥たち(メイド): 河村美来、中村春奈、成田遥、萩原ゆうき、橋本侑佳、古尾谷莉奈、細井佑季、盆子原美奈 / バラの化身: 森田維央、飛永喜尉、安藤沙綾、窪田夏朋、萩原ゆうき、橋本侑佳、古尾谷莉奈、牧祥子 / 村人たち: 安藤沙綾、河村美来、窪田夏朋、刀袮平美咲、萩原ゆうき、古尾谷莉奈、牧祥子、小形さくら、加納美咲、山本萌葉、大野彩花、田丸琳々花

スタッフ
振付: 宝満直也 / 曲: D.Shostakovich / プロデューサー: 佐々木三夏 / 舞台美術: 長谷川匠 / プログラム・タイトルデザイン: 長谷川匠((株)アトリエ長谷川匠) / 舞台監督: 千葉翔太郎((株)スカイウオーカー) / 照明: 辻井太郎((有)舞台照明劇光社) / 音響: 中村蓉子 / 映像制作: 林裕人 / 制作: 今村佳奈 / イラスト: 照喜名降充 / 衣装: 吉倉節子、秦智美、小野りか、ソライロヤ、仲村祐妃、大滝広美、Chacott Design M、SBA衣装部 / ヘアメイクチーフ: 中山夏子 / 協力: 資生堂ビューティークリエイション研究センター / 写真: 塚田・長川写真事務所、大洞博靖 / ビデオ: japan digital arts / 後援: 大和市、大和市教育委員会、YCBクラブ、SBA母の会


ご覧になった方々より評判を度々耳にし、再演時は足を運ぶようしきりに勧めてくださっていましたが視聴して納得。
変化に富んだ振付と言い音楽の使い方と言い、舞台転換も工夫が行き届きそして適材適所な配役。これは劇場で鑑賞するべきであったと今更ながら感じております。
2022年7月17日まで配信されていますので、さっぱりとした感想のみ記して参ります。まだご覧になっていない方、是非ご視聴ください。

ベルの小野さんは冒頭の読書姿から可愛らしさと理知的な雰囲気を醸し、優しさ一杯な人柄に気弱そうな父親も毎日救われる日々であったことでしょう。
最初は接し方に戸惑い怯えていた野獣との心の通わせの過程は時に物哀しく、時にはユーモアも含めたやりとりが胸に響き、
次々と襲いかかる試練にもめげず乗り越える様子は少しずつ大人へと近づいているようにも見え、成熟していく姿から目が離せず。
ベルが抱く感情の1粒1粒が四肢から伝わり、映像でも心を鷲掴みにされましたからもし生で観ていたら、と思うと益々興味が沸いてくる役柄です。
目が覚めたら隣に猿がいた衝撃には一緒になってびっくりしてしまい、小鳥さんや子猿さんたちとの戯れもほのぼのと映りました。
小野さんは新国立に入団された頃から観ておりますが、実は私の中でここ約1年で一段と注目熱が上昇中。
殊にシェイクスピア・ソネットで見せた魔物のような姿や『コッペリア』での喜劇センス抜群なスワニルダ、
神様仏様小野絢子様と平伏してしまうほど劇場を完成支配していた『ライモンダ』や魔力全開なライト版『白鳥の湖』オディールに
4階末端席着席者をも強力に吸い込むようであった『くるみ割り人形』クララの引き寄せ力、と強烈な印象を刻み続けてくださっています。

福岡さんの野獣は粗暴な恐怖感もさることながら、パーティー?でずっと俯いている寂しがり屋な一面や、ベルと少しずつ打ち解けての風変わりなリフトでも沸かせ
野獣の持つ多彩な面を表現。ほぼ全編通してマスクを装着した状態で表情での誤魔化しが不可能な条件下であっても心の移ろいを全身で表していてお見事でした。
喜劇な要素は抑えめかと思いきや宴を楽しく取り仕切り観客に問いかけ笑いの反応を引き出していたのは福田さんの猿で
野獣とは仲睦まじいのかそうでもないのか笑、テンポ良く交流したり、ピンチのベルを導いたりとあちこちで活躍。
そして求婚者のトリオのリーダー格、中家さんの悪代官も仰天であろう黒い魅力を広げながらの牽引力にも驚嘆。
しかも技術も盤石で、背が高く体格もしっかりしていながら急速な曲調でも遅れが微塵もなく
終盤には野獣を肩に担いで歩く場もあり。力が無尽蔵なのかただただ驚きを覚えた次第で、豪快に踊りながらの野獣との攻防戦も大迫力でございました。

衣装がどれもお洒落でベルのピンクのワンピースや御召し替えでの水色にきらりと光る装飾で薄く彩ったドレスも美しや。
小鳥達の繊細な羽を模したようなチュチュの切り込みや求婚者達の光沢のある、戦士にも見える黒い衣装もシックで素敵でした。

振付はどの役にも高難度テクニックが散りばめられ、余程の音感とテクニックを備えていなければとても踊りこなせぬ要素が盛りだくさん。
中でもベルの軽やかなソロや小鳥たち特に奥田さん五月女さんの緻密なステップ、求婚者達の豪胆且つスピード感のある見せ場が印象に残っております。

そして音楽構成も秀逸で、ショスタコーヴィチの中でも耳に入りやすい、馴染みある曲を多数組み合わせていて、しかもぶつ切り感が皆無。
振付と場面や舞台転換のタイミングがしっかりと噛み合っているからこそでしょう。
ショスタコーヴィチの音楽は一部複雑で難解と捉えつつも『明るい小川』や『黄金時代』、『じゃじゃ馬ならし』といった全幕バレエで使用されている曲はどれも好きで
この宝満さん版『美女と野獣』には私が好む曲の数々がほぼ網羅されていた気がいたし、音楽の面でも聴き惚れてしまったのかと思います。

長谷川さんのシンプルで洗練された美術や装置も作品をお洒落に盛り立て、装置の裏表両方を用いて
ぐるっと転換後すぐ次の場面に遷移できるよう作られたデザインも唸らせました。
昨年3月の日本バレエ協会公演コンテンポラリーの『いばら姫』においても美術装置を手掛けられた長谷川さんによる公演当日に開催されたギャラリートークに参加して
2018年に新国立劇場で鑑賞した『夏の夜の夢』そして宝満さん版『美女と野獣』の模型も展示され
また大変和やかな空気の中で長谷川さんに直接お話を伺った経緯もあり作品にどっぷりと浸かる楽しみに繋がったのかもしれません。

かれこれ5年前から我が携帯電話のロック画面に設定しているほど南仏で制作された全くの別版『美女と野獣』への思い入れが非常に強いがために
(つまりこの5年間、別版の野獣の画像を見ない日はないのだ)
違う演出振付とは分かっていても同名作品ですから楽しめるか多少の心配もあったものの振付から配役、音楽構成、衣装装置に至るまで大満喫。
公演の1ヶ月ほど前に行われたDancers Webさん主催のズームトークにて宝満さん司会で出演者達と繰り広げるお話から
(そういえば福田圭吾さんは客演した舞台の関係で愛媛県内の滞在先ホテルからご出演。その舞台を観に私も伊予の国へ行っておりましたので思わず笑ってしまった)
面白い作品になりそうとは思っておりましたが予想以上の楽しさで満たされました。新作で全幕を振り付ける手腕に再度拍手を送りたい思いでおります。






振り返ると管理人、13年前には1人でショスタコーヴィチのお墓参りをしております。
赤やピンクのお花で彩られていました。チャイコフスキーが白鳥の湖構想を練った修道院のお庭のすぐ隣です。
国に翻弄されながらも闇が深そうな曲から可愛らしい曲まで発表した作品は多岐に渡り、再度手を合わたい気持ちでおります。



ダンサー、振付家双方で大活躍の宝満さん。テレビアニメの振付も手掛けていらっしゃり、つい先日公開されました。
漫画と疎遠な管理人ですが、妹がこの作品に精通していたかと記憶。詳しく聞いてみようと思います。

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