
2月15日(土)、ティアラこうとうにて矢上恵子メモリアル・ガラを観て参りました。
https://yagamikeiko-gala.com/TOKYO2025/
矢上恵子先生は大阪のKバレエスタジオ教師でありコンテンポラリーの振付家、ダンサーとして活躍され
山本隆之さんや福岡雄大さん、福田圭吾さん、福田紘也さん(現在はバレエ公演のスタッフに転身)ら、多くの優秀なダンサーを育てられました。
しかし2019年に57歳の若さでご逝去。早過ぎる旅立ちは6年が経とうとしている今も信じ難い思いでおります。
先生の作品上演は関西中心でしたが、今回は東京にて恵子先生作品を一挙に上演です。
前半は小作品中心で、恵子先生が書き記した文献を1ページずつ大事に捲るようにリレー式で次の作品へと移り
(2020年秋のKスタでの恵子先生小品集もこの方式で、わくわくと胸躍る繋ぎ方でしたのでこの度も嬉々として鑑賞。今回は全体構成も含め圭吾さんによる演出です)
後半は恵子先生が映る貴重なリハーサル映像や佐々木大さんへのインタビューののちに大作のToi Toiへ。大充実の内容でした。
お叱り受けるかもしれませんが、もしも『居酒屋矢上恵子』があるならば、初心者も歓迎特選コースといったところ。
ソロ、デュエット、女性のみから大人数構成の大作まで、多彩な作品が並びました。
プログラム冊子も立派な装丁、中身で、もしかしたら恵子先生の上演作品解説がこうにも詳しく掲載されたのは初めてかもしれません。
執筆者は恵子先生と所縁深かった舞踊評論家の桜井多佳子さん。恵子先生の告別式では山本さんと共に弔辞を読まれました。
※今回広報をこまめにたくさん行ってくださったバレエチャンネルさんによる舞台写真が多数掲載されています。
公演終了後も日々更新してくださっていますので、是非ご覧ください。
https://twitter.com/yagami_gala?s=21
Witz
福田圭吾さんがローザンヌのコンクールで踊られたソロ。元は福岡雄大さんに振付けられた作品とのこと。
恵子先生の作品の中で最も知られているとされていますが、実を申すと私は映像に観たのは2021年のメモリアルトークイベントのときが初めてだったか。
生ではDAIFUKUにて2020年に鑑賞しております。ローザンヌの解説者による発言が広まって通称アトムと言われているらしい。
17歳の頃に踊った体力消耗激しい作品を昭和末期生まれ世代の圭吾さんが難なく踊りきるスタミナにまず脱帽で、
小刻みに動いたかと思えば突如軸を思い切り斜めにして緊迫感あるポーズを描出しては
すぐさま跳び上がったりと、1フレーズの中でこなすことが山積みな振付をいとも易々軽快に自在に繰り出して魅了。
暗がりの舞台の上でたった1人、しかも浪速圏と違って恐らくは多くの方が恵子先生作品を初めて生で鑑賞する観客が占めるであろうお江戸の会場にて
瞬時に舞台を温め、摩訶不思議な世界へと誘い込んでくださいました。客席からの拍手に、圭吾監督もほっと安堵の表情。1発目、まずは大成功です。
Multiplex Personality〜多重人格〜
プログラムによれば上演回数が非常に多い作品で、1990年代の初演時は恵子先生と4人の女性が出演。
主軸1人の周りを4人が固める構成で、配置も性別も問わずこれまで様々な方が踊っていらっしゃいます。
今回の主軸は井本星那さん。Kスタでも研鑽を積まれ、その後Noism1で活躍されました。周りを、Kスタでも学びスターダンサーズ・バレエ団で活躍された井後麻友美さん、
恵子先生作品の主な指導を担われている愛弟子の石川真理子さん、Kスタ舞台へ賛助出演経験もある佐々木美智子バレエ団の佐々木夢奈さん杉前玲美さんが務めました。
井本さんは昨年のKスタの舞台でこの作品にご出演予定でしたが直前のお怪我で降板され、
(プログラムに出演者変更告知の別紙が挟まっていましたので本当に直前だったかと思います)
ようやく鑑賞の機会に恵まれました。まず音楽の冒頭からして禁断の魔の世界に足を踏み入れていくようなおどろおどろしさが折り重なって行く曲調に心を持っていかれ
内面の葛藤を不安そうに怯えながら曝け出していく井本さんと、周りの4人が誘惑或いは
時に助けるように近づいては離れる崖っぷちに追い詰められた状況が重々しくダークに展開していきました。
2020年秋のKスタ舞台にて、当初は恵子先生の大掛かり作品を教室外の方も一緒に踊る企画がなされていたところコロナで延期になり、
代わりに恵子先生の小品を集めた構成に変更したプログラムにて初鑑賞いたしましたが(主軸は恵谷彰さんでした)、
闇に溺れていくような、されど癖になる恐怖感は今も強烈な記憶として残っております。
昨年のKスタ舞台では新国立の木下嘉人さんが周囲を固める役柄に初挑戦。
恵子先生作品自体がお初だったはずで。直系弟子達と並んでも違和感のない技量に驚かされました。
FROZEN EYES〜凍りついた目〜
心が壊れた少女と、彼女を救おうと奔走する青年を描いた作品。音楽はウェーバーの『舞踏への勧誘』、薔薇の精と同じ曲です。
初演は1999年の世界バレエ&モダンダンスコンクールにおける田中ルリさん佐々木大さんとプログラムにて紹介されています。
(大さんは田中さんのパートナーとして、コンクールは不参加だったとのこと)
曲が始まる前にパリン!!と硝子が割れるような音が響き渡ると同時に米沢さん少女の心が崩壊し、目が虚ろになって危うさを描出。
1脚の椅子を多用しながら昇降を繰り返す中で少女の内面に生じていくジェットコースターの如き浮き沈みを体現していた印象です。
顔の表情は殆ど変わらず無に徹しているため、壊れ行く心に反して身体の息遣いの熱は上昇して
周囲を張り巡らすような踊りそのものから少女の声にならない叫びが沸々と表していたのはお見事。
木下さんは少女が取り巻く状況を理解しようと苦悩しながらも空間を大きく使い、
椅子から落っこちそうに倒れこんでくる少女を万全に支えつつ縋るように踊る姿が目に残っております。
この作品を生で観るのは3回目で、ともにKバレエスタジオの舞台にて2020年には今回も映像編集等の裏方で大活躍の福田紘也さんがご出演。
女性がご名字を失念してしまいましたがファーストネームがあやさん、だったかと記憶。
静けさの中から沸き上がるパワーと時折落ち着く箇所の落差を事細かに踊り分けていらした印象でした。
もう1組は2023年、共にUSAジャクソン国際バレエコンクールにて踊って金賞を受賞された地主薫バレエ団の徳彩也子さんと
佐々木美智子バレエ団を経て欧州の団にも所属され、現在ジョフリー・バレエ団にて活躍中の佐々木嶺さんがKスタ舞台にゲスト出演。
若さゆえの大胆さを放つ身体能力も目を惹き、両組とも共通していたのは触れると凍傷を引き起こしそうな刺激がピリリと充満していたこと。
対して米沢さん木下さんは何処か落ち着きが調和していた印象がまさりましたが、これはこれで興味を持たせる造形です。
Butterfly
福田圭吾さんによるソロで、2006年のUSAジャクソン国際バレエコンクールで踊られたとのこと。今思えば新国立入団直前の時期かと思います。
ひらひらと舞うはんなりとした蝶々とは別物な、生命力に溢れ力強く生きようとエンジン全開にして空中でのポーズも多彩な上に滞空時間の長いこと。
急ピッチなテンポで踊っている最中に服に隠されていた羽が出てきて翻しながら舞う姿も息をつかせぬ展開で、最後は力尽きて魂が抜け落ちるようにして倒れ込んで終了。
これまた圭吾さんが、いくら経験ある作品とはいえコンクールで踊った作品を若者も仰天な体力で踊り切る力量に脱帽。
作品自体を観るのは2回目で、初めて観たのは2022年のKスタ舞台にて佐々木美智子バレエ団から客演された佐々木嶺さん。
空中での柔らかな身体のしなり具合にも驚かされ(お父様譲り?!)、また目にしたい作品と願っておりましたのでプログラム入りしていて喜びもひとしおでした。
Bourbier
福岡さんの代名詞な作品かもしれません。2008年のヴァルナ国際バレエコンクールにて3位そして恵子先生は振付賞を受賞。
前半における、ビートの強い曲調の中ではち切れんばかりのエネルギーをダイナミックに、ときに痙攣の如き刺激が身体を伝うヒリヒリとした連鎖は
何度観てもこちらにまで電流が貫通していくような感覚に襲われます。途轍もないスピードで極限状況の苦しみをこれでもかと吐き出していくものの
例えばオフバランスから倒れ込んでから起き上がる過程も音楽から1ミリもずれずに踊る
正確な技術といい身体能力といい恐れ入りましたとしか申せません。ご年齢を考えたらお化け級です。
後半のカヴァレリア・ルスティカーナの部分になると一転し、音楽としっとり溶け合いながら全てを浄化して天を仰ぐように捧げる姿がいつまでも目に残り、
福岡さんがインタビューでも大切に語っていらした「魂を磨いて天に返す、と恵子先生から教わった」とのお話がすぐさま浮かび上がりました。
この作品は拡張版があり(ソロ部分の独立形と拡張版の関係については私も把握できておらず失礼)
初演は2007年夏のKバレエスタジオの舞台。ベージュ色な透け素材の衣装を纏った大人数の群舞を従える構成で恵子先生ご自身、そして山本さんも出演されていました。
私にとって初の恵子先生作品鑑賞でしたから、とにかく凄いものを観た記憶しかなく、
具体的な内容は飛んでしまっていて失礼。このちょうど1年後に福岡さんはヴァルナで入賞されました。
そして幸いにして間を空けず上演の機会が巡り、2009年東京での日本バレエ協会の秋公演。
初めてご覧になった方はぶったまげていましたが当然のことでしょう。もしこの頃SNSが発達していたら
もっと広報や宣伝も上手く行って、2回公演ありましたから例えば初日鑑賞者の口コミで伝わったりと
恵子先生作品の魅力もより広まっていたかもしれませんが、それでも会場の仰天喝采な空気は今も忘れられません。
2021年2月には日本バレエ協会創作バレエの記録上映会開催時に渋谷にて上映されましたが客入りは今ひとつ。
2021年4月のメモリアルトーク、そして今回のメモリアルガラの効力たるや!!Kスタ関係者様、バレエチャンネル様の双方のお力の結集あってこそです。
ソロの部分は福岡さんを始め山本さん(目黒区でのYUJI SATO バレエフェスタやKスタでもお披露目)、
圭吾さんもKスタで披露なさっています。近年では山本勝利さんが福岡さんの指導を受けてGGGプロジェクトで踊られています。
Cheminer
元々は恵子先生が内弟子達に向けて振り付けられた作品で、初演は2006年12月に鹿児島県霧島市で開催されたみやま・ガラ・コンサートとのこと。
主軸を恵子先生、周りを内弟子達が固めて踊られていたそうで、音楽はラヴェルのボレロ。
今回は小野絢子さんが主軸、周りを柴山紗帆さん、池田理沙子さん、五月女遥さん、
川口藍さん、金城帆香さん、橋本真央さんが彩り、全員新国立のダンサー且つ恵子先生作品初挑戦です。
喜びだけでなく時には確執や衝突もあったかもしれないであろう、恵子先生と内弟子達との濃密な関係性描写や毒々しいまでに押し迫るパワーとはまた違った
神秘的で清々しい流れに乗った新国ダンサーズならではの綺麗な空気感はこれはこれで魅力的。
実のところ中盤に差し掛かるまでは迫力不足に思えていたものの、それは私が大阪で内弟子達や、
主軸を山本さん(2019年のKスタ恵子先生追悼コンサート)や圭吾さん(2014年恵子先生舞踊生活50周年記念コンサート)が務めていたときの
直系弟子構成による舞台も観ていたからであって、AIではありませんから違う人が、
ましてや全員が恵子先生作品初挑戦のダンサー達の身体からは全く異なるエッセンスを放つのが当たり前でしょう。
真っ新な状態からのスタートだからこそ、また日頃クラシックを初台にて端正に踊っていらっしゃるメンバーだからこその
上品されど陰のある何処か近寄り難い美しさの並びを満喫いたしました。
暗闇からぽっかりと現れ、小野さんの静けさに包まれる中での隙のない統率力や、ふとした瞬間に脚をスパッと蹴り上げる姿はクールで潔い女神にも見て取れ
小野さんに向かって磁力のように引き寄せられては緊迫感を発する6人の駆け引きにじわりじわりと呑まれていく感覚が生じた心持ちでおります。
全員黒い椅子を用いての振付で、椅子使用のコンテンポラリー作品は多々あれど
横1列に並び座った状態から1人ずつが踊り出し、踊るカノン方式で一定のリズムを刻んでいく光景は
上の階から俯瞰して観ると立体パズルが儀式を規則正しく執り行いながら動いているよう。
1人でも少しでもテンポが狂ったら一斉崩壊になる鬩ぎ合いな振付で、だからこそ余りに有名な曲にのせた作品であっても最後まで観る側も集中力が切れず
終盤小野さんが椅子から後方へ消え入るように椅子の背もたれの上に脚を引っ掛けながら飛び込む瞬間と
ハの字型フォーメーションとなって座り倒れ込む6人の締めが、見果てぬ夢への渇望を静かに叫ぶような余韻が広がりました。
Toi Toi
大人数構成のエネルギッシュな連なりが楽しい作品で、Kスタでの上演回数もかなり多いかと思います。初演は2003年のKスタ公演で恵子先生も出演されていたとのこと。
序盤は福岡さんと石川さんのデュエットで、宇宙を思わせる緊迫する曲調の中から突如激しいリズムを刻む振付に変わり、
あとはひたすら猛スピードで突っ切っていく展開に。精密機械の如く身体を素早く駆使し移動して行く集合体フォーメーションや
後方に設置された4枚の板から延びる光の道しるべの照明をなぞりながら1人1人前進してきたりとパワーとスピードの洪水な振付を誰もが楽しそうに踊る光景は壮観でした。
ひょっこりと顔を出したり隠れたところから勢い良く飛び出してきたりと板の活用法はユーモアに富んでいて
今回上演した恵子先生の作品の中では最もお茶目な要素も含ませた作風かもしれません。
2014年の大阪、2016年の出雲、2023年の大阪に続き4回目の鑑賞作品ながら2階から観るのは初のため、照明効果の秀逸さにはやっと気づきました。
最後は舞台中央前方に全員集合して跪いて天に向かうように片腕をピンと伸ばし、そして両腕を斜め上に掲げると銀色の紙吹雪が星屑のように舞い落ちる中で幕。
エネルギーをたっぷりと吸い込んでから一呼吸置いての高鳴りを更に昇華させる幕切れで、何度観てももう1回最初から丸々観たくなる作品です。
第2部開演後はまず恵子先生の人生を振り返る映像が流れ、Kスタでの数々の貴重なリハーサル映像も拝見。
そしてお若い頃から常にあらゆる病と隣り合わせであった中でもエネルギーを失わないどころか自らを極限まで追い込むようにして仕事に邁進していらしたそうで、
お病気についての解説文を読む限り、仕事ぶりからすると常人では考えられぬ精神力や熱量を備えていらしたと思われます。
踊るにしても振付指導にしても命を削りながら全身で語り尽くす、人対人で厳しくも愛情深く向き合う仕事など大概の人にはとても不可能でしょう。
振付や指導に一身に情熱を注ぐ姿が映し出されていました。雄大!!と叫ぶお声も。
2021年のメモリアルトークで好評であった佐々木大さんへのインタビュー映像も流れ
田中ルリさんのコンクールのパートナーとして出演するに至った経緯や恵子先生との出会い、
恵子先生の知名度を上げたいと奔走なさっていた営業活動の思い出まで、心から慕うエピソードが溢れんばかりに飛び出していました。
プログラム冊子の内容も充実していて、恵子先生の作品についてこうにも詳しい説明付きでの掲載も初めて読みました。
長らく恵子先生と親交が深かった舞踊評論家の桜井多佳子さんによる解説文にも記されていましたが、基本恵子先生の作品は解説なし。
観る者に委ねてくださっていたからか詳細は分からずですが、直球勝負な訴えかけが強い作品だからこそ、説明は不要とお考えであったのかもしれません。
或いは観客もごちゃごちゃ考えず、とにかく観ろや!!感じろや!!とのメッセージだったのか笑。(あくまで私の勝手な想像です)
久留美先生によるご挨拶文では、誰よりも教育者であった恵子先生の情熱的な性格や、香織先生(2016年にご逝去)と3姉妹揃って教え子の舞台鑑賞や旅行へ出かけた思い出、
これから恵子先生の作品をいかにして伝えていくか上演を重ねていくか日々考えていらっしゃる旨を語られ
そして今回のガラを新国立のダンサー達も出演して開催できる喜びと感謝が丁寧に綴られていました。
圭吾監督の冒頭の挨拶文、それから山本さんによる恵子先生の回想録インタビューにもありましたが、
とりわけ山本さんのお話の中には恵子先生の壮絶な厳しさの具体例が事細かに綴られていました。
恵子先生のような修羅になっての指導はできないと圭吾監督も語っていらっしゃり、親戚か否かは関係ないはっきりとした師弟関係が覗き見えます。
山本さんもまた、恵子先生のように生徒の心にまで入り込んでの厳しい指導はできないと仰っていました。
今の時代、当時の恵子先生と全く同じ教え方をしたら大問題になってあいまうでしょう。
おけぴのインタビューにおいても圭吾さんは、ピリついた空気の中で得も言われぬエネルギーを生み出していく追い込みアプローチの仕方ではなく
前向きなエネルギーを引き出せるよう指導したいとの旨をお話しになっていました。
しかし過酷さ極まりない作品であっても、恵子先生が聴力のお病気にかかっていたために
かえって音楽の奥底の音色も捉えていらしたであろう緻密なリズム感や踊り切る体力の鍛錬等
意図を入念に伝えたいと模索しながらの作り上げであったことと想像でき、結果として多彩な作品をいくつも上演を実現。
愛弟子達による伝承から初挑戦者達の新たな息吹まで、しかも恵子先生作品がそこまで馴染んではいない東京にてガラ公演ができたこと、心底讃えたいばかりです。
作品を継承する、再演を重ねるにあたり、恵子先生作品の未経験者や恵子先生との接点がない方も
挑戦していく機会は今後増えていくはずで、今回新国ダンサーの中には初挑戦者も多数。
指導方法や上演機会の開拓までまだまだ模索続きと察しますが、まずは継承及び東京の観客にも知ってもらう大きな第一歩に繋がる公演でした。
それからバレエチャンネルさんによる広報宣伝やSNSが発達した現代の時代も好影響したと思えます。
Bourbierの箇所でも少し触れましたが恵子先生の作品は近年東京でも何度かは上演、上映機会がありました。Bourbier以外にも
2014年春には出演者全員が男性ダンサー構成で挑んだPDA東京公演にて零戦の悲劇を描いたZERO、
同年日本バレエ協会夏の全国合同バレエにてCheminer(主軸は圭吾さん)、
2015年は青山劇場閉館公演にて2012年のPDA大阪公演にて初演された、男性ダンサーのみでエトワールもソリストもコール・ドも踊る
コメディ要素てんこ盛りに味付けして『パキータ』グラン・パをコンテに読み替えたPQ組曲(音楽はそのままミンクス等)、
一昨年頃には愛弟子達が埼玉県にて多重人格を上演。関東においても何度か上演機会はあったのです。
(もっと遡ると、2002年シアターアクトシリーズのスターダストin上海も振り付けられ、こちらはVHS化されました。真矢みきさんや山本さん、福岡さんらご出演)
しかし恵子先生の作品は著作権が非常に厳しく、一部分であっても映像が出回ることがまずなく
集合写真や後日の記事に掲載された舞台写真、プログラム掲載の練習写真が頼みの綱。
ですから2021年にバレエチャンネルさん主催のメモリアルトーク開催時に恵子先生の作品が何本も映像で紹介されたときは夢ではないかと思うほどにもう大感激。
司会の阿部さん曰く、著作権の厳しさについては口を酸っぱくしていらっしゃり、映像公開もあらゆる壁を乗り越えての実現と推察いたします。
Kスタ第30周年記念舞台時の幕間にこれまでの歴史振り返る映像が流れたときも貴重機会に驚きましたが
バレエのメディアとして全国規模で名高く絶対的な信頼性もあるバレエチャンネルさんによる
2021年のメモリアルトーク企画は一挙に話題を拡張させてくださったはずです。
オンライン視聴対応もまた、全国各地の視聴者に魅力を届ける大効果があったことでしょう。
そして今回、バレエチャンネルさんが日々リハーサルレポートやインタビューをこまめにインターネットやSNSにて宣伝してくださり、
広報力にも恐れ入りました。本番1ヶ月前には出演者登壇の催しも開催。 現在はバレエ公演のスタッフに転身された紘也さんによる宣伝映像制作を始め
愛弟子として恵子先生の作品を知り尽くしているからこその、裏方としての行き届いた働きも、公演をより厚みあるものにしてくださったに違いありません。
映像やインタビュー記事、トークでのお話においても恵子先生イコール怖い厳しいおっかない、そんなイメージを持たれた方も多くいらっしゃるかもしれません。
しかし親交が深かった桜井さんの解説によれば、会うといつも元気で明るい人だったようです。
以下、私が一観客としてKスタのプログラムを開き、客席から観たときの厳しさ怖さとは違った印象の恵子先生ですが。(素人目線で失礼)
Kスタが舞台開催時は恵子先生のコンテンポラリー作品だけでなく必ずクラシック作品も上演。
そのとき、恵子先生はどうなさっていたか。時々ですが、ちゃっかり脇役として出演なさっていたのです。
例えば2012年の『ジゼル』では1幕で貴族の1人。リハーサル中にカメラを向けられてウフフ!とポーズを取って微笑むお姿がプログラムに残されています。
2013年の『くるみ割り人形』ではマダム・ギゴーニュ。顔を白く塗って、巨大可動式衣装にも負けぬ小林幸子さんもびっくりな存在感だったわけですが
リハーサル写真では共演の子供の生徒さん達に一生懸命声掛けするエネルギーに満ちた恵子先生のお姿が。
本気で役に、舞台に向き合う、更には生徒さん達を鼓舞させて活力を引き出す先生に、子供は正直ですから楽しそうに頑張ってついていっていました。
この役はコンテンポラリーの指導も担当されていた徳島市の清水洋子バレエスクールでのくるみ全幕でも務められ、
首でフラフープをブンブンと回して笑いをドカンと沸かせる恵子先生でした笑。
最たる抱腹絶倒であったのは2010年のKスタ『コッペリア』での、福岡さんフランツを脅かすスペイン人形。
コッペリウスの家でお人形達が一斉に動き出す場面にて、お扇子を上下に振りながら舞台前方までフランツを追いやり
フランツからは許しを乞う叫びが聞こえてきたと思えたほど。笑いのセンスも王者そのものでした。
長くなってしまいましたのでこの辺りでお開きといたしましょう。ただ最後にこちらを。
プログラムにて山本さんが、ワークショップやオープンクラスを行っているが恵子先生のように
あそこまで生徒の心まで入り込む指導は僕にはできないと謙虚に仰っていましたが
山本さんのオープンクラスにおける、内容は難しくも穏やかな優しさに導かれ日々の心身の栄養としている受講者は多数。謙遜なさらないでください笑。
圭吾さん福岡さん石川さんが今の時代に即した伸び伸びとした空気を作りながら指導している様子を
とても頼もしく感じていらっしゃるようで、あたたかな眼差しで見守るご様子も窺えました。
今回は受付にお出ましで、お姿は変わらず爽やかでノーブル。別格なオーラを醸されていて、私の友人達も興奮しきりだったのは言うまでもありません。
恵子先生の夢でもあった東京でのガラ上演の実現と大盛況な客入りも心から祝します。
福岡さんや圭吾さんの原点を知ることができて良かった、また周囲からももっと色々な作品を観たいとのお声が沸いていて、
レパートリーハイライト映像で流れていた眠りの男性版パ・ド・シスが挿入されている『ジュール』が鮮烈で観たいとの要望も。
鷹揚を山本さん、呑気を秋定さんだったか。リラが佐々木大さんでした。梶原さんも何処かに出演なさっていたはず。私も初めて観る作品映像でした。
あとは『ノートルダム・ド・パリ』、『カルメン』、『PQ組曲』、バッハのロ短調ミサに振り付けられた『Logos』(荘厳で美しい作品です!)、
『Stress』(コンクール用に振付けられたソロ作品で今回Toi Toiに出演の平井美季さんが2020年にKスタ舞台で踊られ、
押し潰されそうな苦しみを凄まじいパワーで体現され印象深し)まだまだ思い浮かびそうです。振り返ると私も多数の作品を拝見してきたと回顧する今日この頃です。
恵子先生、今頃は香織先生とビールを酌み交わしながら変わらぬ厳しさと、
しかし夢を実現させてくれた愛弟子達や作品に果敢に挑戦したダンサー達を喜びの目で見つめてくださっていることでしょう。
近々のガラ開催、心より待ち望んでおります。
※以下、ご参考までに。
恵子先生について 2019年春
http://endehors.cocolog-nifty.com/blog/2019/04/post-61f0.html
2021年4月のメモリアルトークイベント。
https://endehors2.blogspot.com/2021/04/blog-post_30.html

3枚の写真展示。山本さんも写っていらっしゃいます。

右側から。

カーテンコールは撮影可でした。指導の3人!

Toi Toiチーム

新国ダンサーズ。

全員で!

圭吾監督!

ToiToiラストを思わす、ティアラこうとう入口付近。

帰りは久々5年ぶりに再会できた友人も交えて乾杯。まずは恵子先生がお好きであったビールから。

4種チーズピザも。最初から切り分けてくださっていて、食べやすい。チーズもたっぷり。

監督の圭吾さんにも敬意を。アトレのインタビューにてハイボールがお好きと拝読。一昨年、3年前のダイフク帰りはハイボール飲んでおりました私です。
海老のクリームパスタ、海老のお出汁しっかり出ていてハイボールともよく合います。

まん丸いふっくら鉄鍋チーズオムレツ!ぐりとぐらの絵本思い出します。

Toi Toiラストの余韻を想起させるきらきら泡のスパークリングワイン。今年のKスタ舞台も今から心待ちにしております。