2025年6月16日月曜日

新作バレエミュージカル『カルメン』上演!




6月26日(木)27日(金)かめありリリオホールにて、 主催・企画制作 一般社団法人 バレエ芸術推進協会(BAJ)/ダンサーズサポートによる
新作バレエミュージカル『カルメン』が上演されます。 主演に寺田翠さんを迎え、主要役には主役級キャリアのダンサー達が集結。
ミュージカルな要素も加わっての、大変興味惹きつける公演です。
寺田さんはガラで何度か拝見しており、ダイアナとアクティオンでのスパッと伸びる身体や軽やかな踊り方に度肝を抜かれましたが、全幕ではどんな表現をなさるのか気になるところ。
国内メジャーバレエ団で主役を多数踊られてきたたダンサーや歌手の方々の歌声がどう絡むのか、演出方法にも関心が高まる企画です。
以下、様々な媒体にて掲載記事や動画等紹介して参ります!
https://balletartsjapan.com/


各メディアにてリハーサルレポート含め、告知がなされています。
https://balletchannel.jp/44763

https://theatertainment.jp/feed-allow-post/139376/


寺田翠さんのインタビュー
https://www.dancersweb.net/%E8%A4%87%E8%A3%BD-top-interview-2


-------------------------------------------------- 新作バレエミュージカル『カルメン』上演!

国内トップバレエダンサーとミュージカル俳優・歌手の共演が実現します。
カルメン役には、世界3大バレエコンクールの一つ、モスクワ国際バレエコンクール シニア女性部門・銅賞受賞歴の寺田翠が主演します。
オペラ「カルメン」の物語をベースに、ビゼーの名曲とオリジナル楽曲で描く、ミュージカル界の上島幸夫の演出・振付による新たなエンターテイメントの誕生にご期待ください!


≪あらすじ≫

舞台はスペイン・セビリヤ。奔放で魅力的な女性カルメンは街の男たちを魅了する。
婚約者がいる実直な衛兵ドン・ホセがカルメンに恋に落ちてしまったことから、ふたりの運命が狂いはじめる―。
 

「一度は本気で愛した男、ホセ。彼ほど私を愛した人はいない。
でも私はもう、彼を愛していない。ホセに殺される運命ならそれを受け入れよう。
それでも、誰も私から自由を奪えない。私はどこまでも自由。それがカルメンだから」


  〔出演者〕

寺田翠/元ロシア国立ノヴォシビルスクオペラ劇場ファーストソリスト(カルメン)

菊地 研/ 元牧阿佐美バレヱ団プリンシパル(ホセ)

秋元康臣/元東京バレエ団プリンシパル(エスカミーリョ)

吉留 諒/東京シティ・バレエ団プリンシパル(スニガ・トレアドール)

吉田早織/元Kバレエカンパニー・ソリスト(ミカエラ)

noyori/歌手(現代の恋人・ムヘール)

東山光明/歌手・俳優(現代の恋人・オンブレ)

佐藤彩未/バレエダンサー(ジプシー)

テッラコーネ沙夜/東京シティ・バレエ団所属(ジプシー)

長谷川未紗/俳優・ダンサー・シンガー(ジプシー)

中村優希/Somatic Field Project(ジプシー)


〔演出・振付〕上島雪夫

ミュージカル作品の振付多数。延べ251作品以上に携わる。
新国立劇場バレエ団の作品提供「DANCE to the Future ナットキングコール組曲」。二期会オペラ「椿姫」の振付。
バレエ映画『踊れ!昴』のダンス監督 「ダンス・オブ・バンパイヤ」「42nd street」 
「マイ・フェア・レディ」「サウンド・オブ・ミュージック」「アルジャーノンに花束を」演出・振付など。


  【寺田翠プロフィール】

2008年モスクワ国立舞踊アカデミーに留学。2017年に世界3大バレエコンクールの一つ、モスクワ国際バレエコンクール シニア女性部門・銅賞受賞。同年、文化庁長官表彰を受賞。
2018年からロシア国立ノヴォシビルスク・オペラ・バレエ劇場にファースト・ソリストとして活躍後、2022年日本に拠点を移す。

受賞歴/2004年 「YAGP日本予選」PC部門 第1位。2005年「OsakaプリコンクールJ2部 第1位 / 「NBA全国バレエコンクール」小学生の部第2位、
2008年「NBA全国バレエコンクール」ボリショイバレエアカデミースカラシップ受賞。
2009年「埼玉全国舞踊コンクール」Jr.部 第2位。2010年「ジャパングランプリ」JA女性部門「The Ailey Scool Full Year scholarship」 /
「The Young Ballet of the World by Grigorovich in SOCHI」ジュニア女性部門 第1位。
2012年「ペルミ国際コンクール:アラベスク」女性部門第2位 /「ガリーナ・ウラノワ賞」/「エカテリーナ・マクシモワ&ウラジミール・ワシリーエフ賞」 /
「The Young Ballet of the World by Grigorovich in SOCHI」シニア女性部門 第2位。
2016年「クラスノヤルスク国際バレエコンクール」シニア女性部門第1位、2017年「モスクワ国際バレエコンクール」女子シニア部門銅賞受賞、「文化庁長官表彰」(国際芸術部門)「豊中かがやき大賞」受賞。



集合写真



ハバネラ



リハーサル



寺田さん。脚線が美しや!



秋元さんと吉留さんのジャンプ!!













  新作バレエミュージカル『カルメン』

2025年6月26日(木) , 27日(金)かめありリリオホール

(JR亀有駅南口下車徒歩1分)

http://confetti-web.com/@/balletmusicalcarmen

2025年6月11日水曜日

浅草公会堂での大掛かり再演   日本舞踊の可能性  6月6日(金)




6月6日(金)、浅草公会堂で日本舞踊の可能性vol.8を観て参りました。
https://www.nbkanousei.com/

https://www.richessemag.jp/lifestyle/culture/a64683151/daily-news-250508/

https://balletchannel.jp/45404
バレエチャンネルさんによるインタビュー。蘭黄さん山本さんがお話しくださっています。実は1人3役な役どころのガルトマン!
日本舞踊とバレエの違いの面白さ等、尊重し合いながら語り合う内容に、舞台観る前から引き込まれてしまいました。


藤間蘭黄さんの動画チャンネルより。熱の入ったリハーサル風景です。




第一部は  鄙(ひな)のまなざし~一茶の四季~。小林一茶の俳句をもとに、作曲演出振付を藤間蘭黄さんが手掛けられ、
藤間聖衣曄さん、藤間鶴熹さん、藤間蘭翔さんの3名の女性で踊られました。
春夏秋冬それぞれの季節感や時にはユーモアある動物の仕草も取り入れ、照明演出も変化に富んでいて
良い意味で想像していた日本舞踊とは全く違った舞台と思えた次第です。
バレエとの共同企画がない限り日本舞踊を観る機会がないど素人の私はお恥ずかしい話、女性による日本舞踊と聞くと
ひたすらはんなり、優雅に内向き儚げな風情でしっとり舞う印象が先行しておりました。
ところが、一茶のほのぼの素朴で優しげな四季の風景を色鮮やかに体現して、ゆったりと舞うこともあれば
機敏に力強く舞う場面もあり、実に感情豊かに身体を使っての踊り方に驚きが止まらず。
猫の様子を表現する箇所は解説文によれば、プティパが『眠れる森の美女』猫の踊りを振り付けたときに指示した猫の声のように、
子猫のか細い声を三味線の音色で表して取り入れたとのことです。またクラシック・バレエでいうグラン・プリエに似た脚を開きながらのポーズもあり、
着物を着たまま上品な姿はそのままにパワフルなポーズも繰り出す練り上げられた技術に目を見張りました。

小林一茶については俳人としては名は知っていたものの生涯については初耳な事柄ばかりで、
幼い頃から恵まれない境遇を生き抜いたのち、各地を回りながら句を詠んでいたとは初めて知りました。
純朴で優しい、真っ直ぐに語りかけてくる数々の俳句の裏にはどれだけの悲しみ苦しみが潜んでいたかと思うと、一茶の人間力の強さを感じずにはいられません。

第二部は展覧会の絵。ムソルグスキーと親友ガルトマンの友情を描いた日本舞踊とバレエの共演作品で、初演は2017年。
作品の舞台であるウクライナのキーウの黄金の門にて蘭黄さんと、当時キーウバレエ学校芸術監督を務めていらした寺田宜弘さんが踊られ
本物のキーウの大門での披露された初演版の世界観はさぞかし圧巻であったであろうと想像いたします。
プログラムには初演時の終盤場面写真が掲載され、門の中の回廊のような空間の上部に掲げられている木組みの橋らしき場所にて寺田さんが佇む姿と
下から仰ぎ見る蘭黄さんのお姿があり、写真を眺めているだけでもどっしりとした厚みと昇華の輝きが伝わってきます。

今回は昨年7月に銀座の王子ホールで上演されて以来の再演で、銀座に続き日本舞踊を蘭黄さん、バレエを山本隆之さん、ピアノを木曽真奈美さん。
コンサート向けの小さめの王子ホールから、3階席まである大きな浅草公会堂に場所を移し、照明や花道も生かしての演出が加わって一層堪能いたしました。
蘭黄さんのムソルグスキーが大地を踏み締めるように力強く舞いながらガルトマンと語り合い、
しかしガルトマンが息絶えると苦しみに苛まれる様子は息が詰まりそうになるほど痛々しく、やがてガルトマンに励まされながら
徐々に生気を取り戻して行く過程をじっくり心刻むように踊られるお姿は胸打つ衝撃がありました。

山本さんガルトマンはしなやかでエレガントな踊りで引き込み、一挙手一投足から優しい言葉が聞こえてきそうな振る舞いにどれだけ心動かされたことでしょう。
前回の王子ホールより遥かに舞台から遠い席から鑑賞していたはずが、角度の転換や
音楽1つ1つを一段と細やかに身体で表していらしたのか双眼鏡無しでもくっきりとした連なりが視界を覆っていきました。
早々に倒れ込んで命を落としてしまう悲劇の人物でムソルグスキーが悲しみに暮れるのは当然の展開ながら
ガルトマンが単に可哀想な悲劇の人の印象ばかりが残らずであったのは、語りかけ方や励まし方に包み込むようなあたたかみと美しさが宿り、
演奏とも睦まじい関係性が見えてくるほどに生き生きとした情熱を発しつつ、悲しみを溶かし導いていく踊りが心に目に飛び込み、響き続けていたからこそでしょう。子供達が踊る印象が強い雛達の可愛らしい軽快な曲の部分も
山本さんが踊られると神々しい光の粒を撒いてくださっているとも感じさせ、体内が浄化されずにいられず。

木曽さんのドラマティックな世界が広がる演奏も魅力たっぷりで、基本この曲は壮大なオーケストラ演奏版を好む私ですが
お1人でピアノ1台で公会堂を突き動かすようなエネルギーと多種の楽器を操っているかの如くスケールを感じさせる木曽さんの演奏は格別です。
また日本舞踊とバレエが舞台上で同時進行していても一方通行にならず、お三方の踊りや演奏の調和力にも感激。
特に最後、公会堂バージョンとして奥側の舞台機構を生かし、オレンジやブルーの照明も加えて
半裸姿のガルトマンが高所に佇む演出は、客席全体にも光が降り注ぐようなパワーが充満したまま荘厳な幕切れへと繋がっていき
分野は違えど三者の味わいが一体化した、切なくも希望の光を見出すような厚みと美が濃縮した舞台でした。

それにしても山本さん、倒れ込んでも美しや。『ジゼル』において絶品アルブレヒトも各地で見せてくださった懐かしさも込み上げました。
木曽さんは演奏のみならずお姿もたいそう麗しく、銀色の模様で彩られたロイヤルブルーのドレスも何処かの公国の姫君の如くお似合いでした。
そして蘭黄さんの精力的な活動エネルギーにも脱帽です。

それにしても日本舞踊を観て再度思います。動きに制約のある着物を着ていかにして躍動感ある踊りが可能なのか。
バレエのように脚をスパっと大きく開く高く上げる振付は不可能であり、しかし大胆さも繊細さも自在に体現して魅了。
また演奏者を眺めていると、ずっと正座しながらの演奏はお辛くないのか、素朴にもほどがある疑問で失礼。きっと訓練の賜物なのでしょう。
自宅でも冠婚葬祭関連でも正座習慣皆無に近い環境で育ってきてしまった私からすると
日本舞踊を始め伝統芸能、文化に携わる方々の美しい正座の維持は見惚れてしまうお姿です。




行きはおのぼり気分でちょこっと浅草散策。仲見世通りの大半は閉店時間を過ぎていましたが、涼しい夕暮れ時で人出も落ち着き、歩きやすい。
お着物着てお出かけしたくなる風情です



この通りのお店で浅草メンチを購入して食べましたが、お腹空き過ぎて写真撮影忘れてしまいました笑。
お肉がぎゅっと詰まっているだけでなくザクザクと粗めに切られた玉葱の食感も丸でございました。




浅草シルクプリン。バニラもよく効いて、弾力と滑らかさ両方備わっています。



シルエット絵柄。



浅草公会堂とスカイツリー。



公会堂に入ると出迎えるシャンデリア。



浅草を一望できる妙に広い休憩スペース。



公会堂そばにて。オレンテくん。



帰りは会場近くでもんじゃ焼き!観劇帰りにお好み焼きを口にする機会は過去10回はございますが(全部大阪での観劇にて笑)
もんじゃ焼き店へ行くのは、約36年の鑑賞歴の中でも初です。1人でも入り易いお店で、入口の案内にはお店の方が焼いてくださると明記があり一安心。
奥側のカウンター席へ。まずは雷門サワーで乾杯です。



つぶ貝とジャガイモのバター焼き。
ジャガイモが芳醇なホクホク感で焼き目は香ばしく、つぶ貝はコリっとした歯応えでお酒進んでしまいます。
味付けはシンプルながら、美味しい素材を目一杯味わえました。少し唐辛子をかけるとピリッと味変できておすすめです。



さてもんじゃです。素もんじゃにチーズをトッピング注文いたしました。素もんじゃのもですと本当にキャベツのみとのこと。
トッピング種類は豊富で、他にも紅生姜や明太子、明太バター、と多彩な並びです。
チーズはお店の方からおすすめと教えていただき、決定!



きびきびとした手捌きでドーナツ型に整えてくださいます。



ダムも建設!私には到底不可能です。以前大阪の鉄板焼き店のテーブル席で自己調理たこ焼きをやってみましたがくるっと回転させることができず。
たこ焼き、バレエ、頭も、回転は永遠に苦手でしょう汗。



お好み焼きと違ってあっという間に調理完了。チーズを撒いたらもう食べ頃ですとのこと。段々と溶けていくのでちょうど良いのでしょう。
チーズの塩っぱさやまろやかさとたっぷりキャベツが合わさって、ボリュームもしっかり。美味しくいただきました!



浅草駅への帰り道、灯りが並ぶ夜の仲見世通り、ノスタルジックです。



時間があと1時間ほど早ければ、天気予報の上空からの映像に私も映っていたかもしれません。
キーウの大門を題材にした舞踊作品を鑑賞した帰りに眺める浅草の雷門でございます。

2025年6月4日水曜日

朗らかなエネルギーが降り注ぐヌレエフ版  オーストラリア・バレエ団『ドン・キホーテ』5月31日(土)夜







5月31日(土)夜、オーストラリア・バレエ団『ドン・キホーテ』を観て参りました。2010年以来、15年ぶりの来日公演実現です。
https://www.nbs.or.jp/stages/2025/australia/



バレエチャンネルさんの取材レポート。


※キャスト等はNBSホームページより

振付:ルドルフ・ヌレエフ(マリウス・プティパに基づく)
音楽:ルドヴィク・ミンクス
編曲:ジョン・ランチベリー
衣裳デザイン:バリー・ケイ
装置デザイン:リチャード・ロバーツ(バリー・ケイデザインのオリジナル映画に基づく)
照明デザイン:ジョン・バスウェル
本作は、インターナショナル・アーツとオーストラリア・バレエ団が1973年に制作した映画「ドン・キホーテ」を舞台化した。

ドン・キホーテ:ジョセフ・ロマンスヴィッチ

キトリ:ジル・オオガイ

バジル:マーカス・モレリ

サンチョ・パンサ:ティモシー・コールマン

ガマーシュ:ジャリッド・マデン

ロレンツォ:ルーク・マーチャント

街の踊り子:イゾベル・ダッシュウッド

ドリアードの女王:キャサリン・ソネカス

エスパーダ:ダヴィ・ラモス

ロマの首領:イチュアン・ワン

キューピッド:山田悠未

ファンタンゴ:清遠ラリッサ、メイソン・ラヴグローヴ

ブライズ・メイド:根本里菜

友人たち:渡邊綾、リラ・ハーヴェイ

指揮: ジョナサン・ロー
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


オオガイのキトリは落ち着きと色っぽさを備えた大人の雰囲気で、きりっと纏め上げる踊りに感激。
どちらかといえば小柄な体型であってもステップやポーズの決め方が大きく且つ洗練された大胆さがあり、惹きつける陽のオーラもあたたかでした。
バジルに拗ねる箇所は可愛らしく、怒って思い切り足を踏んづけてもチャーミング笑。
バジルのモレリは軽やかでヌレエフ特有のややこしい脚捌きも余裕綽々で楽しそうにこなす技量に天晴れ。
サポートも大安定で、1幕のリフト見せ場では随分と長く数ミリも動かず片手で静止のまま、更には拍手を手招きするサービス精神まで繰り出していました。
狂言自殺はキトリにだけ仕掛けを明かす設定で、ちょこんと寝る姿も愛嬌いっぱい。
グラン・パ・ド・ドゥはよく観るロシア系の振付とはかなり違った構成で、2人で爪先立ちしてのポーズや身体捻り、更には走り込んできたりと息が合わないとおかしな経路になる振付。
しかし2人とも息ぴったりでマスゲームではなく明るい息遣いの中で自然とシンクロする朗らかさが広がる幸せに満ちたペアでした。

そして愛されキャラクターとして君臨していたのはマデンのガマーシュ!満開の薔薇の花園から出てきたようなラブリーな貴族、どころか王族に見え
白いレース地のパラソルや白いフリルのお洋服、パラソルや靴にもピンクのおリボンで、歩くピンク薔薇のアレンジメントなご活躍でした。
何をしてもお茶目で優雅で、サンチョのラッパ音噴射のときは自身のハンカチをラッパの傘の中に入れてミュート対策も行う細やかなお芝居も心躍らせました。
(大事なハンカチ、サンチョに鼻をかまれてしまう笑)
細かいといえば、野営地での人形劇ではキトリ、バジル、ロレンツォやガマーシュが登場し、子役が同じ衣装でそっくりに演じていました。
殊にロレンツォ本人はびっくりしていても何だか微笑ましそうにしていたのもほっこり。

パペットと言われなければ本物のお馬さんかと思わす、ロシナンテも精巧で大きく、表情は愛らしい作りで
ドン・キホーテが馬から下りるときは踏み台が必要なほど立派な馬ですが、
広場でドン・キホーテ達を囲みながら賑やかな光景を刻む一方でロシナンテは後方で旅の小休止と言わんばかりに人形師が持つ草をハムハム。
愛くるしいお食事タイムを披露です。街の人々もロシナンテに触れたり、お食事タイムを覗いていたりと
ロシナンテも人気者且つ大事な出演者として存在を示していました。カーテンコールにも人形師と一緒に登場して、喝采に対して深々とお辞儀。観客も興奮してしまいます。
そういえば、前回と前々回公演での『白鳥の湖』1幕では庭園の奥側でずっと釣りに勤しんでいる人がいたりと、隅々まで芝居心が息づく演出であったと思い出しました。

それから夢の場の衣装が壮観。森ではなく宮廷が現れて胸元のカッティングが平たい、中世風なゴージャス衣装の埋め尽くしに驚嘆いたしました。
金色系、ブルー系、青系な3チーム編成で模様も違いがあり、肩紐にも装飾が彩られたデザインや頭飾りや胸元にも大ぶりの真珠風飾りが散りばめられていて
ドンキと知らずに目にしたら『ライモンダ』と思い込んでしまう光景でした。考えてみればドン・キホーテは中世の騎士道に憧れを抱いていますから辻褄の合う設定です。
夢の場のみならず衣装や装置は豪華でしっかりした作りで、1幕はバルコニー付きの装置が迫力ある上に、
仕事中のバジルやお料理中の人もいたりと生き生きしたバルセロナの人々の生活ぶりが覗くのも楽しい。
結婚式では1幕と同じ装置であっても蝋燭の灯りがずらりと並んで天蓋も掛けられ、装置もドレスアップです。
船での運搬、そして文化会館への搬入、大変であったと察します。

唯一気にかかった場面が狂言自殺のあと、成功するとキトリとバジルはすぐ走り去ってしまい、ロレンツォが事態を把握できたのかよく分からずであったこと。
そのまま結婚式に移りましたから、裏では諸々状況整理をしていたのかもしれませんし、
通常酒場のフィナーレで行われる一斉指パッチン踊りが3幕最後に行われましたから、めでたしめでたしと捉えて良いのでしょう。

ヌレエフの振付と聞くと作品問わずややこしいステップの詰め込みな印象が先行しておりますが、今回はだいぶ変化。
忙しそうな振付であるのは想像通りであったものの、誰も必死な形相の人はおらずいとも易々と、
心から喜びを溢れさせながら踊っていて、コール・ドに至るまで技量の高さを確認。
加えて団特有の大らかさが全体を包んで朗らかなエネルギーを放っていたように思えます。
観ていて疲労感が伝わってこない感じさせないヌレエフ版全幕なんて珍しいはず笑。(褒め言葉です)

演奏は全体を通してエレガントで大らか、編曲はロシア系とはだいぶ異なる、節々に花が咲くようなお洒落な曲調満載で
所謂ズンチャッチャ!ズンチャッチャ!な音頭は控えめに思えました。オケピに貝を持ったラッコが何頭もいるのかと思わすような
カスタネットカチカチも抑え目。優雅さ繊細さの方が前面に出ていた印象です。

前回来日から15年も経ち、久々の実現に歓喜したと同時に次回は間を空けず、3年後あたりには来日してくださると嬉しうございます。
眠りのような古典も観たくなり、コンテンポラリーもバランス良く上演しているようですからミックス・プログラムも歓迎です

ヌレエフ版『ドン・キホーテ』はミラノ・スカラ座、パリ・オペラ座来日公演で観ているはずが、
洒落た衣装やバヤデールの逢瀬の場面曲を野営地での使用、バジルのソロが多い点くらいしか記憶になし。(オーストラリアの曲構成にはバヤデール曲はなく、また違う演出らしい)
ダイジェスト映像で観た、日本人男性ダンサーがバジルを踊られたトゥールーズの3幕や舞台写真のほうが遥かに脳に刻まれており、人間とは身勝手な生き物です笑。
衣装はだいぶ違っていましたが、お洒落な色味の組み合わせであったのは共通。バジルは赤、黒、白で整えられていました。



ちらっと映像にも映っていらっしゃいます。ロットバルトも。


https://www.dansesaveclaplume.com/14688/en-scene/ballet-du-capitole-de-toulouse-dans-les-pas-de-noureev/

http://www.forum-dansomanie.net/pagesdanso/critiques/cr0242_dans_les_pas_de_noureev_28_11_01_12_2013.html
舞台写真はこちらに掲載。フランス語記事です。ヌレエフ・ビルな構成の公演。
当方批評内容の細かな部分までは把握できず、内容は各自でご解読ください。ロットバルトも観てみたい、興味持たせる役です。


http://www.forum-dansomanie.net/forum/viewtopic.php?p=96507
アントレの大ジャンプ写真あります。真ん中あたりまでスクロールを。他にも魅力的な作品写真多数ございます。


https://lesballetonautes.com/2013/12/20/surprise-dautomne-hommage-tardif/
ポスターにもなっていたようです。わお!




話が干支一回り前近くの南仏寄りになりましたので南半球に戻します。私がオーストラリア・バレエ団に再度着目したきっかけでもある2022年のワールドバレエデーのレッスン。
ハイライトは残されており、最初の方にクラスレッスンが収録されています。
スタジオが広々としていて明るく、天井も高く開放感抜群。またバーの配置もあるのか
人数は多めであっても区画整理がきちんとなされた印象を受け、観ていて非常に爽快でございました。
常日頃から同様のレッスンであるのか、カメラが入るワールド・バレエ仕様であるのか詳細は分かりかねますが、何処を見てもすっきり。
そしてホールバーグ監督自ら指導をなさっていて、バレエ団のクラスでも美しくクリアなお手本を次々に披露しながら
丁寧に、加えて大変聞き取りやすいお声と話し方であったのも驚きを覚えました。
周囲がロイヤルやパリ・オペラ座で話題沸騰の中で、私はじっとオーストラリア派を貫いておりました。



リハーサル写真パネル。開演前にはホールバーグ監督とゲストコーチのギエムによるトークも開催。自然や動物に囲まれながら生活しているギエムのもとに
ホールバーグから突然依頼の電話がかかってきて、喜んで引き受けたとのこと。
ホールバーグは監督就任後の野望リストにギエムによるバレエ団指導を挙げていたほど、念願叶ってのリハーサルであったそうです。
型にはめずに色々試しながらダンサーに合った役作りを一緒に追求していくギエムの指導が紹介され、
ホールバーグはダンサーが持つ探究心の大切さを強調。時には厳しさも必要だが、
基本は一緒に作り上げる作業を楽しんで行いたいと思いながらリハーサルを進行しているそうです。
お2人の現役時代を何度も観てきた者からすると嬉しくも不思議な並びでした。
ロイヤル移籍時には国家的損失とフランスの国会でまで話題になっていたギエムですが、自身のキャリアについては一切触れず
終始オーストラリア・バレエ団での仕事の充実についてにこやかに語っていた真摯でピュアな姿勢にも頭が下がりました。









前年2006年に世界バレエフェスにてルシンダ・ダンとマシュー・ローレンスが抜粋で披露し、バレエ団来日と全幕上演を心待ちにしており
初めてオーストラリア・バレエ団来日公演を鑑賞したのは2007年。英国王室スキャンダルを取り入れた白鳥の湖を目にし、驚きを超えて英国上演はよく許可されたと衝撃。
スキャンダル慣れしたお国柄なのか、バレエに取り混ぜての風刺は王室側からしても許容範囲なのだろうかと今も記憶に残っております。三角関係なトロワ、ドロドロとしていたかと思います。

白鳥は翌来日公演でも鑑賞し、加えてくるみ割り人形も。バレエとしての場面は物足りなかったがオーストラリアのバレエ発展史をクララを3世代で紡ぐ、
朝ドラのカムカムエヴリバディのくるみ版なる時代超えていく演出は面白く鑑賞。
くるみには、初台の不思議の国のアリスでも大活躍されたハリス、マッデンのお名前もあり。
今やプリンシパルとして、バレエ・アステラスでもお馴染みで今回のファーストバジル、グオさんは水兵さんでした。




帰り、バルでオーストラリア産の赤ワインで乾杯。しっかりとした味わいがありつつすっと喉を通る爽やかさもあり、飲みやすいお味でした。



タコのお出汁いっぱいのアヒージョと、外はカリッと中はツヤツヤフワフワな食感のバケットです。
そしてお店名物のニュージーランド産のラムチョップ!お肉そのものが脂身なく、しかし旨味がギュッと詰まっていて、シンプルなスペイン塩での味付けがおすすめ。
焼き鳥と同様なのか、タレもありますが、まずは塩で是非。ジンギスカン好きな管理人、
塩味ならあと5本くらい食べられたかもしれません笑笑。次はビールと一緒にいただくつもりです。



焼いています!



拡大。ソースは辛くはなく、酸味がちょこっと効いている程度ですので辛さが苦手な方もご安心を。店員さんの説明通り、お箸で塗って付けていただきます。
上野広小路駅近くの、下町バルながおか屋です。メニューの案内や食べ方の説明も店員さんがとても親切で好印象でした。
今年はジゼルだけでなくドンキも当たり年。発表会含めると春から何回観ているんだ??夏も全幕観る、
秋はKバレエ、牧バレエ、東京バレエ団と続きます。上野でのドンキ鑑賞帰りにまた立ち寄りたいと思っております。


2025年5月28日水曜日

熊川さん版の伝統作品17年ぶり!  K-BALLET TOKYO『白鳥の湖』5月24日(土)




5月24日(土)、K-BALLET TOKYO『白鳥の湖』を観て参りました。Kバレエの白鳥は17年ぶりの鑑賞で、
前回鑑賞時はリーマンショックの数ヶ月前。主演は松岡梨絵さん宮尾俊太郎さんでした。
Kバレエの白鳥は3月上演が多く、初台と重なっていてなかなか観に行けずであったのかもしれません。
https://www.k-ballet.co.jp/performance/2025swanlake.html








オデット/オディール:日髙世菜
ジークフリード:石橋奨也
ロットバルト:栗山廉
王妃:戸田梨紗子
ベンノ・王子の友人:栗原柊
家庭教師:ビャンバ・バットボルド
パ・ド・トロワ:木下乃泉  武井隼人  岩井優花
4羽の白鳥:塚田真夕  辻梨花  梅木那央  大坪明日香
2羽の白鳥:岩井優花  小林美奈
6人の姫:大久保沙耶  弟子丸智絵  長尾美音  木下乃泉  島村彩  海老原詩織



日髙さんのオデットはしっとり艶かしい羽ばたきが絶品で、弧を描くしなるラインを生かしつつも過剰な仕草に走らず
あくまで品を保ちながらの踊り方であったのも好印象。視線や表情の付け方も明確で、
王子と出会ったときに弓に恐怖を感じてすぐさま顔を背けて走り出す流れもごく自然に映りました。
オディールはもっと悪女になるかと思いきや、企みの声が美しく響いてきそうな気高い姫。スペインの最中に姿を現すときもこれ見よがしにアピールせず、
さらりとしかし撫でられているような不思議な感覚に襲われて背筋ゾクゾク。
それでいて視線や踊りは妖艶な魅力を纏っていて、これは王子も罠に引っかかってしまうのも無理ありません。
説得力があると思わせたのは、舞踏会後の湖畔の場で、王子の謝罪に対して怒りは見せないもののすぐには許しを示さず、
その後も目線を合わせぬよう顔を横に向けていて、終盤近くの飛び込みの辺りまでは心をすっかり閉ざしていたと見えたこと。
大概のオデットは王子の過ちをすぐに許して包容していますが、考えてみれば世紀の大失態を王子はやらかし、
しかも20人以上はいる侍女達の運命も背負っているオデットの立場からしたら、即座の受け入れは困難な事柄でしょう。
重たいワルツにのせたパ・ド・ドゥが、もう僅かな希望の光すら見えずずっしりと悲しみを引き摺る効果をより強めていた気がいたします。

石橋さんの主役は恐らく初めて拝見。能天気坊ちゃんではなく、少し翳があり皆と騒ぐタイプではなさそうな王子で、家庭教師とも終始落ち着いた会話を披露。
オディールに騙されていたと知ったときの絶望時も王妃に泣き縋ることなく(熊川さんはなさっていたのでしょうか。機会あればDVDで確認いたします)、
自力で何としてでも助けに行きますと言わんばかりに切り替えての全力疾走で湖畔に向かっていきました。
Kには珍しい明快なゴージャス感は控えめ系かもしれませんが、踊りもサポートも着実に決め、
日髙さんのラインをより大きく華々しく見せて舞台を彩ってくださっていた印象です。
そうでした、最後の決死の飛び込みのとき、身体にドラマティックな血が充満し過ぎたのか、
片脚を反るようなフォームで飛翔していたのは思わず笑ってしまいました笑。脚も愛を叫ばずにいられなかったのでしょう。

他日の王子と兼任でロットバルトを務められた栗山さんの敵役は恐らく初見。好みは別として容姿からして王子様な雰囲気が真っ先に浮かびますが
スッと抜けるような妖しい魔力で支配し、目の辺りも隠れる装飾もありながら、眼光もなかなか鋭く、黒い役もよく似合うと思えました。
(ひょっとしたら、ご贔屓の観客からしたら敵役系のほうが良いとか?)
ただ思い起こせば2023年の新制作『眠れる森の美女』王子にて、カラボスの罠にかかって黒いオーラを漂わせながらオーロラに迫るローズ・アダージオにおける
オーロラと惹かれ合いながらも冷たい不気味な物質に身体中が弄られかき乱される感覚がもたらされた衝撃が強烈で、ダーク陰鬱路線な役柄はお得意なのかもしれません。

それからキーパーソンと今回気づかされたのは家庭教師。国の繁栄のために常時カリカリ神経質な王妃と異なる、
亡くなっているであろう王子の父親代わりにも見て取れる会話の温かさ、弓で遊んでしまうお茶目な魅力、
麦茶の如くお酒を立て続けに飲み過ぎて泥酔してしまうおっちょこちょいな愛嬌、
また王妃に花束贈呈を終えたワルツの女性のためにさりげなく道を開けて導いたりと、引き締めと和ませ役として大活躍でした。
実は第1幕からロットバルトの存在に誰よりも早くに気づくも信じてもらえず、オディールとの結婚の誓いにもストップをかけたりと
怪しさを早期の段階把握していた人物として描写されているのは初めて知りました。
8月の国際バレエアカデミアの『シェヘラザード』では再び宦官役にお目にかかれますように。

全体を通してテンポ速いスペクタクル展開で特にベンノが大忙しな踊り祭り。栗原さんの身体が捥げないか心配になるほどで、
舞踏会の始まりも幕が開くと既にブンブン回転を続けていて、しかしコントロール力が切れず常に場を沸かせる技量に天晴れでした。
1幕のワルツも激しいステップやフォーメーションの交差てんこ盛りで、若き日の団長のギラギラとした魂が吹き込まれた演出でしょう。
団員達の食らいつきが目に浮かびます笑。
トロワも身体の捻りをシャープに効かせる振付が多く、それでもいとも易々とこなしていて
木下さんの端正な中から長く美しい四肢を自在に操る踊りや岩井さんの軽やかで音楽にぴたっと吸い付くような見せ方、腕の使い方の優雅さも目の保養。
謎のヘアバンドだけが疑問であったが笑、秋のドンキでは主役デビュー?の武井さんのパワーや淀みないキレ味も宜しうございました。

舞踏会の民族舞踊はどれもグイグイと押しが強く、マズルカでは小柄と思わせぬ世利さんの上体の使い方の雄弁さが目を惹いて全体を力強く統率。
チャルダシュには小林美奈さんもいらして華々しくリードされ、肩の使い方の粘りも麗しや。
スペインはオディールの見せ場を盛り上げて支える謎めいた集団の設定なのか全員仮面付き。
ロットバルトの仮面にも似ているため、手下までとは言わずとも関係性はありそうです。
スペインの途中、曲調が落ち着いたところでオディール出現やコーダの使用曲や振付はブルメイステル版と似通っていますが
ロットバルトのヴァリエーション終盤にリフトされながら対角線上を走る振付は熊川さんオリジナルでしょうか。オディールが終始罠をし掛け続けて王子を眩ませているようで
ヴァリエーション間もぶつ切り感がなく、これはこれで面白みがあると思え、隙なく畳み掛けるコーダも興奮を誘いました。

1幕の幕開け、流線状の装置の迫力に、そしてスピーディーに踊りながら駆け抜ける振付に初めて観たかのように圧倒され、17年の歳月の長さを再確認。
そこへ登場する1幕王子のブルーとシルバーで彩られた衣装もきらっと華やいで見えました。
それから怪我で舞台から離れていらした杉野さんの、全体に目を配る儀典長の存在感も光り、少しずつ復帰してくださいますように。
オデットや白鳥達の頭飾りの向きが後ろ側に向いていてよく見る形とだいぶ違っているのはきっと理由があるのでしょう。
湖畔の場面だったか、ロットバルトのお腹の素肌が見える点も含めて 色々疑問が沸いており、
詳しい方や熊川さんの過去のインタビューで知識を得られたらと思っております。
羽が立体的にたっぷり付けられた、黒一色ではないチュチュの作りも独創的なオディール衣装はデザインに負けてしまいそうな、着こなしが難しい衣装ですが
今回の日髙さんも、前回観た松岡さん共に一層姿がゴージャスに映えて、主役オーラの輝き十二分でした。

振付が詰め込み急速テンポ過ぎに見える箇所もあり、白鳥達はチュチュ派であるため
好みにぴったりと嵌まる作風では決してありませんが、しかしまた観たくなる魅力を感じており
次は17年と時間を空けず笑、再演も足を運びたいと思っております。















秋公演『ドン・キホーテ』衣装も展示。バルセロナに行ったことがある親族曰く、熊川さん版はどの版よりも街並みを忠実に再現しているとのことです。










頭飾りも凝っています。







帰りはオーチャード向かいのお店にて、ドイツビールで乾杯!緻密な紋章なラベルもじっと眺めてしまいます。
肌寒い日でしたが、美味しくいただきました。



ウォッカもあります。

2025年5月23日金曜日

オーストラリアでの成果を短期集中で披露   東京バレエ団『ジゼル』 5月18日(日)








5月18日(日)、東京バレエ団『ジゼル』を観て参りました。
https://www.nbs.or.jp/stages/2025/giselle/





※キャスト等はNBSホームページより
音楽:アドルフ・アダン
振付:レオニード・ラヴロフスキー(ジャン・コラーリ、ジュール・ペロー、マリウス・プティパの原振付による)
改訂振付(パ・ド・ユイット):ウラジーミル・ワシーリエフ
美術:ニコラ・ブノワ


ジゼル:足立真里亜
アルブレヒト:生方隆之介
ヒラリオン:岡崎隼也

- 第1幕 -

バチルド姫:加藤くるみ
公爵:中嶋智哉
ウィルフリード:大塚 卓
ジゼルの母:奈良春夏
ペザントの踊り(パ・ド・ユイット):金子仁美-南江祐生、涌田美紀-加古貴也、工 桃子-樋口祐輝、安西くるみ-鳥海 創
ジゼルの友人(パ・ド・シス):伝田陽美、三雲友里加、政本絵美、中島映理子、長谷川琴音、長岡佑奈

- 第2幕 -

ミルタ:平木菜子
ドゥ・ウィリ:加藤くるみ、長谷川琴音

指揮:ベンジャミン・ポープ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団


足立さんのジゼルは踊りも表現もくっきりと愛らしく、優しく落ち着いた接し方でアルブレヒトの心をほぐして導いている少女。
一見余りに可愛らしく小柄なため、もっとチャキチャキ溌剌かと思いきやしっとりした風情を醸す魅力あるヒロインでした。
アルブレヒトよりも強く賢そうな印象もあり、1幕の段階から精霊になっても命懸けで守りそうな予感すら募らせます。
踊りのコントロール力も自在で美しい仕上がりで、1幕ヴァリエーションでは空間を大きく使い、身体も目線の運びもより伸びやかになっていました。
バチルドの婚約者がアルブレヒトと知ると顔が徐々に歪んでいき、信じたくない葛藤や怒りが入り混じったように狂乱へ。
2幕登場でのぶれぬ回転や高いジャンプも目を見張り、しかもあくまで精霊らしくふわっと舞い上がる軽やかさや
打って変わってアルブレヒトとの再会でのゆったり佇みながら語りかけるポーズの腕や肩のラインにも注目いたしました。

生方さんはアルブレヒト初挑戦。若く世間知らずで少し内向的そうなアオブレヒトの誕生です。
緊張からかおとなしそうで感情の振り幅が少ないかと序盤は思ったものの、お城で窮屈な生活を強いられていて
ジゼルと一緒にいても心を一気には開けない若様であろうと想像です。ジゼルの導きに優しく微笑みながら懸命に応えていく様子も青さが一層引き立っていました。
ちょいと髪型が若い頃の堺正章さん風に見えましたが、2幕での苦しみ踊りでは綺麗な脚のラインを生かした跳躍を拝見。
勿論全編通してみるとジゼルやウィルフリードとのやりとりもまだぎこちない部分はあれど、経験重ねてどんどん洗練されていくことでしょう。

全体をぐっと引き締めていたのは岡崎さんのヒラリオン。顔つきも芝居もしっかりとしていて仕草や間の取り方も雄弁に嵌め込んでいた印象です。
ジゼルへの迫りもそこまで強引過ぎず、村人達とも踊りの輪で楽しんでいたりと周りからの好感度も高く、信頼度も万全そうな森番でございます。
圧巻であったのはミルタに踊らされる場にて、今にも倒れそうなほどに疲労困憊であっても脚が勝手に動いてしまう訴えを
脚を押さえつつ奥底から発していて、しかしミルタは断固拒否。その呼応が落下死へのカウントダウンを強調していて、身の毛がよだつ場面でした。

大塚さんウィルフリードはおっとりお坊っちゃまの強力監視員で、ツンとした目つきで常時冷静に物事をこなしていそうな有能従者。
しかしジゼルがバチルドから首飾りを貰い喜んでいる姿にはその後の悲劇を予期する不穏な表情を隠せず。
またジゼルが息絶えるとアルブレヒトがすぐ駆け寄ったのはウィルフリードで、
貴公子と従者にとどまらない分かり合える関係性が見て取れる場面でした。閉鎖的で窮屈なお城での生活ぶりをずっと見てきたのでしょう。
朗らかに場を沸かせたのは加藤さんのバチルド。描き方によってはキツめの女性のときもありますが
東京バレエ団ではあくまでにこやかな貴族女性で、ジゼルへの接し方も優しいお姉さん風。
ジゼルの婚約を我がことのように嬉しがっていて、だからこそウィルフリードの顔がみるみると曇っていったのも納得。
他の貴族達もそこまで傲慢そうでもなく、上野の森貴族奥様会はきっと温厚な会なのでしょう。初台の森貴族奥様会は序列制度設けていて怖しです笑。

直近で観た他団の『ジゼル』と比較すると、例えばウォーリーを探せ状態で人も芝居も凝った装置も隅々までわんさか詰め込まれている新国立に対して、
東京バレエ団は古き良きロシアな版で、1幕前半の人数も少なく踊り中心の進行でシンプルな演出。
新国立が乗り物で言うなら急流川下りな勢いやスリルを持ち合わせている点に対して
東京バレエ団は遊覧船に乗ってゆったり味わう気分。それぞれに良さがあります。
背景美術は必要最小限であっても遠くに見える山々やお城、こじんまりとしたジゼルのお家やパ・ド・ユイット女性陣の色違いパステルカラーのお衣装も
御伽噺の1頁のよう。リアリティ重視型の方からすると村人はそんなテカリある派手な服を着ていないとお思いかもしれませんが
村の収穫祭を描いたバレエ作品としては華やいでいて良かろうと捉えております。
ジゼルの青いグラデーションが美しい衣装も、清らかさと深みが混ざり合っていて好きでございます。

東バ名物のウィリー達の統制の取れた群舞のピンと張り詰めた集中力も昇華して、ただ揃っているだけでなく
冷たい空気を腕や肩から一斉に放っていくような哀しみの湛えも鳥肌もの。
統率する平木さんのどしっと構えた貫禄で、ティアラもなく全員同じ衣装と頭飾りであっても抜きん出た女王様っぷりも見事。
元祖リニアモーターカーと思わす地に足がつかずにひた走るパ・ド・ブレの滑らかさもゾクッとさせられました。
アルブレヒトを守ろうとするジゼルを前にして、時折除く寂しそうな表情もまた、嘗てはジゼルと同じ恋する乙女であった過去を持つ精霊であると考えさせられます。

『眠れる森の美女』から僅か2週間少々での上演で、短期集中練習であったでしょうが、オーストラリアでの長期公演での踊り込みで鍛えられた成果がよく見える公演で
ゆったり味わうオーソドックスなロシアの版の魅力に再度気づかされるきっかけになりました。
そうこうするうちに『ラ・シルフィード』そして『ドン・キホーテ』のキャスト発表。
前者は2日間のみですが、同月中に上演の後者は多彩な組み合わせ。この日の『ジゼル』ではジゼル友人を乙女度充満させながら楽しそうに舞っていらした
伝田隊長のキトリ、待ち切れません!!!もしや東京バレエ団での全幕本公演では主役デビューでしょうか。主演日に居合わせたい思いでおります。




百合の花達



お墓が巨大です。



6月公演『ザ・カブキ』告知。新国立劇場オペラパレスに討ち入りです!!



説明パネル




カブキの2幕討ち入り四十七士場面は大人数を要するため毎回助演者も入っているようですが、どうでしょう。新国立劇場バレエ団から募ってはいかがでしょう??
劇場の構造を知り尽くしていて、しかもベジャールの大作の大掛かりな見せ場ですから、希望者多数集まりそうな予感。勝手な想像ですが。
加えてNBSと新国の上層部達、少し前から関係性に変化が出てきて舞台興行者同士仲良く手を取り合っていくようになって安堵しております。



この日5月18日(日)は国際博物館の日のため隣の国立西洋美術館の常設展が入場無料。
鑑賞前に立ち寄って参りました。昨年8月の企画展、中世の写本展で来て以来です。殆んどの作品は撮影可。
短時間でしたのでまた次回上野へ行ったときも鑑賞に出向く予定です。
1400年代後半のアウグスブルクの教会史料。色味が品良く鮮やか。























ダイアナとアクティオン。東バ札幌ガラで秋山さん二山さんが踊られます!



帰りは毎度の我が後輩と、終演後もドイツに浸ります。後輩はお洒落にビアカクテル、私は白ワイン。
さっぱり絹引きに近いヴァイスヴルストと淡路玉ねぎに生ハムのせたグリルです。どんどん食べてしまう我々でございます笑。
しっかし後輩のスタイルの良さよ~。本当に身長そう変わらないのだろうか、腰位置の高さよ、同じ昭和生まれか笑?
満席に近い文化会館の中にいても、ラピュタのシータほど視力が良いわけではない私でもすぐ分かる華やかオーラの持ち主でございます。



ジャーマンポテトです。表面がカリッと、中はほくほく香ばしい。ゴールデンウィークはお互い遠出したりと充実であった期間を振り返り。
酒井はなさんを観に高槻市と名古屋市へ行ったそうなのだが、名古屋では私の大好物・喫茶店コンパルの海老フライサンドを朝に食べたそうだ。
海老フライ3本使った独特のソースも塗られたボリュームあるサンドイッチ、気に入ったそうで仲間が増えた~!!!
私が昨年京都での観劇前日に、一昨年は新国立ドンキ名古屋公演日の朝に食べた、愛おしいメニューです。



中世らしい器のデザインが気になって、1人では食べ切れそうにないため今回注文したロングガーリックトースト。
お互いに最近は新国立のジゼルも観ており、東京バレエ団と新国立それぞれに良さ、魅力があると確認し合い
足繁く通うバレエ団公演はあっても、あらゆる団体をこれからも観ていきたいと話も弾みました。



備え付けの鋏で後輩が切ってくれました。優しい。サクサクした軽い食感で美味しくいただきました。
さてジゼル大当たりの2025年、次回は来月牧阿佐美バレヱ団です。
青山さんのラスト全幕、しっかりと観て参ります。